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Bu et Sports de combat Interview ニコ・プライス ブログ ヴィセンチ・ルケ 岩﨑達也

【Bu et Sports de combat】武術的な観点で見るMMA。ヴィセンチ・ルケ✖ニコ・プライス─01─

【写真】MMAでこの距離で戦い続けるのはヴィセンチ・ルケとホゼ・トーレスぐらいか(C)Zuffa/UFC

MMAと武術は同列ではない。ただし、武術の4大要素である『観えている』状態、『先を取れている』状態、『間を制している』状態、『入れた状態』はMMAで往々にして見られる。

武術の原理原則、再現性がそれを可能にするが、武術の修練を積む選手が試合に出て武術を意識して勝てるものではないというのが、武術空手・剛毅會の岩﨑達也宗師の考えだ。距離とタイミングを一対とする武術。対してMMAは距離とタイミングを別モノとして捉えるスポーツだ。ここでは質量といった武術の観点でMMAマッチを岩﨑師範とともに見てみたい。

武術的観点に立って見た──ヴィセンチ・ルケ✖ニコ・プライスとは?!


──今回はヴィセンチ・ルケ✖ニコ・プライスの1戦をお願いします。この試合は再戦で、前回はルケがダースチョークで勝利しています。

「ルケは相当なストライカーですね。とにかくパンチが良いです。ヒジでパンチを打てる選手です」

──ヒジでパンチを打つとは、どういうことでしょうか。

「我々が追及している突きもそうなのですが、肩甲骨を使うということが言われていますよね。エメリヤーエンコ・ヒョードルのようなロシアンフックと呼ばれることもMMAではありました」

──柔軟に肩が回るパンチですね。

「ハイ。ただ肩を回そうとしても、回りません。そのためには肩甲骨を使う必要があります。ただし肩甲骨を使うには、ヒジが使えないと肩甲骨は動かないのです。サンチンの突きも、ヒジで肩甲骨を動かしているんです。ヒジを使う。その状態が何であるかは別の機会に説明させていただくとして、ルケはとにかくヒジを使うことで、肩甲骨が動くパンチが打てていました。

結果、ワンテンポ早いのでプライスには見えなかったでしょうね。何よりも、打ち合いになったときに絶対に顔がブレないです。ショートの打ち合い、MMAグローブであの距離で打ち合うって相当怖いところですが、全く顔がブレないでプライスのパンチに自分のパンチを合わせている。あれは普通はできないです。MMAファイターであの距離に居続ける選手は初めて見ました」

──頭がブレない……頭を振らないとパンチを被弾することはないですか。

「頭を振るのは、何のために振るのか。動かしてずらして殴るためなのか、避けるために動かすのか。それともただ動かしているのか。この3つの理由が頭を振る選手に当てはめることができます。なんとなく動かしても、なんのビジョンもないので質量は下がります。打つためにズラしている。マイク・タイソンもそうでした。その場合の質量は逆に上がります」

──ルケは動かしていないということですが……。

「基本的には動かさない方が質量は高いです。本来は動けば動くほど、移動エネルギーが生じるので質量は下がります。つまりは移動しないとエネルギーを起こせない人間よりも、移動しないでエネルギーを起こせる人間の方が上なんです。移動するというタイムラグがなくて、エネルギーが出せるということですから」

──ただし、あの距離など殴れる割合も高くなるかと思うのですが。

「それはそうです。でもクリーンヒットされる数は少ないです。あの距離はルケの間なので、安全なんです。仮に被弾しても、ルケの質量の方が上なので大したダメージにはならない。逆にルケの攻撃が当たった相手の方がダメージが多くなります。だから理論上は安全なのですが、MMAであの距離に居ることができる選手は少ないです。それはビビッてしまってあそこから下がるが、組みに行く選手が殆どだからです。

結果、下がったり、組みにいくことで動いた方の質量が落ちてしまうんです。だからルケのようにはなかなか戦えないんです。顔が動かず、目もしっかりと開いている。あんな選手はそうはいないですよ」

──ルケが近い距離で戦い続けることができるのは、そのような理由があったのですね。

「ルケは素晴らしいボクサーですよ。でも、それ故に下からの蹴りが全く見えていない。ダウンした前蹴りは目を開いているのに被弾しましたから。それはボクシングにバランスが偏り過ぎているからです。何よりもプライスの蹴りは、ヘンテコ蹴りなんです」

──ヘンテコ蹴りですか!!

「プライスの蹴りは、ヘンテコ蹴りです。あのヘンテコ蹴りは、距離を取るのが実は難しくて。

フルコンタクト空手の世界大会でも、ああいうヘンテコ蹴りを使う選手がたまに出てくるんです。しっかりとしたボクシングができるが故に、下がってから蹴ってくる変な蹴りが見えていない。ルケは構えも距離も素晴らしいボクシングのモノで、ディフェンスもボクシング。だから相手は下がることで有利になることもあり、それがプライスにとってはあの一瞬でした。

プライスってこれまでも変な勝ち方をしているようですし、きっと人間としてもヘンテコリンですよ」

──蹴り上げ、そしてガードポジションからの鉄槌で勝ったことがあります。

「それはヘンテコリンですね。今回の負け方も、実はヘンテコリンでしたし。アハハハハ。ヘンテコリンっていう言い方をしましたが、プライスはきっと発想が自由なのでしょうね。ルケのようなしっかりとやっている選手からすると、プライスのようなヘンテコな選手は嫌な相手になることが多々あります。プライスはローとかミドル、ハイなんて下手くそで見られたモノではないんです。でもヘンテコリンな上段前蹴り、内回し蹴りをヘンテコリンな間合とタイミングで蹴ってくる。これはルケには相性が悪いです」

──面白いものですね。

「本当にそうです。腹がすわっていて、間も良いルケがあの前蹴りを受けてしまう」

──ダメージがあるルケに対し、プライスはテイクダウンに行きました。

「それは正解です。あのあと打撃で行ったら、ヘンテコな蹴りしかないからルケのパンチでやられていたでしょう。プライスのヘンテコ蹴りは下がることによって、カウンターで当たる蹴りなんです。対してルケはその場でカウンターを当てることができる。一番大切なのは、その場です。次が後ろを使うこと。相性的に前蹴りは貰いました。でも、あの後にプライスが前に出るとルケの間に戻ります」

──実際ルケはこの前の試合で回るスティーブン・トンプソンを追いかけて、蹴りやジャブを打たれ続けて負けてしまっていました。

「下がる相手には相性は悪いですね」

──ただ2Rに入ってもテイクダウンを織り交ぜ、プライスがボディアッパーや左ジャブを当てており、ルケは打ち勝てていなかったです。

「もちろんダメージは残っていただろうし、もらったことで考えるようになったと思います。それで自分の攻撃ができないようになったことは考えられますね」

<この項、続く>

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Report UFC UFC249 ニコ・プライス ブログ ヴィセンチ・ルケ

【UFC249】That is ビセンチ・ルケ。K-1 MMA=攻勢&ノンストップのプライスを左フックで破る

<ウェルター級/5分3R>
ヴィセンチ・ルケ(ブラジル)
Def.3R3分37秒by TKO
ニコ・プライス(米国)

プライスの左ジャブに右を合わせていくルケ。続いて右に左から右を放ち、右ローをルケが蹴る。プライスも左ジャブを当てると、距離を詰めて首相撲からヒザ蹴りを突き上げる。ルケはローもワンツーを合わされ、右を受けて左を返す。右を入れ、左を打ち抜くルケが、得意の距離よりやや遠めで戦いローを多用する。その遠目の距離から右を届かせるルケは、右から左につなげる。プライスもパンチを返し、左ハイを狙う──キックボクシングファイトに。

プライスが左ボディフック、ルケは右フック、プライスがカウンターを当てる。拳の届く距離での戦いで、プライスが右前蹴りをヒットさせルケが下がる。打撃で攻勢のプライスがテイクダウンから、スクランブルでダースを狙う。かつて自分が敗れた技を仕掛け、スタンドに戻ったプライスだが、左フックを被弾。ジャブの差し合いからルケが左フック、プライスが再び前蹴りを繰り出す。直後に右を被弾したプライスの動きが止まったところで初回が終わった。

2R、ローを蹴り合い、右を伸ばすプライス。ルケが左に続き右をヒットさせる。続く攻防でルケの攻撃が急所に入り試合が中断される。再開後、右から左を打ち抜いたルケがローを蹴り下ろす。プライスもジャブを伸ばし、内回し蹴りも見せる。構わずパンチの数を増やすルケが左を入れ、プライスは距離を詰めてエルボー、ヒザ、アッパーと攻め立てる。

ここでルケのパンチを受けたプライスの動きが止まる。自らの蹴りでバランスを崩したプライスは立ち上がるが、相当息が切れている。ここにパンチ3発をまとめたルケに対し、プライスが組んでケージに押し込む。小外を耐えて離れたルケが左を打ち込む。プライスも左ジャブを当て、前へ。さらに右フックを振るっていく。ルケは重い右ローを蹴り、左ジャブ。プライスは左ボディ、そしてルケが左から右を当てるが、やや動きが落ちたか。それでも最後にルケがパンチを当て、試合は最終回に。

3R、プライスが左右のローから左ジャブ、手数が優るプライスにルケが左フックを打ち込む。プライスは止まらずローから右ハイ。さらにジャブを伸ばす。ルケも左を当てるが、ボディから顔面にパンチを受ける。ルケは一旦スイッチもオーソに戻る。組みついたプライス、ギロチンから離れたルケは接近戦で左を当て、右から左につなげる。プライスは左アッパーを打ち込み、ガチガチの打ち合い──消耗戦は残り2分に。

両者疲れが目立つなか、ルケの左フックでプライスがダウンする。得意のガードから打撃を放つプライスだが、これを嫌ったルケが立ち上がる。ここでプライスにドクターチェックが入る。と、右目が完全にふさがったプライスを見てドクターが試合続行不能を宣言した。

劣性のなかで、右に頭を振ってからの左フックで勝利を手にしたルケは「彼が簡単な相手でないことは分かっていた。少しヘッドムーブを増やして、新しいスタイルで戦った。でも、僕はエンターテイナーなんだ。左フックの練習をたくさんしてきた。キャンプでヘッドムーブの練習をしたけど、メンタルは変わらないまま戦った」と話した。


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Interview UFC UFC249 ニコ・プライス ブログ ヴィセンチ・ルケ

【UFC249】ニコ・プライス戦へ、ヴィセンチ・ルケ─02─「僕には柔術とルタリーブリもある」

Luque【写真】プライスは変則的ながら、前に出てくるファイター。ここは持ち味発揮の試合となるか。その距離とガードに注目してほしい(C)Zuffa/UFC

9日(土・現地時間)、フロリダ州ジャクソンビルのヴィスター・ベテランズ・メモリアル・アリーナで行われるUFC249で、ニコ・プライスと対戦するヴィセンチ・ルケ・インタビュー後編。

MMAファイターで数少ない至近距離、ガードを固めたタッチでないキックボクシングMMAを実践するルケは、フロント系のチョークも得意としている。

母国にある2つの土着コンバットスポーツを融合させたヴィセンチ・ルケの特徴だ。こんな時期の試合だからこそ、今戦えることを活かしたいというルケをもっと知って欲しい。

<ヴィセンチ・ルケ インタビューPart.01はコチラから>


──重ねてMMAではあの距離で戦い続ける選手はほとんどいません。

「ダメージのことを心配しているんだろうけど、それほどでもないよ。対戦相手の方がよりダメージを受けている。僕はベストを尽くしてきた」

──「これはMMAだから」というアドバイスもあったかと思います。

「確かにね。ちょっと危険だろうとは言われてきたよ。だかこそ、僕は接近戦ばかりでなく、ちゃんと距離を取って戦うスタイルもトレーニングしてきた。打っては外す。そこも十分にやっているよ。そうすることによって、自分の持つポテンシャルをより発揮できると信じている。特にね……前の試合が終わってから、真剣に取り組むようになったんだ」

──昨年11月にスティーブン・トンプソン戦では、距離を取るトンプソンに対し、詰めていくところでパンチを被弾することが多く、判定負けという結果になりました。

「トンプソンは距離を取るのが本当に上手くて、僕は詰めることができなかった。そして、彼は遠い位置から僕にパンチを当ててきた。距離を取ってくる相手に対し、どう戦うのか。いや、どう接近戦に持ち込むのかが、僕にとって課題になったんだ。だから、どちらの距離でも戦えるように練習を積んできた」

──実際に佐藤選手からは、練習ではできている。『でも試合だと、あの距離で殴り合っているんです』というようなコトを聞きました。

「アハハハ。どうして、そうなっちゃうんだよね。もう少し、頭を使う必要があるね(笑)。本当にトンプソン戦では学ぶべきことが多かった。あの試合から、自分の距離で戦えないなら、我慢する必要があることが理解できた。

自分の戦いができなくなった2R、ただ素早く動いて距離を詰めようとした。そしてトンプソンのカウンターの餌食になってしまった。我慢とフェイントで、相手を前に出せないといけない。成長した姿を試合で見せたいと思う」

──その接近戦ではテイクダウン・ディフェンスが重要です。

「そこはずっと、やってきたよ。ストライカーとして、僕は立って戦いたい。そして相手はテイクダウンを狙ってくることが多い。セハードMMAにはキューバ人のレスリング・コーチがいて、彼との練習でレスリングは以前より強くなったと思う。それに僕には柔術とルタリーブリもある。だから、すぐに姿勢を整えてダースやアナコンダ・チョークの態勢に入れるようにしている。対戦相手は簡単にテイクダウンを仕掛けられないはずだよ」

──アナコンダ・チョーク!! セハードMMAは柔術だけでなく、ルタリーブリも学ぶことができる珍しいジムですね。ヴィセンチがアナコンダで勝った時、これぞルタリーブリの真骨頂だと思いました。

「ルタリーブリは道着がないから、ノーギの蓄積が凄くありMMAに通じる部分が多いんだ。と同時に道着を着て柔術を練習することで、より繊細なテクニックを学ぶことが可能だ。この2つを融合することで、MMAにおける寝技の完成度はより高くなる。それに僕の柔術コーチはルタリーブリを学び、ルタリーブリのコーチは柔術を習っている。だから、セハードMMAでは柔術もルタリーブリも進化し、その両者からより良い寝技を指導してもらえるんだよ」

──まさにMMAですね。柔術✖ルタの抗争が遠い昔のようです。

「そうだよ。今は皆でトレーニングする時代なんだ」

──では、ニコ・プライスの印象を教えてください。2017年10月に戦いダースチョークで一本勝ちしています。

「確かに僕は勝っている。でも、関係ないよ。3年前の僕と今の僕は違う。ニコ・プライスだって、あの時とは違う。初めて戦うつもりだよ。ベストのニコ・プライスになってオクタゴンに上がって欲しい。そして、僕はベストのニコ・プライスに勝つ。とにかくアグレッシブな選手だから、僕も積極的に戦って、カウンターパンチを打ち込んで試合をモノにするよ」

──蹴り上げやボトムからの鉄槌で勝利するという、奇想天外な動きをどのように思っていますか。

「本当に変わっているね。彼がガードを取っても、一瞬たりとも気を抜くことはできない。危険な相手だよ。上を取っても、しっかりとガードを気にしないといけないね。

僕はチャンピオンになるために戦っているし、今はランクも13位だけど今年中にトップ5に入りたい。来年タイトルに挑戦するためにも、このタイミングで試合ができることを活かしたい。

この大会はとても困難な状況で大会は行われる。UFCが安全面に最大の注意を払ってね。ほとんどスポーツ界が動きを止めているなかで、勇気ある判断をしたんだ。だから、僕も試合を視てくれるファンに喜んでもらえるよう戦うよ」

──無観客試合に関しては、何か想うところはありますか。

「皆の声援が力になるから、残念だといえば残念だよ。でも状況に応じるしかないから。ファンがいないなかで試合っていうのは、ちょっとスパ―リングに似た雰囲気になるのかな。とにかく、ベストを尽くすよ」

──ヴィセンチ、今日は本当にありがとうございました。最後に日本のMMAファンに一言お願いします

「今日はインタビューをしてくれて、ありがとう。日本は格闘技の母国だし、ヴィヴィから聞いている素晴らしいファンにいつの日か会いたい。できれば、試合を戦うために日本を訪れたいと思っている。そして日本のことをもっと知りたい。応援ありがとう!」

【Fight Prediction】
Luque Prediction※ヴィセンチ・ルケ✖ニコ・プライスの──4月18日に行われる予定だった時点でも、試合予想はコチラから

■UFC249対戦カード

<UFC暫定世界王座決定戦/5分5R>
トニー・ファーガソン(米国)
ジャスティン・ゲイジー(米国)

<UFC世界バンタム級選手権試合/5分5R>
[王者]ヘンリー・セフード(米国)
[挑戦者]ドミニク・クルーズ(米国)

<ヘビー級/5分3R>
フランシス・ガヌー(カメルーン)
ジャイルジーニョ・ホーゼンストライク(スリナム)

<ヘビー級/5分3R>
グレッグ・ハーディー(米国)
ヨーガン・デ・カストロ(米国)

<ウェルター級/5分3R>
ドナルド・セラーニ(米国)
アンソニー・ペティス(米国)

<ヘビー級/5分3R>
アレクセイ・オレイニク(ロシア)
ファブリシオ・ヴェウドゥム(ブラジル)

<女子ストロー級/5分3R>
カーラ・エスパルザ(米国)
ミッシェレ・ウォーターソン(米国)

<ミドル級/5分3R>
ホナウド・ジャカレ(ブラジル)
ユライア・ホール(米国)

<ウェルター級/5分3R>
ヴィセンチ・ルケ(ブラジル)
ニコ・プライス(米国)

<フェザー級/5分3R>
ブライス・ミッチェル(米国)
チャールズ・ロサ(米国)

<ライトヘビー級/5分3R>
サム・アルヴィー(米国)
ライアン・スポーン(米国)

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News UFC UFC249 アレクセイ・オレイニク アンソニー・ペティス カーラ・エスパルザ グレッグ・ハーディー サム・アルヴィー ジャイルジーニョ・ホーゼンストライク ジャスティン・ゲイジー チャールズ・ロサ トニー・ファーガソン ドナルド・セラーニ ドミニク・クルーズ ニコ・プライス ファブリシオ・ヴェウドゥム フランシス・ガヌー ブライス・ミッチェル ブログ ヘンリー・セフード ミッシェレ・ウォーターソン ユライア・ホール ヨーガン・デ・カストロ ライアン・スポーン ヴィセンチ・ルケ

【UFC249】出場選手の新型コロナウィルス及び、抗体検査の実施へ。バーチャル・メディアデーも

UFCPI【写真】写真は上海のUFCPIのオクタゴン (C)Zuffa/ UFC

4日(月・現地時間)、9日(土・同)にフロリダ州ジャクソンビルのヴィスター・ベテランズ・メモリアル・アリーナで決行されるUFC249の主治医がリングサイド主治医協会の代表と電話会談を行い、イベント中のリスク管理を話し合ったとESPNが報じている。

記事によると、UFCのジェフリー・デヴィッドソン医師はドナルド・ムッジ代表と出場選手に新型コロナウィルス感染のテストを行う方向で話し合いが行われたという。今大会においてフロリダ州ボクシング・コミッションのリングサイド・ドクターの主治医を務めることになっているムッジ氏は「今日の世界で、可能な限り安全性を高める。我々はニューノーマルの時代を生きている。最低限の人数で、ソーシャルディスタンスを念頭に置いて無観客試合を行う」と明言。

その結果かUFCではUFC パフォーマンス・インスティチュートから、UFCメディカルチームがUFC249に出場するファイターの検査を行う旨がファイターに伝えられ、抗体検査も含まれているという話を米国の大手MMAメディアであるMMAJANKIEが伝えている。

抗体検査とウィルス検査、これがUFCのニューノーマルとなるのか──。検査はどのタイミングで行われ、その結果はいつ出るのかなどは明らかになっていない。とはいえ、今回のUFCの事例は他のMMAプロモーション及び、コンバットスポーツにとって参考となることは間違いなく、またイベント再開に向けて協力する医師団の存在があることは日本とは、あまりにも状況が違うといえるだろう。

また今大会のメディアデーと試合後の会見は、バーチャルで行われ各国のメディアにはその通達もUFCから届けられている。

(C)Zuffa/UFC

(C)Zuffa/UFC

※UFC249に出場するファブリシオ・ヴェウドゥムのインタビューはコチラから

※同、ヴィセンチ・ルケ初インタビューはコチラから


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UFC249「Ferguson vs Gaethje」(5月9日)対戦カード──活動再開、UFC。ドミニク復活、全試合見逃せない

Cruz【写真】メインに負けず、注目の世界バンタム級選手権試合。名解説者ドミニク・クルーズが、3年5カ月振りにオクタゴンで戦う(C)Zuffa/UFC

2020年5月9日(土・現地時間)
UFC249「Ferguson vs Gaethje」
フロリダ州ジャクソンビル
ヴィアスター・ベテランズ・メモリアル・アリーナ

■視聴方法(予定)
5月10日(日・日本時間)
午前7時~UFC FIGHT PASS Early Prelims
午前9時~UFC FIGHT PASS Prelims
午前11時~WOWOW ライブ

■対戦カード

<UFC暫定世界王座決定戦/5分5R>
トニー・ファーガソン(米国)
ジャスティン・ゲイジー(米国)

<UFC世界バンタム級選手権試合/5分5R>
[王者]ヘンリー・セフード(米国)
[挑戦者]ドミニク・クルーズ(米国)

<ヘビー級/5分3R>
フランシス・ガヌー(カメルーン)
ジャイルジーニョ・ホーゼンストライク(スリナム)

<ヘビー級/5分3R>
グレッグ・ハーディー(米国)
ヨーガン・デ・カストロ(米国)

<ウェルター級/5分3R>
ドナルド・セラーニ(米国)
アンソニー・ペティス(米国)

<ヘビー級/5分3R>
アレクセイ・オレイニク(ロシア)
ファブリシオ・ヴェウドゥム(ブラジル)

<女子ストロー級/5分3R>
カーラ・エスパルザ(米国)
ミッシェレ・ウォーターソン(米国)

<ミドル級/5分3R>
ホナウド・ジャカレ(ブラジル)
ユライア・ホール(米国)

<ウェルター級/5分3R>
ヴィセンチ・ルケ(ブラジル)
ニコ・プライス(米国)

<フェザー級/5分3R>
ブライス・ミッチェル(米国)
チャールズ・ロサ(米国)

<ライトヘビー級/5分3R>
サム・アルヴィー(米国)
ライアン・スポーン(米国)

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Interview UFC UFC249 ニコ・プライス ブログ ヴィセンチ・ルケ

【UFC249】ニコ・プライス戦へ、真っ向勝負漢=ヴィセンチ・ルケ─01─「K-1 MAXに出たかったんだ!!」

Vicente Luque【写真】MMAPLANETでは初登場となるヴィセンチ・ルケ。1991年11月生まれの28歳、今大会でも要注目の1人だ (C)Zuffa/UFC

9日(土・現地時間)、フロリダ州ジャクソンビルのヴィスター・ベテランズ・メモリアル・アリーナで決行されるUFC249。

コロナウィルス感染拡大の2カ月を経て活動再開に踏み切ったUFCだが、今大会に出場する選手の多くが試合決定→延期→決定という不安定な時期を過ごしてきた。

ヴィセンチ・ルケもその一人だ。当初の予定では4月11日のポートランド大会でランディ・ブラウンと戦うはずだったが、同大会は無観客大会としてラスベガスのUFC APEXで行われるという報から一転して時期未定の延期に。

さらにファイトアイランズ、もしくはカリフォルニア州リムーアで開かれるという話があった4月18日大会におけるニコ・プライス戦が発表されるも、実現には至らなかった。そんな1カ月半を経て9日にプライスと戦うルケの心境と、MMAとしては少数派である接近戦ストライカーの変遷を訊いた。


──ヴィセンチ、初めまして。今回はインタビューの機会を与えてもらいありがとうございました。

「こちらこそ、ありがとう。日本に行ってみたいとずっと思ってきたし、インタビューをしてもらって嬉しいよ」

──5月9日、紆余曲折がありフロリダでニコ・プライスと戦うことが決定しました。ジェットコースターのように感情の起伏があった1カ月半を過ごしてきたのではないでしょうか。

「色々大変だったよ。とにかく試合が決まり、変更されるという繰り返しだったから。最初は4月11日にランディ・ブラウンと対戦する予定だったけど、イベントがキャンセルされて、18日にどこかで誰かと戦うことが決まり、フロリダへ向かった。そして、対戦相手がニコ・プレイスに決まった。なぜランディ・ブラウンでなくなったのか、理由も分からないけどけど、プライス戦が唯一の選択肢なら僕は戦うよ。

とにかく試合がしたかった。だから、いつでも戦える準備はしていたんだ。本音を言えば、なかなか辛かったよ。でも、試合のオファーがあれば、対戦相手が誰だろうが試合を受けるという想いだけは持ち続け、コンディションの維持に努めていた。だからオファーがあれば、戦うだけさ。でもサンフォードMMA(Hardknocks365)で4月18日の試合に向けてトレーニングをしていたけど、結局大会は延期になったからブラジルに戻ってきたんだ」

──えっ、ヴィセンチは今ブラジルにいるのですか。

「そうだよ。家族をブラジリアに残していたからね。5月9日にUFC249が開かれることがで決まり、そのままブラジルで調整しているんだ。来週、またフロリダへまた向かうよ」

──それは……想像を絶するハードさですね。現状、ブラジルのコロナ感染は米国に次ぐ状況で、しかも外出自粛がままならない状況だと聞いています。

「コロナウィルスの厳しい状況にだからこそ、家族と長い期間離れていることはできない。一緒に生きているんだから」

──人としての判断ですね。ただし、体調管理は厳しくないですか。

「現状で可能な限りベストコンディションを維持している。このチャレンジに対し、ベストを尽くすだけさ」

──今はセハードMMAで準備をしているのですか。

「ジムでは練習できないから家でデキることをして、外を走りスタミナトレーニングをしている。コーチが指示してくれた運動をして、体調を維持しているよ。気持ちの面も全く問題ない。あとは戦うだけだ」

──今回、まだまだUFCの真っ向勝負男=ヴィセンチ・ルケのことを知らない我々、日本のファンにヴィセンチとはどのようなファイターなのかを尋ねさせてもらって良いでしょうか。

「もちろんだよ。何でも聞いておくれ」

──ヴィセンチは米国生まれのブラジリアンだそうですね。

「僕はチリ人の父と、ブラジル人の母の間で米国で生まれたんだ。6歳の時、母と一緒にブラジリアにやってきて、ずっとこの街で暮らしている。父は今も米国にいるよ」

──だから英語もスペイン語も話せるのですね。

「米国にいる間、友達とは英語で話し、家の中では父とはスペイン語、母とはポルトガル語で話していたから、自然と3ヵ国語が話せるようになったんだ」

──格闘技を始めたきっかけは?

「3歳の時に母に連れられて、空手を始めたのが格闘技との出会いだよ。彼女は空手の黒帯を巻いていたんだ」

──お母さんが、ですか!!

「そうなんだ(笑)。剛柔流の。子供の頃は空手に夢中になっていた。それから15歳でムエタイを始め、試合にもでるようになった。16歳になって柔術の練習をするようになり、17歳からMMAで戦っているよ。最初の試合はブラジリアで戦い、MMAではなくヴァーリトゥードだったね。PRIDEみたいに顔面踏み付けも許されていたから(笑)」

──28歳ながら、ユニファイド以前のルールを経験しているのですね。それは貴重な経験です。ところで、なぜムエタイや柔術を学び、MMAファイターを志したのですか。

「僕はK-1が大好きで、同時にヴァンダレイ・シウバとマウリシオ・ショーグンのPRIDEでの戦いを見て育った。いつか、彼らのように戦いたいとずっと思っていたんだ。そして、友達が先にムエタイの練習を始め、僕もすぐに続いた。半年後に初めて試合に出て、これこそ僕のやりたいことだと分かった。それからの人生は格闘技に邁進しようってね。

15歳でムエタイを始めた時のも、今も所属しているセハードMMAだよ。フロリダでブラックジリアンズを経てハードノックス、サンフォードMMAでも練習しているけど、ずっとセハードMMAの所属だよ」

──日本のファンにとってセハードMMAといえば、ヴィヴィアニ・アロージョです。彼女のパンクラスの活躍で、我々はセハードMMAを知ることになりました。

「ヴィヴィからは日本のことをたくさん聞いたよ。ヴィヴィにとって日本で試合ができることはとても大切なことだった。だから、しっかりと対策を練り練習をした。ブラジルに戻ってきたヴィヴィは、もう日本のことが大好きになっていたよ。パンクラスという団体の待遇だけでなく、日本の人たちのMMAへの想いが素晴らしかったって。

ヴィヴィがいつもそんな風に日本のことを話しているから、僕ももっと日本に興味を持ち、より好きな国になったんだ。とにかくヴィヴィは日本のことを褒めちぎっていたよ」

──その話を聞くと、日本のファンもただただ嬉しい限りだと思います。ところでヴィセンチの試合を見ていると、ファンが喜ぶ殴り合いを毎回のように繰り広げています。MMAというロングレンジの競技で、まるでキックボクシングのように拳の届く距離で、相手の正面に立ち、しかも小さなMMAグローブでブロッキングを駆使する。非常に珍しいスタイルです。

「それこそ、僕がムエタイを始めてから一貫して追求してきた戦い方だよ。小さなグローブをつけて、ブロッキングを使ってきた。前腕やヒジで上手く顔を守れるようにね。しっかりとディフェンスし、素早く相手を殴ることができる距離で戦うのが好きなんだ。相手のパンチをブロックして、自分が殴り返す。そういう風に戦うために膨大な練習をしてきたんだよ」

──かなりリスキーではないですか。MMAグローブでは。

「その通り。確かにリスキーだよ。でも僕は子供の頃からK-1を視るのが大好きで、K-1ファイターになりたいって思っていたんだよ」

──そうなのですかっ!!

「でも、ヘビー級にはなれないって気付いた。だから、K-1ではなくK-1 MAXで戦いたいと思うようになった。結果、MMAファイターになったけど、ムエタイやキックボクシングをしっかりと身につけて、ケージのなかでもあの頃に夢見た戦いを実践しているんだ」

<この項、続く>

■UFC249対戦カード

<UFC暫定世界王座決定戦/5分5R>
トニー・ファーガソン(米国)
ジャスティン・ゲイジー(米国)

<UFC世界バンタム級選手権試合/5分5R>
[王者]ヘンリー・セフード(米国)
[挑戦者]ドミニク・クルーズ(米国)

<ヘビー級/5分3R>
フランシス・ガヌー(カメルーン)
ジャイルジーニョ・ホーゼンストライク(スリナム)

<ウェルター級/5分3R>
ドナルド・セラーニ(米国)
アンソニー・ペティス(米国)

<ヘビー級/5分3R>
グレッグ・ハーディー(米国)
ヨーガン・デ・カストロ(米国)

<ヘビー級/5分3R>
アレクセイ・オレイニク(ロシア)
ファブリシオ・ヴェウドゥム(ブラジル)

<ライトヘビー級/5分3R>
サム・アルヴィー(米国)
ライアン・スポーン(米国)

<女子ストロー級/5分3R>
カーラ・エスパルザ(米国)
ミッシェレ・ウォーターソン(米国)

<ミドル級/5分3R>
ホナウド・ジャカレ(ブラジル)
ユライア・ホール(米国)

<ウェルター級/5分3R>
ヴィセンチ・ルケ(ブラジル)
ニコ・プライス(米国)

<フェザー級/5分3R>
ブライス・ミッチェル(米国)
チャールズ・ロサ(米国)

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Preview UFC UFC249 ニコ・プライス ブログ ヴィセンチ・ルケ

【UFC249】必見!! ヴィセンチ・ルケのK-1 MMA✖奇想天外MMA=ニコ・プライス=フィニッシュ絶対対決

Luque【写真】相手の拳が届く距離で戦うルケ (C) Zuffa/UFC

18日(土・現地時間)に開催されるUFC249で、ボーナス獲得必至のウェルター級マッチ=ヴィセンチ・ルケ✖ニコ・プライス戦が組まれている。

ルケ、プライス共に4月11日に予定されていたポートランド大会で、前者がランディ・ブラウン、後者はムスリム・サリコフ戦が決まっていたが、新型コロナウィルス感染拡大の影響で大会が延期されるという境遇にあった。


MMAPLANETでの佐藤天インタビューにもあったように、ルケはブラジルから試合も未確定な状況で急遽呼び寄せられ、今回の試合が決定した。これはプライスも同じシチュエーションだったことは想像に難くない。

それでもUFCが今大会で両者の試合をマッチアップした理由も、明白だ。ルケはパフォーマンス・オブ・ザ・ナイト獲得2回、ファイト・オブ・ザ・ナイトを3度手にしている選手で、プライスはパフォーマンス・オブ・ザ・ナイトを4度手にしている。つまりはフィニッシュ必至のガチガチあるいはガチャガチャファイトが期待されているカードだ。

チリ人の父とブラジル人の母を持ち、米国ニュージャージーで生まれたルケは、両親の離婚後ブラジリアで育ち、英語、スペイン語、ポルトガル語を使いこなすバイリンガルで、SNSの動画でも英語やスペイン語でファンにメッセージを送ることも珍しくない。

ブラジリアの名門セハードMMAとフロリダのスタンフォードMMA(ハードノックス)の2カ所で練習しているルケは、MMAにあってもK-1ような距離で殴る蹴るができるファイターだ。ガードは高く顔面を守り、頭を振るよりも小さなMMAグローブでブロックをし、ボディは殴らせる──ヘンリー・フーフトが提唱する、ややリスクは高まるが負けないよりも倒すことに比重を置くダッチ・キックボクシングMMAの実践者だ。

MMAでも中間距離以内の打ち合いが大歓迎される状況になりつつあるなか、真正面&近場に立つ必要がなかったMMAファイターは、接近戦の防御に課題を残していることも少なくない。遠いレンジからの打撃を効かせて、中に入るために一方的に攻勢になるのが、MMAにおける接近戦だからだ。

ただし、ルケの場合は最初から強い圧力をかけて、相手のパンチが届く距離に居続けるという稀なスタイルで、右のパンチがめっぽう強い。もう一つのフーフトの指導ならではと思われる特徴は、ローやハイなど蹴りを使う場合につま先が上を向いていることが多い点が挙げられる。

蹴り足がキャッチされ、テイクダウンという流れがあるMMAでは──つま先を上げる蹴りを使う選手は、キックが未成熟と思われてきた。つま先を上に向けることで角度がつき、キャッチされると際にフックになるという理由もあるが、それ以上にこのフォームで蹴りを使うと重心が高くなり、よりバランスを崩しやすくなるからだ。よって、従来のMMAでは蹴りが使えるファイターほど、彼のような蹴りを見せることはなかった。

フーフトによると、この蹴りは軸足に力を入れて、蹴り足は力を入れないことで反動を利用し威力を得ることができるとのこと。ルケとはスタンフォードMMAのチームメイトで、ONE2階級王者のオンラ・ンサンもこの主の蹴りが使うが、勢いで重心が高くなることをチャラにしているようにも見える。

ンサン以上にルケにとってこの蹴りが有効なのは、近距離でのファイトで北米MMAファイターはまだ蹴りへの対応は進んでおらず、組んで倒すという流れが多くなることだ。これは打撃を効かせて嫌がってテイクダウンを狙ってくる相手にも共通するが、ルケが育ったセハードMMAは柔術だけでなく、ルタリーブリも学べるアカデミーで、彼はルタ・スペシャルといえるアナコンダ・チョークや、アームイン&クローズドガードというクラシカル=長年かけて磨き上げられてきたフロント系チョークの使い手でもある。

ダッチ・キックボクシング&ルタリーブリの融合が、ルケのK-1MMAを可能にした。故にルケは、昨年11月に対戦したスティーブン・トンプソンのロングレンジで手数の多い戦いにはしてやられたという見方も成り立つ。

ただし、ボーナス獲得ばかりか勝っても負けてもフィニッシュ決着のプライスは、トンプソンのようなファイトはまずしてこない。ルケにとっても、リスクが高くなろうが、自分のファイトができる相手といえる。このところ5試合で3勝2敗、決して勝率は高くないプライスだが、勝った3試合は揃ってKO勝ち。

Zuffa/UFC

Zuffa/UFC

その勝ち方も、独創性に溢れている。昨年10月のジェイムス・ヴィック戦では上から殴ってくる相手の顔面をカカトで蹴り抜いたアップキック=蹴り上げでKO勝ち。

2018年7月のランディ・ブラウン戦では、ガードからの腕十字に失敗しながら、足を抱えてブラウンを制して、下からの鉄槌の連打で失神に追い込んでいる。

プライスの奇想天外ファイトは、アラン・ジョバーン戦でも見られた。フィニッシュブローといえる右フックを効かせたプライスは、後方によろめいたジョバーンがマットに手や足の裏以外の部分が着く前に右の顔面を蹴り抜き、KOしている。この一瞬の勝利を見逃さない強さは、プライスが持つ格闘センスの表れといえるだろう。

ただし、隙を見せないファイターの前では──ジェフ・ニールにはガードを取りながら殴られ、アブドゥル・ラザクには打撃戦のなかでバランスを崩して立ち上がったところに一発を被弾して敗れている。相手の隙をつくのに長けている一方で、自らも隙があるプライスは安定度が欠け、勝っても負けても劇的な勝負になるという特徴がズッファの信頼を得る要因になっているに違いない。

そんなリスク承知の近距離戦を戦うルケと、奇想天外なプライスのファイト。地力でいえばルケであることは間違いなく、5度戦えばルケの4勝1敗というぐらいの差はあるはず。ただし、その1勝を導く力に長けているプライスだけに、何が起こるか分からない。どんでん返しも、ルケの圧勝もある試合になるだろう。