17日(日)、東京都江東区のTFTホール500で開催されるGRACHAN66で、伊藤空也と対戦する田中智也のインタビュー後編。
Text by Shojiro Kameike
田中は北海道MMAを代表する存在でありながら、怪我に悩まされ続けた。さらに減量失敗もあり――もう自分に後がないことは自覚している。そんななかでのバンタム級に転向する田中が、次の伊藤戦で真価を見せつけることはできるか。
――2016年5月にDEEP東京大会で島袋チカラ選手と対戦した時も、ローを蹴った時に足を負傷しTKO負け。そのあと1年もの間、試合から遠ざかっています。これまで試合ができないほどの怪我は、何回経験しているのでしょうか。
「手術は5回ほどしていると思います。吉野戦のあとも、ずっとヒジに水が溜まっていて。その時も靭帯再建手術をしました。これまで試合間隔が空いている時は、だいたい怪我が原因です。そうなると脊椎損傷の時以外は、どの怪我も捻挫と同じような(笑)」
――いやいや、凄い精神力です。
「あとは2020年に再度、アマチュア修斗に出ました。北日本選手権で優勝したことで、修斗もプロライセンスを取得しています。その後2022年の修斗札幌大会に出ていますが、おそらく推薦でライセンスを得ることはできなかったと思うので良かったです」
――これまでの1年に1回試合に出場し、1Rでフィニッシュしているからこそ「隠れた北海道の実力者」というイメージはあったかと思います。しかし、これから……という時に怪我やコロナ禍に阻まれている。そんななかで田中選手ご自身としては、今の立ち位置に関してどう感じていますか。
「今回の試合で、現在の立ち位置を確認したいです。今まで試合をしてきた相手の方々には失礼かもしれませんが、僕はまだ日本トップレベルの選手に勝ったことがありません。次の伊藤空也戦が、自分にとって本当の勝負だと思っています」
――なるほど。ちなみに今回、一つひとつ丁寧に答えてくださっている姿が、弘田颯志戦後のマイクアピールとギャップがありすぎて驚いています。
「あれはもう……MMAPLANETさんのインタビューを読んで『あぁ、自分のことを踏み台にしようとしているんだなぁ』と(笑)」
――アハハハ。やはりプロデビュー2戦目の選手と試合で、「舐めるなよ」という気持ちはあったわけですか。
「もちろん弘田選手も空手時代の実績から、自信を持っていたと思います。しかも福田龍彌選手など強いファイターたちとも練習している。でもこれはMMAなので――違うんだぞ、という気持ちはありましたね。たとえアウェイでも、とにかく僕は試合がしたくて。相手が2戦目だろうと何だろうと、自分はギュッと仕留めて北海道に帰ることしか考えていませんでした」
――結果、ご自身としては会心の出来だったのでしょうか。
「自分の仕事はできたんじゃないかと思います」
――まさに職人の雰囲気ですね。弘田戦はフライ級での試合でしたが、今回から正式にバンタム級へ転向するのですか。
「はい。今まで何度かフライ級での計量失敗がありました。怪我がある状態で体重を落としていくので、どうしても失敗する時があり……。今はマルスジムの平大門さんや、相談できる方がいます。しかし当初は我流で減量していました。そのために試合が無くなったり、あるいは計量オーバーでも試合を受けてくださったりと、対戦相手の方々にご迷惑をおかけしてしまいました。計量オーバーした試合で僕が勝ったとしても、誰にとっても何のためにもならない。対戦相手の方も、ただダメージを負うだけで――」
――……。
「さすがにまた減量に失敗すれば、このMMA業界に僕の居場所はありません。これまでもバンタム級で戦うこともあって、自分にとっては一番動ける階級だと思っています。減量も楽になり、今回は過去最高のコンディションですね」
――バンタム級に転向するうえで、ノンタイトル戦で現王者の手塚基伸選手がTSUNE選手に敗れたことはどう思いますか。
「ノンタイトル戦でチャンピオンが負けたので、次はベルトを賭けた再戦があると思います。僕は、その再戦で勝ったほうと対戦したいです」
――そのベルト挑戦のために落とせない一戦になります。対戦相手の伊藤選手の印象を教えてください。
「やはり打撃とレスリングがしっかりしている選手ですよね。前回、高須将大選手をKOした試合も、倒されずにコツコツとダメージを与えていました。僕はあの展開に持ち込ませず、テイクダウンしたいと思います」
――田中選手は体格のバランスも良く、リーチとコンパスも長いです。しかし打撃でやり合う気はないですか。
「その気持ちは全くないです。僕はずっと寝技をやってきたので」
――対してそのリーチとコンパスだと、三角絞めは取りやすいでしょうか。
「……はい(笑)」
――満面の笑みを浮かべましたね。
「アハハハ。まずバンタム級でも骨格は大きいほうだと思います。三角絞めは、相手が完全に立ち上がらないかぎり――頭を起こしている程度なら、それでも極めることができますね」
――最後に、今後の目標を教えていただけますか。
「もう10年もMMAをやっていて、そろそろベルトに絡む試合をしたいと考えています。まずはグラチャンのベルトを獲ること。そして海外での試合も見据えていきたいです」
■視聴方法(予定)
12月17日(日)
午後1時30分~Grachan放送局
■Grachn66対戦カード
<GRACHANライト級暫定王者決定戦/5分3R>
岸本篤史(日本)
林”RICE”陽太(日本)
<バンタム級/5分2R+Ex1R>
伊藤空也(日本)
田中智也(日本)
<無差別級/5分2R+Ex1R>
ハシモト・ブランドン(ペルー)
MAC(サモア)
<フェザー級/5分2R+Ex1R>
松田征也(日本)
伊藤類(日本)
<フェザー級/5分2R+Ex1R>
中村京一郎(日本)
村田俊(日本)
<フライ級/5分2R+Ex1R>
金井一将(日本)
長野将大(日本)
<無差別級/5分2R+Ex1R>
ダンカン・ヒロ(台湾)
ステファン・スマッシュ(フランス)
<無差別級/5分2R+Ex1R>
ラデック・ヘルボーイ(チェコ)
瓜田幸造(日本)
<ライト級/5分2R+Ex1R>
草訳駿介(日本)
水杉泰誠(日本)
<フライ級/5分2R+Ex1R>
後藤浩希(日本)
平野紘希(日本)
<GRACHANchallenge 63㎏以下契約/3分2R>
西嶋珀(日本)
天坂匡孝(日本)