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ABEMA Black Combat K-MMA KTT MMA MMAPLANET o Road to UFC UFC UFN on ESPN+76 UFN218 アダム・ヒューギット アンシュル・ジュビリ イ・ジョンヨン イー・チャア キム・ジヨン ジェカ・サラギ ジョン・チャンソン セルゲイ・スピヴァク チェ・スングク チェ・ドゥホ チョン・ダウン デリック・ルイス デヴィン・クラーク パク・ジュンヨン パク・ヒョンソン ブラゴイ・イワノフ マンディ・ブーム 中村倫也 佐藤天 平良達郎 木下憂朔 水垣偉弥 風間敏臣

【UFN218】韓国MMAを知る。UFC4勝1敗1分のLH戦士チョン・ダウン「他国から出稽古? 無理だと思います」

【写真】同じような背格好の練習仲間がいなくてもUFCで結果を残せているチョン・ダウン (C)MMAPLANET

昨年末、大晦日に開催されたBlack Combatを取材するために渡韓し、複数のジムで選手、指導者、プロモーターに会いK-MMA界の今を探ってきた。

そのなかに4日(土・現地時間)のUFN218:UFN on ESPN+76「Lewis vs Spivak」でデヴィン・クラークと戦うチョン・ダウンも含まれていた。UFCライトヘビー級戦線で4勝1敗1分けという戦績は、まさにMMA版漢江の奇跡。チョン・ダウンは自身がUFCで結果を残せているのは、所属するKTTでの練習にあると考えていた。


──かつて日本のHEATでライトヘビー級王者に君臨し、6連勝と強さを見せつけていたチョン・ダウン選手ですが、UFCにステップアップを果たした時、アジア人のライトヘビー級ファイターがオクタゴンでこれだけ活躍できるとは、本当に思っていなかったです。スミマセン。

「いえいえ……そんなことないです。まだまだです」

──日本人選手だとUFCで5連勝は水垣偉弥選手、そして岡見選手が4連勝。ダウン選手は引き分けを挟んで岡見選手と同じ結果をライトヘビー級で残しました。そしてジョン・チャンソン選手の3連勝を既に越えています。UFCと契約をした時に、ここまでやれるという自信はありましたか。

「実は連勝できるとは思っていなかったです。ただ1試合、1試合と勝とうと思ってやってきました。この連勝は運が良かったと思っています」

──謙虚ですね。ただUFCで勝利を重ねることで、自信がついたのではないですか。

「初めてUFCで戦った時は、もの凄く緊張しました。だけど2試合目、3試合目と経験を積んでいくと対戦相手も自分と同じ人間だと思えるようになり、自信はついてきました」

──前回、敗北を経験しましたが、そこから学んだことは何でしょうか。

「負けたことによって、気持ちがスッキリしたというのはあります。負けたことで、学ぶべき点に気付けました」

──今、UFCで勝つには米国のジムに行くという風潮が世界中であります。日本でもウェルター級の佐藤天選手が、スパーリングパートナーを求めてフロリダに拠点を移しています。ライトヘビー級のダウン選手も韓国にいると同じ体格のスパーリングパートナーを見つけることも簡単でないと思いますし、米国で練習をしようという考えは持たないですか。

「それぞれの選手が、何を求めているのかだと思います。自分に関しては、ことが上手く行かなかったときに練習環境のせいにしたくないんです。それでもハ(ドンシン)館長から、米国で練習しないかと言われています。だから米国に行って練習し、そこで学んだモノをKTTに持ち帰ろうと思っています。

今はまだどこで練習するのか決めていないですが、ATTかキルクリフFCに行きたいと考えています。ただし、所属はKTTのままです。米国に行かなくても、KTTにはUFC選手でなくても強い選手がいますから」

──KTTは10年以上前から取材をさせてもらっていて、ハ監督とジョン(チャンヨル)監督の『私は殴ります』という言葉が今も鮮明に耳に残っています。そして、そのスパルタ指導の印象も強いままです。

「この厳しさこそが、自分の精神を強くしてくれました。自分はこのKTTの練習が合っています」

──KTTの練習に他の国から出稽古にくると、ついていけるでしょうか。

「多分、無理だと思います(苦笑)」

──その言葉を聞けば、米国でなくても日本人選手もKTTで練習するのも良いと考えてしまいます。

「選択できる権利を持っているのは、選手です。だから韓国でなく日本人選手が米国に行きたがるのは理解できます。自分自身、KTTの所属選手でここの練習が欠かせないですが、米国や日本に練習に行き、経験値を高めたいと思っています」

──なるほどぉ。では2023年、初戦は2月に決まっていますが、どのような1年にしたいと思っていますか。

「自分も30歳になりました(※韓国の年齢の数え方で、日本では昨年12月18日に29歳になったばかり)。年を重ねるほど、技術の上達にしても強くなることが難しくなっています。なので34歳になるまで、1年に4試合はしたいと思っています。試合に勝る経験はないので、どんどん戦っていきたいです」

──UFCで脚光を浴びるには英会話は欠かせないです。その点、どのように考えていますか。

「努力しています……。(※非常に小声で)英語の勉強をします」

■視聴方法(予定)
2月5日(日・日本時間)
正午~ABEMA格闘Ch(プレリミのみ)
正午~UFC FIGHT PASS

■ UFN218計量結果

<ヘビー級/5分5R>
デリック・ルイス: 265 ポンド(120.2キロ)
セルゲイ・スピヴァク: 255.5ポンド(115.89キロ)

<ライトヘビー級/5分3R>
チョン・ダウン: 205ポンド(92.99キロ)
デヴィン・クラーク: 204.5ポンド(92.76キロ)

<ヘビー級/5分3R>
マルチン・ティブラ: 253.5ポンド(114.98キロ)
ブラゴイ・イワノフ: 256.5ポンド(116.34キロ)

<フェザー級/5分3R>
チェ・ドゥホ: 145.5ポンド(66.0キロ)
カイル・ネルソン: 145.5ポンド(66.0キロ)

<ウェルター級/5分3R>
木下憂朔: 170.5ポンド(77.34キロ)
アダム・ヒューギット: 170.5ポンド(77.34キロ)

<Road to UFCライト級決勝/5分3R>
ジェカ・サラギ: 155ポンド(70.31キロ)
アンシュル・ジュビリ: 155.5ポンド(70.53キロ)

<Road to UFCフェザー級決勝/5分3R>
イー・チャア: 145.5ポンド(66.0キロ)
イ・ジョンヨン: 145ポンド(65.77キロ)

<Road to UFCバンタム級決勝/5分3R>
中村倫也: 136ポンド(61.69キロ)
風間敏臣: 135ポンド(61.24キロ)

<Road to UFCフライ級決勝/5分3R>
パク・ヒョンソン: 124.5ポンド(56.47キロ)
チェ・スングク: 125.5ポンド(56.92キロ)

<女子フライ級/5分3R>
キム・ジヨン: 125.5ポンド(56.92キロ)
マンディ・ブーム: 125.5ポンド(56.92キロ)

<ミドル級/5分3R>
パク・ジュンヨン: 185.5ポンド(84.14キロ)
デニス・チュルリン: 186ポンド(84.37キロ)

<フライ級/5分3R>
平良達郎: 125.5ポンド(56.92キロ)
ヘスウ・サントス・アギラー: 125ポンド(56.7キロ)

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ABEMA KTT MMA MMAPLANET o Road to UFC UFC UFN on ESPN+76 UFN218   アダム・ヒューギット アンシュル・ジュビリ イ・ジョンヨン イー・チャア キム・ジヨン グレゴリー・ホドリゲス ジェカ・サラギ セルゲイ・スピヴァク ダスティン・ジャコビー チェ・スングク チェ・ドゥホ チョン・ダウン デリック・ルイス パク・ジュンヨン パク・ヒョンソン ブラゴイ・イワノフ ライカ 中村倫也 岡見勇信 平良達郎 木下憂朔 風間敏臣

【UFN218】計量終了 Road to UFC決勝大会は日本だけでなく、韓国、そしてアジアの未来が懸かった1日に

【写真】日本勢4人も、しっかりとパス。韓国勢に減量疲れがないとの現地情報も(C)Zuffa/UFC

3日(金・現地時間)、4日(土・同)にネヴァダ州ラスベガスのUFC APEXで開催されるUFN218:UFN on ESPN+76「Lewis vs Spivak」の計量が行われて全選手が滞りなくパスしている。

平良達郎と木下憂朔の揃い踏み、Road to UFCバンタム級決勝で中村倫也と風間敏臣の対戦と日本のMMA界にとって非常に大切なイベントとなる。とはいえ、それは韓国勢も同じだ。もとはソウルで開かれる予定だった今大会にはメインカードに2選手、プレリミに2選手、そしてRoad to UFC決勝戦にはフライ級の同朋対決、フェザー級の超本命イ・ジョンヨンと総勢7名の選手が韓国からは出場している。

従来APEXのファイトナイト大会は米国東部時間帯で午後4時スタート、メイン開始は7時というのが通例だが、今大会はイベントスタートが午後10時、メインスアートは午前1時と──これはもう日曜日昼に東アジアで視聴してもらうためのイベントスケジュールといっても言い過ぎでないだろう。


メインカード出場はチョン・ダウンと、チェ・ドゥホの2人。HEATで6勝0敗の戦績を残し、ライトヘビー級王者からUFC入りしたチョン・ダウンはオクタゴン戦績4勝1敗1分、アジアの重量級ファイターが世界最高峰でこの戦績を残すのはある意味、MMA版漢江の奇跡といえる。

そのチョン・ダウンも昨年7月にダスティン・ジャコビーのライトクロスで初黒星を喫し、再起戦となる。チェ・ドゥホに至っては、コロナ禍前の2019年12月のプサン大会以来、3年2カ月振りの出場で現在3連敗中、実に2016年7月以来6年以上も白星から遠ざかっている。

コリアン・スーパーボーイももう31歳、そのファイトスタイルから欧米勢に跳ね返され負傷も多いチェ・ドゥホが、正念場に挑む。連敗中といえば女子フライ級出場のキム・ジヨンも現在4連敗中だ。負傷、対戦相手の変更、惜敗と勝利が遠ざかっている彼女もチェ・ドゥホと同様に韓国と日本では無敵を誇るストライカーだった。

北米では正面勝負で勝てない状況に対し、彼女は試合前にラスベガスのシンジゲートMMAに長期滞在し解決しようと試みている。力のある女子選手と競り合うトレーニングで、活路を見出そうとするキム・ジヨンも3年4カ月振りの白星を目指す。

ミドル級のパク・ジュンヨンはUFCで5勝2敗、この階級ということを考えると岡見勇信に続き、アジア人として成功を収めているといえるだろう。デビュー戦とグレゴリー・ホドリゲス戦で敗れたとはいえ、アリク・アンダースに競り勝つなど、同門のチョン・ダウン同様に健闘以上の活躍をしている。

パク・ジュンヨン、チョン・ダウンが結果を残す裏には、KTT所属らしく徹底してレスリングを磨かれ、脱落者続出の心身ともに苦痛を伴う体力トレ、それらの厳しい練習から殴る勇気を植え付けらている点が大きい。アジアを打撃で制した選手、あるいはテイクダウンから寝技で勝ち上がった選手は、UFCではプレリミの段階でも自分の戦いを貫くことが難しい。

その点、レスリングと打撃と体力という三要素が揃ったKTTファイターは、総合力でサバイバルを可能にしている。とはいえ、ここからさらに上を目指すのではれば突出した武器も必要になってくる。パク・ジュンヨンがロシア人デニス・チュルリンを相手にそのようなファイトができるか、注目だ。

非アジア人ファイター同士のマッチアップは僅か2試合。結果、試合内容と同様に志の高さが求められるラスベガス発のUFCアジア大会だ。

■視聴方法(予定)
2月5日(日・日本時間)
正午~ABEMA格闘Ch(プレリミのみ)
正午~UFC FIGHT PASS

■UFN218計量結果

<ヘビー級/5分5R>
デリック・ルイス: 265 ポンド(120.2キロ)
セルゲイ・スピヴァク: 255.5ポンド(115.89キロ)

<ライトヘビー級/5分3R>
チョン・ダウン: 205ポンド(92.99キロ)
デヴィン・クラーク: 204.5ポンド(92.76キロ)

<ヘビー級/5分3R>
マルチン・ティブラ: 253.5ポンド(114.98キロ)
ブラゴイ・イワノフ: 256.5ポンド(116.34キロ)

<フェザー級/5分3R>
チェ・ドゥホ: 145.5ポンド(66.0キロ)
カイル・ネルソン: 145.5ポンド(66.0キロ)

<ウェルター級/5分3R>
木下憂朔: 170.5ポンド(77.34キロ)
アダム・ヒューギット: 170.5ポンド(77.34キロ)

<Road to UFCライト級決勝/5分3R>
ジェカ・サラギ: 155ポンド(70.31キロ)
アンシュル・ジュビリ: 155.5ポンド(70.53キロ)

<Road to UFCフェザー級決勝/5分3R>
イー・チャア: 145.5ポンド(66.0キロ)
イ・ジョンヨン: 145ポンド(65.77キロ)

<Road to UFCバンタム級決勝/5分3R>
中村倫也: 136ポンド(61.69キロ)
風間敏臣: 135ポンド(61.24キロ)

<Road to UFCフライ級決勝/5分3R>
パク・ヒョンソン: 124.5ポンド(56.47キロ)
チェ・スングク: 125.5ポンド(56.92キロ)

<女子フライ級/5分3R>
キム・ジヨン: 125.5ポンド(56.92キロ)
マンディ・ブーム: 125.5ポンド(56.92キロ)

<ミドル級/5分3R>
パク・ジュンヨン: 185.5ポンド(84.14キロ)
デニス・チュルリン: 186ポンド(84.37キロ)

<フライ級/5分3R>
平良達郎: 125.5ポンド(56.92キロ)
ヘスウ・サントス・アギラー: 125ポンド(56.7キロ)

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【UFC】佐藤天─02─キルクリフFC所属フロリダ在住。「この場にいるから強くなれるなんて思っていない」

【写真】結果を残さないといけないことは彼自身が一番理解している。それでも、敢えてこちらの要望に応えて話をしてくれている──インタビューなのだ(C)SATO TEN

2023年に向けて『2022年中に話を訊いておきたい』勝者、敗者を6人リストアップしインタビュー──佐藤天編Part.02。

UFCと契約更新も連敗という厳しい時を過ごした、佐藤天の2022年。フロリダ、ディアフィールドのキルクリフFC拠点に置くのは日本にない環境を求めたから。数の論理では絶対に敵わないなかで、佐藤は日本が世界のMMA界で遅れを取っていることを指摘し、日本のMMA界に足らない点を指摘してきた。

もちろん経済、市場、MMA興行の在り方、ジム運営の在り方、コンバットスポーツとの向き合い方、日本と米国は違う。選手個人では変えられない現実を前にして、佐藤天が常に口にするのは、選手自身ができるMMAに取り組み姿勢だ。

<佐藤天インタビューPart.01はコチラから>


──海外を知るべき。練習すべき。ただし、日本でもデキる。その可能性も持ち続けたいです。環境の違いはあっても、要は自分次第で海外が生きる、国内でもデキるということもあるかと思っています。

「自分次第なのは間違いないです。海外のジムに行って、何をするのか。そこも自分次第です。僕自身、結果が出ていないから『何をやっているんだ』という声が挙がるのは当然です。そのなかで僕はこっちでトップ選手たちが勝つためにどれだけやっているのか。その取り組みを見て、自分にもそれだけのことを課してやってきました。ただし、結果を出すのは環境ではない。自分自身、個人に掛かってきます。

海外に行けば良いという風潮自体は間違っています。日本の良さ、こっちの良さを考えた上で、選手や指導者の取り組み方を自分に生かせるようになるには、やはりコミュニケーションが必要です。短期間でそれを求めるのは難しいですし、限界もあります。

融通の利く、日本の方が良い部分も当然あります。それは個人の性格によって違います。と同時に強くなるための材料が、より多く転がっているのはこっちだと思います。ただし、その環境を自分で創っていく。強くなって結果を残すために必要なことは、国外にはたくさんあるとは言っても与えられているだけで、そこが十分にはならないです」

──韓国を取材し、KTTなど平日のお昼のプロ練習に20名以上集まっていました。試合を終えたばかりの選手とファイトウィークの選手が来ていなくて、その数でした。ミドル級のパク・ジョンヨン、ライトヘビー級のチョン・ダウンがUFCでそれぞれ5勝2敗、4勝1敗という戦績を残しており、チームメイトもライト級以下が多い。それでも結果を出している。単独のチームで、25人とかプロ練習ができるチームが隣の国にあったことは、脅威でした。

「う~ん、なんというのか……国を挙げて、いや国という単位にしなくても韓国はMMAやUFCに対する環境が日本とは違うのでしょうね。自分からすると日本の格闘技界からは、日本を強くしようという気概は見られないです。

何か、そのMMAを戦う一番の目的にある部分に対して、何か足を引っ張り合っている。キルクリフFCは30カ国以上の選手が集まってきて、束ねるコーチがいる。勝ち越している状況でも、思ったように結果が残せていないと指導者が皆に発破をかけている。

こないだ木下憂朔選手とヘンリーと食事をした時に、ヘンリーが『世界中に良いコーチはいる。ただし、トップの選手が集まって練習できる環境は世界でも少ししかない』と言っていました。どこにいても選手達で創っていくという気持ちが大切だと思います。そういう風に選手が考えられる環境を提供してもらえていることが、ここにいて一番大きなことだと思います。

日本は遅れている部分があります。でも、それを補うだけのことを選手達ができる環境だって日本にあります。でも、それをしない。(若松)祐弥なんて、凄いなって思うことは自分で何でもトライしています。自分で創っている。そういう選手が増えれば、日本でも強くなれます。

反対に人数だけ増えて、選手が与えられたメニューだけをこなすような状況も存在します。そういう選手は思ったように伸びない。チームが大きくなると、そういう選手も必ずいて。でも祐弥みたいに個人でやるべきことを、しっかりとやってきた選手が個人的に伸びていく可能性は凄くあります。

今の日本の環境だと祐弥のように自分で考え、努力しつつ状況判断をするような選手は日本でも強くなれる。ただし、そういう選手の分母が大きくなるのがこっちだと思います」

──その通りなのでしょうね。

「木下君もそうやって、日本で凄く工夫してきた選手だと思います。10代からコツコツやってきたこともあって。キルクリフFCでも好奇心が強くて、やられても楽しんでいます。英語は本当に話せなくて、でも自分から質問してジェスチャーで何とか理解しようとしています。どうしても分からないと『通訳してください』って尋ねてくる形で。上から見るわけでなく、彼には強くなれる資質があります。まだ22歳で。それって僕がMMAを始める前の年なんです」

──何とッ!!

「あの年齢でこっちに来て練習をしているだけでも、リスペクトしています。正直、やられながら食らいついている状況だけど、それができている。UFCで契約更新までいくと、凄い選手になると思います。凄く可能性を秘めています。そうなるメンタルがあります。基本的に僕は自分のことに集中するタイプですけど、木下君からは凄く良い刺激を貰っていますね。

僕自身はそういう環境にいて……前回の試合前も凄く自信があって、過去最高のキャンプもできたのにあんな結果に終わった。僕自身のため、そしてチームのためにも……自分の失敗も、成功を掴むために全てに意味があると信じてやっています」

──一つ一つの失敗をしっかりと把握して。でも、引きずらずにポジティブ・シンキングで。

「目先のことばかり追っていても、何も得られないです。一か八かじゃないですけど、本当に大きなモノを掴み取ろうとしている人たちが、最後は結果を出す。ブラックジリアンからやってきたヘンリーも、何もないところから有り金を全部はたいてジムを開きました。大きなモノを追う。大きいモノを追うから、大きなモノを手に入れることがデキる。そう思ってやっていきます」

──人と違うことをやっていると、何かと言われることもあるでしょうが、自分の足で歩んでいる。最高な人生だと思います。

「前から言っていますが、好きなことをやっているのになぜ他に自分を合わせないといけないのか。MMAってオリジナリティがぶつかり合う世界で。せっかく、その世界にいるのに皆が同じことをやっていても……。それだと、単に世間から見て特殊でもなく、小さなコミュニティに身を置いているに過ぎないです。

MMAにどういう面白さがあるのか。そこを追わずに、なぜか皆と同じことをやっている。それでMMAをやっていて、面白いのかなって」

──個性的な連中の集まりなのだから、もっと『個』で生きようと。

「ハイ。日本のMMAは今いる場所で、そこから何からを得ようとする気持ちが強く、自分で何かしようとする人が少ないかと思います。だから海外だけに限らず、〇〇に行けば何とかなるとか、強くなるって思いがちなのかなって。こっちにいる選手は、足りない環境のなかで自分で何かを得ようとしている。足らないことがあれば自分でどうにかしようっていう感じで、この場にいるから強くなれるなんて思っていないです。

どこにいようが自分の力で強くなる。それは米国にいても、日本にいても同じで。そこは間違ってはいけないところだと思います。海外に練習に行けば、強くなれるなんてことはなくて。リスクを背負って、何を得に行こうとするのか。そこで得られるモノにしても、本人の技量、期間で変わって来ると思います」

──海外で練習する=強くなる──ではないと。ただし、行かないと分からない。行って合う人間、そうでない人間もいる。

「何かを得て帰国したとします。その得たものを生かせる環境にあるのか。練習仲間、指導者を含め。そこも短期の練習だと考えないといけないところです。だから日本の格闘技界全体の問題になってくるという話になってしまうんですよね。個で頑張っても、個で補えない状況があるので」

──つまりはKTT……韓国にはあるかもしれないことが、日本にはないということですね。

「そうですね。堀口選手は日本に目を向けていない。それは同じ目線で語ることができる選手や指導者がいないからかと。同じ目線を持つ指導者や練習相手がいるATTに、堀口選手も身を置いている。日本がそうなって欲しい気持ちを持っていても現役の間は今、そこを共有できる環境が必要になるので。ヘンリーは『自分たちで創っていくんだ』と言っています。選手は自分で求める。コーチから何を吸収するのかは、選手自身です」

──そしていよいよ迎える2023年、本当の意味で崖っぷちからリスタートと言えます。

「これだけこっちが良いって僕は発言していても……結果が残せていなくて。進退が掛かってくるレベルになっています。僕がMMAを始めた時からの目標が、UFCで結果を出すことでした。その点でいえば、まぁ良い試練を貰っているなと思います(苦笑)。

さっきも言いましたけど、アレが意味のある負けだったと振り返ることができるように全てを結果を残すという部分に繋げていきたいです。間違っていた部分も見つめ直して、日々やっています。ちょうど時間を置くことができる状態だったのでコーチとも話して、少しスタイルも変えています。そういうところを結果で出せるように……口で何を言っても始まらないので(笑)。

必要なのは結果です。新しい年になるので、ホント2022年があったから今の自分がある。アレがあったから、将来に繋がった。『2023年以降に結果を出すことができたのは、2022年があったから』と言えるような未来にしていきたいです」

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BELLATOR Black Combat DEEP K-MMA KTT MMA MMAPLANET o ONE ROAD FC Special TOP FC UFC YouTube   カン・ギョンホ キム・ジヨン ジョン・チャンソン チェ・スンウ ハ・ドンシン パク・ジョンヨン パンクラス ボクシング 修斗

【Special】韓国MMAを知る。KTTハ・ドンシ代表「実力がなくても、人気が出るのはMMAの一部」

【写真】すっかり丸くなったと思いきや、ハ・ドンシン節は健在で嬉しい限りだった (C)MMAPLANET

昨年末、大晦日に開催されたBlack Combatを取材するために渡韓し、Gladiator1月22日大会出場選手の取材と同時に、複数のジムや選手、指導者、プロモーターに合いK-MMA界の今を探ってきた。

韓国MMA界の今、第一弾はコリアントップチームを率いるハ・ドンシン代表の話をお届けしたい。知る人ぞ知るホットテンパー、選手育成はスパルタ主義の権化。ハ・ドンシンも丸くなったと思いきや──その軸にあるMMAへの想いはまるで変わりなかった。


12月29日、午後3時の選手練習に25人近くのファイターが集まる

──UFCにおいて韓国人ファイターは日本人選手より契約選手も多く、活躍度、戦績も上です。

なぜ、韓国人選手たちが日本をリードできるようになったのか。そこをハ代表に伺いたいと思います。

「ジョン・チャンソン、チェ・ドゥホ、カン・ギョンホ、キム・ジヨン、チョ・ダウン、パク・ジョンヨンの6人、チェ・スンウは前の試合が契約最後の試合で更新できるか分からない。きっとリリースでしょう。だから、それほど韓国人選手がUFCで活躍しているとは私は思っていないです。

話せば長くなりますが、結論として歴史もある日本のMMAを韓国が越えたとは思ってないです。日本でUFC人気が上がり、UFCで戦いたいと思う選手が増えれば韓国人ファイターよりも、日本人選手の方が活躍するはずです」

──それはハ代表の見立てなのですね。ところで日本は毎週末のようにMMA大会があり、試合機会も多いです。ただし国内で大会数もさほどないニュージーランドにはUFCで活躍する選手があれだけいる。その点において国内でTOP FCも開催されていたハ代表からすると、今の韓国国内のMMA界の実状はどのように捉えられていますか。

「日本と比較すると大会数は多くはない。それでも増えてきました。新しいプロモーションも出てきています。そして、TOP FCも近いうちに活動を再開する予定です。そうやって韓国のMMAの盛り上げていきたいと思っています」

打ち込みからスパーの合間に首の強化。つまり、スパー待ちの間だけが2時間の練習の休息タイムとなる

──KTTで選手を指導し十分な実績があるハ代表ですが、プロモーター業はコーチ業とは勝手が違うかと思います。

「その通りです。だからこそ歴史が20年以上、30年もある修斗、パンクラス、DEEPという大会が活動を続けている日本が素晴らしいと思っているんです。TOP FCをやって、どれだけ団体運営が難しいが分かりましたから。本当に日本の中小団体を尊敬しています」

──特に強い選手を育てたいハ代表からすると、チケットを売る選手が必要となる興行は本当に難しくなかったですか。

「今は試合を見て、MMAの練習をしようという層も出てきました。だから強い選手も必要だし、フィットネス感覚でMMAをやる人も必要で。そして見るだけの人も必要だと実感しています。そうですね……実力がなくても、人気が出る。それはMMAの一部だと思うようになりました」

この日のスパーはボクシング&テイクダウン。蹴りがないのは、思い切りテイクダウンを狙い、攻防ともに強化させるため

──随分と丸くなりました!! あのROAD FCとの罵り合いが遠く昔に感じます(笑)。

「アハハハハハ。ただし、MMA……格闘技の本質を守らず、MMAをやっている人間には腹が立つばかりです」

──良かった。ハ・ドンシンは健在だと分かりました。ところで日本の選手たちの多くが、UFCを目指し叶わないと、国内に留まります。その一方で韓国選手はロシア、中東などにチャレンジしており、この一点においてもハングリーだと感じます。

「だから強くなれるということもあると思います。ただし、そこも良し悪しです。年を重ねて引退をしないといけない選手、チャンピオンになれない選手もいます。再チャレンジをする選手、一線を引く選手。それは選手個人の判断です」

──ではROAD FCが引っ張り、Double GFCやAngel’s FCがコロナ期を耐えた。そしてBlack Combatが生まれ、TOP FCも活動再開される韓国内のMMA市場をどのようにハ代表は感じていますか。

「個人的な感情は抜きにして、とにかく選手たちに試合機会を数多く与えるためには団体の数と大会の数が多いに越したことがないので、それらの団体の長には感謝の気持ちを抱いています」

──ではUFCで2人の選手が活躍するKTTの代表として、アジアで独自の活躍をするONEはどのように思っていますか。

「もちろんONEも素晴らしいプロモーションだと思っています。だから教え子でONEに出たいという選手がいればプッシュします。ただし、米国に行けばONEがどのように捉えられているのかは、ダイレクトに伝わってきます。UFCやBellatorがONEより人気があるのは絶対です。

ないより大切なのはファイトマネーの額、そしてUFCのファイターは自分がUFCで戦っていることに、プライドを持つことができるはずです。そこにUFCとONEの差があります」

──今日は練習開始前に色々と話していただきありがとうございました。最後にハ代表は、今後韓国のMMAをどのように成長させていきたいと考えていますか。

練習の締めは、心身ともに削りまくる補強運動。慧舟會東京本部練習が思い出される

「UFCは絶対のトップです。

ただし、誰もが契約できるプロモーションではありません。UFCで戦いたいという気持ちがなく、ただ人気者になりたいという選手が最近は増えたように思います。それは選手個人の自由です。

そのなかでウチの選手達は本当にマジメに練習をしています。そんな彼らに関しては、自己発信ではなくても周囲の人がどれだけやっているのかを理解してくれています。そういう選手をKTTでは育て続けたいと思っています。

それと……最後に言わせてください。マジメに練習をしてUFCに出ている選手と、YouTubeで有名になった選手、10年後に記憶に残っているのはどちらの選手だと思いますか。今、人気があっても実力不足では、将来何もできません。対して実力があっても人気が無い選手は、これからもずっとMMA界で生きていくことができます。

MMAファイターなら実力がなくて人気があるより、人気がなくて実力がある方が価値があります。それはだけは絶対です」

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