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Interview News ONE Road to ONE02 ブログ 後藤丈治 祖根寿麻

【Road to ONE02】欠場→一転、後藤丈治戦確定の祖根寿麻「2日遅れのエイプリルフールだと」

Sone Kazoomer【写真】本当はキィキィ言っているだけで何を言っているのか分からないのですが、同じ愛知県のジャバーニ久米鷹介選手が訳してくれました(C) MMAPLANET

3日(金)午後、サステインより17日(金)に渋谷区の渋谷TSUTAYA O-EASTで、無観客大会として行われるRoad to ONE02で後藤丈治と対戦予定だった祖根寿麻の欠場が一度は発表されたが、夜には再びリリースでこの試合が組まれることが改めて明らかになっている。

欠場の報を受け、「なんで俺が欠場になっているの?」とツイッターで反応した祖根。新型コロナウィルス禍以前から、基本リモートワークの共催大会だけにコミュニケーション不足がその背景にあった模様だ。


改めて後藤と戦うことが再確認された祖根は以下のようなコメントをMMAPLANETの読者向けに話してくれた。

祖根寿麻
「まず昨日の欠場発表後にゴタゴタしてしまい、この大会の開催に向けて努力を続けてくださっている関係者の方々に不快な想いにさせてしまったこと、お詫び申し上げます。

この件も糧にして、当日は後藤選手としっかりと試合をします。僕を踏み台にしたい感がすっごく伝わってくる試合ですが、逆に叩き潰させてもらいます。このような世の中で僕も泥水をすすって生きているので、負けるわけにはいかないです。

試合欠場の発表も2日遅れのエイプイルフールだと思い、気持ち入れ替えて試合まで気を抜かず、免疫力あげていきます。応援よろしくお願いします」

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Interview JJ Globo ONE Road to ONE02 Special ブログ 世羅智茂 青木真也

【Special】月刊、青木真也のこの一番:番外編─世羅智茂戦@Road to ONE 02「いつもと変わりなく」

Shinya Aoki【写真】ロータスはMMAグラップリング、IGLOOでピュアグラップリングを構築する青木 (C) MMAPLANET

過去1カ月に行われたMMAの試合から青木真也が気になった試合をピックアップして語る当企画。

背景、技術、格闘技観──青木のMMA論で深く、そして広くMMAを愉しみたい。世界的にMMAがストップした3月、試合数も激減したなか過去の試合をチェックするなど、変わらぬ情熱を見せる青木は、17日に東京都渋谷区の渋谷TSUTAYA O-EASTで開催されるRoad to ONE02で、世羅智茂とグラップリングマッチを戦うことが決まっている。

今、このタイミングで組み技を戦う青木に、自身の次戦について引き続き話を訊いた。


──世の中が揺れるなか、青木選手自身は世羅選手とのグラップリングマッチが決まっています。

「試合に関する向き合い方は、普段と変わりないです。最近、グラップリングが面白くなってきているので、一度やってみるのも良いなって。単純に面白くなってきています。もちろん、MMAの試合が決まっていればそっちを優先しますけど、楽しくなってきたグラップリングを試合で試すことができる。そこは単純に楽しみです」

──これまで青木選手がONEで行ってきたグラップリングは、どちらかというとケージグラップリング、MMAグラップリング的な要素が強かったと思います。今回の相手である世羅選手は純粋な柔術家、楽しくなってきたグラップリングを試すには壁にはこだわらない?

「ケージグラップリングではありますけど、相手によりますからね。マラット・ガフロフとやった時は相手がそれを望んできて。ゲイリー・トノンにはケージ中央でやられちゃいましたし。相手次第だから純粋グラップリングになる確率は高いと思います。それが楽しくなっちゃっています」

──世羅選手が座ってきても、対応できますか。

「できると思います。実際、日本にはグラップリングだけを戦っている人はいないし、そのなかで僕も純粋グラップリングの練習を週に一度やっているので。そういう意味でも良い対戦相手だと思います」

──正直なところ世羅選手とのマッチアップは意外でした。

「まぁ、色々対戦相手の名前は挙がりましたけど、現状でできる相手だと国内に限られてきて。そうなると、僕の方から特定の名前を挙げて組んでみたい相手はいないです。

そんななか関根(シュレック秀樹)さんの名前が挙がったことがありましたが、体重差もあって文脈が違い過ぎるだろうって(笑)。逃げたと言われると、まぁ癪に触るけど……。だって、僕のキャリアのアップデートにならないですからね。今、関根さんとグラップリングで試合をしても」

──エンターテイメント要素が強くなりますね。見た目の印象で。

「まぁ、しっくりとは来ないです。そういう試合があっても良いけど、僕が今グラップリングを真面目に取り組んでいるなかで、技術的にもアップデートしているので──ここはヘビー級の関根さんじゃないだろうって。自分の取り組みを良い形で試合に出したいから。

そうなると国内のグラップリングで一番強くて、名前があるのは岩本選手だと思っています。でも岩本選手とは週に3回、組み合う仲になっているので試合はできないですし」

──そして良い対戦相手、世羅選手との試合になったと。どのような印象を持っていますか。

「頑張る選手です。今成戦ではバックを取っているし、全く舐めたりしていないです。シリアスな勝負になると思っています。だから、世羅選手に頑張り勝ちたいです」

──世羅選手と今成選手の試合は、互いに警戒心が強い試合でした。

「僕はああはならないと思います。攻めたいので。まあ、そこは僕の宗教観で。攻めてこそ、ナンボという性分があるので攻めたいです」

──格闘技として楽しくなるには、世羅選手が青木選手の攻めをどれだけ遮断できるのか。そこが見所だと思っています。

Aoki & Iwamoto「僕としては、逆にそこを崩さないといけない。岩本選手や山中(健也)選手とIGLOOで練習できていることは財産になっているので、そこが上手く……技術的に出るかと思います。グラップラーの岩本選手、柔術家の山中選手、そしてMMAファイターの僕。

3つの宗教が混在していて、柔術、グラップリング、MMAとかなく、グラップリングマッチを戦います。本来は僕が技術をたくさん仕入れて引っ張らないといけないのですが、最近は教えてもらうことが多い。それが出る試合になるような気がします。練習でやっていることが出る。そういう試合になるでしょうね」

──自粛、延期、中止が合言葉となりつつある格闘技界。この現状で流動的(このインタビューをした時点で17日の無観客は発表されていなかった)ながら、試合があることについては。

「やるヤツはやる。どうなるか分からない部分はあるけど、そういう状況は関係なく、試合に向けてはいつもと変わりなくやります」

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Interview Special トム・ヘルピン ブログ 青木真也

【Special】月刊、青木真也のこの一番:3月─その参─コンバット柔術ワールド「足関節が極まらなくなって」

Combat JJ【写真】エディ・ブラボーが主催するコンバット柔術は、突っ込みどころ満載でありながら魅力に満ちている。写真は昨年5月のバンタム級Tのモノ(C)DAVE MANDEL

過去1カ月に行われたMMAの試合から青木真也が気になった試合をピックアップして語る当企画。

背景、技術、格闘技観──青木のMMA論で深く、そして広くMMAを愉しみたい。そんな青木が選んだ3月の一番、第3弾は8日に開催されたCJJW2020、コンバット柔術ワールド2020を語らおう。


──3月の青木真也が選ぶ、この一番。3試合目はどの試合になるのでしょうか。

「これは試合ではなく、コンバット柔術世界大会全体にしたいと思います」

──おおコンバット柔術ですか。グラウンドで掌底ありのノーポイント&サブオンリー、加えてタイムアップになるとシートベルト・ポジションとスパイダーウェブからのオーバータイム制が用いられるグラップリング大会です。

「技術の流れを語るうえで、今回のコンバット柔術は重要だと思います」

──どういうことでしょうか。

「足関節がやっぱり減ってくるんです」

──最終的に?

「ハイ、最終的には(笑)。僕も岩本(健汰)選手とスパーリングをさせてもらっていて、フィニッシュとしてお互いに減ってくるんです。コンバット柔術にしても、他のグラップリングにしても足関節でフィニッシュは減っていると思います」

──ただ優勝したトム・ヘルピンは初戦、準決勝の今成正和選手との試合、そして決勝と内ヒールで一本勝ちしています。

昨年のADCC66キロ級に出場していたヘルピン。パブロ・モントバーニに0-13で敗れている(C)SATOSHI NARITA

昨年のADCC66キロ級に出場していたヘルピン。パブロ・モントバーニに0-13で敗れている(C)SATOSHI NARITA

「あの選手のことは知らなかったですねぇ、全く。

岩本選手はADCC世界大会に出ていたり、その前の欧州予選で勝っている同階級の選手だからしっていたみたいですけど。

アイルランドですよ。あんな奴、いるんだっ──みたいな。しっかりと柔術が強くて、足関節とバック。柔術がちゃんとできるところが、ヘルピンが足関節で勝てた理由だと思います。足関節とバックという組み合わせが多くなって、そういう強いヤツがいるんだなって」

──まさにヘルピンは2回戦で所英男選手をRNCで破っています。それにしても本家・今成ロールにカウンターのヒールを合わせたのは驚きでした。

「切ってバックにいくのが主流で、彼も出来るはずだけと取りに行った。相当、自信あるんだと思います。多分、今成型の瞬発力的にパンと取るヒールフックは、彼らからすると一昔前の技で怖くないと思います。今成さんも今の足関節を凄く研究してレベルアップしたけど、僕と同じでいつの間にか後追いになっているんです」

──あぁあ……。ノーギに関しては、日本では90年代終盤ADCCがあり、こぞってMMAファイターが出場していました。そこから柔術家の時代になりましたが、日本はグラップリングが一度、途絶えた感があります。対して、米国は今の隆盛を迎える前に15年以上に渡り、ずっとノーギ文化が育まれてきた。

「確かに、そうですね。米国にはヒールフックは普通にある。日本にはグラップリングというジャンルがなくなり、ヒールフックも途絶えた」

──ヒールに関しては、佐藤ルミナ選手がMMAで仕掛けて殴られる。だから、MMAで選手が足関節を使わなくなった。そうすると練習でも試さないという流れではないかと。ルミナ選手が足関節の象徴だったので。もともと競技柔術にはヒールはないですし、ヒールを伝えるのはMMAの人、それが日本だったと。

「あぁ、その発想はチョットなかったです。要は日本でヒールフックが使われなくなったのは、ルミナ✖ハンセン戦からだと。その史観、面白いっ!! それは衝撃的、面白いですよ!! ルミナさんは特異なタイプだから。ルミナさんはMMAを戦っている間、柔術が入らなかったです。引退されて、柔術を取り入れられているようだけど。

今成さんは柔術が入った。僕もセコンドに就いていた時に『引き込んでヒールフックして上を取りましょう』とか作戦としてやっていたんです。ルミナさんも体を捻って逃げる相手の背中に飛び乗るとか、あの運動神経があるとできていたと思います。でも周囲にも柔術の発想がなかったかもしれないですよね。

そして植松さん、今成さん、戸井田さん、ルミナさん以降は足関節は職人の技になりましたね」

──DREAMと戦極で、青木&北岡コンビが現代足関節時代になる前に、一度脚光を浴びさせました。青木選手がエディ・アルバレス、北岡選手が五味選手に勝って。

「でも、僕は足関節のフィニッシュは2試合しかないんです。エディと川尻さんとの試合しか。北岡さんの方が、足関節で勝っている試合は多いです」

──と同時に青木選手が足関節を逃げられて殴られたという記憶はないです。

「僕は怖いから、それだけ使っていないので。上に居続けないといけないという発想に代わりましたからね。足関節は出ちゃった時は仕方ないけど、自分の作戦として採り入れないようにしていました」

──そんななか掌底有りのコンバット柔術における足関節とはどういう位置づけでしょうか。

「う~ん、コンバット柔術はジャンルとしてメインストリームには来ないと思います。アレがUFCみたいになることはほぼない。ルールの穴が多すぎて、メジャーになるには禁止される部分が増えたり、戦いもグラップリングでなく掌底の殴り合いみたいになっていくでしょうし。

でも現時点のコンバット柔術は逆張りする上で面白い。岩本選手とか出れば良いのに……アレはグラップリングなので。日本でもMMAファイターの人材育成ルールとか、逆に柔術家がMMAをやる前に経験しておく要素──そういうルールかと思います」

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Bu et Sports de combat Interview ジョセフ・ベナビデス デイヴィソン・フィゲイレド ブログ 岩﨑達也

【Bu et Sports de combat】「最後は先の先、それ以上に…」武術で斬るMMA=フィゲイレド✖ベナビデス

Figueiredo【写真】フィニッシュの右は先の先。そしてベナビデスは全く観えていなかった(C)Zuffa/UFC

MMAと武術は同列ではない。ただし、武術の4大要素である『観えている』状態、『先を取れている』状態、『間を制している』状態、『入れた状態』はMMAで往々にして見られる。武術の原理原則、再現性がそれを可能にするが、武術の修練を積む選手が試合に出て武術を意識して勝てるものではないというのが、武術空手・剛毅會の岩﨑達也宗師の考えだ。距離とタイミングを一対とする武術。対してMMAは距離とタイミングを別モノとして捉えるスポーツだ。ここでは質量といった武術の観点でMMAマッチを岩﨑師範とともに見てみたい。

武術的観点に立って見たデイヴィソン✖フィゲイレド✖ジョセフ・ベナビデスとは?!


──UFC世界フライ級王座決定戦、ジョゼフ・ベナビデス✖デイヴィソン・フィゲイレドの一戦ですが、フィゲイレドが体重オーバーでベナビデスが勝利した時のみ新王者が誕生するという変則タイトル戦として行われました。

「フィゲイレドは試合開始直後は重心を低くして、足を開いた蹴りを使う構えでしたね。対するベナビデスのスタンスはパンチだけで蹴りは使えない。う~ん、あの構えと間は……ベナビデスは体調が悪かったのでしょうか?」

──どういうことでしょうか。

「以前の彼はもっとスイッチを使い、蹴りも見せていました。下と上、上と下という動きができていたのに、この試合ではまるで見られなかったです。あの間だとパンチをかわして、パンチを入れる。それだけで前後、上下の連係ができないです。ただ左の威力にフィゲイレドが圧されていたので、テイクダウンを取れたんです。この試合のベナビデスができたことは、パンチからテイクダウンだけ。そういう構えと間でしたね」

──そのテイクダウン後も、フィゲイレドが腕十字に捕えます。ここで抜群の防御&スクランブル能力を発揮してベナビデスが逃げました。

Figueiredo Armbar「スタンドに戻ってからのベナビデスは、打ちに行っているので非常に危なかったです。カウンターを合わせられるような状態で戦い続けていました。打撃では常に間がフィゲイレドになっていて、彼はベナビデスが観えている状態でした。対してベナビデスは自分で間を小さくしてしまっていた。

ベナビデスは左のパンチが強いのでしょうが、とにかく打ちに行っていて崩れてしまっていましたね。そして、カウンターを合わされると危ない間で戦い続けた。要は最初こそ左を見せて質量が高かったのが、テイクダウンまで持ち込んでも腕十字で一本を取られそうになったことで、スタンドに戻ってからはテイクダウンを仕掛けて寝技に行かなくなった。

つまり寝技が怖くなった状態での打撃なんです。と同時にフィゲイレドも試合開始直後とは違い、重心が変わりパンチしか打てない構えになっていました。ここではベナビデスもフィゲイレドも質量が下がった打撃をしています」

──フィゲイレドも質量が落ちてしまっていたのですか。

「落ちていましたね。開始直後に蹴りが出る構えから、蹴りのない構えになっていたので。にもまして、ナビデスは状態が良くなかったです。ヘンリー・セフードに勝った時と比較すると、同じ選手には思えなかったですね。

前後の動き、前に出るときの踏みこみは別人です。あの頃は、パンチからテイクダウンにつなげて、そこから左ハイまで見せることができていたのに、この試合では蹴りが出ない構えでした。もっとワイドスタンスで、半四股ぐらいで動いていましたよ。それで出入りがあった」

──2Rに入り、仕切り直しは?

「1Rの終盤は共に質量が落ちていたのが、2Rが始まってフィゲイレドが上がりましたね。後ろ蹴りを見せていましたが、あの蹴りは相当にためがないと出せる技ではないです。ただフィゲイレドはバランスと重心が蹴りは蹴り、パンチはパンチと別々なんです。だから蹴りが出る時は、パンチに威力はない。パンチを出せる時は、蹴りが出ない。そこは分かりやすかったです。

とはいっても、そこまで同じ構えでちゃんとしたパンチも蹴りも出せるのは、UFCといえどもTJ・ディラショーぐらいかと思います。そこまでしっかりと上も下も使えるのは。フィゲイレドは蹴りが良い選手なので、もっと蹴りをガンガン効かせてからパンチにいけばもっと良かったと思います。それが中途半端にベナビデスのパンチに付き合ってしまいました。そこには初回にテイクダウンを許したということが影響しているかもしれないですね」

──蹴りを出すと、キャッチされてと。

「あの日のベナビデスだったら、そこまで心配する必要はなかったかと思いますよ。本当にもっとボコボコにできていたかと。決して調子の良くないベナビデスでしたが、ボクシングには慣れています。そうなると試合は成立してしまっていましたよね。フィゲイレドもパンチだけなら、危ない場面もありました」

──そういう状況で頭が当たり、間合を取り直したベナビデスに対しすかさず右ストレートを打ちこんだフィゲイレドがKO勝ちを決めました。

「最後は先の先でした。それ以上に、ベナビデスが観えていなかった。頭が当たってから下がる間、これは打つこともできないし、蹴ることもできないという非常に危ない状況でした。下がって距離を取っているから、気が抜けたのか……完全に無防備になっていました。これは試合数も多く、経験値が高い人が陥りやすい状態ですね。間合を外すことに慣れているから、大丈夫だと気を抜いてしまった。

危機感があれば、もっと瞬時に動きます。同時にフィゲイレドはあの蹴りを出せる下半身があるので、ベナビデスが思っている以上にパンチが伸びてきたんだと思います。逆にベナビデスは外せると思って下がったので、そこは非常に危ないですね。

とにかく、間がずっとフィゲイレドの試合でした。ベナビデスが良かったのは、開始直後の左ストレートだけで。しかし、体重オーバーをしてもそこを気にしない人でなしさ──が必要になるということですね。無責任、誠意がないことが強さに通じる場合もあるのでしょう。

逆にベナビデスはピークの時にデメトリウス・ジョンソンがいて、この試合では旬が過ぎていたのかもしれない。でも、そういうことは往々にしてあると思います」

──試合を通して質量的には?

「最初からフィゲイレドの質量が良かったですが、それを生かすことは試合でできていなかったです。自分の質量を生かし切る動きにはなっていない。ただし、選手は長所を伸ばすのではなく、試合に勝つ練習をするので……それも致し方ないでしょう。そういう稽古をしているわけでないでしょうから」

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Interview Special ケビン・リー シャーウス・オリヴェイラ ブログ 青木真也

【Special】月刊、青木真也のこの一番:3月─その弐─オリヴェイラ✖リー「ドミネイトの価値を崩す価値観」

Oliveira【写真】削るMMAという軸から外れたフィニッシャーだと青木はシャーウス・オリヴェイラを称した (C) Zuffa/UFC

過去1カ月に行われたMMAの試合から青木真也が気になった試合をピックアップして語る当企画。

背景、技術、格闘技観──青木のMMA論で深く、そして広くMMAを愉しみたい。そんな青木が選んだ2020年3月の一番、第2 弾は14日に開催されたUFN170からシャーウス・オリヴェイラ✖ケビン・リーの一戦を語らおう。


──3月の青木真也が選ぶ、この一番。2試合目は?

「シャーウス・オリヴェイラ✖ケビン・リーです」

──UFC初の無観客大会のメイン、世界的に見てMMAワールド活動休止前最後の1試合となります。

「シャーウス・オリヴェイラは……もう何ですかね……僕、昨日1日中ジョルジュ・サンピエールの試合を視ていたんです」

──おぉっ、1日中GSPを!!

(C)DAVE MANDEL

(C)DAVE MANDEL

「で、やっぱり今見ても凄いんですよ。

テイクダウンして、襷でなく基本ボディロックでバックを取って、レスリングが上手で。凄く洗練されていて色褪せない。ハーフでワキ差しパスが綺麗で」

──枕でプレッシャーをかける印象が凄く残っています。

「ハイ、ハーフで僕なんかは腰を畳むんですが、GSPは畳まずグイグイ押してクラシックなパスガードをしています。GSPが2010年ぐらいにMMAに削るという概念を持ち込んだと思います」

──青木選手はそう見ますか。グラインダーはジョン・フィッチだと思っていました。

「あぁ、フィッチもそうですね。フィッチとかGSPを見て、日本人選手も戦略的に削るという戦いを取り入れるようになりました。そのグライディングやドミネイトするという価値観がUFCの戦い方だったと思うんです。僕もその価値観は今も好きですけど、そこを覆す価値観をオリヴェイラは持っています。綺麗な打撃と下からのサブミッションという。

(C)Zuffa/UFC

(C)Zuffa/UFC

彼自身、ドミネイトするスタイルに苦戦して勝ちが続かない時期があったんですけど、打撃の成長があって綺麗なストライキング&サブミッションというスタイルが確立してきたと思います」

──もともと極め力は非常に強かったです。そこで打撃の精度や威力が上がり、極めという部分がさらに際立つようになったかと。

「めっちゃ凄いと思います。UFCで7試合連続フィニッシュって、本当に凄いです。どれだけのフィニッシャーなんだって(笑)」

──ダメージを与えてから、極めるというファイトになってからそこが際立っていますね。

「以前はヒールとか、三角とか瞬間、瞬間で極める感じでしたよね。それだと防がれて殴られていた。しかも、取り合いでジム・ミラーにヒザ十字とか極めらたり。

Oliveira guillotineでも、今はダメージを与えてフィニッシュに誘い込んでいる。この試合でケビン・リーに極めたギロチンもそうですし、2015年にニック・レンツに勝った時からそういう兆しもあったんですけど、最近は際立っていますね。

ブライアン・オルテガもそういうタイプです。打撃で削って、嫌がって組ませたところでギロチンとか三角で仕留める。オルテガもオリヴェイラもギロチンを途中で、作り直すんですよね。一旦、抱えておいてから組み直す」

──確かにアジャストして、極めています。

「アレは器量が相当ある証拠です。無理から絞めても凌がれるなと思ったら、作り直すことができる。アレは相当です。実は僕、試合ではギロチンで勝ったことないんです」

──青木選手はそれこそ凌がれると、下になる仕掛けは試合でないですね。組み伏せてのフィニッシュが特に最近は多いです。

「そうですね、バックチョークとか肩固め。昔はやっていたから腕十字、三角、足関節はあるんです。でもギロチンはない。練習では作って極めなおすことはできるけど、試合でそれができるかといえば、自分に疑問を持っています。

打撃でいえば仕留めに掛っている時でも、相手の動きを見て完全に外して殴ることができる。そういう極めをオリヴェイラは持っているんです。それぐらい綺麗な技量があって、抜け出ていますね。

それでいて足関節もするんですよね。アウトサイドのヒールを取って。カーフスライサーみたいなのも仕掛けるし。サブミッションはほぼ網羅している」

──ライト級王座を考えると、王者カビブ・ヌルマゴドフの対戦相手として、UFCのビッグファイト路線にオリヴェイラが介入することができるのか。

「グッドファイターで僕は大好きだけど、UFCは組まないような気がしますね。でもUFCのブラジル大会ってMMAが好きな人には面白い大会になっていましたよね」

──TUF BRの頃は北米MMAにかなり近づいていたのが、また柔術を見直した原点回帰的な部分も見られて、個性的な選手が増えてきました。

「そうですね、アルドとかはブラジルっぽくなかったですしね。ブラジル大会はUFCクオリティで、片方の選手は全てブラジルで固めることができる。その層の厚さ、アジアでは韓国と中国はやりかけているけど、ブラジルほどではないですからね。ヤヒーラ、デミアン・マイア、そしてオリヴェイラとか、ブラジル大会──好きですね」

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Interview Special アルマン・オスパノフ ブログ ラスル・ミルザエフ 青木真也

【Special】月刊、青木真也のこの一番:3月─その壱─オスパノフ✖ミルザエフ「画一化されていないMMA」

Ospanov【写真】オスパノフの公開練習には多くの報道陣やファンが集まっていた (C) ACA

過去1カ月に行われたMMAの試合から青木真也が気になった試合をピックアップして語る当企画。

Ospanov vs Mirzaev背景、技術、格闘技観──青木のMMA論で深く、そして広くMMAを愉しみたい。

そんな青木が選んだ2020年3月の一番、第一弾は6日に行われたACA105からアルマン・オスパノフ✖ラスル・ミルザエフの一戦を語らおう。


──2020年3月度、選択肢がほぼ2つの週末に限られてきてしまうMMA界となってしまいましたが、青木真也が選ぶ、この一番。最初の試合は?

「オスパノフとミルザエフです」

──ACAで行われたカザフスタン✖ロシアの一戦ですか!!

「しかもカザフスタン大会なんですよね。地元のALASH PRIDEが興行を買ったというか、共同開催で。その事実がまた凄いです」

今大会にはキルギスからカナット・ケルディベコフが出場も、ブラジルのヴァウテウ・ペヘイラJrに敗れる

今大会にはキルギスからカナット・ケルディベコフが出場も、ブラジルのヴァウテウ・ペヘイラJrに敗れる

──中央アジアはやはり旧ソ連圏。今回やACA102もカザフ大会としてACAとALASH PRIDEが協力し、そこキルギスのWEFからチャンピオンクラスが派遣されている。そういう一つのMMA圏が成立されていますよね。

「でも、そもそもALASH PRIDEって何なんですかね。僕、把握できていないんですけど」

──私も確かなことは分かりませんが、ジム、マネージメント、そして大会と一手にカザフスタンのMMAを牛耳っているイメージはあります。

「ONEでもカイラット・アクメトフがALASH PRIDEの所属ですよね?」

──ハイ。今日、青木選手が取り上げたオスパノフは英語が話せるので、以前にONEの前にアクメトフをインタビューした時に通訳を手伝ってくれたことがありました(笑)。

「そうなんですか(笑)」

パンチ、蹴り、投げ、決勝で極めた後ろ三角などコンバットサンボ時代から、全局面に優れていたオスパノフ

パンチ、蹴り、投げ、決勝で極めた後ろ三角などコンバットサンボ時代から、全局面に優れていたオスパノフ

──その時に『俺、日本人と戦っているんだ』と言ってきて気付いた次第です。

「ああ、中島太一とやって。そうやって色々とやっている選手がちゃんといるから、今大会はカザフスタンの選手がたくさん出ていた。そこも興味深かったですよね。

オスパノフが中島太一を倒した時も、今の他のカザフスタンの選手と同じで別に頭になかったじゃないですか?」

──自分はオスパノフ自身は、2014年に成田で行われたサンボ世界選手権のコンバットサンボ68キロ級で優勝した時に『こんな選手がいて、アマでパウンド有りとかやっているとどんどん強くなるな』という印象を持ったことがあったのですが、その選手と中島選手がACAで戦うカザフスタン人が一致していなかったです。

「僕は中島太一の試合で知ったんですけど、地が強いですよね。今回の対戦相手のミルザエフも戦極のあとにロシアで戦った金ちゃん(金原正徳)をKOしたヤツですよ。まだ5戦目とかで」

──あぁ、あの選手だったのですか。いやぁ、青木選手に言われるまで気付いていなかったです。

「バーかなんかで人を殴って、入っていたんですよ──確か。で、戻ってきてファイトナイトとかACBに出るようになって、ここで負けているんですよね(※キャリア17連勝後、FNGでジョージアのレヴァン・マカシュビリ、ACAではシャミル・シャブラトフに敗北。18勝2敗で、今回のオスパノフ戦を迎えていた)。

パーフェクトレコードが崩れていたミルザエフですが、この試合は彼が勝つと思っていたんです。そこをオスパノフがパウンドでもっていって。オスパノフは体の強さあって、バックスピンキックを入れたりするのが、独特ですよね。底力がある。そういう国の人間が、ACAと結びつくことでもっと強くなってくるなと正直思いましたね」

──画一的でないのがロシア的ですね。

「ハイ、これまでにない発想があります。う~ん、僕らみたいなある程度見ている人になると、あんな風でないと興奮できないのかと思います。今のUFCは画一化、均一化されつつあるので、そうでない格闘技をMMAで楽しみたいと思うとロシアや中央アジアになっていくのかと」

──グローブ持参で試合に出てしまう様な(笑)。

「それを今の時代にやっているという……。競技や大会としては追いついていないけど、戦っている連中は強い。でも、2005年とかの修斗も僕はメインとかで出ると、誰かがその大会で使ったグローブが回ってくるのを待たないといけないような感じでした。それだけMMAグローブの数も確保できていなかった」

──あぁ、そうでしたか。外国人選手が使用グローブを持って帰らないかと北森さんが目を見張らせていたのは覚えています(笑)。

「今の話を聞いて日本も15年前は一つの大会で使いまわしていたなって思い出しました。だから、ロシアや中央アジアだとグローブ持参もあるんだろうなって(笑)。あの頃の僕は誰かが使う前のグローブで試合がしたいって思っていましたよ。それに今も日本の大会だと、RIZIN以外は基本は団体がグローブを回収して、使いまわしであることは変わらないですよね」

──そう考えると、毎大会のように使用グローブをそのまま選手に譲るというのは、それなりの規模でないとありえないということですね。

「1セットが1万円少しして、10試合とか15試合あると少なくない額が掛かってしまいますからね。それは理解しています」

──そんななかACAもイベントの延期や中止を発表していますが、青木選手はUFC的でないMMAを楽しむならACAだと。

「そうですね。KSWもそうだし、ACAはアリ・バゴフがウェルター級で戦ったり、65キロが回ってきていたので、ちょっと残念ですね。バンタム級でも同じ大会でダニエル・オリヴェイラがシャミル・シャフプラトフに勝って新チャンピオンになりましたよね。2人ともレコード的には凄く綺麗なわけでない(※オリヴェイラが28勝7敗、シャフプラトフが11勝4敗)けど、強い。

韓国人選手のレコードが汚いのと同じです。7勝5敗でも強いのと一緒だと思います」

──オスパノフは10勝3敗ですが、その実力のほどは。

「強いは強いです。ただし、主戦場がACAだからチャンピオンシップとかはまだ見えてこないんじゃないでしょうか。それによりもカザフスタンにはオスパノフのような選手がたくさんいるだろうっていうことが怖いです。

カザフスタン、キルギスのような中央アジア、あとはウクライナ、モルドバ、ルーマニア、ジョージア、黒海沿岸の東欧やユーロロシアの貧しい国はどうなるのか。レベルがドンと上がると思います」

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Interview J-CAGE JJ Globo ONE Road to ONE02 ブログ 世羅智茂 青木真也

【Road to ONE02】青木真也とケージグラップル、世羅智茂─01─「包み込まれるような組まれ方を……」

Sera【写真】即答、まさに今を生きる選択だ(C)MMAPLANET

12日(日)に東京都港区のニューピアホールで開催されるRoad to ONE02で、青木真也とグラップリングマッチに挑む世羅智茂。

世羅に青木との戦いを飲んだ理由を尋ねると──「断る理由がなかった」と、間髪入れず返答があった。


──青木真也選手とのケージでのグラップリングマッチ。オファーが来たのは、いつ頃なのでしょうか。

「先々週の月曜日だったと思います。『やります』と即答しました。メッセンジャーで石川(祐樹・カルペディエム代表)さんから連絡がきて、断る理由がなかったです」

──自身の気持ち、感情としてやるしかなかった?

「感情と言うか、やる以外なかったです。基本、試合は断らないです。あまり断った記憶はないです。Quintetや今成さんと戦った時もそうですし。それに今回の試合は自分のなかではメリットしかないと思っています。

負けるのは怖いですけど、そこでビビるのはよろしくないです」

──対戦相手が青木真也だから特に戦いたい……仮に早い者勝ちだったら、いの一番に手を挙げるというようなことはありましたか。

「仮にそういう状況だったら、すぐに手を挙げます。青木さんのことは日本ではもちろん、世界的に……MMAも柔術の人も知っているじゃないですか。もしかすると自分のキャリアの中で、一番注目される試合になるかもしれないと思います。だから、断る理由はなかったです」

──青木選手の純粋なグラップラーとしての技量はどのぐらいだと思っていますか。

「青木さんは基本MMAのグラップリングをやっていると思うのですが、最近はIGLOO柔術で岩本(健汰)君や山中(健也)君、イゴール田辺選手と練習しているので、その辺りの知識は勿論あるだろうし、対応もしてくる。ただのMMAグラップラーでないことは認識しています」

──今成選手とケージでグラップリングマッチを行いましたが、ケージでMMAファイターとグラップリングを戦うのとマットで柔術家とノーギで戦うのは気持ち的に違いはありましたか。

「ケージを使う攻防が出てくるという違いはあります。柔術やグラップリングは基本、壁はないので。そこを利用されての向うのペースになるというのは頭には入れています。いっても青木さんは何でもできて、全部のレベルが高いですが、金網に押し込まれてテイクダウンという攻撃は、あくまでも手段の一つとしてあるだろうと想定しています」

──壁レスなどの練習もしているのでしょうか。

「そんなに量は多くないですけど、やっています」

──その時の練習相手は?

「カルペディエム三田では、壁を使ったそういう練習もしているので、三田のスタッフとしています」

──三田にはMMA選手が練習に来ているようですが、彼らとは?

「最近はMMAファイターが来ていないので、そこまではできていないです。三田のスタッフに『ちょっと壁使ってよ』という程度ですね」

──柔術、グラップラーにとって壁レスリングは必要ない技術かと思います。

「まぁぶっちゃけて言えば、そうです。無視して良い、全く練習する必要はないです。でも僕は元々UFCとか好きで、割と壁の攻防を楽しんで見ている方なので、無駄といえば無駄かもしれないですが、そこは楽しくやっています」

──とはいっても、世羅選手は上の取り合いをする必要はありませんよね。座れば良い。

「それは勿論あります。その確率がどれぐらいかは分からないですが、青木さんと向き合ってみて何を選択するのか──ですね」

──今成選手との試合は、相手に合わせた感も少し感じました。

「アレは警戒し過ぎました。あそこは反省しています。警戒し過ぎていました。結果論ですが、もっと思い切りいけば良かったと思います」

──では青木選手と向き合って、最も警戒が必要なのはどのような点でしょうか。

「リーチとかじゃないでしょうか。青木さんの印象って、凄くリーチが長くて、懐が深い。包み込まれるような組まれ方をするんじゃないかと思います。そういうことを練習では体感できないので、実際に体面したときに如何にビビらずに対応できるのか。大丈夫だとは思いますが、実際に組まないとその恐怖は分からないので」

──青木真也対策を特定のパートナーとしてきたということは?

「特に誰かというのはないですけど、自分のなかで意識してそういう攻防には集中しようとかという感じです。練習相手に青木さんの動きをコピーしてもらうとかは特にせずに……自分のなかで危ないシチュエーションだとかを意識してやっています」

──青木選手といえばテイクダウンからバック、あるいはテイクダウンの途中の攻防でバック奪取&チョークかと。

「そこが必殺パターンですね。一番怖い状況です。バックを取られると逃げられるかどうかは微妙だというのは、自分のなかではあります。MMAでもバックを取られるとチョークでやられているので、そこに一度ハマると怖いです。特に1Rなのでバックを取られてそのままずっとバックキープされて終わるというのも、最悪あるかと」

──では極めの部分においては?

「全体のレベルが高いと思いますが、バックチョークが一番強いと思います。バックからのチョークは一度、その態勢に入ると危ないと思っています」

──この勝負、青木選手の動きに対し、世羅選手の防御力、攻撃を切る力に掛かってくるのかと予想しています。

「先に攻めたいですよね。今成さんの時に思ったのが、研究し過ぎて警戒し過ぎてしまった。もちろん研究もしますが、自分のアタックをしないといけないとあの試合で感じたので。青木さんとの試合では……難しいところですねぇ。攻めて自爆すると危ないのですが……でも自分から攻める、先に攻めることは忘れたくないです」

<この項、続く>

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【Road to ONE02】宮田和幸との金網組技戦に挑む田中路教─02─「頭が柔らかくなった、素晴らしい時間」

Nori【写真】パウンドを頭にいれないグラップリングが田中に何をもたらすのか (C)MMAPLANET

4月12日(日)に東京都港区のニューピアホールで開催されるRoad to ONE02で、宮田和幸とグラップリングマッチを戦う田中路教インタビュー後編。

グラップリングとMMAは別物であり、MMAグラップリングと純粋グラップリングも別物。ただし、MMAにおいて純粋グラップリングの技術や動きで試合を制することもできる。そのうえで、MMAファイターは純粋グラップリングに時間を割くことや、打撃のないグラップリングを頭の軸にそえて戦い、練習に取り組むことはできない。

だからこそ人生初のグラップリングファイトに向けて、この時間がMMAファイター=田中路教にとって貴重な刻となっていた。

<田中路教インタビューPart.01はコチラから>


──自身のMMAを立て直すために、昨年3月のウラジミール・レオンティブ戦は結果的に良い機会になった感じでしょうか。

Nori 01「自分の現状が理解できた試合でした。そこは良かったと思っています」

──あの試合は、あれだけドミネイトしながら極め切れなかった。そういう部分で試合後から矯正したことがありましたか。

「取れなかったことに関しては、すぐに試合後に嶋田(裕太)君に聞きました。ただ、あの試合ではフィニッシュできなかったことではなく、根本的な部分が足りていないと感じていました。あの試合から今までそこを改善するための時間だったと思います」

──名前が出た嶋田選手は去年の9月の終わりから米国へ行き、その前も東京の家を引き払って実家のある茨城県に戻っていました。

Nori 02「今回の試合が決まってグラップリングに集中してスパーリングをしていると、嶋田君に言われたことをドンドン思い出すんです。

本当はそこを普段の練習でも意識してできれば良いのですが、なかなかMMAをやっているとグラップリング一つに集中はできない。そのなかで、今回はそれができました。そうすると『嶋田君があの時、こう言っていたな』とか、『あっ、この場面でこういう動きをすれば良いんだな』ということがあって勉強になったんです」

Nori 03──MMAに専念すると、忘れがちなグラップリングの動きを思い出すと、MMAに生きるのでしょうか。

「もちろん、そうなると思います。本当は普段の練習で細かく意識できれば良いのですが、そこは僕は不器用で、苦手なの部分で。MMAが軸にあるとここまで、一つ一つ全体を深く掘っていけないんです。それが今回の試合のために凄くグラップリングに集中できたので、良い時間になったと思います」

──では、この試合でしないといけないことは?

「テイクダウンを取ることと、一本を取ることです」

──それが今日のスパーリングで見せていた、変な飛びつき三角に通じているのでしょうか(笑)。

「アハハハ。確かにアレはMMAに通じていないです(笑)。でも、この試合はパウンドなしの攻防になるので……。さっきも言ったようにこれまでグラップリングの練習をしているときも、常にパウンドがあることを意識して動いていたのが、グラップリングの試合に出るので、そこを意識すると勝つ可能性が下がってしまう。なので、飛びつき三角とか普段は出さない動きも仕掛けています」

──MMAは最適化、そして効率の良さが練習に求められると思います。ただし、何が起こるか分からないMMAで田中選手が飛びつき三角で勝つことが絶対ないとは言い切れない。だからこそ、この試合に向けての練習は良い時間になっているという言葉の裏付けだと思います。

Nori 04「ハイ、頭を柔らかくすることができました。一つに絞られた練習をすることで、こういう動きがあるんだっていうことを感覚としてできるようになったので。またMMAの練習に戻るとできなくなるかもしれないですが……とりあえず、こうやって一つのことに集中して、一つの目標に向かっていくことが素晴らしい時間だというのは、改めて感じています」

──このグラップリングマッチが田中選手のMMAに生きることを期待しています。

「そうですね、そうなると思います。MMAにとってプラスになるし、僕の人生にとってもプラスになると思っています。今回、グラップリングが2試合組まれているんですけど、青木さんと世羅選手のグラップリングと、僕と宮田さんのグラップリングは全然変わった形の試合になると思います。

Nori 05僕自身、グラップリングの試合は初めてでどういう試合ができるのか、どういう風になるのか分からないのですが……そのなかで魅せられるものがあるんじゃないかと」

──コロナ騒動で大変な状況で、人々に格闘技を見てもらって元気になってほしい?

「う~ん、そういうのは……(苦笑)。世の中、こんな風になっていますが、僕自身は練習ができているので……それが危険かもしれないのですが、とりあえず予防も含め自分にできることをやっていきます」