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【Bu et Sports de combat】武術的な観点で見るMMA。グティエレス✖コラレス「答が必要」

【写真】今回は定位置で養成されたパワーを繰り出すことはできなかったグティエレス (C)Zuffa/UFC

MMAと武術は同列ではない。ただし、武術の4大要素である『観えている』状態、『先を取れている』状態、『間を制している』状態、『入れた状態』はMMAで往々にして見られる。

武術の原理原則、再現性がそれを可能にするが、武術の修練を積む選手が試合に出て武術を意識して勝てるものではないというのが、武術空手・剛毅會の岩﨑達也宗師の考えだ。距離とタイミングを一対とする武術。対してMMAは距離とタイミングを別モノとして捉えるスポーツだ。ここでは質量といった武術の観点でMMAマッチを岩﨑師範とともに見てみたい。

武術的観点に立って見たクリス・グティエレス✖フィリップ・コラレスとは?!


──グティエレスは移動のパワーでなく、定位置でエネルギーを養成することができる珍しい選手だということでしたが、今回はコラレスの蹴りの前にその良さが出せていなかったように見えました。

「結論から言いますと、グティエレスはコラレスをビビっていました。ただし、蹴りに対してではないです。パンチが怖いから、下がってカウンターで倒そうとしていました」

──蹴りで養成したエネルギーを出す機会を奪われたのではなく?

「コラレスの蹴りは、足でペチャンって出しているだけで威力はないですよね。あれは効かないです。拳(ケン)にチンクチが掛かるかのように、蹴りも爪先やカカトという先端部分までエネルギーが伝わっているかどうかで、威力も決まります。

コラレスの蹴りは当たった時に足首から先がプラプラァとしていて、体のエネルギーが爪先まで伝わっておらず、質量が低い蹴りなんです。ですから、効かない蹴りよりもコラレスの前進してからのパンチを嫌がっていた。コラレスもパンチでいけば良かったのですが、カウンターのパンチを嫌がっていたのかもしれないです」

──ともあれグディエレスがアンドレ・イーウェル戦で見せた定位置でのエネルギーの養成もなかったということですね。

「定位置でエネルギーを養成するという部分では、止まった位置で力を創っているのですが、それを運ぶという作業、エネルギーで前進するという点ではピエラ・ロドリゲスの方が上です。そして今回の試合ではただ単に下がってしまっていました。だからエネルギー云々という部分では、グティエレスは話にもならないです。

コラレスの方が質量が高くて、そこに対してただ下がる。それは無防備で下がっている危険な行為です。選択したのが、下がって一発狙い。結果、決して褒められた前進ではないコラレスを勢いづけています。その前進により、コラレスの質量は上がっていました」

──それでもグティエレスが2-1の判定勝ちを収めます。

「それがもう分からないです。1Rと2Rはグティエレスがどう勝とうとしていたのか。3Rはもうコラレスが疲れたのか、右を打たれてからはグティエレスの試合になりました。でも最後の30秒か、言ってみると10秒の間だけです」

──岩﨑さんの見立てだと29-28でコラレス。同じ裁定のジャッジが1人いました。ただ、残りの2人は30-27なんです。

「30-27でグティエレスというのは……それはもう全然分からないです。明確なのは3Rですけど、あのラウンドのグティエレスは良かったんです。ただし、1Rと2Rのカウンターを取りに行った作戦は失敗です。カウンター狙いが逃げになっていたので。それでもグティエレスになるのは……分からないです。

そして定位置でエネルギーを養成できるというのも、そこには法則性がなかった。でも法則性があっても、相手や自分のコンディションで発揮できないことは多々あります。それに定位置でエネルギーを養成していることを指導者が良いと判断していないと、続けられることもないです。

だから私は選手が型をやる必要はないと思っています。でも指導する側は私の場合は型ですが、なぜこうなったのかという答が必要なんです。答を持っているのかどうかで、指導は変わってきますからね」

──と同時にこの試合でグティエレスは勝った。なら指導は間違っていないという見方が成り立ちます。

「勝てばハッピーです。それはコーチも。と同時に、ダメだったところは洗い出さないといけない。試合は勝つためにやります。なので武術の本質をそこで取り入れ、追及することで負けてしまっては何もならない。

明確にジャッジの裁定基準が、空振りでも手数を出して前に出ていると勝てるのであれば、私も試合ではそうさせます。試合は勝つために戦うものなので。そのなかで前進すれば勝てるけど、前進するリスクと危険性を指摘できるようでいたいです。

そのうえで前進して、試合に勝たせに行きます。空振りでも評価されるなら、空振りもさせます。勝つことが一番大切なことですから。それが武術と競技の違いです。だから武術の叡智を生かすのは、テクニックや動作だけではない。これだけ厳しい競技をやっているなかで、自分の持っている武という部分からも、その過酷さを説き、精進させることだと思っています。

武術とは生きる、死ぬというなかで生まれたものです。生死が掛ったところの深刻さから生まれた叡智を格闘技で生かすというのは、そういうところでもあるはずです。だから辞めるなら辞めれば良い。そんなことしないでも格闘技の試合は出ていけます。でも、UFCだ、海外だっていうのなら、それぐらいの気持ちでないとあの連中を相手にして、やり合うことはできない。

私は競技をやってきたけど、殺し合いは経験していないです。だから武術を勉強するんです。

武術をやっていない人間だって、実社会でえげつないことを平気でやっています。それはルールがあって、時間があり、審判がいる格闘技とは比べモノにならない、残酷なことをやります。その残酷極まりなさを考えることで、戦わない平和を追求できると思います。実社会は性悪説のえげつないところです。武術はそういう場で、平常心でいられるよう鍛錬するものです。海外で、UFCで勝つという目的を持った馬鹿者には、武術の叡智が5分✖3Rの戦いで生かせることができればなと。それは男の浪漫。格闘浪漫です」

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Bu et Sports de combat グレゴリー・ホドリゲス パク・ジュンヨン ブログ 剛毅會 岩﨑達也 武術空手

【Bu et Sports de combat】武術的な観点で見るMMA。ホドリゲス✖パク・ジュンヨン「自己否定」

【写真】乱打戦になった幾重もの要因を突き詰めていく──と (C)MMAPLANET

MMAと武術は同列ではない。ただし、武術の4大要素である『観えている』状態、『先を取れている』状態、『間を制している』状態、『入れた状態』はMMAで往々にして見られる。

武術の原理原則、再現性がそれを可能にするが、武術の修練を積む選手が試合に出て武術を意識して勝てるものではないというのが、武術空手・剛毅會の岩﨑達也宗師の考えだ。距離とタイミングを一対とする武術。対してMMAは距離とタイミングを別モノとして捉えるスポーツだ。ここでは質量といった武術の観点でMMAマッチを岩﨑師範とともに見てみたい。

武術的観点に立って見たグレゴリー・ホドリゲス✖パク・ジュンヨンとは?!


──ホドリゲスはLFAからUFCと当企画で追ってきた選手です。LFAのミドル級選手権試合ではジョシュ・フレムドを「UFCへ行く」という高い意識を持って戦い右ストレートでKO。2週間後のUFCデビュー戦ではドゥスコ・トドロビッチからマネージメント力で判定勝ちを収めました。

「ホドリゲスはスタートの段階で、ペースを完全に創っていてパクが完全に吞まれています。その一方でホドリゲスは構えが良くなかったです。試合前のインタビューで『攻め過ぎてパンチを被弾するようなミスはもうしない』と慎重に戦うようなことを口にしていましたが、効かせた後に攻めたことが悪いのか──攻め方が悪かったのではないかと、この試合を見て思いました。

正しい攻めをしていれば、逆転されることはなかったでしょうし、そこも良い・悪いよりも、自分の攻めがどうだっかをしっかりと検証できているかどうか。一番大切な部分だと思います」

──しかも、慎重に行くと言っていた割には途中でパンチを被弾して、危ないシーンもありました。

「ハイ。落ち着いてペースを握って、試合をドミネイトしていく気概にパクは下がっているんです。

ただし、パクはこういうホドリゲスのようなブラジル人選手ともまた打ち合おうと前に出ることできました。ただし、そのケースで結果がどうなってきたかはもう過去の試合を振り返るまでもないです。

欧米人の100パーセントに対し、アジア人が自分の100パーセントでぶつかっても勝てない。だから相手の100パーセントを90パーセント、80パーセント、70パーセントと下げさせる工夫が必要です。自分の100で相手の100には対抗できない。あの勇敢さは素晴らしいですが、勝てないという結果が残ります」

──と同時にプロモーターが望む試合になっています。

「そこはもう私の関与できるところではないので(苦笑)。私の役目は弟子を勝たせることですから、そういう見方はできないです。ただ、そういうプロモーターに歓迎される試合になるのも、韓国人選手は相手の100に対して、自分の100をぶつけることができるからでしょうね。

これが日本人選手の場合は、相手の100が強大だと自身の100が90、80パーセントと自分から落ちて行ってしまうケースが多かったです。日本人同士の殴り合いで勝てた選手が、外国人選手と戦うと打撃戦にならない。自分の拳が強いのではなく、相手の質量が低いところで勝ってきただけなんです。

だから外国人選手と向き合うと、自分の100パーセントを出せない。これは少し話が飛躍しますが、KO負けのトラウマから、攻めることができなくなるケースがMMAでもあるじゃないですか」

──ハイ。イップスですね。

「それを弟子と話していて。どうすりゃ、イップスから逃れることができるか……他のスポーツは分からないけど、殴り合いにはその解決方法があるっていう話をしていたんですよ」

──どのような解決策が存在しているのですか。

「両手に石ころを持つんです」

──へっ?

「両手で石ころを持った時点で、イップスは直ります」

──……。

「もちろん、試合でやると反則です。イップスの選手は練習でも、当てることはできなくなっているかと思います。それに実際に石ころを掴む必要はないです。そのイメージを持つ、それだけで変わるんです」

──そうでないと、試合で石ころを握るわけにはいかないですし。

「つまり石ころを握っている──そういうイメージでいると、質量を下げないで戦えるということなんです」

──ただし韓国人選手の多くは、その必要がなく殴ることができると。

「その通りです。もともとが欧米人の満点が100点だとして、満点で90点しかないパンチを日本人選手は60点まで自分で下げてしまう。でも韓国人選手は90点のまま戦えます」

──ただし相手が100点の場合は、90点では勝てない。

「ハイ。だから面白いモノです。彼らが相手の100を90、80と下げる戦いをして、自分の90の力でいけば結果も残ると私は考えています。相手のパンチを90を落とす工夫があれば。

石ころを一つ握って殴るイメージを創る。そのためには選手も、指導者も今まで通りでないということを踏まえ、考えて稽古をしないといけないです。拳の握りから、パンチの打ち方、ミットの受け方。石を一つ握るだけで、握らないパンチとは違うわけですから。

イップスだと思われている選手が、これまでと同じ練習をしていても直らないように、外国人選手と殴り合うには、考えて練習、そして指導をしていかなければならない。それにはまず自分のやっていることを疑うこと。この自己否定が、あまりないですね。

自己否定しないと、伸びないです。強くなるには自己否定と自己破壊は欠かせない。つまりは、今の状態はどうだろうって考えることなんです。

なんだか安心するための練習が多いように感じます。それで良い人もいます。と同時に、UFCだ、海外だっていうなら練習は自己否定、自己破壊。MMAって他のスポーツと比較にならないぐらい残酷な格闘技をやっていて、気持ちの良い練習や安心するための練習では絶対に欧米人に勝てない。今のままで良いわけじゃない。そういう練習ができない臆病者がオクタゴンで戦えるとは思えないです」

──……。

「そういう部分も踏まえて、このホドリゲスとパクの試合を見なおしてほしいです。2Rにパクがパンチを振るってテイクダウンへ行く。もうケージ際でガードも、何もない打ち合いをしてホドリゲスが組みに行った。ここでダブルレッグをパクは切って、がぶります。

あそこでギロチンなんか仕掛けない方が良かったですよね。ホドリゲスの方が寝技は強いのは1Rで明らかった。あれだけ見事に攻められていたのに、テイクダウンを切ってスタンドに戻らなかったのはパクの失敗です。加えて、なぜかホドリゲスもバックグラブに入ったのに自らフックを解いて試合はスタンドに戻りました。

で、また殴り合いから先に組んだホドリゲスが、見事に払い腰を決めた。ここでもホドリゲスはバックに回りながら、寝技に固執しない。立ち上がって胸を合わせたパクが打ち合いにいきます。

ホドリゲスはパンチは重いです。本当に重い。だけど打ち方も悪く、相手とのやり取りの中でぶん殴り合いが良くない。ぶん殴ることは悪くないが、ぶん殴り方が悪い。結果的にパンチの重さで、倒しましたが危ない試合でした。

ホドリゲスは押すパンチになっていましたね。組み技の選手に多い打ち方ですね。拳銃なんかも打った勢いで、弾は貫通します。当たってから力を入れるのではなく。そういう押す打ち方をイチ・ニ、イチ・ニというリズムで打っているだけで、連打という回転運動にもなっていない。だからパンチを被弾してしまう。パンチの打ち方が悪いのに、パンチを打っている。パンチを打つことは悪くないですが、パンチの打ち方が悪い。

それでも前腕に力があり、パンチが重いです。本来は前腕に力のある人は、力んで威力のあるパンチが打てなくなります。それがホドリゲスは良い具合に疲れていて、力が入らなかった。結果的に力が抜けたリラックスした状態でパンチを当てることができました。打撃の質でいえば、どちらが勝ったか分からない試合でしたが、アレは食らえば重いです。

今後、ホドリゲスにしても、この試合で勝ったことでより上の相手と戦うことになるでしょう。そうなると彼のパンチが当たっても倒れない選手も出てくるでしょう。しっかりと打ち方を見直した方が良いと私は思います。これじゃ相手は倒れない。そういう自己否定が必要です。勝った試合直後だけに。

選手にとって一番大切なのは目の前の試合に勝つことです。そこをクリアしたからこそ、ここで自己否定──自分を見直す向上心があれば、この選手はもっともっと強くなれる、もっと怖い選手になれるはずです」

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Bu et Sports de combat LFA ピエラ・ロドリゲス ブログ ヴァレスカ・マシャード 剛毅會 岩﨑達也 武術空手

【Bu et Sports de combat】武術的な観点で見るMMA。ロドリゲス✖マシャード「法則性と再現」

【写真】UFCとの契約に向けて意識の高さと、重心のコントロールに良さが見えたロドリゲスだが、前回の試合のようにエネルギーで前進するという動きはできていなかった (C)Zuffa/UFC

MMAと武術は同列ではない。ただし、武術の4大要素である『観えている』状態、『先を取れている』状態、『間を制している』状態、『入れた状態』はMMAで往々にして見られる。

武術の原理原則、再現性がそれを可能にするが、武術の修練を積む選手が試合に出て武術を意識して勝てるものではないというのが、武術空手・剛毅會の岩﨑達也宗師の考えだ。距離とタイミングを一対とする武術。対してMMAは距離とタイミングを別モノとして捉えるスポーツだ。ここでは質量といった武術の観点でMMAマッチを岩﨑師範とともに見てみたい。

武術的観点に立って見たピエラ・ロドリゲス✖ヴァレスカ・マシャードとは?!


──ピエラ・ロドリゲスが4月にLFA女子ストロー級王者になった試合で、岩﨑さんは『ロドリゲスは前進した時に質量が上がる。エネルギーが出ている移動。それがなくて前に出ると相手のパンチを被弾するだけ。しかもロドリゲスは前進してエネルギーを伝えるのではなくて、エネルギーで前進していて参考になる選手』と言われていました。今回の試合では、そのエネルギーで前進するということができていたのか。

「結論として、なかったです。今回は重さのロドリゲスと前進のマシャードという試合でした。ただロドリゲスはパンチを打つ際のヒジの角度が良かったです。MMAグローブで戦う上で理想に近い打ち方でした。

クロスレンジという打ち合いのなかで、有効なパンチでした。ただし、そこを狙い過ぎていた感がありました。その狙い過ぎが影響しているのか、エネルギーで前進するということは今回の試合ではなかったです。

そして試合は前進している方が有利になります。マシャードという選手はまるで知らなかったのですが、コンテンダーシリーズという一発勝負のオーディション番組で、もう殺るか殺られるかという意識でまず戦っています。

そのなかでロドリゲスは最初、頭の位置が後ろで。顔面攻撃のある試合で、相手が前に出てくる。それなのに頭の位置が後ろにあると、もう下がるしかできなくなります。いきなり受けに回っており、最悪の姿勢といえます」

──ハイ。

「ところがロドリゲスが1Rの中盤にワンツーから3発目の右クロス──返しの右を当てて、ダウンを奪います。この選手は重心のバランスがある。自分でコントロールしていましたね。ただし今回の試合もLFAのタイトルマッチもロドリゲスは激闘になっています。そこをどう見るのか。工夫して、一方的な試合にしろというのが本来の格闘技の捉え方だと思いますが、このオーディション番組では激闘が喜ばれ、慎重に戦うと評価されないという背景がありますよね。

だから今のトレンドでもある蹴りの距離にならないのか。蹴りがとにかくなかったです。上と下の連動が2人ともなかった。あの距離だからテイクダウンにも入りやすかったですし、ちょっと以前のようなMMAに感じましたね。

ただ、それでも蹴りは使えますが、そのような練習環境にないのかもしれないです。まぁアグレッシブネスが最重視されているということなんでしょうね。距離を取って脹脛の蹴り合いだと、契約してもらえないと」

──その通りですね。

「良い試合だった。良かったねぇということが一般的になってきて、そこから反省をするというのが難しくなっていると思います。私の場合は空手を教えてくれる先生が、自己否定から入る方でした。それはもっと良くなると信じているからこその裏返しなんです。

ロドリゲスがそういう環境にあるのか。ただし、ロドリゲスには『この人に殴られたくない』っていうパンチがあります。簡単にいえば魅力的です。打撃の質量に関しては、1Rの中盤から3Rまで通して、ロドリゲスにありました。

結局のところは、その使い方なのでしょうね。良いのに、なぜか攻められるという……」

──途中で足を負傷したというようなことを試合後のコメントで口にしていました。

「あぁ、そういうことですか。それでもUFCに行くために、アレだけ戦ってしまう。凄いですね。凄い話です……」

──そこに前回の試合のように、エネルギーで前進することが常にできれば、と。

「前回の試合でエネルギーで前進できていたことが、再現できない。それが格闘技の特徴です。再現性がない、確認が試合でしかできていないからです。前回はデキた、今回はデキなかった。技術的なことではなく、そこがエネルギー的なモノであると結果論で判断するしかない」

──対して武術には……。

「ハイ、型があります。型があればなぜ、それができなかったのか。なぜ、できたのかという要因が分かります。型には法則性があるので。ただしロドリゲスの前回の試合と今回の試合をみると、法則性がないので再現できない──という風に結論づけることはできます」

──この日はデキた。次の日はデキなかったと。

「ハイ。自転車が乗れる日と乗れない日があっては、自転車レースには出られないです。法則性があれば自転車に乗れない日はなくなります。そこが何度も言ってきましたが、武術と格闘技の違いになります」

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Bu et Sports de combat MMA サンチン 剛毅會 岩﨑達也 武術空手

【Bu et Sports de combat】武術で勝つ。型の分解、サンチン編─17─サンチン、MMA実戦応用編─02─

【写真】武術の叡智をMMAに使う。武とスポーツ格闘技の接点、融合が生まれる(C)MMAPLANET

武術でMMAを勝つ。空手でMMAに勝利する──型を重視する剛毅會の武術空手だが、岩﨑達也宗師は「型を使って戦うということではない」と断言する。型稽古とは自身の状態を知り、相手との関係を知るために欠かせないモノであって、その形で戦うことではない。

サンチン、ナイファンチ、セイサン、パッサイ、クーサンクーの型稽古を行う剛毅會では、まずサンチンから指導する。5種類の型稽古にあって、唯一サンチンのみが意味を吸いて吐くという意味での呼吸を学ぶことができる。

全ての根幹となる武術の呼吸を学ぶことができる──サンチンの解析、MMA実戦応用編=第2弾としてサンチンで身に着けることができるMMAで有効な内面の攻撃について紹介したい。

<サンチン解析第16回はコチラから>


外面の攻撃と内面の攻撃

右ストレートを左手で払い


右を打ち返す


しかし左を打たれる。相手の外で受けて外で返しても、また外から攻撃を受ける


あるいはウェービングで避けても


左フックを返そうとしても、ヒザ蹴りを受ける

「これらの自身の中心がズレる動きは、外面の攻撃になります。自分の中心をずらして、反撃をする場合は相手の間にいることが多いです。結果、反撃を受ける。MMAで戦ううえで止む無く、こういう動きになることはありますが、自分が動いた結果、どのような反応を相手がするのかを考える必要があります。対して、武術空手の理を取り入れると外面ではなく内面の動きを重視することになります。つまり一番安全な動きは直線の動きになります」(岩﨑)

内面の攻撃とは、相手の突きに対し


軸をずらすことなく


腕受けをした時には、もう中に入っており


突きを真っ直ぐ返し相手の攻撃を被弾せず、自らの突きだけ当てることができる。「中に入って、さらに中に入る」のが内面の攻撃となる

※ただし内面の技を使えず、ただ直線的な動きをするとカウンターを合わされる

この動きを習得すると、腕受けもなく中に入って


突きを当てることが可能になる

武術空手サンチンの型で知る、軸がズレない動き──呼吸を含んだ詳細は第5回を参照──

左足前サンチン立ちから


左足に重心を掛け


右足を出し


その右足に重心を乗せる。この動きでは軸がズレて、外面の動きになるので相手の中を取ることはできない


このような外面の動きからの突きは、相手の中に侵入できない


武術空手のサンチンでは


相手に中を取るために可能な限り軸を動かさず、中を入って


前に進む。内回しで外側に膨らまずに中を進むことで、内面の動きとなる


結果、同じように受けて突いていても、相手の中に侵入できる突きになっている

「内面の攻撃は見た目は分からないが、サンチンによって動きを自身にインストロールできれば、中に入る動き実戦できるようになります」(岩﨑)

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Bu et Sports de combat MMA UFC UFC266 アレックス・ヴォルカノフスキー ブライアン・オルテガ ブログ 中国武術 剛毅會 岩﨑達也

【Bu et Sports de combat】武術的な観点で見るMMA。ヴォルカノフスキー✖オルテガ「人間の本質」

【写真】写真はオルテガのハーフになっているが、両者の勝つための選択が、この上下の位置取りだった (C)Zuffa/UFC

MMAと武術は同列ではない。ただし、武術の4大要素である『観えている』状態、『先を取れている』状態、『間を制している』状態、『入れた状態』はMMAで往々にして見られる。

武術の原理原則、再現性がそれを可能にするが、武術の修練を積む選手が試合に出て武術を意識して勝てるものではないというのが、武術空手・剛毅會の岩﨑達也宗師の考えだ。距離とタイミングを一対とする武術。対してMMAは距離とタイミングを別モノとして捉えるスポーツだ。ここでは質量といった武術の観点でMMAマッチを岩﨑師範とともに見てみたい。

武術的観点に立って見たアレックス・ヴォルカノフスキー✖ブライアン・オルテガとは?!


──UFC世界フェザー級選手権、王者アレックス・ヴォルカノフスキー✖挑戦者ブライアン・オルテガ。言葉にならない死闘でした。MMAとしても。

「MMAの深さを思い知らされました。ヴォルカノフスキーもオルテガも、彼らがマックス・ホロウェイやジョゼ・アルド、ジョン・チャンソンやフランキー・エドガーと戦った時と比べると、打撃に関しては申し訳ないですが、感心する部分はなかったです。

基本的に打撃の攻防が成り立っていなかった。リーチの長いオルテガに対し、入っていきたいヴォルカノフスキーが入れない。当然の図式のなかで、オルテガがヴォルカノフスキーのパンチを受けることができていなかった。ジャブに入れないヴォルカノフスキーですが、踏み込みの良いフックを持っていました。それをオルテガが被弾しています。

よく寝技ができないという表現がありますが、それって攻めて、守ってと寝技の攻防、やり取りができるかどうかだということです。打撃にしても、使ってはいても打撃ができない選手もいます。私のなかで打撃ができる、できないという物差しは相手の攻撃に合わせて打撃ができているのか。相手の動きにアジャストできているのか、です。相手の攻撃に対し、自分はどう防御して攻撃を出すのか。そのやり取りができないと打撃ができるとはいえないと思っています。

そのなかでスタンドの打撃に関して、今回の世界は2人ともできていなかったです。凄い試合だけど、やり取りができていない。なぜ、そうなったのか……」

──それが岩﨑さんからして、MMAの深さなのですか。

「いえいえ、そうではないです。3R、オルテガはヴォルカノフスキーのローに左ストレートを合わせて倒し、起き上ってきたところにギロチンからマウントに入りました。そこからですね、この試合の凄みは。5Rは疲れて、リスクをお互いにおかすことはなかったですが、ギロチン以降の3Rと4Rは互いのリスクの取り合いでした。基本、上がヴォルカノフスキーで下がオルテガ。上を取って抑え、立ってきたところをバック狙いで良いわけではないですか、ヴォルカノフスキーとすれば」

──ハイ、コツコツパンチで三角を凌げれば。

「それを立ち上がって、ヴォルカノフスキーは殴っていきました。立って離れるのではなくて、殴りました。さすがに三角は警戒していますが、オルテガの柔術の力があれば草刈りスイープでも何でも仕掛けることができます。そして、実際にパンチを落とすところで三角絞めもセットしていました。

いや、お前らどうなってんの?……ですよ。オルテガは殴られながら、一本を狙った。殴られる距離にいるから取れる。ヴォルカノフスキーも取られるかもしれないところにいるから、スペースがあってあのパウンドを落とすことができた。技がデキる者同士のどっちが退くのかというせめぎ合い、紙一重の戦いをしていました。全部ができて当たり前、できないことがあっちゃ、あの場には立てない。そうなると、どうすれば勝てるのかなんていう方程式は存在しないです。その状況で、絶対に負けないという意志力をもって選択したのがオルテガはガードからの仕掛けで、ヴォルカノフスキーはトップからのパウンドでした。

強い者同士は、絶対に引かない。そういうことなのでしょうかね……。引かないばかりか、自分にとって嫌な状況を創って、それを乗り越えて勝ちにいく。最近のMMAは柔術ができるけど寝ない。レスリングができるけど、テイクダウンにいかない。パンチは良いけど、倒すように戦わない。結果、遠い位置から脹脛を蹴り合うという展開が多かったです。全てがデキる人が、使わないという戦いですね。

確かにヴォルカノフスキー✖オルテガの試合は、武術としてはダメです。ボロボロになるような戦いはダメです。キューバ危機では大量の核弾頭を持った東西の大国が、結果として使わなかった。使ったら最後、両者が負けるからです。武術とは戦わずして勝つこと。その境地を目指す。ただし、そんなことをいくら口で言っても人間は殺し合います。自分だけが可愛いという性悪説があるなかで、米ソは戦争しないという勝利をキューバ危機で手にしました。

生の人間同士が、引くに引けない戦いをするなかで、人間の本質というものがヴォルカノフスキー✖オルテガの試合で見られました。人間の本質を勉強できる戦いを彼ら2人はしているんです。経験もしてないのに『戦わずして勝つ』とか言ってんじゃねえよ、この野郎って。

向うはこっちを殺しに来るんだよ。ボサッとしていたら、殺されてしまうんだよって。一生懸命頑張っても、ジャッジがこんな酷い裁定をするんだよ──みたいなことを、人間が生きる上でそれは多くのことを金網の中でMMAファイターは経験しています。これ以上ない、武術修行です。あの場に背を向けて、何が武術か。ロッキー川村2氏の時に言いましたが、この経験をしているMMA選手こそ武術を学んで昇華させていって欲しいです。

と同時にヴォルカノフスキー✖オルテガを見て感じたのは、武術の理をMMAで使えたとしても、絶対に引かないぞと言っている相手に勝てるのか。武術を究めていく人間として、MMAから突きつけられたと思います。気合が入りました。

UFCという世界最高峰の舞台、その頂点に立つ者だけが巻くことができるベルトを心から欲している。あの場があるから、ヴォルカノフスキー✖オルテガは生まれた。そう感じました。UFCには、彼らと同じような実力を持っている選手は他にもいると思います。ただし、この2人のような意識レベルにある選手は、どれだけいるのか。一番身に着けることが困難なのは技術ではなく、その意識レベルじゃないでしょうか。本当に苦しい時に、人間の意識レベルが見える。意識レベルの高さをヴォルカノフスキーとオルテガに見せつけられました。

この2人の真似を日本人はしてはいけないです。そういう風に体ができていないですから。同じことをしてはダメ。それでも勝機はあります。それには人間を改造する気持ちでいかないと、こんな戦いで勝つことはできない。そういう稽古をするしかない。それは、ヴォルカノフスキー✖オルテガと見てなお、俺もこの両者の意識レベルでMMAをやって行くんだと思える選手、そういう選手だけです。勝機を勝利に変えることができるのは。そういう意識を続けることができる選手がいれば、実力は後付けでも手にできますから」

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Bu et Sports de combat DEEP MMA ONE RIZIN UFC クリスチャン・リー 伊藤裕樹 剛毅會 岩﨑達也 武術空手 海外 藤田大和

【Bu et Sports de combat】武術的な観点で見るMMA。藤田大和✖伊藤裕樹「淀みなさ&繋ぎの時間」

【写真】淀みないMMAに対し、その一カ所を関止める戦いという風でもあった (C)MMAPLANET

MMAと武術は同列ではない。ただし、武術の4大要素である『観えている』状態、『先を取れている』状態、『間を制している』状態、『入れた状態』はMMAで往々にして見られる。

武術の原理原則、再現性がそれを可能にするが、武術の修練を積む選手が試合に出て武術を意識して勝てるものではないというのが、武術空手・剛毅會の岩﨑達也宗師の考えだ。距離とタイミングを一対とする武術。対してMMAは距離とタイミングを別モノとして捉えるスポーツだ。ここでは質量といった武術の観点でMMAマッチを岩﨑師範とともに見てみたい。

武術的観点に立って見た藤田大和✖伊藤裕樹とは?!


──藤田選手が判定3-2で競り勝ち、DEEP暫定フライ級王座を防衛した一戦です。

「武術的な見方でいうと、伊藤選手が藤田選手を居着かせていました。初回、そして2Rの途中までは。もとともスポーツとは居着くモノです。バッターボックスにいてセットアップした相手にしか、ピッチャーはボールを投げていけないです。つまり投げるピッチャーも、打つバッターも居着いています。

『ジャッジ、ジャッジ、レディ・ゴー』とレフェリーが声を出している時点で、MMAも居着きます。一方で武術はいつ、何が起こるか分からないところで揺れない自分を追求するという真逆のものです。MMAはそれでも色々な攻撃手段があるので、思いもしない攻撃があるかもしれないですが、それでも居着くことが暫定で、武術とは真逆なんです。

居着いているなかで、居着かないように戦う。そして伊藤選手の序盤は、藤田選手を居着かせていました」

──なぜ、居着かせることができたのでしょうか。

「伊藤選手の良さはパンチなのか、蹴りなのか、組みなのか分からないという淀みない攻撃でした。淀みないMMAに、本当に感心させられました。対して藤田選手はパンチに対しての反応、蹴りに対しての反応、そして組みに対しての反応という風に見えました。つまり起こりがあることに対応しているので、居着くんです。

伊藤選手はパンチ、蹴り、組みの間で攻めていました。パンチ一つ取ってもワンツーの間にはラグが生じています。ここに蹴りが加わると、さらにラグは積み重なります。ワンツー、蹴り、ダブルレッグ、さらにラグが加わりました。一つ、一つにラグがある。このラグを少なく動けているのが、伊藤選手なんです。一つのラグが短い、この積み重ねは戦っている間に大きな違いになります。一拍、ワンテンポ変わるだけで相手の体感スピードは著しく変化するというのが、私の師の教えです。

一つのアクションに反応する藤田選手と、つなぎ目が短い攻撃をする伊藤選手──これはきっと感覚的なモノなのでしょうが、アスリートとして相当に厳しい練習をしてきたであろう藤田選手と違いが明確でした」

──それこそクリスチャン・リーが言っていたウェルラウンディットとフーリーランディットの違いですね。

「一つ一つのスピードが仮に遅くとも、繋ぎの時間が短いと対戦相手は反応が遅れます。逆にパンチが速い、蹴りが速い、組みが速いという選手でも攻撃が繋がっていないと、それは一つ局面の動きでしかない。伊藤選手はパンチのスピードで藤田選手より遅くても、繋ぎがあるという優位性がありました。

ただしスタミナが切れたのか、ボディが効いたのか、パンチ・蹴り・組みと分かれてしまいました。そしてパンチのみの戦いになると、藤田選手のパンチの回転数が速いので伊藤選手はカウンターを当てられてしまう。つまり伊藤選手の淀みないMMAがなくなった時点で、試合は受け返しになりました。卓球のように打って、返すというスポーツの攻防ですね。こうなると、藤田選手の方が上手です。

それにしても、3Rなどはもうとにかく勝とうという執念が両者から見られて非常に素晴らしい試合でした。見ている者の共感を呼ぶ試合です。と同時に、ジャッジは共感で白黒をつけてはいけない。選手を強くする、そして日本のMMAを発展するには、そのように戦える選手が勝てる裁定基準になり、ジャッジはそこの技量を裁定することが欠かせないです。色々なプロモーションで、色々なルールがあるでしょうが、裁定基準がそうならなければ日本のMMAは強くなれないです。

なぜか、米国人、ロシア人、ブラジル人、フィリピン人を相手に真正面で根性の打ち合いをして勝つ確率と、負ける確率はどちらが高いのかってことなんです」

──ハイ。

「針の穴に糸を通すような作業をする。それがどれだけ疲れていても、心が折れかけていても最後の最後までやるべきことをやる。それは観客の共感を呼ぶことではないかもしれないし、そうするとプロモーターの喜ぶ試合にならないかもしれない。でも、それをしなければ世界でこのルールで勝つことはおろか、戦うことも難しくなってきます。

UFC以前にRIZINでも、藤田選手と伊藤選手のような試合で勝つということも難しくなっています。UFCでも、守りに入る選手が多いですしね。だから、あそこまで戦う姿勢を見せた藤田選手も伊藤選手も素晴らしかった。戦う姿勢を選手たちが持ち続けてほしいです。そして、その気持ちを持って針の穴に糸を通すことを選手が貫いた場合、評価されるMMAであってほしい。

繰り返しますが、選手を強くする方向性を決めるのはルールと裁定基準です。ONEがUFCと違う世界観を持っている。あの独自性のなかで、あの裁定基準で勝てるスタイルが強い。レスリングを見ても、ラストポイントを取るためにまるで序盤と終盤は違う動きになる。なぜ、最初からあの動きをしないか。それをすると、今のルールとポイントでは不利になるからです。

塩試合っていうけど、真剣勝負なのだからとにかく選手が欲するのは勝利。勝利が一番でないのなら、格闘技を戦う必要はないと思います。だから、そういう試合になっても選手には非がない。

日本のMMAもルール、裁定基準で選手の育ち方が決まります。プロモーション側のビジョンが、裁定基準に表れます。いくら選手がUFCだ、海外だ、北米だといってもそこで勝つ戦い方をしていないと、そこから先はただひたすら厳しくなるだけです。少しでも世界で戦える選手が育つ日本のMMAになってほしい──そういう気持ちを持っている人間を指導する身として思います」

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Bu et Sports de combat MMA キック サンチン ボクシング 剛毅會 岩﨑達也 武術空手

【Bu et Sports de combat】武術で勝つ。型の分解、サンチン編─16─サンチン、MMA実戦応用編─01─

【写真】同じガードでも、相手を制空権に入れる、入れないという違いが構え生じる(C)MMAPLANET

武術でMMAを勝つ。空手でMMAに勝利する──型を重視する剛毅會の武術空手だが、岩﨑達也宗師は「型を使って戦うということではない」と断言する。型稽古とは自身の状態を知り、相手との関係を知るために欠かせないモノであって、その形で戦うことではない。

サンチン、ナイファンチ、セイサン、パッサイ、クーサンクーの型稽古を行う剛毅會では、まずサンチンから指導する。5種類の型稽古にあって、唯一サンチンのみが意味を吸いて吐くという意味での呼吸を学ぶことができる。

全ての根幹となる武術の呼吸を学ぶことができる──サンチンの解析、前回で一旦は最終回とする予定が、岩﨑氏より『まだまたお伝えしたいことがあるなかで、ここだけは今、話しておきたい』という追加実践を複数回お送りすることとなった。サンチン特別版、MMA実戦応用編。今回はサンチンの構えの格闘技の試合、MMAでの役立ち方について紹介したい。

<サンチン解析第15回はコチラから>


質量が互角の場合を前提とし、

4オンスのMMAグローブを着用してボクシングのように顔面を守ってガードした構えだと


相手に右ストレートを打たれた場合、ガードをすることでパンチは顔面に届いておらず、防御にはなっているが、制空権を突破されており相手が有利な状況になっている


結果、打ち返してもパンチは当たらない


サンチンの状態を理解して、両腕の少し外を意識して構えると


パンチへの処理ができており、自らの制空権を創ることができているので相手のパンチは届かず


自身のパンチは届く


右ハイキックを蹴られた場合


顔面を守った構えだと、ガードはしていても、相手に入られており危険な状態になっている。これでは相手に蹴られていることになる


対してサンチンを理解した構えだと


同じ距離でも相手の蹴りは足が上がらず、蹴りが頭の近くまで来ない。相手が蹴ることができていないこととなる


前蹴りで蹴った人間で試すと、ボクシングの構えは届くが


サンチンを理解した構えでは、なぜか頭を引いてしまい蹴りは届かなくなった


「サンチンの構えを応用した構えは、試合で使うということではなく、体に内蔵することで余裕のある戦いができるようになります。そしてサンチンの姿勢を維持した構えを習得すると、相手が入って来られないという事象は比較的にすぐにおきます。サンチンを型の稽古で修得せず、このような構えを取っても相手の攻撃に対し、ボクシングのような構えに戻すことが殆どです攻撃とは距離など相手の状態を見て、出しやすいモノを出している。サンチンを理解した構えを取ることで、相手の距離が出し辛い状況を創り出すことができるのです」(岩﨑)

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Bu et Sports de combat MMA ブログ ロッキー川村2 剛毅會 岩﨑達也 武術空手 荒井勇二

【Bu et Sports de combat】武術的観点で見るMMA。ロッキー川村2✖荒井勇二「見えるから行けない」

【写真】見えるから怖くて、行けない。まさに真理だ (C)MMAPLANET

MMAと武術は同列ではない。ただし、武術の4大要素である『観えている』状態、『先を取れている』状態、『間を制している』状態、『入れた状態』はMMAで往々にして見られる。

武術の原理原則、再現性がそれを可能にするが、武術の修練を積む選手が試合に出て武術を意識して勝てるものではないというのが、武術空手・剛毅會の岩﨑達也宗師の考えだ。距離とタイミングを一対とする武術。対してMMAは距離とタイミングを別モノとして捉えるスポーツだ。ここでは質量といった武術の観点でMMAマッチを岩﨑師範とともに見てみたい。

武術的観点に立って見たロッキー川村2✖荒井勇二とは?!


──川村選手が剛毅會空手の稽古をしているということが、まず意外でした。どのようなきっかけで稽古をするようになったのでしょうか。

「松嶋師範代の稽古のスパーリングの相手をロッキー川村2氏が務めていてくれたのですが、彼は3階級上ですし生来が優しい方です。なので、ちゃんと稽古をつけてもらうために私の方がロッキー川村2氏の動きに──そうですね、言葉ではなくミット打ちなどを経験してもらって、松嶋師範代とスパーをしていただきました。

そうすると松嶋師範代が、めった打ちに合うようになったんです(笑)。パンクラスイズム横浜で松嶋師範代も非常に良い練習ができるようになりました。そうするとロッキー川村2氏が自分で理解しようとしてくれたのか、高田馬場のT-Grip Tokyoで行っている剛毅會東京城西支部の稽古に参加したいと言ってくれたんです」

──ほぉ。川村選手がなぜかを興味を持ったということなのですね。結果に目をやるだけでなく、理を求めてきたと。

「その通りです。だから型稽古ではなく、MMAの組手稽古を通して理を知っていただこうとやっています。

そして結論から申し上げると、色々なことを甘受する能力はピカ一です。これまでお目にかかったことがないぐらいに。たまにそういう方もいますが、だからといって試合に出るというわけでもないです。

その点でいえば、ロッキー川村2氏は15年に渡りMMAを戦ってきた。そのような人が、あのように模索しながら追及している姿勢には頭が下がります。ロッキー川村2氏はオープンマインドなんです。私も指導をしてくるなかで、選手はそれぞれのMMA観を持っていることは重々に承知していました。それは持っていて然りですが、ロッキー川村2氏に関しては拘っている風にはあまり見えないです。私が指導させていただいていることが、身につくかどうかということは、偏にオープンマインドかどうかということにつきます。

時間的には松嶋や大塚と比較すると、本当に短くて触れた程度です。これまで十分に経験を積まれている方ですし、試合をすることも分かっていなかったです(苦笑)。試合があるからなおさら弄るのは嫌でした。核心に触れる部分を伝えるという風にして。結果、質量に関しては現状の3倍ぐらいになる可能性があります」

──試合を実際に見て、これは言葉にすると『またぁ……』という風に批判されそうになりますが、佇まいが違って見えました。

「それが心の表れです。佇まいの変化に言及した時に、批判する人たちがいるのも分かります。それが格闘技感の違いですから。それを否定するのも全然ありです。ロッキー川村2氏の場合は、そこに何かがあると感じてくれて、一緒に稽古をして佇まいが変った。そういうことなんです。

と同時に試合になると、格闘家が武術的なモノに触れると往々にして起こる事象がロッキー川村2氏にも起こりました」

──それは?

「見えるから行けないというジレンマです。これまでは見ていなかった。それが見られるようになると、怖くていけなくなる」

──あぁ、実は武術空手の稽古をしても、川村選手は貰って上等という打撃を仕掛けるのかという予想はしていました。それが待つという風に見えた。ここでは入れないと表現すべきかもしれないですが。

「そうですね。見ていないから、怖くない。見えているから、怖い。見えたから、怖くていけないという現象は結構あります。本人もそこは気付いています。入るという結果がありますが、それは見えていて、先が取れていて、間を制している。それを入るといいます。入るから逆算して考えると、見えたけど先が取れていないから入れないんです。

見えて、ロッキー川村2氏なりに入ろうとして動いた。その失敗が左の蹴りでした。

あれがあったので、相手は組んでクラッチが組めました。MMAとしては組まれても倒されなければ良いし、倒されてもスクランブルで立ち上がれば良いです。ただし、武術的にはそこで組まれることはあまりよろしくないです」

──相手が組んでくる、打撃系でないことも影響したのでしょうか。

「打撃の先も、組みの先も同じです。青木選手が組んで倒すことができるのは、先が取れているからです。ロッキー川村2氏は荒井選手の組みを受けて切ろうとした。その時点で、あの瞬間は相手が先を取っているということになります。MMAは打撃選手が組みを嫌う、組みの選手が打撃を嫌う。そういう嫌い合いの勝負が少なくないですが、嫌うという部分が出てくることは、対戦相手がイニシアチブを取っていることになります。

ロッキー川村2氏も凄く張り切って稽古に出てくれていますから、ずっと続けていってくれればと思います」

──自分は常に思っているのは、一生で一度起こるかどうか分からない路上の現実を想定した稽古を行っている武術家よりも、MMAを戦う選手の方がよほど色々な経験を積んでいるということなんです。たとえ複数相手や武器を持っていなくても。ルールがあろうが、そこで戦い続けてきたMMAファイターが武術を稽古し、理を知ることで引退後は柔術へという道が主流のなかで、もっと幅の広く経験してきたことを生かせる指導がMMA志向の若い選手以外にできると思っています。

「せっかくね、現役時代あれだけ厳しい想いをして経験してきたわけですから。それこそ武術を学ぶことで、また新しい気付きがあると私も思っています。若い頃は、そんなことができるわけないし、やる必要もない。それは52歳を過ぎて、今これをやっている私の体験談でもあります。だからこそロッキー川村2氏もそうですが、格闘技と武術の架け橋のような道を創っていきたいですね。

そういう方々が指導をするようになると……私もようやく理解できたのですが、指導者にとって一番必要なのは、今、どれだけ勉強しているかです。過去にどうだったか、そこだけでなく。過去の経験論だけでなく、今起こっていることを勉強する。教え子を勝たせ続けることができる指導者なんて存在しないです。人を育てて、自分が成長する。今、私自身がそうやって生きさせてもらっています。

だからロッキー川村2氏には、2に留まらずに3、4、クリードまで武術稽古の続けてほしいですね(笑)」

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Bu et Sports de combat MMA サンチン 剛毅會 岩﨑達也 武術空手 虎口

【Bu et Sports de combat】武術で勝つ。型の分解、サンチン編─最終回─外側に入る虎口、倒&極

【写真】空手です。型です。サンチンの虎口です(C)MMAPLANET

武術でMMAを勝つ。空手でMMAに勝利する──型を重視する剛毅會の武術空手だが、岩﨑達也宗師は「型を使って戦うということではない」と断言する。型稽古とは自身の状態を知り、相手との関係を知るために欠かせないモノであって、その形で戦うことではない。

サンチン、ナイファンチ、セイサン、パッサイ、クーサンクーの型稽古を行う剛毅會では、まずサンチンから指導する。5種類の型稽古にあって、唯一サンチンのみが意味を吸いて吐くという意味での呼吸を学ぶことができる。

全ての根幹となる武術の呼吸を学ぶことができる──サンチンの解析、最終回は虎口の理解を深めるために、前回の相手の内側(中)に入って極める動作に続き、今回は外側に入る虎口の分解組手を紹介したい。

<サンチン解析第14回はコチラから>


相手が


右上段突きを打ってきたときに


右腕で、掛けて


ここでは内側に入った時のように、腕を極めるのではなく抑えて


左手で突く。この時も抑えと突きを分断して『抑え・突く』とせず、『抑えて突く』=入った時には突くという風に、一つの動作で行う


この外側に入る虎口の動きを応用すると、相手の右手を自らの右手で制して


左手で突くのではなく、自らの右足で相手の右足を掛けて


倒し、ここから右腕を極める


✖ただし、この時に内側の時と同じように、掴んで力をいれて大外刈りのように投げようという意識が作用すると


相手の力の作用を生み、逆に投げられてしまうなど反撃の機会を与えることになる

つまりは『入って・掛ける』でなく、『入ると同時に掛ける』という一つの動作で行うことが大切になってくる

内側、外側の掛ける時に、接触点を作らないことが最重要。接触点を作ると、腕を回せなくなる。相手の突きに対し、受けて掛けようとすると力と力が衝突してしまう


型の動きを使うと


接触点を作らず衝突を生まなくなる。型の流れのなかで投げたり極めたりしないと、力と力のぶつかり合いになる。この一挙動で動くための呼吸を学べるのがサンチンの型ということになる


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Bu et Sports de combat MMA PFL アレハンドロ・フローレス カール・ディートン3世 ハファエル・アウベス ボクシング 剛毅會 岩﨑達也 武術空手

【Bu et Sports de combat】武術的な観点で見るMMA。フローレス✖ディートン「良い蹴り≠良い打撃」

【写真】蹴りにカウンターを合わせてにいったディートン。そしてフローレスが顔面へのパンチが見られなくなった (C)PFL

MMAと武術は同列ではない。ただし、武術の4大要素である『観えている』状態、『先を取れている』状態、『間を制している』状態、『入れた状態』はMMAで往々にして見られる。

武術の原理原則、再現性がそれを可能にするが、武術の修練を積む選手が試合に出て武術を意識して勝てるものではないというのが、武術空手・剛毅會の岩﨑達也宗師の考えだ。距離とタイミングを一対とする武術。対してMMAは距離とタイミングを別モノとして捉えるスポーツだ。ここでは質量といった武術の観点でMMAマッチを岩﨑師範とともに見てみたい。

武術的観点に立って見たアレハンドロ・フローレス✖カール・ディートン3世とは?!


──昨年のコンテンダーシリーズでハファエル・アウベスに敗れたものの、蹴りとパンチが連動し多角度で攻めることができる、次戦が楽しみという話を伺っていたフローレスですが、判定勝ちを収めたものの芳しいデキではなかったです。

「フローレスはヒザを剃っちゃって、良さも無くなっていましたよ。誰だか分からなくなっているし(笑)」

──そこは……。

「いや判定しても、フローレスが蹴りを当てていたことで評価されたのかもしれないですが、そうやって考えると……これは判定への文句ではないですけど、モノゴトの本質って捉えられていないと思います。あのフローレスの蹴りはそこまで有効な蹴りには見えなかった。選手の技術にしても、ジャッジの見る目にしても今のMMAは進化の果て、いや過程にあって、蹴りに関しては70年代、80年代のフルコンタクト空手の距離になっていますが、そこに対して対応が全くできないです。

そういう意味でいうと、ディートンは実は今回対応していました。彼が狙っていたのは蹴りに対するカウンターのパンチです。それもひと呼吸で3、4発打っています。これはなかなかできることではないです。蹴りにカウンターは取りにくいのですが、蹴りを使う選手にカウンターを狙うと、逆にパンチを被弾します。だから危険なことなんです。

遠間からの蹴りなら、蹴りでカウンターを取ってから中に入って打つ。私の場合はそう指示しますが、ディートンは一気に入ってそれができていた。詰めが良かったので、フローレスの蹴りは若干腰が引けたものになった。結果、顔をぶん殴られるようになっていました。ここでフローレスのやるべきことは殴ることなのに、全然できていなかった」

──本当に顔面へのパンチがなかったです。ダウンを奪われる以前はまだしも、それ以降は本当に届く距離でも殴っていなかったです。一方のディートンは蹴りにパンチを当てて、ダウンを奪った後に躍起にならず待って戦いました。ただし、そこから彼も積極的に動くことがなかった。勝負はどう転ぶか分からない状況では、3Rにはもっと前に出ないといけないと思います。

「まぁ、ディートンも良ということでもないです。ただし、あそこまでクリーンヒットがあると、自分の方がジャッジはつけたと思っていたかと。そして私からすれば、フローレスの蹴りは上段ばかりで、有効打はなかった。ディートンにしてもテイクダウンを織り交ぜるとかしないと、どこで試合を支配しているのか。それが見えない試合ではありました」

──結果、ハイとローでスコアリングできた形の判定勝ちでしたが、フローレスも顔面が殴れないという内容でした。

「今回のフローレスは殴れないというよりも、彼の蹴りは殴れないで蹴るという蹴りだったんです。彼はメキシコですよね……蹴りとパンチが連動しているのはブラジル、オランダ、フランス、もちろんタイにはいますが、あとはロシアに少し。まぁ、いないです」

──フローレスは前回は負けましたが、それが出来ている選手だという風に岩﨑さんも言われていましたが、なぜ今回は連動しなかったのか。そもそもパンチがなかったわけですが。

「ディートンはパンチのカウンター狙いだったから、フローレスはそのパンチを狙うことができる蹴りの持ち主であってほしかったですね。だから殴れないのではなくて、蹴りの稚拙さが露呈した試合になりました。相手が受けることができないから、蹴れる。そういうことだったのかと。

相手がカウンターを取って来る、そういう選手を想定し、自分が蹴ったあとにどう動くのか。そこが最も重要になってくるのですが、そういうことは頭になく蹴りとパンチをこれまで使っていたのでしょうね。

蹴りだけが凄くても、打撃が強いとはならないです。あくまでもパンチとの連動があって初めて、その蹴りの良い・悪いを判断できるわけで。蹴りだけが良くても、それは評価の俎上にすら挙がらないです。顔面パンチに対して、鮮やかな蹴りをフローレスは出せなかった。ディートンのプレッシャーが強かったのでしょうね。だから乱れてしまった。質量を測りそこなっていたともいえます。あのパンチに対して、腰を引くような状態は創らないで準備をすべきだったのに。そういう考えが彼だけでなく、陣営になかった」

──つまりパンチと蹴りの連動という部分で、知識が欠如していると。

「そういうことになるかと思います。ボクシングやレスリング、柔術と比較すると、蹴りも入れた打撃の蓄積はまだ米国や多くの国にはない。パンチと蹴りが繋がった状態で攻撃を作るという風には、一朝一夕にはいかないのかもしれないですね」

──では、そこに米国勢の打撃に対して日本人が勝てる可能性が残っているのではないでしょうか。

「このままであれば、打つ手はあると思っています。2つの矢、ボクシングだけでは勝てないですが、4つの矢に関して日本はノウハウがあります。そこに可能性を見出したいです。ただしフルコンタクト空手をやっていれば、MMAで勝てるのか。有効な蹴りを使えるのか。そんなことは全くないです。

寝て戦える人が、立って戦っている。それがMMAです。MMAを研究し続けていると、たまたま消去法で出てきたノウハウが、この蹴りの距離であったということだけなんです」

──たまたまであろうが、そのノウハウを生かして世界で通用するところを見せてほしいです。

「今後はそういう技術をケージの中で、魅せることができる人間が出てくるかと思いますので。楽しみにしてほしいです(笑)」

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