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Interview Special  グラチアン・サジンスキ ファブリシオ・アンドラジ ブログ 佐藤将光 青木真也

【Special】月刊、青木真也のこの一番:2月─その壱─アンドラジ✖佐藤将光「ダーティボクシングと首相撲」

【写真】 離れてダイナミックなパンチや蹴り。そして、ゼロ距離でのエルボーヒジとアンドラジが佐藤を相手に強さを見せた(C)ONE

過去1カ月に行われたMMAの試合から青木真也が気になった試合をピックアップして語る当企画。

背景、技術、格闘技観──青木のMMA論で深く、そして広くMMAを愉しみたい。

青木が選んだ2021年2 月の一番、第一弾は1月22日に行われ、2月5日に中継されたONE116 Unbreakable03 からファブリシオ・アンドラジ✖佐藤将光戦について語らおう。


──青木真也が選ぶ2021年2月の一番、最初の試合をお願いします。

「アンドラジと佐藤将光の試合は1月に行われたのですが、大丈夫でしょうか」

──ハイ、初見が2月になってしまうのでどうしようもないですしね。ただし、アンオフィシャルでも私どもは試合結果は中継日でなく、実際に試合が行われた日時で整理したいとは思っています。それはともかく、アンドラジと佐藤選手の試合は青木選手がジェイムス・ナカシマに勝ったのと同じ日に同じ会場で行われ、同じファイトウィークをシンガポールで過ごしていたことになります。

「ハイ。帰国する便は同じだったんですけど、1週間シンガポールに滞在していて佐藤選手の顔を見たのはPCR検査と計量の時だけでしたね。試合当日は会うこともないし、結果も知らないという感じで。

だから今のONEのイベントは誰が試合をしているのか、全体を選手は知る由がないので。スタンプが自分と同じ日に試合をしていたとか、知らなかったです」

──コロナ禍とはいえ、歪さは感じます。録画中継でもやはり〇月〇日に行われた試合というのを知らせるのが、我々の慣例だったので。

「まぁ、でも戦う当人としてソコは気にならないですよ。あまり感じないです。通常の大会でも形式上、誰がいて、誰と戦って、結果がどうなったのかということが目や耳に入ってくるから知っているだけで。それを知らなくても、困らないですしね」

──なるほど。選手としてはそういうモノかもしれないですね。そういうなか、なぜアンドラジ✖佐藤将光が今月の一番に選ばれたのでしょうか。

「佐藤選手は──実はONEで鎬を削った試合ってハファエル・シウバ戦だけだった。だから、ビビアーノに挑戦できなかったとか話題になっても、相手はマーク・アベラルドとクォン・ウォンイルなんだから、そりゃあ勝つだろうっていう相手です。この3勝でチャンピオンシップってそんなに甘いのって、正直思っていたんです」

──とはいえ与えられた相手に3連続フィニッシュ、1つはハファエル・シウバです。そしてビビアーノ✖ベリンゴン時代が続いたバンタム級戦線で、次期チャレンジャーに目されるのは普通のことではないでしょうか。

「そこで世界挑戦っていうテンションなのかって、周囲も含めて。リネケル、ベリンゴンに勝ったわけじゃない。そこに勝つと説得力が違ってきますよね」

──ONEはランキング1位が世界挑戦という風ではなく、タイミングで組んでいく風ではあるかと思います。

「だからチャンスがあれば──というのはあるとは思います。ビビアーノがやるなら、世界戦だったでしょうし。そこでアンドラジが相手になった。結果論として、どうせ負けるならリネケルとかの方が良いですよね。

でも試合前は佐藤選手のイージーファイトになると思っていました。アンドラジは中国で負けているし、レコードもそれほど良くない。ONEで勝った相手もアベラルドですからね。そういう風な気持ちは正直ありました」

──未知の部分が多く、不気味な相手。ただしMMAだから佐藤選手が勝つという想いでした。

「それがワンサイドでしたね、実質は。良いところを消された感じで。3Rを佐藤選手が盛り返せたのも、アンドラジがセーフティリードを築いて戦ったからだというのもありますし」

──アンドラジの良さはどこでしたか。

「間が良かったです。反応も良かった。クリンチのエルボーも上手だし、ONEのルールに適していましたね。クリンチで打撃を入れることができて、アクションが大きい打撃も持っていました。ジャブにしても、攻撃している感のある攻撃です。踏み込みとかアクションが大きくて、あの戦い方はONE向きです」

──クリンチの攻防なのですが、佐藤選手は組みと打撃の融合という部分で本当に考えて、練習でも実践してきた。ただし、タイ・クリンチに勝てなかった。

「だってダーティーボクシングとタイ・クリンチじゃ歴史というか、積み重ねてきた年月が違いますよね。いくらダーティーボクシングって言っても、ここ何年かの話じゃないですか。でもムエタイの首相撲は歴史が有効性を証明している。だから、僕はダーティーボクシングっていうモノは、どこまで有効かという風には感じちゃっています」

──ただ高度な首相撲は、未だに足に組んで良いMMAでそれほど見られるモノではないです。

「う~ん、僕は凄く基本的な技術として、MMAにおいて首相撲は大切になってくると思ってきました。ジャブやダブルレッグのように。ただし、首相撲もグラウンドも──いってみれば即効性が少ないから、それほど日本では流行らないと思います。パンチ&ローとテイクダウンディフェンスというスタイルが主流のままで。

そういうなかでMMAでは名前が知られていなかったアンドラジは、首相撲をしっかりとやってきていた選手だった。引き出しを持っていましたね。とはいってもリネケルとやるとリネケルだし。それはラカイからやってくるスティーブン・ローマンにしても、良い選手かもしれないけどBRAVE CFで誰と戦ってきたのかっていうことになりますよね」

──……。4月29日に組まれるローマンのONE初陣ですが、荷が重いと?

「そもそもリネケルの実績と比較すると、失礼だろうと思います。2枚……いや3枚は落ちます。それはアンドラジも対しても、同じことが言えて。格が違うと思います。リネケルに対して、アンドラジやローマンでは。スミマセン、盛り上げるようなことがいえなくて──本当の気持ちを話してしまって……」

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Fight & Life Interview Special ブログ 青木真也 飯村健一

【Fight & Life】青木真也&飯村健一「ゆっくり」、「しっかり」、「綺麗に」 スロー格闘技のすゝめ

【写真】対談では青木の創り上げてきたムエタイ式打撃のMMAにおける効力、構えの大切さ。キャッチされても殴られない、倒されないミドルの蹴り方などが語られています(C)t.SAKUMA

明日24日(水)発売のFight&Life#83に1月22日、シンガポールで開催されたONE Championshipで北米世界標準の強豪ジェイムス・ナカシマを1R2分42秒、ネックロックで一蹴した青木真也とムエタイの師・飯村健一氏の対談が掲載されている。

ナカシマを相手にムエタイ流の構えで、蹴り、パンチ、首相撲を見せていた青木の口から、試合終了後のインタビューで「綺麗な構えでゆっくり、近くに行ってしっかり見る」という言葉が聞かれた。

ハイペース、ラッシュの連続という現代MMAにあって、青木と飯村健一が創り上げてきたスタイルとは何かを尋ねる対談の終盤に、格闘技を長く続けるチョイスにプライオリティを置いている青木と、彼を支えリードしてきた飯村氏が、日本の格闘技界にも訪れるであろう──えぐい未来について語った箇所をここで抜粋してお届けしたい。


──ムエタイのMMAにおける有効性は分かるようになってきました。それでも、MMAファイターとしてムエタイをやり込むことは異質です。

青木真也 これをやろうとする人が極端に少ないのは、時間がかかるからです(笑)。

──対してMMAは即効性のあるモノが求められますよね。やるべきことが多いので。

青木 MMAだけでなく、K-1もRISEも──キック系にも横たわる問題だと思います。

飯村健一 やはりガチスパーは強くなるのが早いので。そこをやらせるようになるのでしょうね。

青木 ガチスパーをやると、早く良くなるって聞きます。

──と同時に練習でダメージが蓄積するかとも……。

青木 だから長くやるつもりがないんですよ。20代後半で引退するのであればガチスパーをやれば強くなれると思います。

飯村 MMAファイターもガチスパーが多いと思います。ボクシングやK-1のジムで練習しますしね。

青木 なので、長く続けるには僕は自分がやっているスタイルだと思っています。信仰だから、自分の信じたことをやれば良いけど、特効薬のようなガチスパー信仰は、それはそれで危うくて怖いです。

──その危うさというのは?

青木 ガチスパーとストレングスで強くなろうとすると、技術の差がなくなります。そうなると那須川天心選手や堀口恭司選手のような異常な才能を持っていないと、そういう選手の生贄になっていくだけで(笑)。

──MMAって工夫と努力で探求できるところがあったはずなのに。100メートル走ではなくて、中間距離の障害物競争のようなところがあったかと思うんです。

飯村 ハイ。ボクシングやK-1って体育の通信簿が5の人が上に行けるスポーツなんです。でもMMAやムエタイって体育が3の人間でもチャンピオンになれるもので。

青木 駆け引きと経験が生きるし、技術もゆっくりとしっかり身につけることができるから。ストレングスとハードな打撃を詰め込んでやると、体にダメージを与えますよ。

──ライフとして取り組む格闘技と、20代で稼げるだけ稼ぐ格闘技では、その目的が違うから手段も違う。

青木 えぐめの話をするとストレングスを究めていくなら、ステロイドに頼るっていう風に近々なっていくと思います。格闘技に関しては、日本人はやっていないって信じたい部分があったじゃないですか。

──ハイ。確かにあります。

青木 でも、ガチスパーをやっていく思想はダメージの回復力も含めてステロイドに近づくと思います。

──喘息の薬を入れて、気管支を広げて練習するとか……。

青木 一財産を築いて辞めれば良いのだから。そうなっていくかと。

飯村 いやぁ、もう考えも及ばないところに来ているのですね……。

──それもライフといえばライフで。ただし、稼ぎきれなくてずっと続けるとどうなるのだろうかと。

青木 そこも、そうなっていくと思います。稼ぐ、稼げないだけでなくて勝ちたいと思うと、そっちに走る人間だっているんだろうなって。格闘技って人生を豊かにするモノであってほしいから、そういう破滅的な方向には本当はいってほしくないのですけどね。僕は理屈をもって格闘技をやっていきたいので。

※24日発売のFight & Life#83は、上記以外に4ページに渡り両者の格闘技との向き合い、勝ち方など興味深いやり取りが掲載されています。

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Interview Special ブログ 青木真也

【Special】月刊、青木真也のこの一番─番外編─弐─カーフキック「楽をした結果がMMAにおけるカーフ」

【写真】ムエタイをこよなく愛し、組み技がずば抜けている青木にとってカーフキックとは (C)TITAN FC

過去1カ月に行われたMMAの試合から青木真也が気になった試合をピックアップして語る当企画。

背景、技術、格闘技観──青木のMMA論で深く、そして広くMMAを愉しみたい。そんな青木が選んだ2021年1月の一番──は3試合とも話してもらった。が、ここで青木が「話題にするのは恥ずかしいですけど」と──カーフキックについて語り始めた。月刊、青木真也──今月は2度目の番外編としてカーフキックについて語らおう。


「話題にするのは恥ずかしいですけど(笑)。今、カーフキックって流行っていますよね」

──ハイ。大流行です。記事でもタイトルにカーフを持ってくればPV数が上がるパワーワードになっています。

「ただ、飯村(健一)さんとも話していたんですけど、カーフって理屈上はミドルで腕を蹴っているのと一緒だよなって」

──というのは?

「腕を蹴っている方が、ダメージがあって。例えばシャーウス・オリヴェイラとか、あのレベルでミドルで相手の腕を蹴ると、腕は折れてしまうんじゃないのかって。足より腕の方が弱いじゃないですか」

──ハイ。

「カーフだとカットできるけど、腕はできないから。カットしないからカーフはあれだけ効かされて。だからミドルを腕で受けていると、それは腕が行ってしまうだろうって僕は思っています。

そういう部分でいえば、シャーウス・オリヴェイラはマイケル・チャンドラーとかには一番相性が良いかもしれないです。しっかりとミドルを蹴ることができる選手というのが」

──腕のブロックはカットではない。その通りですよね。ならスウェイで避けないと。

「ハイ。カーフってカットされると、骨を蹴って自分が痛めちゃいます。だから裏の筋肉を蹴っている」

──Calf(脹脛)であって、Shin(脛)キックではないです。

「まぁ危ない技ではあります」

──ただ、私はMMAというのはレスリングも一要素で踏み込むスタイルというのがある。だから前足でカットしづらい。ボクサーでもそうですよね。クラウンチングの。それが、最近は立ち技系でカーフで決着がつく試合があると聞いて、驚いたんです。なぜカットしていないのか、不思議で。

「それはもうK-1はローキックとパンチだからなんです。蹴りを掴んじゃダメで。手で受けろ──回し受け、もしくはカットというルールなんです。

そして、カーフがそのルールの穴が生んだ攻防です。だって蹴りをカットするより、受けてパンチで行った方が勝てるから。しかも3分3Rだし、余計にパンチでいきますよね。ボクシング&ロー、魔裟斗がまさにそうで。あの影響を受け、引継ぎ──カーフキックになったと思います。

と同時に今、MMAでこれだけ知っているはずなのに、なぜ付け焼刃的にカーフを使い始めて決まるのか……それは構造的な問題で。ワイドスタンスでテイクダウンを切ってパンチ、もう組まない。近距離でソレをやっているから、構えの構造でカットはできない」

──組まない。ガツガツの打撃戦をしない。だから距離的にもカーフになると剛毅會の岩﨑達也さんも言われていました。

「あぁ、確かに。結局、楽をした結果がMMAにおけるカーフになったと。クリンチをしたら貰わないんです。でも、暫らくもらう人が出続けるでしょうね」

──ハイやミドルが綺麗な選手が、そこまでカーフを蹴る必要があるのかという試合もありました。他で組み立てられるだろうと。

「そうなんですよね。だから楽しちゃっている。で、また誰かが足を折って下火になるんじゃないですかね。

カーフを蹴っても基本はミドルとハイが上手な選手が、しっかりと蹴りで試合を支配できると思います。パンチ&カーフだと、組みが強くないといけなくなってくる。結果、そんな甘いモンじゃないってことですよ。これからはカーフに対して防御もそうだし、構え自体が変わって来るでしょうね」

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Interview Special  ソン・ソンウォン ブログ 石原夜叉坊 祖根寿麻 青木真也

【Special】月刊、青木真也のこの一番:1月─その参─祖根寿麻✖石原夜叉坊「堕落に任せている」

【写真】勢いでなく、覚悟を決めて戦った祖根 (C)MMAPLANET

過去1カ月に行われたMMAの試合から青木真也が気になった試合をピックアップして語る当企画。

2021年1月の一番、第三弾は31日に行われたShooto2021#01から祖根寿麻✖石原夜叉坊戦について語らおう。


────青木真也が選ぶ2021年1月の一番、3試合目をお願いします。

「祖根✖夜叉坊です。あの試合、正直どう見ていましたか?」

──試合前に、どちらが勝つと思っていたということですか。

「ハイ」

──それは正直、夜叉坊です。と同時、個人的には祖根選手に何か見せてほしいと思っていました。意地のようなモノを。

「夜叉坊ですよね。僕もそう思っていました。やっぱ、そうですよね。なんか、そう考えると2年間試合をしていないというのは大きいですね」

──そこでいえるのは2年間試合をしていないという部分とともに、2年間の過ごし方はどうだったのかということかと。

「そうっスね。試合勘と別に、日々の練習でどれだけ創ってきたのか。そこの部分は関係してくるでしょうね。夜叉坊は打撃の選手なので、打撃の切り返しとかそういうことはしていたと思うんです。でも組んだり、鎬を削る練習をどこまで日常に採り入れてきたのかとは感じました」

──結果論で突っ込むのは反則かもしれないですが、最後の局面にテイクダウンへ行った。夜叉坊という選手は本当に気持ちがストレートに表れる。だから、負ける時はやってはいけないことがそのまま出ることが多いです。今回も最後に祖根選手の跳びヒザに対して、テイクダウンへ行った。いやポイントメイクでなく、倒す意志が必要な場面でしょうと。

「その前にもテイクダウンを狙って、がぶられて押し込まれる途中で崩れてバックに取られました。

テイクダウンに行った時のギロチンの取られ方も……良くなかった。ああいう組みの脆さを見ると、日々が出るのかなとは感じましたね」

──と同時に祖根選手が昨年4月に後藤丈治選手と戦った時と比較すると、コンディションが体も気持ちも違っているように感じました。

「祖根選手は去年の4月は動けていなかったけど、今回は気合が入っていました。要は不利なマッチアップで、皆が夜叉坊の勝利を願っている──祖根陣営以外は。

そういう試合で1Rが終わってから、祖根選手がガードを固めてゆっくり、ゆっくりと距離を詰めていきました。バッと行くんじゃなくて。あの試合をするってことは、頑張っている証拠です。

アレはなかなかできることじゃないし、今回の祖根選手は格闘家が評価する格闘家のソレだったと思います」

──最高の誉め言葉ですね。

「ほんと竹中大地選手とか、祖根さんとはタイプは違いますけど、アベレージが高くて格闘家が評価する格闘家だと思うんです。そういうのが、祖根選手にありました」

──対して夜叉坊は……個人的に夜叉坊と安藤達也選手は才能の塊だと思うんです。

「……あのう、それ……その2人で括るの止めてくださいよ(笑)。それ言っちゃいけない2人ですよ。肉体的にも精神的にもピークにいられる年齢です。でも肉体的に落ちていたり、気持ちで対戦相手に負けるって」

──練習していない、という結論を用いてしまいそうです。

「いや、でも練習しないほうが本来は体は消耗しないんですよ。ケガもしないし。だから、なんでなんだろうって。堕落に任せているのかなって。

でも、それでも通用しちゃうところがあるので。それが問題なんですよね。ヤバイと思います。この間の修斗は、色々とレベル的には感じ入るモノはありました。西川大和選手が絶賛されていたけど、それはヤバイですよ。18歳、北海道っていうバイアスをかけていると」

──ケージにそのようなバックグラウンドは関係ないですしね。我々、メディアはそこで盛り上げていきますけど。

「それはそこで、分かってやっていることだし。だからこそ団体やジム関係者はしっかりと見極めないといけない。そういう点においても、今回は祖根選手が頑張って、堕落せずに逆風のなかで戦って結果を残した。気持ちというモノは難しいですけど……そこをどう評価するのかは。ただし祖根選手は確かに気合が入っていました」

──気持ちは一定でないから難しいですね……確かに。次の祖根選手が、青木選手のいう格闘家が評価する格闘家でいられるのか……。

「今回はSNSでの賑やかしもなかったですよね。そこまで入っていたし、これが正念場だったのでしょうね。だからこそ、次にチャンスが回ってくると同じことができるとは思わない。と同時に祖根選手は世界一になるとか、そういうことでやっているわけではなくて、気持ちの良い格闘技を見せてくれていますよね」

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Interview Special ダン・フッカー ブログ マイケル・チャンドラー 青木真也

【Special】月刊、青木真也のこの一番:1月─その弐─マイケル・チャンドラー✖ダン・フッカー「重心」

【写真】チャンドラーが初回KO勝ちとなったフッカー──。もう少し、組みも踏まえた攻防も見てみたかった(C)Zuffa/UFC

過去1カ月に行われたMMAの試合から青木真也が気になった試合をピックアップして語る当企画。

2021年1月の一番、第ニ弾は24日に行われたUFC258からマイケル・チャンドラー✖ダン・フッカー戦について語らおう。


──青木真也が選ぶ2020年12月の一番、2試合目をお願いします。

「チャンドラー✖フッカーですね。チャンドラーは色々な見立てがあると思いますが、僕自身は試合前にはダン・フッカー有利だと思っていたんです。ゴメンナサイ(笑)。

チャンドラーはあれだけ破壊力のある打撃の持ち主ですが、相性的には最悪じゃないかって。フッカーが真っ直ぐに真ん中から当てたら、終わるだろうと」

──確かにチャンドラーの踏み込みも、UFCのトップどころに通じるのかという見方もあったかと思います。

「チャンドラーとフッカーだと、あれだけリーチ差がありますしね。戦略が勝敗を分けるような階級において、これはフッカーだろうと」

──それが蓋を開けて見れば、と。

「ホントに失礼しました(笑)。構え方でいえば、チャンドラーはスタンスが広いオールドスタイルです。

レスリングのように腰を低くして、両足で踏ん張った状態で前後の移動ができる。いわばステップのない堀口恭司選手のような感じですよね」

──それは言い換えると、如何に堀口選手の前後移動がテイクダウンに適しているのかという。

「そうなんですよね。その分、体へ負担は相当あると思います。どうしてもストップ&ゴーなので。そこでいうと、チャンドラーはあのワイドスタンスで歩けるという強さがありますよね」

──堀口選手は、左右の足を使って鋭い踏み込みを見せる。それは全体運動でもあると思います。手を振ったりして。ただし、チャンドラーはもう足腰のみというような。

「強靭な肉体というと雑になってしまいますけど、レスリングが強いということに尽きると思います。MMAPLANETで空手の岩﨑さんが仰っていた『組みは打撃』ということで。組みが強いから打撃が生きる。その理屈を体現しているように思います。

何と言っても個体の強さがあります。パンチがどうこうというよりも、あの低い重心で動けるのかっていう部分で」

──しかも、左フックですから、縦移動に横回転が混ざる。もう自然の摂理に逆らった強さかと。

「そこは前傾姿勢で入っているから、誤魔化していると思います。前に倒して重さをつけている」

──それにしても、ダン・フッカーは過去にUFCで組みの強い選手とも戦ってきましし、このような負けは予想外でした。

「ジム・ミラーやドゥリーニョに勝っているわけですからね。僕はダン・フッカーの評価が凄く高かったので、もうこなるとチャンドラーとゲイジーが見たくなっちゃいます。ダでもスティン・ポイエーがマクレガーに勝っちゃったので、そこがゲイジーとやるのか。どの辺はUFCのセンスはどうなっているのか、ちょっと分からないですね」

──キーポイントはチャンドラーの組みが強いうえの、パンチ力ということですね。

「あのチャンドラーの突進を止めるには、蹴る。それが僕の理屈──あくまでも理屈上ですよ。あの低い前進は蹴りで止める……でも、それができるヤツがいるのかと。そうなるとシャーウス・オリヴェイラとか、興味深いですね。蹴りが映えるし、ヒザもある」

──下になっても構わない。下も上もどちらでも極めの強さがあります。

「テイクダウンされても構わないから、思い切り蹴ることができるだろうし。そうなるとチャンドラーがブロックしようもののなら腕を潰すこともできるじゃないかって。

今、カーフキックって流行っているけど……、カーフキックの理屈はミドルで腕を蹴るのと同じ。オリヴェイラがあの勢いでミドルを蹴って、チャンドラーが腕で受けると折れるんじゃないかって思います。

人間は基本的に、足より腕の方が弱いし、カットもできない。ならスウェイがバックステップでないと」

──でもあのワイドスタンスだと、スウェイではなくてブロックしてくるでしょうしね。

「そうなんですよ。だから、オリヴェイラとチャンドラーでオリヴェイラのミドルが見られないなかって。そこを見てみたいですね」

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Interview ONE Special ザキムラッド・アブデュラエフ ゼバスチャン・カデスタム ブログ 青木真也

【Special】月刊、青木真也のこの一番:1月─その壱─アブデュラエフ✖カデスタム「尿比重と階級down」

【写真】テイクダウンからバック奪取、あっという間にネッククランスを極めたアブデュラエフ (C)ONE

過去1カ月に行われたMMAの試合から青木真也が気になった試合をピックアップして語る当企画。

今月も変則的に番外編からお届けしたが、今回から従来の形式通りに、背景、技術、格闘技観──青木のMMA論で深く、そして広くMMAを愉しみたい。

青木が選んだ2021年1月の一番、第一弾は22日に行われたONE116 Unbreakable からザキムラッド・アブデュラエフ✖ゼバスチャン・カデスタム戦について語らおう。


──青木真也が選ぶ2021年1月の一番、最初の試合をお願いします。

「ザキムラッド・アブデュラエフ✖ゼバスチャン・カデスタムですね」

──ジェイム・ナカシマ戦の2試合前に行われた試合です。

「ハイ。僕はカデスタムと同じ控室というか、弁当箱の仕切りみたいな感じで、一つの場所で間仕切が十字になっていて、そこで彼とは同じだったんですよね。出入り口にモニターとバンテージチェックの場所があり、そこだけは皆が共有するという感じで。他の選手と接触することもなかったです」

──控室の状況もコロナ前とは違うわけですね。ワクチンが普及するまで、そのような状態が続くかもしれないです。

「続くんですかね。ワクチンも綱引きで、分からないですよね。根気勝負か、開き直るのか。でも、シンガポールにいると日本は事実上開き直っていると思いましたよ」

──人々のモラルに頼って。

「そこがなぁなぁになっていますしね。良心になぁなぁになっているから、また難しくなっている」

──コロナ談義は取り敢えず置いておき、アブデュラエフです(笑)。

「僕はカデスタムが強いと思っていたんです。元々PXCのチャンピオンで、ONEでもサッポにKO勝ちしている。ONEっぽくスタンドが上手なファイターで。縦ヒジとかも使う。マグワイアに勝ったことが意外だったから、あの勝利で凄く彼の評価は高かったんです。

そうしたら、『えっ?』と。スウェーデンって、完全に共生する選択をしてロックダウンも、自粛政策もとらなかったら、エライことになっていて。だから、彼がどういう風に練習ができていたのか。その辺の時世も関係してくるのだとは思いますけど、それにしてもワンサイドでアブデュラエフが取ってしまうのは──ちょっと分からないです。

ああいうことが今、ONEのトップ戦線は多いですね。オンラ・ンサンの負けもそうですし」

──そもそも元チャンプとダゲスタンの新鋭と戦う。なかなかシビアなカードでした。

「そう取ります? アブデュラエフはウォリアー・シリーズ上がりだから、カデスタムのアップだと僕は思っていました。彼はウォリアーでも判定勝ちだし」

──確かに代役ですし、そこまで考えいなかったかもしれないですね。

「そうですね。そうだ、代役ですよね。最初はレイモンド・マゴメダリエフが相手で。ロシアからロシアという代役で。マゴメダリエフも強い選手だったけど、その代役が取ってしまう。分からないものですよ」

──アブデュラエフはライト級でも戦えると宣言していました。

「そこは……ナカシマもそうですけど、この計量システムだと落とせると思っちゃうんですよね。でも、そんなにうまくいってない。階級を落としてもパフォーマンスがどうなのか。

尿比重の検査があると、階級の移動は難しくなるかもしれないです。要は余分に体重を落として、水を飲む。僕は逆にリミットより下だから、76キロになるまで水を飲むと、尿比重の値は本当に小さくなります。

だから食事もできているけど、食べないで水を飲んで尿比重を下げている選手は栄養素が抜けちゃっている状態だから。それが1日のリカバリーで戻るのかなって。

水抜きをした選手、実際に動けないことが多いじゃないですか。それと同じことが、ONEの計量でも起こっているかと」

──つまりは普段と同じ体重でないと──ということですか。

「僕の理屈では、そうです」

──最近思うのですが、日々の生活や練習というのもあるのですが、水抜きをして普段大きくなっている35歳以上の選手と青木選手のコンディションが違うように感じてきました。

「あのう……それはあると思います。年を取るのが遅いです。あのフェザー級に落とした経験が、凄く響いています。あの時、これをやっていると死んじゃうわって。ハードな水抜きをやると……コンディションを本当に気を付けた方が良いと思います」

──コロナ計量といえる、当日で一階級上の計量になり選手はギリギリでも取材を受けてくれる状況が多くなりました。

「あぁ、なるほど。取材する立場だからこそ、分かる話ですね。でも僕は尿比重があると基準が2つできてしまうから、なら77と尿比重よりも、尿比重なくて70.3キロだけで合わせる方が楽じゃんっていう気持ちがあります。

それは僕の減量が厳しくないからだと思います」

──青木選手だからこそ、分かる話ですね。

「まぁアブデュラエフがこのままライト級でできるかというのは分からないし、ただ簡単ではないと思っています」

──ではウェルター級では?

「もうカデスタムに勝ち、ナカシマが抜けたんだからタイトル・コンテンダーですよね。ただチャンピオンのキャムラン・アバソフもいえばロシア人、マゴメダリエフにアブデュラエフ、ロシア人だらけですよ。手塚に勝ったムラット・ラマザノフもいるし。ロシア人以外はマグワイアぐらいじゃないですか。あとはサッポと。

マッチメイクする方も、もうちょっと考えないといけないですよね(笑)。逆にいえばロシア人を一つ崩せば、日本人もウェルター級レギュラー枠になれるかもしれない。実はチャンスかもしれないですよ。タイトル・コンテンダーになるには」

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Interview Special ブログ 石井逸人 青木真也

【Special】月刊、青木真也のこの一番─番外編─石井逸人✖よしずみの試合後「アホなことするな」

【写真】お茶目なトンパチだったら、良いのだが。境界線を理解することも必要だ (C)MMAPLANET

過去1カ月に行われたMMAの試合から青木真也が気になった試合をピックアップして語る当企画。

背景、技術、格闘技観──青木のMMA論で深く、そして広くMMAを愉しみたい。そんな青木が選んだ2021年1月の一番──だが、先月に続き本来のピックアップされた3試合からではなく、いきなりの番外編として1月31日に行われたShooto2021#01第1部で行われた石井逸人✖よしずみ戦について語らおう。


──いきなりの番外編ということで、青木選手に石井逸人選手の勝利後の……についてお尋ねしたいと思います。

「そこ来ますか(笑)。あれ、話題になっていないし……ただ嫌やヤツになっていますよね。あんなことしても、損するだけだと思います」

──損得勘定でなく、戦った相手に勝負がついた後にあのような行為をする必要があるのかということをお伺いしたいです。

「そういう部分では、彼がアレをやる意味が分からなかったです」

──それをあなたの口からどう言えるのか……という部分で、今の青木選手にお伺いしたいです。

「やってはいけないことです。やってはいけないけど……何と言ったら良いのか、石井逸人は何を考えているのか分からない。僕のことに関しては、一つの表現としてアレがあったから今の僕があるというのは間違いなくあると思うんです。今となっては経験として、肥やしにはなっています。

でも、あの当時は色々なことの狭間に自分があって、しっかりと世間からも叩かれました。だから良い経験になった──良い経験にしたということに落ち着いてしまいますけどね」

──それは青木真也が異質であり、他にない路を進むことができているという点でそうかもしれないです。ただし、今も昔も試合が終わって、中指を立てた云々でなく対戦相手を侮辱する行為は許されるモノではないです。

「それはその通りなんです。世の中に対して、そんなモノを見せる必要もないですし」

──実際、ギリギリで戦った試合でもジェイムス・ナカシマの尊厳を無視するような行為は当然行っていません。

「ハイ、死者に鞭打つ行為はできないです。やってはいけないことだし、やる意味がないことです。中指でなくても、バカヤローって言うのも同じようなモノで。マテウス・ガムロがノーマン・パークに試合後にマイクで謝罪を求めるとか……それはしなくて良いです」

──ガムロ✖パークは虚実入り乱れるというか、試合を盛り上げるための行為とそこで戦う人間の感情が入り混じった感がありました。それは青木真也✖廣田瑞人戦も然りで。

「あれは……加藤さんとかに追い詰められ過ぎて……。毎晩のように『俺たちが行くんだ』みたいなノリで電話がかかってきて。団体間というか、色々な作用があって。あの時は終わった後とか、本当にしんどかったし。

当時の心境でいえばDREAMは絶対に戦極に負けちゃいけなかった。負けることは許されていなかったんです。僕の周囲の空気として。そういう想いが、廣田という個人でなく戦極というものに出た。そして悪いのは青木真也になった。

まぁ、やってはいけないことなんですけど、あの時は正直『悪いのは俺であって、DREAMではないんだな』っていう気持ちもありましたよ」

──悪くないわけではないです。

「そうですね。悪くないわけはないけど……だったら、ちゃんと着地させてくれよっていうのはありました」

──今となっては、あの行為が青木真也という人間の一面であっても全てではなかった。当時は、全面のように見えていましたが。

「だから本音をいえば石井逸人は怖くて触れられない。何ていうのか、ただ戦った相手ですよ。そこに勝って、唐突にあんなことをしてしまうのは……う~ん、意味が分からないです。対戦相手に何か感情的なモノがあったようにも見えなかったし。試合後とかどうでしたか?」

──「興奮しちゃいました」と反省しきりでした。長南さんにも注意されたようで。

「反省するんですよね。でも、やっちゃうから。そこなんですよね、問題は。彼には例の件があるじゃないですか。あの時に彼が言っていたことも、こういうことを繰り返すとお前の言っていたことはどうなの?ってなりますよね。

それが僕の正直な想いです。あの時は逸人が言っていたことを皆が耳に傾けていたけど、今の彼だったらあそこまで皆が真剣に意見を聞かなかったと思いますよ。

だからチョット危ないっていうのか……でもね、試合を見るとあの運動能力とか素晴らしいモノが見られて。練習でも、強いというか運動能力がある。そりゃあ、ああいう素材が地方にいると抜群に惚れ込むと思います。だから、彼に対しては皆がちゃんと言ってあげたほうが良いです。早い段階で。俺もあの後、凄く怒られましたからね」

──怒られることは必要かと思います。

「あの時は複雑で……石井逸人と違って、状況も状況で謝ることができなかった。だって僕が謝ると、DREAM勢が謝ることになるから、『謝らせるな』ということがあった。だから叱られるだけっていうのを経験して……それをさっきもいったように肥やしにできましたけどね。

だから石井逸人も選手として、あれだけの能力を持っているのだから、皆が早めに注意をして、導いてやるべきだと思います。

そんな感じかなぁ。良い素材だから、伸ばさないと。そう思っています。石井逸人と野尻定由とか楽しみだし、そこで勝った人間が田丸匠とやるとか。そんな風に国内で強くなる試合が組まれればと思います。

まぁアホなことするなというか、若さの発露なんだろうけど……反省して、また頑張ってほしいですね」

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Interview JJ Globo Special SUG19 ブログ メイソン・ファウラー 石井慧 青木真也

【Special】月刊、青木真也のこの一番:12月─その参─メイソン・ファウラー✖石井慧「試し割り」

【写真】石井慧のSUG挑戦第一弾はOTでメイソン・ファウラーに敗れ、ベルト奪取とはならなかった (C)SUG

過去1カ月に行われたMMAの試合から青木真也が気になった試合をピックアップして語る当企画。

2020年12月の一番、第三弾は20日に行われたSUG19からメイソン・ファウラー✖石井慧について語らおう。


──青木真也が選ぶ2020年12月の一番、3試合目をお願いします。

「SUGの石井慧選手とメイソン・ファウラーの試合ですね」

──SUG20の石井選手✖クレイグ・ジョーンズではなくて。

「ハイ、まぁクレイグ・ジョーンズとの試合はそうなるよなってことですし。SUGといえば5分でオーバータイム。ならメイソン・ファウラーの方かと。

石井選手とファウラーだったら、絶対に5分で決着しないですよね」

──ただ本戦5分で、ファウラーが戦っていたのが驚きました。これまで寝技に付き合わないでいた彼が積極的に動いて。石井選手のパス狙いをオモプラッタで切り返して攻めたりして。

「アイツ、これまでは攻めていないですよね。なんか異種格闘技っぽくて良かったです。今回の試合は。ただ練習を見ていてもイゴール(タナベ)とかだったら、石井選手を攻めることができるけど、俺たちだったら無理ですからね」

──体格差はあるとしても、ファウラーも力があるのだと……。

「だから逆に日本人で100キロを超えていると、練習するのも大変だと思いました。そしてあれだけ体躯が合って、組み技の心得があるとクレイグ・ジョーンズぐらいでないと取れないわけですよね。

それが発見でしたね。あと、何と言ってもファウラーはSUGルールに強い。その証拠にSUGではオーバータイムで2度クレイグ・ジョーンズに勝っているけど、ADCCでは逆にギロチンで一本負けしていますしね」

──それでもADCC北米トライアルで優勝し、世界大会でも1回戦は勝っています。

「そういう選手でも5分では、石井選手を取ることができない。そしてオーバータイムに強い。ちょっとね、不思議ですね。で、究極をいえばSUGに勝つには汗っかきが良い(笑)」

──アハハハハ。ファウラーが滑るという情報も伝わってきました。

「まぁ汗もあると思います」

──いずれにせよ、オーバータイムになって最初からシートベルトでなくスパイダーウェブを選択する石選手は、非常に珍しいタイプだと思いました。

「僕ならバックですね」

──そうだと思います。結果的にスパイダーウェブを選択し3回連続で同じように逃げられました。やはり、そういうモノなのでしょうか。

「う~ん、そこはちょっと分からないです。でも十字は取るのも逃げるのも難しいと思います。だって僕らは普段、ああいう風にならないことを重視して練習しているわけじゃないですか。あんな形になったら、もうその試合でどれだけ追い込まれているんだってことですから」

──確かにその通りです。

「あそこまで取られるのは、弱いってことですからね。バックとは違って」

──オーバータイムのセオリーではバックで絞めを極められた選手が、逆転を賭けてスパイダーウェブを選択するという風です。

「一発逆転を賭けて。でも石井選手は最初から一発逆転を選んでいた。あの逃げ方ができるのもファウラーがSUGの専門家だからです。逆に僕らはあのルールで勝つことを一番とすることはないじゃないですか(笑)」

──ハイ、そうだと思います(笑)。

「結局、SUGにしてもEBIにしても、コンバット柔術もそうですね。時間切れだからって、なんであんな決着方法なんだろう。釈然としないです」

──言ってみればパターゴルフですよね(笑)。

「ホントに。試し割ですよね。そこまでのプロセスはどこに行ったんだって(笑)。スッ飛ばして、あれで負けたとしても、負けた気がするんでしょうかね。

今回、それと気づいたことがあって──クレイグ・ジョーンズはEBIでは勝っているけど、ADCCは準優勝なんですよね。ゲイリー・トノンもADCCでは勝っていない。かといってIBJJFの道着でも勝っていない。つまりADCCやIBJJFのタイトルとは関係ないところで、ステータスを確立してやっていける世界があるということなんですよね」

──う~ん、ただしADCCで柔術界の強豪を倒したり、追い込んで名前を挙げたというのはあると思います。

「なるほど。で、そういう選手がPolarisとかEBI、SUGでも活躍して、セミナーや指導で食っていける。ネットの指導とかで。だから確立しているんですよね、そういう世界が。やはりそこは凄いと思います」

──私がSUG19で思ったのは、MMAファイターがMMAファイターとグラップリングで戦うと溌剌と攻めるということだったんです。

「ドスアンジョスとセラーニですね。まぁ、海賊ビデオですよ(笑)、スパーリングを流す。試合では蹴りを出さない選手が実はムエタイの練習をしていたり、テイクダウン&コントロールの選手が足関節を使っている。そういう海賊版ですよね。

北岡悟がQuintetのことを練習試合って言ったんです。グラップリングのことを。それと同じですよね。で、そこでビジネスも成り立っている。名前があるから可能なんでしょうけど、誰も損していないですからね。選手もファンも楽しめて。まぁドスアンジョスもセラーニもあれだけ組みができるから、思い切り打撃で思い切り攻めることができるんですよね。

ドスアンジョスは打・倒・極、全てを鍛えている。トライアスロンMMAファイターですよ。だからこそ、ファイターのなかで評価が高いと思います」

──では石井選手については、どのように思われていますか。

「石井慧のゴーイング・マイウェイ振りも素晴らしいです。一周回って、何でも見えている。ファイターとしての選択は他にもあるんじゃないかと思うことはありますけど、そこも含めてゴーイング・マイウェイです。

試合展開と同じで、もっとズル賢さがあっても良いのに常に真っ向勝負しています。ちょっと他にいないと思います」

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Interview Special ブログ ヘナト・モイカノ ラファエル・フィジエフ 平本蓮 青木真也

【Special】月刊、青木真也のこの一番:12月─その弐─フィジエフ✖モイカノからの「平本蓮とローカル化」

【写真】なぜ欧米ではキックやムエタイで実績を残している選手が、次々とMMAで成功しているのだろうか。いや、逆になぜ日本にはあまり見られない事象なのだろうか (C)MMAPLANET

過去1カ月に行われたMMAの試合から青木真也が気になった試合をピックアップして語る当企画。

2020年12月の一番、第ニ弾は12日に行われたUFC258からラファエル・フィジエフ✖ヘナト・モイカノについて語らおう。


──青木真也が選ぶ2020年12月の一番、2試合目をお願いします。

「ラファエル・フィジエフとヘナト・モイカノの一戦ですね。フィジエフはUFCデビュー戦でマゴメド・ムスタファエフを相手にこけたけど、それからは連勝していて。勝ち方が派手で、ROAD FC時代(※2017年6月10日キム・スンヨン戦、同年12月23日ムントスズ・ナンディンエルデン戦)の勢いの良さが出てきましたね。

モイカノは去年から階級をライト級に上げてきているのですが、それにしても左ボディフックから入るって凄いです。あんなことをMMAでできるの? 怖くないのって思いました」

──フィジエフはタイや欧州で50戦近いムエタイやキックやムエタイの経験がありますが、MMAでもあの距離で打撃戦ができるわけですね。

「キックなら分かります。そして、MMAでも以前より重心が高めのスタンスを取る選手も増えてきました。でも左のボディから入るって、顔が空くのに。相手の奥の手側で、右ストレートを合わされるリスクがある。それをMMAグローブでやってしまう度胸は凄いと思いました。

言い換えると自信があるのでしょうね。最後も左から右、そして左で倒しました」

──最後の1発は、モイカノは全く見えていなかったです。

「結局、あの最初の左の踏み込みがあるから右を合わせて、また左が出せる。アレは日本人にはできないと思いましたね」

──日本人はできないですか。

「できないです」

──例えばですね、フィジエフだけでなく相当な立ち技のキャリアのある選手がMMAに転じてきました。ビッグネームでなくても、そういう選手は組みと寝技を消化して中間距離で打ち合って、プロモーションやファンからも受ける戦いをしています。日本でK-1などキックやムエタイで、ガンガンやっている選手がMMAに転向したら、それも可能ではないでしょうか。

「できないことはないと思います。K-1の話になると、打ち合いなさいという戦いだけど、本当に一流は貰っていないですよね」

──それはMAX時代からそうでした。

「それでも戦い続けているとアンディ・サワーとかダメージが蓄積していますけど、魔裟斗はパンチのある選手に対してロー勝っていて。パンチ勝負で消耗しなかったです。あのルールで本当のトップは貰わない。今も野入選手とか、貰わないですよね。

言い方は悪いけど、下っ端というか抜けきれない人は技量でなく漢気で魅せていますけど、トップの人は貰っていないです」

──では明日の大晦日に平本蓮選手がMMAデビューを果たしますが(※取材は12月30日に行われた)、青木選手はどのように考えていますか。

「平本蓮選手は打撃の使い手としては神憑っていると思います。特A級です。これは岩﨑(達也)さんの武術空手のところと重なってきますけど、でもMMAっていうのは総合的な打撃だから。

組技があることによって、組み技の圧力が加わったところでの打撃です。だから平本選手が仰る『MMAの打撃は俺から見たら素人だ』という理屈は分かります。それは仰る通りです。でも組み技が入ったら違うんだせ──というのはあります」

──しかし、そんなことはもう第1回UFCで分かったことではないでしょうか。その後ストライカーが柔術、さらにレスリングを習得し、ある程度出来上がったスタイルを皆が学ぶ時代になった。結果、基本中の基本を皆が忘れてしまうのですか。

「そうレスリングの圧力がところで戦っているという部分が、なぜか抜け落ちている。いや分かっているようで、まだ分かっていないのでしょうね」

──そこを理解し、それこそフィジエフやイスラエル・アデサーニャのように消化すれば平本選手だけでなく、日本の立ち技選手もMMAで活躍できる?

(C)t.SAKUMA

「そういう話にはなるのですが、そんなに簡単に組み技は消化できないですよ。ホントに本気ならないと。MMAは1+1が2の世界じゃないですから。

競技として真面目でMMAを見ないと。真面目に見ていない人は、本当には理解できないです。本当に格闘技を分かっていて、やっているなら自分がUFCとか口にできないって分かるはずです。酷いことを言うけど、僕は道化として見ちゃっている部分はあります」

──青木選手の道化というのが、決して蔑む言葉だとは自分は思っていません。存在感を認めているということで。

「ハイ。で、あの打撃があって真剣に組み技に取り組めば、今の打撃を評価する傾向にある世界のMMAで勝てるスタイルで戦えます。ただし、簡単にそうはならんですよ。

ロシア、ブラジル、米国、海外の立ち技の選手が、それができるのはキックとMMAが地続きで、そのMMAがUFCと地続きだからだと思います。だから本気で学ぶ姿勢を持てます」

──対して、日本は……。

「現状は地続きじゃない。日本国内で完結するわけじゃないですか。ちょっと喋りが上手くて、トラッシュトークが出来る。ドン・ドンって打ち合いができれば完結するから。それで完結しても良いんですよ。でもMMAとしては、変わってきますよね。

今、情報が全て平等に与えられたことでグローバルな資本主義がコネクトしました」

──……、?

「つまりどこにいても誤魔化しがきかないモノが出来上がってしまったということです。それは僕がDREAMを戦っている頃からで。僕のレコードは世界中の選手とネット上でリンクするようになった。

だから未知の強豪なんてモノを興行側も創ることができなくなりました」

──ハイ。逆に情報が多すぎて、未知ではなく……我々が追い切れないという意味で、無知の強豪がいくらでもいます。

「それが2020年、日本の格闘技は完全ガラパゴス化を進めました」

──そこにはコロナの影響で外国人選手を招聘することが困難になったという事情があるかと思います。ただしUFCもBellator、ONEもBRAVE CFやUAEWもグローバルのなかで活動を続けている。国内スポーツを見れば契約して日本に長期滞在がベースではないところでいえば、モータースポーツは懸命に欧米と行き来し、リングしている。グローバル経済の中に踏み止まっています。

「でも日本の格闘技はビジネスとして、グローバルなモノが一切通じなくなった。そのメリットもありますが、強さの追求という部分ではデメリットの部分も同然あります。その危うさを十分に感じています。危うさがあるなかで、ガラパゴスをつくった人達が幸せを享受している感じです。海外に出向く、一部の選手を除いて……今の日本の格闘技は

いや、全くフィジエフの話ではなくなってしまいましたね(笑)」

──いえ、しっかりと地続きの話です。頂戴させてもらいます(笑)。

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Interview Special オレッグ・ボリソフ シャミル・ニカエフ ピョートル・ヤン ブログ マゴメド・マゴメドフ マテウス・マトス ルスタン・カリモフ 青木真也

【Special】月刊、青木真也のこの一番:2020年12月─その壱─マゴメドフ×マトス「レブニー的Bellator」

【写真】超ド級レスラーがベラトール・バンタム級戦線で如何に活躍していくのか(C)MMAPLANET

過去1カ月に行われたMMAの試合から青木真也が気になった試合をピックアップして語る当企画。

今月は変則的に番外編からお届けしたが、今回から従来の形式通りに、背景、技術、格闘技観──青木のMMA論で深く、そして広くMMAを愉しみたい。

青木が選んだ2020年12月の一番、第一弾は10日に行われたBellator254からマゴメド・マゴメドフ✖マテウス・マトスについて語らおう。


──青木真也が選ぶ2020年12月の一番、最初の試合をお願いします。

「マゴメド・マゴメドフ✖マテウス・マトス戦です。笑っちゃうのがマゴメドフだけでなく、相手のマトスもACBで戦っていた選手なんですよね。ピョートル・ヤンに負けてACBでは2勝1敗とかで」

ピョートル・ヤン✖マゴメド・マゴメドフ(C)ACA

──対するマゴメドフはヤンに勝ってACBバンタム級王者になっています。

「そこ、やっぱり引用しますよね。でもピョートル・ヤンに負けてベルトを失っていることは強調しない」

──それは試合を盛り上げるために、ピョートル・ヤンと1勝1敗、勝ったのは接戦で負けたのは完敗……とはしないですよね(笑)。

オレッグ・ボリソフ(C)ACA

「アハハハ。そしてピョートル・ヤンに勝っているから、バリバリの殴り合いができる選手だと思われていたかもしれないけど、超ド級のレスラーですしね(笑)。ACAとかチェックしていない人は、どんなロシア人が出てきたのかって楽しいだったからもしれないけど、実際は試合が跳ねる系じゃない。

試合内容だとオレッグ・ボリソフやルスタン・カリモフの方が面白い」

──その両名とヤン、マゴメドフでACBバンタム級四強でした。

ルスタン・カリモフ(C)ACA

「ハイ。で、試合でいえばピョートル・ヤン、ボリソフ、カリモフの方が面白いんですよ。ただ試合は跳ねないマゴメドフですけど、ボディクラッチからレスリングは抜群に強いです。襷にしなくて、ボディクラッチが。

エスケープを絶対にさせないし、スクランブルを起こさせない。そういう堅実なレスリングが強い。ヤンとかなんでも強いじゃないですか。UFCの選手ってレスリングだけっていうのはもう見られない。ただし、ここまでレスリングが強い選手はいるのか。

一点突破で何でも強い選手とやってどうなるのだろうかっていうぐらいレスリングは強いですね。ロシアのレスリングでいえば、ブラジル人のACAフェザー級王者のフィリッピ・フロレスが計量オーバーして。そのフロレスにKO負けしたマラット・バラエフ……あのユサップ・ライソフに負けている選手かんですけど、バラエフも打撃に特化しているのに相手がノヴァ・ウニオンのストライカーになると、一気に組みに行ったんです。

ああいう試合を見ていると、ロシア人ってフリースタイル・レスリングやサンボが強いから打ち合えるというのを表していると思います。

まあバラエフは45歳だけど、これから肝になるのはヤングイーグル(※ACAの人材育成大会)出身の選手かと。バラつきがあっても、あそこから抜けてくる選手は強いですよ」

──フライ級王者になったアズマット・カレフォフとか、ヤングイーグル出身ですね。

「あの春日井に勝ったヤツですね。ロシアは篩落としができる。ヤングイーグルで鍛えられた人間が勝ち残ると、やはり強いですよ。でも、そんなレスラーで試合は地味なマゴメドフがマトスと戦うとかっていうのは、ビヨン・レブニー時代のようですね」

──最近の兆候でいえば意外なマッチアップでした。

シャミル・ニカエフ(C)BELLATOR

「ウェルター級のシャミル・ニカエフとか、なんか投入していますしね」

──ニカエフは本来はライト級の選手で、ロシア勢は世界中を侵食しています。そのマゴメドフは、アン・アルタチュラ政権に挑むことになりますが、ベラトールのバンタム級戦線は大晦日に復帰する堀口恭司選手も元チャンピオンで強力なタイトルコンテンダーです(※同取材は12月30日に行われた)。

「堀口選手はケージでも大丈夫ですよね。朝倉海選手は、そこは分からない。堀口選手と朝倉選手が同じ相手10人とやるとアベレージで勝率が高いのは堀口選手だと思います。でも、朝倉選手の方が派手な勝ち方はできる。

だからこそ、この2人の試合は完成度の高さでいえば堀口選手だと思っています。マゴメドフと戦うことを考えても、堀口選手はダリオン・コールドウェルに勝ち、UFC時代にはアリ・バガウティノフに勝っていますからね」

──既に超ド級のレスラーとロシアンに勝っていると。

「堀口選手はラウンドマストでも足が使えて打撃があるから、相性は良いと思います。大晦日にケガ明けでどういう試合ができるのかは見る必要がありますが、堀口選手がマゴメドフやアルタチュラと絡むととても面白いでしょうね。

そこはスコット・コーカーのベラトールですけど、マゴメドフなんてビヨン・レブニー時代のベラトールの面白さでもあるし、興味深いですね(笑)」

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