【写真】黒帯のストライプルが2本になっている松嶋。コレをやって役にたつのか?!(C)MMAPLANET
お蔵入り厳禁──8月21日(金・現地時間)にABEMAで中継されたONE110「No Surrender III」のゲスト解説を務めた松嶋こよみインタビュー後編。
Road to ONE出場がなかった松嶋はMMAファイターがほぼ行うことがない空手の型稽古を採り入れている。フルコンタクト空手でもポイント空手でのない、武術空手の稽古は松嶋に何をもたらしているのか。
<松嶋こよみインタビューPart.01はコチラから>
──ゲイリー・トノン、タン・リーという名前が挙がりましたが、その2人を現時点でのターゲットにしているということですね。
「やはり今すぐに戦って勝てるというプランが頭に浮かばない2人ですし。簡単にそういうモノが出てくる相手ではないです。それこそ、もっともっ積まないと勝てない相手だとは分かっています。だからこそ、この2人と戦いたいんです」
──現代の有明省吾と剛毅會では呼ばれている松嶋選手としては……。
「誰も分からないですよ。その呼び方をしても(笑)」
──大山倍達総裁が極真史上、最高の天才と称したとされる春山一郎という実在した人物をモデルとした空手バカ一代の登場人物であることは一応説明させていただきます。そんななか、あまり武術空手を語ることがない松嶋選手ですが、以前に取材以外での会話のなかで『ナイファンチは型をやっていてもまだ分からないですが、サンチンは掴めてきてMMAで生かせる』ということを言っていましたが、その言葉の真意を教えていただけないでしょうか。
「それは……何が生きているのか、動きや技術面として言葉で言い表すことはできないのですが……一番は僕は目線かと思っています」
──目線?
「ハイ。構えている時の目線、視線が死んでいる時というのがあります。こういうことを話し始めると、MMAの選手たちは『何を言っているんだ』という感じになってしまいますが、僕のなかでは視線が死んでいる時があるんです。
でも構えてフとした時に、ハッと……全部、擬音になってしまうのですが(苦笑)、開いた瞬間にパンチが見える」
──それは姿勢や目の位置が同じであっても死んでいる時と、見える時があるのですか。
「細かいことでいえば手の位置とか、姿勢は違っているのかもしれないですが、見えるんです。心の持ちようもあるかと思いますけど、色々なことが合わさって自分の構えが良くなったと思います。
それこそ今、前傾姿勢で戦っているのですが、そういう時ってどうしても頭は下がります。でも、その気持ちがあるだけで自分が楽になるんです」
──サンチンの構えを取らなくても、サンチンの型の稽古をしていることで、その気持ちを思い起こして活用できるということですか。
「ハイ。サンチンの構えを取らなくても、自分が瞬間的にフッと開いているなという気持ちでいるだけで、自分の状態が良くなっているんじゃないかと感じます」
──それがサンチンを体得できているということなのですか。
「いや、体得できているなんて言えません。全然、まだまだだと思っています。そういう気持ちの部分以外でも、肩の使い方や、ヒジが体側から離れるタイミングで拳を回転させるなど威力のある突きを打つことができるはずなのですが、まだ自分のなかで落とし込めていないです」
──つまりはサンチンで培ったモノを心身ともに威力、力として活用するわけであって、相手のパンチを廻し受けし、虎口のようなタイミングで掌底やパンチを入れるということではないと?
「ここは断言できますが、cです」
──おお、そういう風に言い切れてしまうのですね。あれができると格好良いなとか浪漫を追い求めるのではなく。
「練習の時点でそういうことをやると、それは試合のための練習にはならないです。それこそサンチンの型には、色々な動作、体の使い方はありますが、そこによって培われた内面を生かすことだと僕は考えています。あの型の動きが、MMAに生きるとは思っていないです」
──リアリティと浪漫、秘術の違いですね。そういう夢を見なくてトライできるのが凄いですね。
「やって損はないですから。だって日本人の打撃はキックでもなく、ムエタイでもない。日本にあったのは空手じゃないですか。せっかく日本には空手があったのに、皆はそこを学ばないんだなぁって思っています」
──キックボクシング、ボクシング、ムエタイは内面で生かすのではなく、練習した技術を落とし込むことができますよね。その違いは大きくないでしょうか。
「でもK-1やムエタイの距離とMMAは違うので、そこも習った技術がそのまま生きるというのは別だと思います。だから、個々の競技で習ったことをMMAに落とし込む作業は必要ですし。実際、僕もキックボクシングのジムに行かせてもらってキックのスパーリングをしていますけど、そのスパーがMMAで直接生きると思ってやっているわけではないです……でも、なんでやっているのかな。アハハハハ」
──そもそも剛毅會の武術空手は競技としてのカテゴライズを考えるとフルコンタクト空手でも、ポイント空手でもありません。要は琉球で培われていた競技化、むしろ体育科する以前の空手を探求しているような。
「だから僕がやっている空手の稽古はK-1やキック、ムエタイよりもMMAに生きると思っています」
──例えば松嶋選手のパンチは、低い位置からまっすぐ出ることがあります。それはサンチンで培ったからでしょうか。
「自分では理解していないですが、2月のキム・ジェウン戦で奪ったダウンは岩﨑先生曰く『そうです』。でも自分ではサンチンの突きで殴り倒したという自覚はないです。それこそボクシングもやっているから、できたとも思っていました。ただ後々、映像で見返して見るとヒジを返していたり、ちょっと違う殴り方をしていました」
──サンチンの動きが入っていたと。
「それでも武術って実際には使うモノじゃないような気がしています」
──それが路上の現実を指すモノであれば暴漢に襲われた、切った、刺したということが身の回りにあるほうが危険すぎますしね。
「それこそマインド的なやることで、それが勝手に試合で出たんじゃないかと思います。だから、こういう感覚ってどう説明すれば良いのかも難しいですし、誰もがハマるかといえば全然そうじゃないでしょうし。でも、僕にはそれがハマったということです」
──マインドということですが、メディテーションとはまた違うのでしょうか。
「メディテーションは別物です。武術も格闘技もMMAも、どのスポーツも感情の起伏が試合中で出てしまいます。その部分をできるだけ減らしたくて、僕はメディテーションをやっています」
──その効果の程は?
「自分のなかで精神的な波がなくなってきました。それが空手と良いように融合してきたかと思っています。2月の試合は特にそのように感じました。以前は……それこそAACCに所属していた時期は、ガッと攻めて殴れば良いという感覚で空手をやっていました。結果的に空手が自分の中に入ってきていなかったです。
それが今ではメディテーションとの相乗効果で空手が入ってきて、凄く良い練習ができています」
──MMAをやるうえでどのような稽古も真剣にしていれば無駄はないと思います。ただし、効率的かどうかはある。正解があるとすれば試合で勝つこと。と同時に勝った、負けたで正解、間違いもない。結果と鍛錬によって得る効果、あるいは強化とは別物という難しさがあります。
「だから面白いという見方もできると思います」
──結果ムエタイにも興味があって、土曜日はムエタイに行こうとなるわけですね。
「あっ、でも明日(※収録翌日)は昇段審査があるんです。サンチン、ナイファンチ、セイサン、パッサイ、クーサンクーの型を全てやります」
※剛毅會空手二段に昇段
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