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【Special】月刊、青木真也のこの一番:3月─その弐─平良達郎✖前田吉朗─02─「完全に通行手形じゃん?」

【写真】平良を例に、日本人選手がUFCで戦うためのキャリアップ方法を模索 (C)MMAPLANET

過去1カ月に行われたMMAの試合から青木真也が気になった試合をピックアップして語る当企画。

引き続き2021年3月の一番、第ニ弾は20日に行われたShooto2021#02から平良達郎✖前田吉朗──日本人選手の育成環境──について語らおう。

<青木真也が語る平良達郎✖前田吉朗Part.01はコチラから>


──修斗、パンクラス、DEEPの段階である程度以上の国際戦ができていた。コロナ後に、そのようなJ-MMAとなれるのか。そうならないのであるなら、端的な表現をするとUFCで勝てる選手をどのように育てるのか。

「もう招聘できなくなっていますからね。だから元UFCとかではなくて韓国、グアム、フィリピンから強くなるための対戦相手を呼ぶことができるのか」

──若い選手が世界と戦える力をつけるために韓国、グアム、フィリピンから将来のUFCファイター、ONEアスリートになるような素材を招聘して、切磋琢磨できる環境を創る。その通りですね。日本で世代越えをしても、それが力の立証にはならないようになっていますし。

「今、後楽園ホールの大会で出てきてくれる上の世代は、言い方は悪いですけどピークを過ぎている。なのでキャリアアップが難しい。

矢地(祐介)選手とか田中(路教)選手って、割と早い段階にPXCに行きましたよね。当時は裏口入学的なメジャーの狙い方でしたが、そういうキャリアアップの仕方というのがあったと思うんです」

──あぁ、私は先見の明があると思いました。海外のフィーダーショー、そして日本で戦えない相手と戦ういう点のおいて。

「ハイ。日本で見られた旧来の手順とは違う。海外の大会でベルトを巻いてUFCを狙っていました。そして田中選手はラッセル・ドーンに勝って、矢地選手はアレックス・ヴォルカノフスキーと戦っている」

──両選手とも後のUFCファイター、ヴォルカノフスキーに至っては元フェザー級世界王者です。

「そういう選手たちとPXCで戦っていた。海外の大会からUFCへというのをやったのが田中選手と矢地選手で。彼らが走りだったと思います。今、海外のフィーダーショーで試合をするというのはコロナで難しいですけど、往来ができるようになれば、そこはしっかりと見ておく必要があるかと思います」

──それが現状の平良選手にも当てはまると、青木選手は考えていますか。

「ハイ。修斗のチャンピオンになった時点で、UFCから声が掛かれば──現状の力云々でなく行くべきです。ただし、そうでないなら、海外で結果を残すことが必要かと思います。海外を経験する、外国人選手と戦っておくという以上に、現状ではUFCは日本国内を評価していないわけじゃないですか」

──ハイ。コロナ禍でも韓国人選手や中国人選手の新しい契約は進んでいますが、日本人選手は村田夏南子選手だけで。村田選手はInvicta FCで結果を残し、コロナ以前からリストに入っていました。

「日本で戦っていても、評価はされない。ここですね、僕が強く思うところは。日本人選手が評価されていないから、日本人選手に勝っても次に繋がらない。僕らの頃のように繋がっていれば、海外に行ったり、外国人選手に勝つことに拘る必要はないわけで」

──車のレースだと、F1を頂点にF2、F3というステップアップカテゴリーが存在し、F3は日本にも選手権があります。

「……」

──ただ日本のF3で結果を残しても、ステップアップ先は欧州のF2ではなく、もう一度欧州でF3のシリーズに参戦することになります。日本のF3王座は欧州のF3へ行くため。つまり、同じ土俵で戦うために日本でF3を戦います。

「あぁ、つまり日本のレースは本場では評価の遡上にならないのですね。う~ん、MMAでいっても評価されない──評価基準になる選手がいないということですしね。そんななかで海外に出て勝負しているのが韓国人だと思います。

UAEウォリアーズやBRAVE CFという今も国際戦が組まれている中東の大会に彼らは出て行っていますからね」

──PFLも韓国人選手が出場します。それは韓国にはRIZINのような規模の大会がないことも関係していると思います。

「そうですね。国内にメジャーがない。ROAD FCの調子が良かった時は、多くの選手がROAD FCを目指していたと思うんです。中東に行かなくて」

──UFCでないゴールがありました。

「今は韓国にはそこがない。だから、彼らは海外に出て行っている」

──平良選手もまずは修斗のベルトと考えているでしょうが、その先の青写真はしっかりと描く必要があるということですね。

「修斗って、特別なベルト、歴史がある。これは特別だという見せ方がありました。でも今ではどこかに行くためのベルトじゃないですか。

『お前が言うなよ』と指摘されることは承知のうえで、だったら最初から通行手形だって言えば良いのにって思います」

──その通りですね。同時に修斗も戦うという姿勢を持っているのは、ストロー級王者の箕輪ひろば選手だけだと思います。他のチャンピオンはONEやRIZINで戦い、ベルトは返上という選択をしていますし。

「なら、完全に通行手形じゃん? もう通行手形だって言えば良いのに。いつまでがプレミアムなベルトだったのかって。だから今の選手は自分の見ている先を考えると、そこまでベルトに拘る必要があるのかと」

現在開催されているBRAVE CFフライ級王座決定トーナメントに参戦中のアリ・バガウディノフ(C)BRAVE CF

──一応ONEは王者になれば、契約という話がありました。そしてUFCは通行手形になっていない。

「だから僕なんかは、ベルトに拘る必要なく田中選手がPXCに行ったような選択を修斗で戦っている選手も選択して良いと思います。今の感じだと」

ACAフライ級王者はHEATに来日経験のあるアザマット・カレフォフ(C)ACA

──例えばBRAVE CFだとフライ級にはアリ・バガウティノフ、ホゼ・トーレス、ダスティン・オーティズというUFCベテラン、そしてムハマド・モカエフのようなダイヤの原石がいます。

王者→UFCもしくはBellatorというレールが最も明白なLFAのフライ級王者はヴィクター・アルタミラノだ(C)LFA

「ハイ、BRAVE CFのフライ級はレベルが高いです。バガフティノフに勝ったのは誰だといえば、堀口選手になるわけで。そういう話なんですよね。

それか評価の遡上に確実になっているロシア、ACAへ行くとか。田中選手みたいにLFAを選ぶとか。勝って、そこからUFCへ行く──そういうことを考える時代だと思います」

──それが日本の現状だと。

「良い、悪いではなくて、結果としてどこもが内向きになっています。内向きになるのは商売のことを考えると、悪くはないです。でも同時にリスクもある。尻つぼみにはなっていくんです。そこはバランスで、内向きになりつつ外もある程度見ておかないと、選手も頑張れなくなるかも──と僕は思います」

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【Special】月刊、青木真也のこの一番:7月─その参─ガムロ×パーク「あれは死者に鞭を打っている」

【写真】勝ったガムロが、負けたパークにマイクで謝らせる。そしてガムロ陣営が拍手し、パークのセコンドは何とも言えぬ表情を浮かべる。世界観が違う……(C)KSW


過去1カ月に行われたMMAの試合から青木真也が気になった試合をピックアップして語る当企画。

背景、技術、格闘技観──青木のMMA論で深く、そして広くMMAを愉しみたい。そんな青木が選んだ7 月の一番、第3弾は11日に開催されたKSW53からマテウス・ガムロ✖ノーマン・パークの一戦を語らおう。


普通にやっても強い

──7月の青木真也が選ぶ、この一番。3試合目は?

「マテウス・ガムロ✖ノーマン・パーク戦です。ただし、パークは体重オーバーでミソをつけちゃいましたね」

──因縁の3連戦ながら2度目の体重オーバーです。

「イっていますよ。そう思いました。計量を何度もミスするって、何かが壊れているってことじゃないかと」

──その分、コンディションも良くなかったです。

「ガムロは1日50分サンドバックを叩いているとか、嘘くさいですよね。でもポーランドはショッピングモールで計量して、人が見に来るくらいだから練習していただろうし」

──英国のパークはそうでなかった可能性は高いです。

「いずれにしても、連敗ですし。ガムロのパンチが普通に強いってことですね」

──と同時にKSWで行われている試合としては、ガムロは以前の方が面白かった。

「ですよね。ATTに行ってから面白くなくなった。アウトに徹して……まぁ、良くあるパターンですよね。打撃もガンガン行って、寝技でクロスヒールを仕掛けていたのが、ATTにいって打撃が強くなり、テイクダウンを切ることができるようになった。そして、普通にやっても強いと。

ノーマン・パークはUFCで中堅の上ぐらい、そこにあの試合ができる。それは強いですよ」

──ノーマン・パークって、個人的にはジョニー・ケースに被ります。

「分かります。そこですよね、UFCでのポジションでは。にししても──ですよ、試合後に『家族に謝れ!』ってヤツ(笑)。面白いですよね」

──性格悪って(笑)。

「本気で嫌いなんでしょうね。アレは文化の違いですかね。家族を侮辱するって、トラッシュトークでも一線を越えるという部分が、国によって違うというか」

──戦い終わってノーサイド……にもならないと。

「いやぁ、でも謝らせる必要は全くないと思いますよ。あれは死者に鞭を打っている。美徳がない。斬ったまでは良いけど、塩を塗っちゃダメでしょって。アレは文化ですね、そうできるというは」

──私がパークのセコンドなら、あそこでまた殴りにいってしまいますね。傷口に塩を塗るような真似をしてきたら。

「勝ったんだから、良いじゃねぇかって。もうそれで良いだろうってことですからね」

──そうなると『青木、あの中指は?』と指摘されそうですが。

「僕はあの時、一切コメントしてないですから。負けた後にトラッシュトークを続けるようなことはしない。だって、試合が終わっているのにトラッシュトークしても仕事にならねぇよって(笑)。そこは、もう執念でやっている北岡さんっぽいなって思いました」

──そのガムロから、青木選手に対戦要求があったみたいですね。

「ハイ、試合後にKSWではあと1試合契約が残っているから、僕と戦いって言ったみたいです」

──凄い展開です。

「ポーランドのメディアから『どう思う?』って意見を求められたので、『ありがとうございます』って答えておきました」

──ONEと契約すればありえますよね。

「でも1試合契約が残っているからってことなので。もう、その先は決めているんでしょうね。だからこそ僕と戦っておきたいという発言でしょうし」

──あぁ、そういうMMA観も持っているのですね、ガムロは。面白です。

「でもガムロ云々ではなくて、1度ポーランドは行っておきたいですね。ロシアとポーランドは。高島さんは今、Brave CFとかUAEウォリアーズとか中東も来ているようだけど、彼らってUFCに行ってしまうじゃないですか。UFCのフィーダーショー的だから、あんまり面白みがなくて。僕は独自な世界……ACAも選手はUFCに行っているけど、KSWと合わせてその世界観に触れてみたいですね。KSWなんて完全に閉ざされた世界だし、ACAも絶対に理解不能なことやっていそうで」

──それは絶対ですよね(笑)。と同時に中東の王族大会って、世が世だけに上を目指す選手が集まってくる可能性があると思うんです。

「あぁロシア系もそうだし、アフリカもいますよね。アラブからどんどん発掘が進むかもしれないですね。対してKSWはLFAとかTitan FCと違って──選手がUFCに行かないから、実力が測れない。その楽しさがあります。ユーロ圏ではない、外籠りの聖地も周囲にある。マーチン・ヘルドを生んだ国ですからね。整備されたリトアニアみたいで、ある意味……KSWは昔の日本のような自分たちの国で自己完結できる世界観があるというのは興味深いです」