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【Grachan63】メインの山田哲也戦前の植田豊─02─「強い選手に勝つことで、今後も良いオファーが」

【写真】しゃばっ気がなく、達観した感のある植田。より臨機応変なファイトができるか(C)SHOJIRO KAMEIKE

6日(日)、東京都江東区のTFTホールで開催されるGrachan63で、山田哲也と対戦する植田豊のインタビュー後編。
Text by Shojiro Kameike

植田は昨年5月以来、1年3カ月ぶりの試合を迎える。山田との対戦は、王者の原口伸がRoad to UFC参戦中のGrachanライト級の今後を占う一戦となりそうだ。しかし植田にとっては、そのベルト獲得がゴールではないという。自分自身が納得できる戦いを目指す植田は、元ZSTウェルター級王者の山田哲也との一戦で何を見せてくれるのだろうか。

<植田豊インタビューPart.01はコチラから>


――ご自身でも言われているとおり、植田選手といえば幾度となくベルトに挑み、跳ね返されてきた。それだけチャンスを得たのは実力者であることの証明だと思います。ただ、もうそのベルトにも興味はないと……。

「ベルトを巻くことができれば、それはそれで良いことですよね。ベルトを巻いていれば大きな大会から見つけてもらいやすいでしょうし。格闘技を知らない人でも、チャンピンになったと言えば喜んでくれますから。縁があれば獲りたいです。でもベルトがもう第一ではなく、それがゴールというわけでもなくて」

――では次の山田哲也戦に関するお話ですが、これまでと比べて相手の試合映像を視ていないとのことでした。

「今まではガッツリと視ていたというわけでもないんですけど(笑)。まぁ、普通レベルというか。今まで視ていたレベルが10だとしたら、今回は1ですかね」

――えっ!? それは随分と変わりましたね。

「それでも、試合映像を視ないことで不安になることはないです。今までのように試合映像を視て考えすぎるために、試合で失敗を繰り返すことのほうが怖いですから」

――-今回の試合が決定する前に、山田選手の試合をご覧になったことはありましたか。

「ONEの試合を観客として視ていた感じです。もちろん分析とかはしていないし、自分が対戦することになるとは考えていませんでした。彼がまた国内で試合をすると聞いた時は、対戦もあるかなぁとは思っていたんですよ。でもウェルター級でやるということで、やっぱり試合することはないかと(笑)」

――その山田選手がライト級で戦う。対戦相手としてご自身にオファーが来た時は意外でしたか。

「特に何も思わなかったですね。『あぁ、そうなんだ』という感じで。良い相手だと思ったので、オファーが来て即答しました」

――山田選手に対しては、どのような印象を持っていますか。

「戦極の頃に『スーパー高校生』というキャッチコピーで出てきて、その頃からグラップラーというイメージが強いですね。ONEに出始めた頃からタイガー・ムエタイで練習していると聞いて、『これからはムエタイも交えてくるのかなぁ』と思って試合を視ていたんですよ。でもムエタイスタイルにはなっていなかったし……。まずは長いリーチを生かした打撃から組んで来るファイターだと思っています」

――国内のウェルター級でもフレームが大きい山田選手がライト級で戦う。植田選手にとっては、相手にフレームのアドバンテージがあると思いますか。

「どうですかね。結局は同じ体重まで落として戦うので、そこまで警戒することはないです。もちろん相手のほうが身長は高いけど、自分がパワー負けするとも思っていません。相手の身長が高くても低くても――自分のやるべきことは変わらないです」

――まだ山田戦を控えているなかで先のお話をして恐縮ですが、この試合で勝利したあとは、どのようなキャリアを考えていますか。

「強い選手に勝つことで、今後も良いオファーが来ると良いなぁと思っています。納得のいく試合ができれば、それだけ自分でもアピールしていかないといけないですね。プロフェッショナルの興行なので、選手自身がストーリーを創っていくことも重要だとは思います。でも自分の場合は、ただただ好きでMMAを続けていて。だから『応援してほしい』という気持ちよりも、『たまたま僕の試合が目に入って、興味を持ってくれたらまた見続けてほしい』という感じです。……すみません、面白いことを言えなくて(苦笑)」

――お話を聞いていると、もうご自身やMMAに対して何か達観していますね(笑)。

「えっ、僕ですか? うーん、どうなんでしょうね。これまでMMAを続けてきたなかで、そんなに考えても仕方ないということが分かったんですよ(笑)。タイトルマッチまで行くけど獲れない、ということの繰り返しで。毎回『あぁ……』と思うなかで、そんなに考えていても仕方ないというところに至りました」

――以前のインタビューでも「やるべきことをやる」という発言がありました。今も気持ちは変わっておらず、さらにその気持ちが深まっている状態ですか。

「そうですね。要は、やるべきことができていない。出せていない部分を、もっと出せるように。そのために変な情報を余計に入れることなく、自分のやるべきことをやるだけです」

――ここ最近で、「自分のやるべきこと」に変化はありますか。

「試合をしていないなかでも練習していて、技術的な面で新たな気づきがありました。今までなら、せっかく新しく気づいたことを練習していても、対戦相手によって自分自身を変えていたんです。相手がこうだから、自分の構えはこう……とか。そういう考えがなくなった分、新たに気づいたものをピュアに伸ばせている。余計なことを考えることなく、自然に体が動くようになっている感覚はありますね」

――試合の対策を考えすぎることで、逆に自身の良さを消してしまっていたのですね。

「それはすごく大きかったと思います。応用力のある選手なら、それでも良いんですよ。僕の場合は、ワンパターンの対策を決めすぎてしまうところがあって。次の試合は、本来の自分を見せられるように作りこんでいます」

■視聴方法(予定)
8月6日(日)
午後1時00分~ GRACHAN放送局

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【Grachan63】メインの山田哲也戦へ、植田豊─01─「殴る、蹴る、投げる、極める。そういう単純なこと」

【写真】ファイトウィークの輪郭になっている植田(C)SHOJIRO KAMEIKE

6日(日)、東京都江東区のTFTホールで開催されるGrachan63のメインで、植田豊が山田哲也と対戦する。
Text by Shojiro Kameike

昨年5月、植田は原口伸とGrachan暫定ライト級王座を争い、判定負けを喫した。2010年にプロデビューし、2013年に一度戦いの舞台から離れたものの、2019年に復帰した植田。以降はベルト挑戦の機会が与えられながらも、チャンスをモノにすることができていない。そんな植田を取材すると、彼の中に悲観的な部分は一切なかった。まさに達観――ベテランがMMAの中で辿り着いた場所とは。


――本日はお仕事のお昼休みにインタビューの時間を取っていただき、恐縮です。しかも太陽が照りつけるなか……。

「いえいえ、大丈夫です。写真を撮ったら移動しますので(スクリーンショットを撮影後、日陰に移動)」

――ありがとうございます。試合を4日後に控え、今もフルタイムで出勤されているのですね。コンディションに影響を及ぼすことはないでしょうか。(※インタビューは2日に行われた)

「コンディションは至って普通ですね。良すぎず、悪すぎず。減量中なので節々が痛いところはあるますけれども、計量後に栄養を摂ったら治ると思います(笑)」

――2022年5月の原口伸戦以来の試合を迎えます。2019年に復帰後はコンスタントに試合をしたかったか、あるいは試合間隔を空けたかったのか。どちらでしたか。

「あぁ、もう1年以上の間隔が空いてしまっていますよね。復帰後はコンスタントに試合をしたいという気持ちはありました。でも怪我が多く――実はもう何年も前から、首のヘルニアが痛くて、練習もコンスタントにできない状態でした。だから今、首の痛みがない状態というのが本当に久々で」

――試合をしていない期間はヘルニアの治療に充てていたのでしょうか。

「治療自体は、何年も前から続けていました。さらに練習量を少し落としてみたら、首も良くなってきたんですよね」

――それは良かったです。しかし練習量を落とすと、「これで大丈夫なのか……」と不安になったりはしませんか。

「いや、不安にはならないですね。もともと相当練習するほうだったと思うので。正確に言えば、強度の高い練習を毎日やることを止めました」

――質も高く、量も多すぎたわけですね。

「はい(笑)。どうしてもガンガンやってしまう性格なので。でも年齢的なこともありますし(現在36歳)、少しは考えていかないといけない。だから『休むこと』を覚えました」

――なるほど。この期間に技術的な面など、他に大きく変わった部分はありますか。

「技術的な面というよりも――今まで練習しすぎてしまっていたり、試合も作戦を綿密に練りすぎてしまうところがありました。すると試合で考えていたような展開ではなくなると、対応できなくなったりする場面が出てきたりとか。そうなると相手とお見合い状態になったり、自分も手数が出ないまま試合を終えるということが多かったんです」

――……。

「だから今回も、それほど対戦相手の試合映像も視ていません。気をつけるべき点だけをチェックして、5分2Rただただ前に行くというスタイルに変えようと考えています」

――「試合で考えていたような展開ではなくなると、対応できなくなったりする場面が出てくる」というのは、復帰後でいえばどの試合でしょうか。

「前回の試合は、まさにそうですよね。もっと相手がプレスをかけてくると思っていました。でも相手が慎重に戦ってきて、自分としては『アレッ?』となってしまい……。そうなると、自分の動きも止まってしまうような試合が、今までは多かったです」

――予想と違う展開になると、自分自身の中で切り替えるのも難しかったのですか。

「難しくなっちゃうタイプでしたね(苦笑)。もう本当に、作戦を練りすぎて。おそらく会長(山﨑剛Me,We代表)も同じことを感じていて、今回の試合については細かいことを言われなくなりました。もちろん相手に関して気をつけるべき点は指摘してくれます。でも、そういうことは大雑把にインプットするだけで。あとは殴る、蹴る、投げる、極める――そういう単純なことをやれば良いと思っています」

――殴る、蹴る、投げる、極める。大雑把といいますか、もっとシンプルに考えたほうが良いという結論に至ったわけですね。

「ずっと僕の試合を見ていて、周りの人たちもそう感じていたでしょうし、僕自身もそう考えました」

――昨年5月の原口伸戦は注目のルーキーとベルトを賭けて戦い、敗れました。

「先ほど言ったとおり、内容は自分が考えていたものと違いましたよね。相手はもっとパンチを振って前に出て来ると思っていたら、ローでチョコチョコと攻めてきた。そこでワンテイクダウンを取られ、あとは自分のプランも総くずれになってしまいました。さらに相手のパウンドが自分の首に当たると、首が痛くて動けない状態になって」

――それだけ首のヘルニアも悪化していたのですね。結果、またもベルトに手が届きませんでした。

「ベルトどうこうよりも、チャンスを頂いてもモノにできていないことについては申し訳ないという気持ちがあります。周りのチームメイト、支えてくれている人たち、そしてチャンスをくださった方たちに対して。ただ、今は僕自身がベルトというモノにこだわっているわけではないんです」

――では今、植田選手がMMAを続けるうえで目指しているものとは何なのでしょうか。

「好きだから続けている――それだけですよね。もっと上手くなりたい、もっと強くなりたい。ベルトって、その先にあるものですから。ここ一番で自分の力を発揮できない、というのは格闘技だけの話ではなくて」

――というと?

「日常の中であったり、仕事の場面でも『まだまだ足りない。もっと上手くならないといけない』と思うことが多いです。格闘技だけでなく、人生全てにおいて大切なことじゃないですか。この先、自分自身のなかで納得できるところに至るかどうかは分かりません。でも好きなものだからこそ、納得できるところまで続けたいんですよ」

<この項、続く>

■視聴方法(予定)
8月6日(日)
午後1時00分~ GRACHAN放送局

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【Grachan63】植田豊と再起戦、山田哲也「心も体も“普通の人”になっちゃっていました」

【写真】(C)TAKUMI NAKAMURA

6日(日)、東京都江東区のTFTホール500で開催されるGRACHAN 63で、山田哲也が植田豊と対戦する。
Text by Takumi Nakamura

2月のGRACHAN59×BRAVE FIGHT27で、約2年2カ月ぶりの復帰戦を迎えるもブレンゾリグ・バットムンクにKO負けを喫した山田。6月のLevel-Gライト級王座決定Tを挟み、本人が適正階級と話すライト級での植田戦が決まった。バットムンク戦を経て「今は身も心もみなぎっている」という山田は自信たっぷりに植田戦への意気込みを語った。


――2月のブレンゾリグ・バットムンク戦をKO負けという結果に終わり、6月にLevel-G02でのグラップリングの試合を挟み、今回の一戦が決まりました。

「2月の復帰戦は約2年間試合間隔が空いていて、試合が決まって2カ月間では心と体が間に合わなかったかなと思います」

――6月にグラップリングの試合を入れたのは、試合勘を取り戻す意味でも試合間隔を空けたくなかったということでしょうか。

「2月の試合はウェルター級で、試しに一度、ライト級まで体重を落として動いてみたかったんです。それで6月にグラップリングの試合に出ようと思いました」

――ウェルター級で復帰戦を戦いましたが、ライト級が適正という感覚だったのでしょうか。

「試合から離れている間に体重が増えていたんですけど、試合に向けてハードに練習を続けていると自然に体重も落ちてきて。自分としてはライト級の方が適正なんじゃないかなと思うようになりました」

――MMAPLANETのインタビューでフェザー級時代は90kgから減量していたというエピソードもあったので、ウェルター級の方がコンディションが良いかと思っていました。

「過去の戦績を振り返ってもライト級が一番動けていたし、戦績的にも良い結果を残せていたんですよね。改めて自分はライト級の選手なんだなと思いました」

――では6月の試合を終えて今後戦う階級を決めた、と。

「はい。あの試合を終えて、ライト級でやっていこうと決めました」

――分かりました。日本に活動の拠点を移して、今はどんな練習環境なのですか。

「基本的にE.D.O. Yokosuka Baseで練習をしています。まだプロ選手は数名なんですけど、プロを目指しているアマチュアの選手たちも交えて一緒に練習しています。あとが出稽古で鍛えてもらっています」

――出稽古先はどちらですか。

「長岡さんのDOBUITA FIGHT SPORTS GYM 、安田けんさんのSONIC SQUADですね。それこそ僕が高校生の頃からお世話になっている方たちなので、すごくいい練習ができています」

――タイ時代とはどのような部分で違いがありますか。

「タイで練習していた時はちょっと大雑把になっていた部分が多かったかなと思います。日本に戻ってきてからは周りと細かく話し合いながら練習ができるようになったと思います」

――それは言葉の壁ですか。

「それもありますね。技術の細かい部分だったり、試合に向けた戦術だったり、そこまで作りこむことは出来なかったかなと思います。体力的に伸びるところはあったんですけど、その分、雑さが際立ってしまった感覚です」

――そこを先輩たちから修正してもらっている、と。

「はい。みなさんしっかり指摘してくれるので、自分自身もそこを意識して練習しています」

――言える範囲で具体的にどこを意識して練習していますか。

「今まで試合中に休んでしまっていた場面でも攻めるというか。組み立ての部分です。最終的にどこを目指して戦っているのか。そのために何が必要か。そこを考えています」

――山田選手は思い切りの良さや爆発力が武器だと思うのですが、そことのバランスはどう考えていますか。

「それこそ中村さんに解説してもらっていた頃、当時はZSTでイケイケで怖いものなしだったんですけど(笑)、今回もあのくらいの勢いでいってやろうと思っていますね。ビビらずにガンガン行こう、と」

――復帰戦でKO負けして細かい技術を修正していると聞き、リスクを冒さず勝ちに行くスタイルを確立させていると思っていました。

「僕は手堅くやって判定で勝とうなんて一切思ってないです」

――フィニッシュしたい欲が出ているのですか。

「それがまさに2月の試合前には感じていなかったことで、あれから練習を重ねていくうちに思い出してくるものがあるんですよ。こうだったよな、ああだったよなって。そうやって蘇ってきた感覚を大事にして、今回は戦いたいと思っています」

――山田哲也はこういうファイターだろ、と。

「まさにその通りです」

――では対戦相手の植田選手の印象も聞かせてください。

「柔道ベースで首投げからフィニッシュする選手という印象です」

――組み技を主体に戦うスタイルが形になっている選手ですが、攻略のイメージは出来ていますか。

「相手の得意な部分をつぶしていこうと思います。あと試合としてはかみ合う展開になると思います。しっかり準備して試合ができるので一切負ける気がしないです」

――2月の復帰戦前とは違う感情が沸いてきていますか。

「はい。前回は本当に準備ができなかったというか…試合前もそうでしたし、試合当日もなんかフワフワしていて、地に足がついてなかったんですよ。根本的にファイター、戦う人間としての心構えができていなかったです」

――試合に向けて気持ちのスイッチが入りきらなかったのですね。

「そうですね。で、何もできないまま終わっちゃうという(苦笑)」

――今振り返って、それは何が原因だったと思いますか。

「試合がない期間で心も体も“普通の人”になっちゃっていました。それを“ファイター”に戻すために2カ月という準備期間は短すぎたのかなと思います。もちろんその2カ月間は必死にやったんですけど、結果として戻しきれなかったです」

――では改めて今の山田選手のMMAにおける目標は?

「絶対にGRACHANのベルトは獲りたいです」

――ライト級に階級を落とすとなると、とりあえずは原口伸選手が標的となりますが、Road to UFCでUFCとの契約を目指しています。その原口選手の実力をどのように評価していますか。

「すでに試合映像はチェックしていますし、現時点でもめちゃくちゃ強いと思います。で、これからさらに強くなっていく選手だと思います。原口選手はRoad to UFCに参戦中ですが、僕はあそこで負けるとは思えないんですよね。先のことは分からないですが、そのくらい可能性を持った選手だと思います」

――山田選手も高校生在学中にZSTでプロデビューして、戦極、パンクラス、ONE……そして今またGRACHANと国内外、色んな団体で試合をしてきました。MMAをめぐる状況もその都度変わっていったと思うのですが、今はどんなファイターになりたいと思っているのですか。

「僕はまだ自分を諦めてないんですよ。もっといけるところまでいきたい。海外から日本に拠点を移して、僕のなかでは新しいスタートだと思っていて。今までのことや過去の試合がどうこうではなく、僕はここからだと思っているんです。次の試合から僕の連勝街道が始まると思います」

――今までの試合では自分の力を出し切れない、悔いが残るような試合も多かったのですか。

「それこそタイにいた時は自信を持って試合をしたことがなくて。毎日海外から来ている選手たちにボコボコにされたり、ロシア人にぶっ飛ばされたりするんですよ。そうすると試合前なのに『ああ…俺って弱いな』ってメンタルになっちゃって。他の国の選手たちはチームごとタイに来ることが多くて、そのチーム内でコミュニケーションを取るんですよ。でも僕は単身タイに住んでいたので、何かメンタル的に落ちた時に相談する相手もいないし、そういう部分を支えてくれるチームメイトもいなかったので、メンタル的にはボロボロでしたね(苦笑)」

――では日本に戻ってきて仲間や旧知の先輩たちとともに戦うというのはまさに新章の幕開けですね。

「ホントにその通りです。今は心も体もみなぎっているので、自分に自信しかないです」

――それでは次の試合ではどのような姿を見せたいですか。

「一言で言うと…ぶっ飛ばしますよ。全然負ける気はしないんで一方的にぶっ飛ばして終わらせます」

■視聴方法(予定)
8月6日(日)
午後1時00分~ GRACHAN放送局

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Grachan MMA MMAPLANET o ONE ニュース パンクラス 海外

MMAPLANETの読者の皆さまへ。ご報告

【写真】2016年1月8日にディファ有明で開催されたWMA──完全中国資本の大会、あるいは2019年10月のONE Warrior Seriesなど、多媒体での露出がさほどなくとも国内はケージという縛りがあることで報じることができないイベントもありました(C)MMAPLANET

MMAPLANET読者の皆さま、いつも当サイトをご拝読いただきありがとうございます。

2007年6月より海外のMMAの動向を日本に伝えたいという明確な目的意識を持ちMMAPLANETは活動を始めました。当初はlivedoorsportsのコンテンツの一環としてニュース配信等を1年半ほど続け、2009年1月より専門サイトとしてリニューアルをしました。

とはいえ記事内容は「海外のMMAを知ること」が中心、理由はマンパワー&ファイナンシャル不足によるキャパシティの限界。加えて国内の総合格闘技の試合は既存のメディアにより十分にレポートされており、そこにあえて競合する必要はなくMMAPLANET独自の観点を持つままのメディアであるべきという考えがありました。

例外として、日本人が海外で活躍できるようになるにはケージの試合経験は欠かせないという観点と他媒体で露出が少ないという理由からHEATとGrachan、2つのケージ大会の動向を伝えていました。

その後、2014年にパンクラスが世界標準を掲げ完全ケージ化された際に酒井正和代表より、「リングでなく、ケージを舞台に戦う総合格闘技ではなくMMAです。パンクラスもMMAPLANETで報じてください」という言葉を頂き、国内はケージのみという既成路線が確立されました。

重ねて書き記させてもらいますが、そこには何も理念や信念という精神的支柱はなく、資金と人材不足の2つの理由で容量が足らないことに起因しています。

今回、読者の皆さまに2023年8月1日よりMMAPLANETでは国内のリングMMAも解禁し記事化できるようになったことをお伝えさせていただきます。

ファイナンシャルとマンパワー、この2つの不足していた部分において前者は、深い理解を得て新たな従来のパートナーからの増資、加えて新たなパートナーにご協力していただけることで部分的に解消されました。

また後者の人材という部分では、個人的にも待望といって良い人材の協力を得ることが可能となりました。

結果、国内も海外と同様にMMAはケージ、リングに関わりなく報じ、これまで掘ることができていなかった海外の動向にもさらに一歩進むこともできそうです。加えて国内外グラップリング、首都圏以外のMMA大会に関しても、これまで以上に戦う舞台云々よりも、選手の存在により着目した記事創りを心掛ける所存です。これからもよろしくお願いします。

高島学

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Grachan Grachan62 MMA MMAPLANET o 小川道的 林RICE陽太

【Grachan62】試合タイムは13秒!! 林RICE陽太が、跳びヒザ蹴りで小川道的をKO

【写真】(C)SHOJIRO KAMEIKE

<ライト級/5分2R>
林 RICE 陽太(日本)
Def.1R0分13秒by KO
小川道的(日本)

右ローを蹴った小川。林も右ローを返し、一旦距離を取ると右の跳びヒザ蹴り。この一発が小川の顔面に打ち抜く。小川は腰から崩れ落ち、林が鉄槌を落とし一瞬にして勝敗が決した。

「今日までしっかりと練習してきて、小川選手が前に出てきてくれたので最後に良い試合ができました。僕をメインに選んでくれてありがとうございます。練習仲間の皆さん。ホンマにありがとうございます。202年の林RICE陽太は強いです。どんどん試合がしたいので10月の記念大会、今日応援に来てくれる皆が来てくれると思うのでぜひ出してください」と林は話した。


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Grachan Grachan62 MMA MMAPLANET o 村田俊 鍵山雄介

【Grachan62】ケージ際の攻防。スイープ狙いで引き込む鍵山に一票。上を取った村田だがドローに

【写真】ドローに両者は御覧の表情を浮かべた(C)SHOJIRO KAMEIKE

<68キロ契約/5分2R>
鍵山雄介(日本)
Draw.1-0
村田俊(日本)

左右に回る鍵山の左ミドルに村田が右を合わせようとする。ローの鍵山、村田のステップインに中を取る。ワンツーフックで前に出た鍵山に対し、村田は右ストレート、左フック、そして右ミドルを繰り出す。右を振るって組んだ鍵山は、ケージに村田を押し込むも体を入れ替えられて小外を狙う。村田が許さず押し込み返し、鍵山は小外で姿勢を崩したがケージを利して耐え──試合は打撃の間合いに。

右クロス、そしてオーバーハンドを振るう鍵山は左ロー、村田はワンツーをかわされ左ミドルを食らう。村田のステップインを下がってかわした鍵山は、組まれてケージに押し込まれる。残り30秒、ボディロックから互いにテイクダウンを狙うが倒せず、最後の10秒もパンチを見せてクリンチという互角の展開で初回は終わった。

2R、開始直後にケージに押し込んだ村田がレベルチェンジ、ダブルレッグへ。引き込むように下になった鍵山はケージを背負って座った状態からギロチンでリバーサル。そのままスクランブルとなり、村田が再び鍵山をケージに押し込んだ。鍵山はダブルレッグをハーフネルソンで耐えるが、スイープ狙いで尻をつける。それでも下にされないよう立ち上がった鍵山に、執拗にダブルレッグを仕掛ける村田は結果、ネルソンからスイープ狙いの鍵山からトップを奪取しそうに。

鍵山はネルソンを軸に頭を跨いでバック狙いも、村田が右足をコントロールして前方に落とす。残り1分、ケージを使って立ち上がった鍵山の引き込みからスイープ狙いは、ここも村田が許さず同体で立ち上がり時間に。

結果、瞬時でも上を取った村田が競り勝ったかと思われたが、ジャッジ1人が左ミドルの鍵山を支持、他の2人はドローで痛み分けとなった。


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Grachan Grachan62 MMA MMAPLANET o 弘田颯志 田中智也

【Grachan62】田中智也、弘田颯志の最短路線を挫く──三角絞め&64秒勝利

【写真】(C)SHOJIRO KAMEIKE

<フライ級/5分2R>
田中智也(日本)
1分04秒by 三角絞め
弘田颯志(日本)

サウスポーの弘田に即組んだ田中は、蹴り足をキャッチしてテイクダウンを奪うと、リバーサル狙いの弘田に三角絞めをセットする。

一度上になり、再び下になりつつ田中は、逆腕を極めつつ組み直して絞める。腰を上げ、立ち上がった弘田はパンチを見せた直後にタップ──田中が力の差と経験の差を見せつけた。


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ACA Grachan Grachan62 MMA MMAPLANET o UFC   ハシモト・ブランドン ミランダ亜廉 中嶋紳乃介 大搗汰晟 小川道的 岡本純一朗 岩﨑ヒロユキ 弘田颯志 村田俊 田中智也 福田龍彌 釜谷真 鍵山雄介

【Grachan62】田中智也戦へ弘田颯志 & 釜谷真─02─「『できるなかで一番強い相手を』と」(釜谷真)

【写真】対戦相手の田中智也はキャリア14勝3敗。確かにこの大会で戦える一番強い相手だと断言できる (C)SHOJIRO KAMEIKE

23日(日)、大阪府豊中市の176BOXで開催されるGrachan62で田中智也と対戦する弘田颯志と、所属するSWAG GYM KYOTO釜谷真代表のインタビュー後編。
Text by Shojiro Kameike

師弟ではなく、練習仲間からスタートした2人。出会った時から才能を感じ取っていた釜屋が語る弘田の強さとは。そして弘田がUFCにたどり着くための「最短距離」とは――。

<釜谷真&弘田颯志対談Part.01はコチラから>


――釜谷代表としては京都に戻ってきてすぐ、弘田選手のような意識を持っている若い世代と出会った時の印象はいかがでしたか。

釜谷 「やっぱり俺は持っている男やな」って思いました(笑)。

――アハハハ。

釜谷 空手の世界ユースで優勝していて――まだ格闘技を始めていない20歳の僕が出会ったら、どうやっても勝てないレベルじゃないですか(笑)。僕が自分に対して『これぐらいやれるんちゃうかな』と想像しながら辿り着けなかった場所に、彼は行けると思っています。

――弘田選手と出会った時、すでにMMAを戦えるレベルにあったのでしょうか。

釜谷 いや、さすがに組みのレベルがMMAを戦うレベルにはなかったです。僕は組みを消化していないMMAファイターが好きではないんですよ。

弘田 組みについては小学校の頃に、柔術をやったことがありました。でも叔父が通っていたピュアブレッド京都へ連れていってもらい、遊ばせてもらっていたぐらいで。レスリングは全く経験がなかったです。やってみると難しいし、面白かったですね。最初は組まれると、ただ暴れて逃げるもんやと思っていました(笑)。理屈が分かってくると、いろんなことが繋がってきて面白いです」

――アマチュア時代にはグラチャン・チャレンジで、レスリング出身のミランダ亜廉選手にテイクダウンからパウンドアウトされています。敗れましたが、MMAを戦っていくうえで、あの経験は大きかったですか。

弘田 正直言うと、もっと落ち着いて戦えば倒せていた試合です。今でもあの試合の映像を何回も見ています。「ここでこうしておけば……」という後悔ばかりで。自分の中では絶対に勝てた試合だったと思っています。でも空手ではああいう負け方をしたことがなかったので、良い経験でした。

釜谷 勝った相手が注目を浴びるのは当然ですが、あの試合は関西アマチュアMMAの頂上決戦の一つやったと思います。当日は、ミランダ選手と颯志君の試合だけレベルが違っていました。彼はミランダ戦以外だと左ミドルでKO勝ちしていたり。

弘田 今は階級が違いますけど(ミランダはバンタム級でプロデビュー)、もしプロで再戦することになったら、今度はちゃんと準備して必ず勝ちます。

――弘田選手は今年5月のプロデビュー戦で、鈴木嵐士選手を2RでKOしています。プロデビュー戦の感想を教えてください。

弘田 まず100パーセント負けることはない相手だと思っていて。だから「できるだけ差を見せつけてやろう」と考えていたんですよ。最初に組んだ時、「これは組みだけで勝てる」と感じて、その通りに勝ちました。本当は胴廻し回転蹴りで倒したかったんですけど。

そうは言うても、マカコ会長も若い頃は──手段がそことギロチンに二択だったとしても──思い切り、勢いありまくりの真っ新なファイトをしていました

釜谷 ここがもう違いますよね。

僕のプロデビュー戦なんて、まず勝つことに必死でした。毎試合「会場にいる全員が俺の負けと思っても良い。ジャッジ2名だけが俺の勝ちだと言ってくれればいい」と思っていましたね(笑)。颯志君のプロデビュー戦は、「試合中に怪我でもしないかぎり負けることはない。どんな試合するんやろうな」と思っていたら、僕と3年間一緒にやってきたことを見せてくれて。

弘田 はい、そうですね。あの時は釜谷さんと一緒にやってきたことを100パーセント出すことができました。

釜谷 僕としては「空手らしさを見せるんかな」と考えていました。それがしっかりとMMAをやり、組んで勝った。単純に、ただただ嬉しかったです。

弘田 あれは僕がMMAの練習を始めてから、自分がやられてきたことでした。おかげで自分も試合中に考えんでも出るぐらいまで技術が染み込んでいて。

――それほど会心の勝利を飾ったデビュー戦に続き、次は田中智也選手と対戦します。田中選手はグラチャンの岩﨑ヒロユキ代表が「本来ならフライ級トーナメントに出場して良いレベル」と称するとおり、プロ2戦目の相手としては格上すぎるようにも思いますが……。

釜谷 はい。僕も選手によっては、プロ2戦目だと対戦させない相手かもしれないです。でも僕は颯志君のMMAへの想いを聞き、最短距離で頂上に行かせたい。デビュー戦が終わった直後、岩﨑さんに「次に試合ができるなかで一番強い相手をぶつけてください」とお願いしました。次は間違いなくデビュー戦よりタフな試合になるでしょう。でも颯志君がデビュー戦と同じような勝ち方ができる可能性も高い。なら、やるしかないですよ。

弘田 釜谷さんがそう考えてくださっているのが本当に嬉しいです。釜谷さんが交渉してくれているのを見て、自分が何のためにMMAをやるのかって改めて分かりました。僕としては次の試合が勝負やとは思っていません。いつも練習している釜谷さんや福田龍彌君のほうが強いし、僕が集中して臨むことができれば負けることはないです。

福田の王座戴冠も、一緒に体感した弘田

釜谷 ここ数年の中で一番、福田君と戦っているのが颯志君やと思いますよ。

同じフライ級で、福田君のセコンドにも就いていますしね。

――それは楽しみです。先ほど「最短距離」と仰いましたが、何試合目あるいは何年後にUFCへ辿り着きたいと考えていますか。

釜谷 それに関しては正直何とも言えないです。ただ、最初に会った時に「UFCに行きたい」と言われても、それは無理やと思いました。でも今はあと3試合ぐらいKO勝ちして、来年RTUが開催されれば、颯志君も選ばれるんじゃないかと考えています。それが今の僕たちにとっての最短距離ですね。次の対戦相手を倒す前提で喋っていて申し訳ないけど、3戦目は国内のチャンピオンクラスと対戦させたいです。

弘田 僕も毎試合そのつもりで準備しています。次はテイクダウンがしつこい選手ですが、最初だけ注意して自分の展開に持ち込みたいです。まだまだ足りひんところもあるけど、少しずつ目標に辿り着けるように頑張りますので、宜しくお願いします」

■Grachn62視聴方法(予定)
7月23日(日)
午後0時30分~Grachan放送局

■Grachn62対戦カード

<ライト級/5分2R>
林 RICE 陽太(日本)
小川道的(日本)

<無差別級/5分2R>
ハシモト・ブランドン(ブラジル)
岡本純一朗(日本)

<68㎏以下契約/5分2R>
鍵山雄介(日本)
村田俊(日本)
※当初、鍵山と対戦予定だった室井大勢が怪我のため欠場に。対戦相手が村田に変更となった

<フェザー級/5分2R>
大搗汰晟(日本)
櫻庭泰裕(日本)

<ウェルター級/5分2R>
青木忠秀(日本)
モリシマン(日本)

<フライ級/5分2R>
弘田颯志(日本)
田中智也(日本)

<ウェルター級/5分2R>
上田拳翔(日本)
遠塚浩希(日本)

<ストロー級/5分2R>
藪本龍作(日本)
大貴(日本)

<バンタム級/5分2R>
中嶋紳乃介(日本)
有田一貴(日本)

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【Grachan62&MMA甲子園】「いま僕が死んだら、グラチャンはなくなる。でもMMA甲子園は、僕が死んでも残るものでないといけない」岩﨑ヒロユキ-02-

【写真】素晴らしい覚悟のある言葉です (C)SHOJIRO KAMEIKE

23日(日)に大阪府豊中市の176BOXで開催されるGrachan62を前に、岩﨑ヒロユキ代表がMMA甲子園の実行委員長に就任した。
Text by Shojiro Kameike

プロ興行のグラチャンと、グラチャンのもとで開催されるアマチュア大会グラチャン・チャレンジとの関係、大阪でのアマチュア展開など岩﨑代表の想いを訊いた。

<岩﨑ヒロユキ・インタビューPart.01はコチラから>


――MMA甲子園の話に戻りますが、階級と減量についてはどのようにお考えですか。現状、MMA甲子園で設定されている最も軽い階級はフライ級です。高校生の場合、ストロー級が最適な選手もいるかと思います。

「階級については悩みました。実行委員会の皆さんとも相談していて――たとえば身長×体重でレギュレーションを考えるとか。でもMMA甲子園はアマチュア大会で、当日計量ですし、何をどうやっても減量はするわけじゃないですか。となると選手に無理な減量をさせたら所属ジムにペナルティを課すなどの対応を検討しています」

――まだ体が出来上がっていない段階で大幅な減量をしてしまうと、その後の身体形成に関わってきますからね。

「それは実行委員会と所属ジムが二人三脚でやっていくしかないです。実行委員会としても常に目を配っておかないといけない問題で。減量については選手ではなく、所属ジムの問題として捉えます。何かあれば所属ジムにも問題意識を持ってもらうように、実行委員会としても指導していくしかないですね」

――高校生の大会を開催するためには、プロ興行も問題意識を持たなければいけないと思います。キッズから高校生までが目標としてくれるようなプロ興行を開催すること。アマチュア大会だから厳しい、プロ興行だから緩い……ということは、あってはいけないわけで。

「計量について言えば、人間だから誰でもミスすることはあります。ミスした時にどうするのか。グラチャンに関して言うと、計量オーバーしたら次は同じ階級でオファーしません。いつも計量をクリアできるかどうか危ない選手には、常に指導し続けています。誰かは名前を出せないけど(笑)。

MMA甲子園では、そういった規約を明確にしておいたほうが良いでしょうね。一度計量オーバーしたら、二度とその階級で出場することはできないとか。そのためにもプロ興行を正しく運営していかないといけない、という意見は分かります」

――では、プロ興行においてタトゥーをどうするのか。MMA甲子園ではタトゥーが入っている選手は試合に出場できない。でもプロ興行なら良いのか。近年はタトゥーを入れることも一般的にはなってきましたが、アマとプロの関係を考えると問題は残ります。

「MMA甲子園ではタトゥーが入っている場合、オフィシャルのラッシュガードを購入してもらいます。ということは、それだけお金が掛かってしまいますよね。高校生にとっては決して安くない金額です。余計なお金を掛けたくないなら最初からタトゥーを入れない、という考えを持ってもらいたいですね。

一方で、プロは仕方ない面もあります。今はYouTubeでMMAを観ると、国内でも海外でもタトゥーが入った選手ばかりで。だからこそ、MMA甲子園なんですよ。『ラッシュガードを買わなきゃいけないなら、タトゥーを入れるのは止めようかな』と思ってくれる高校生が増えてくれたら――タトゥー問題に対して、MMA甲子園が少しでも抑止力になることができたら嬉しいです。もちろんタトゥーはファッションだし、高校を卒業して20歳を過ぎたら自分でどうするか考えれば良くて。もう大人ですからね。でもせめて……高校生の間は、その時の気分でタトゥーを入れるのは止めてほしい」

――タトゥーが入っている選手のみがラッシュガード着用で、相手がラッシュガードなしだとアンフェアになりませんか。

「そうですね。もともとラッシュガード着用については道徳面を優先して考えました。ただしフェアにならないというのは、そのとおりです。両方ともラッシュガード着用にするか、相手がラッシュガード着用でもOKした場合に試合を認めるか等、今後の検討課題ですね」

――MMA甲子園を開催することで、グラチャンは何か変わりますか。

「あくまで別組織なので、MMA甲子園に紐づいてグラチャンを何か変えないといけない、ということはないです。先ほど言ったとおり、計量については今のやり方を貫いていきます。たとえ選手にとっては厳しくても」

――分かりました。ではプロ興行のお話に移りますが、7月23日は前回の大阪大会と比べるとタイトルマッチもなく、関西の選手が中心となっています。

「大阪で大会を行うかぎり、大阪の選手が出ないと意味はないですからね。僕としては、いずれ大阪大会は関西の選手だけで試合を組みたいと考えています。これは書いてくれて良いけど、今回は手塚基伸と海外選手の試合を組む予定でした。でも海外選手が出場できなくなってしまって……」

――それは残念です。手塚選手と海外勢の試合は見たかったですね。

「今大会でいえば、第一試合に出る有田一貴選手はグラチャン・チャレンジ(以下、GC)を経ている選手です。来年は大阪大会でも、もっとGC出身選手がプロデビューすると思います。ようやく撒いてきた種が実を結びつつあるんですよね。

繰り返しになりますが、僕は選手にプロデビューしたことを後悔してほしくなくて。今まで、いろんな選手を見てきました。正直、グラチャンも初期は『プロかどうか』というレベルの選手も出ていたと思います。そういう選手が負けて、格闘技を辞めてしまう姿を見てきたんです。

彼らもアマチュアだったら格闘技を続けていたかもしれない。プロデビューするからには辞めてほしくないので、まずアマチュアで経験を積んでほしい。そう思っているからこそ僕もアマチュアにこだわっているのかな、って思います」

――MMA甲子園に出場した選手が芽を出すには、何年かかると思いますか。

「最低、3年はかかるんじゃないですか」

――MMAだけでなく、それこそ格闘技界だけでなく日本全体が経済的にも厳しい状況にあります。そのなかで高校生の大会を、いかにして3年以上続けていくか。

「だからこそ、各支部の力が必要なんです。僕ひとりだけでは絶対に無理ですよ。いま僕が死んだら、グラチャンはなくなるでしょう。でもMMA甲子園は、僕がいなくなっても残るものでないといけない。だから、しっかりと組織として固めていきたいです」

――グラチャン、GC、MMA甲子園以外にも今年開催された『J-MMAルーキーカップ』があります。

「ルーキーカップは10月8日が決勝で、来年も開催しますよ。これから各プロモーターの方々に相談します。今年は春に1回戦を行いましたが、来年は夏以降のスタートになるかもしれません。MMA甲子園の全国大会が来年に2月の開催予定ですからね。今後も楽しみにしていてください」

■Grachn62視聴方法(予定)
7月23日(日)
午後0時30分~Grachan放送局

■Grachn62対戦カード

<ライト級/5分2R>
林 RICE 陽太(日本)
小川道的(日本)

<無差別級/5分2R>
ハシモト・ブランドン(ブラジル)
岡本純一朗(日本)

<68㎏以下契約/5分2R>
鍵山雄介(日本)
村田俊(日本)
※当初、鍵山と対戦予定だった室井大勢が怪我のため欠場に。対戦相手が村田に変更となった

<フェザー級/5分2R>
大搗汰晟(日本)
櫻庭泰裕(日本)

<ウェルター級/5分2R>
青木忠秀(日本)
モリシマン(日本)

<フライ級/5分2R>
弘田颯志(日本)
田中智也(日本)

<ウェルター級/5分2R>
上田拳翔(日本)
遠塚浩希(日本)

<ストロー級/5分2R>
藪本龍作(日本)
大貴(日本)

<バンタム級/5分2R>
中嶋紳乃介(日本)
有田一貴(日本)

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【Grachan62】田中智也と対戦する弘田颯志 & 釜谷真─01─「極真空手の基本稽古や理屈、動きを考えたら」

【写真】関西でGrachanからというのも、注目です!! (C)SHOJIRO KAMEIKE

23日(日)、大阪府豊中市の176BOXで開催されるGrachan62で弘田颯志が田中智也と対戦する。

弘田は極真空手を経て今年5月にグラチャンでプロデビュー。鈴木嵐士を2R TKOで下し、今回のプロ2戦目に挑む。このルーキーが、いかにしてMMAに辿り着いたのか。所属するSWAG GYM KYOTOの釜谷真代表も同席してもらい、初インタビューに臨んだ。


――弘田選手はベースが極真空手だそうですね。

弘田 僕は極真館でした。極真会館と組み手は同じですが、違いといえば押しが有りなのが極真会館で、極真館は押しが無しでした。

――押しというのは、試合中に打撃ではなく手で押して相手を突き放す行為ですよね。まずは極真館で空手を始めた理由を教えてください。

弘田 4歳の時に僕は行儀が悪くて、お父さんに道場へ連れて行かれたんです(苦笑)。

――子供に行儀を教えてもらおう、と。どれくらい行儀が悪かったのですか。

弘田 買い物に行ったら、並んでいるペットボトルを全部倒したりとか……。当時は何も考えず、ただ楽しいなぁと思って。そういう癖が治らなかったんです。

――子供は何でも触りたがりますし、仕方ない面はありますね。お父さんは空手をやっていた経験があったのでしょうか。

弘田 いえ。お父さんはK-1が好きで、会場でも前のほうの席で観るぐらい好きでした。

釜谷 その時代に、子供に格闘技を習わせ始めた親御さんって多いですよね。お父さん、何歳やったっけ?

弘田 今、52歳です。

釜谷 それぐらいの年代ですよね。自分も当時、山本KID徳郁さんに憧れて自分自身がMMAを始めましたし。僕たちの世代もやっぱり魔裟斗さん、KIDさん、五味隆典さんですよ。

弘田 そこから空手を15歳までやっていて、極真館の世界ユース選手権で優勝しています。東京オリンピックで空手が正式種目化されることになるっていう話になった時、極真館は全日本フルコンタクト空手道連盟に加盟していて、「もしオリンピックに出られたら良いなぁ」って楽しみやったんですけど……。

空手ってアマチュア競技やから、試合をしてもお金は貰えないじゃないですか。「もしオリンピック競技になったら、自分が道場を開いた時に空手で生活していけるようになるんかな」とか考えていました。

――――結果、フルコン空手はオリンピック正式種目にはなれませんでした。ただ、その頃から空手で生活することを考えていたのですね。

弘田 いえ、もともと空手を続けようとは思っていなかったです。「他のことがやりたいなぁ」と思って高校ではサッカー部に入ったり、高校を卒業したあとは別の仕事をしていたんです。でも自分は体を動かしてお金を稼ぐほうが合っていると思って。自分にとって一番自信があるのは空手というか格闘技だし、格闘技で一番稼げるのはMMAじゃないですか。

ちょうどその頃、同じ年代の那須川天心選手がRIZINでMMAを戦った時の時の動きが印象的だったんです。極真空手をやっていた選手がMMAを戦ったら、こういう動きになるんやって。というより、極真空手の基本稽古や理屈、動きを考えたら「MMAではこうなるよな。自分にもMMAは戦える」と思いました。ちょうどその頃、ウチで飼っていた犬が死んでしまって……。家族の中で、その出来事がとても大きくて」

――えっ、犬? どういうことでしょう?

弘田 犬が死んで、家族も大きなショックを受けました。僕はまだ子供でしたけど、自分の家族が明るくなってもらうには、どうすればいいのか。そう考えた時に僕がMMAで活躍すると家族も喜んでくれるやろうし、お金も稼いで家族を養っていけると思いました。だから、明るい目的でMMAを始めたんじゃないんです。

──それが明るい目標ではない、とは思いませんが……。とはいえ、子供ながらに家族を養いたいと考えたことは驚きです。釜谷代表も驚いた表情をしていますね。

釜谷 いや、この話は初めて聞きました。そうやったんや……。

弘田 すみません。ちょっと言うのが恥ずかしいし、わざわざ言うもんじゃないなと思って――この機会に初めて言わせてもらいました。

釜谷 僕が颯志君と初めて会ったのは、彼が京都にあるウィザード・キックボクシングジムで練習していた時でした。ウィザードの田邊一鷹会長とは、時期は被っていないけど同じジムに所属していた縁もあって、僕が京都にMMAのジムを出したいというお話をさせてもらったんです。そうしたら田邊さんから「ウチにMMAをやりたいという子がおるんやけど、マコちゃんのジムが立ち上がるまで待たせるわ」と言ってくれて。それが颯志君やったんです。その後に僕が京都へ戻ってきて、彼と一緒に練習し始めました。

――ということは、弘田選手は釜谷選手の弟子ではなく、京都に戻ってきてからの練習相手としてスタートしたのですね。

釜谷 そうなんです。京都に戻ってきてから一番練習したのが、颯志君でした。もちろん颯志君も最初はMMAの動きを知りませんでした。だから一緒に練習したあとに僕から「この部分はどうやった?」と聞いて、分からなかったところを説明したりとか。でも最初から飲み込みが早く、僕にとっても良い練習になっていましたね。

弘田 空手時代に基本稽古をやっていたので、MMAでも「これはこうやったら、こうなる」という理屈を理解するのは早かったと思います。でも、それが実際に動きで出せるかは別で、できないところは一人で体に覚えるまで繰り返していました。

釜谷 さっき「家族を養うために」という話があったじゃないですか。僕は今日初めて聞きました。でも聞いてみて、颯志君と出会ってからの3年間が繋がったような気がします。確かにMMAへの取り組み方が最初から違いましたよね。僕のイメージやと、20代前半って何も考えていないもので。「とりあえず練習して強くなりたい。あとは遊びたい」という気持ちでした(笑)。でも颯志君と会って、「こういう子もいるんや」と思いました。

弘田 自分が集中できるもので勝負したら、誰にも負けへんっていう気持ちがありました。その集中できるものの一つが格闘技で。別に殴り合いが強いとか、そういうわけじゃないです。自分が打ち込めるもの――それが格闘技で。MMAで一番大きいところはUFCやということは子供の頃から知っていて、自分もUFCに行きたいと思っています。

<この項、続く>

■視聴方法(予定)
7月23日(日)
午後0時30分~Grachan放送局

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