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【RIZIN LANDMARK04】弥益ドミネーター聡志と対戦、平本蓮が武術空手を学ぶ理由。「素手の感覚」

【写真】 何が違うのか、明確だが瞬間を切り取っても分からない。試合で出るかでないか──だ(C)MMAPLANET

11月6日(日)に名古屋市中区のドルフィンズアリーナで開催される「RIZIN LANDMARK 4 in NAGOYA」で、平本蓮が弥益ドミネーター聡志と対戦する。

MMA戦績1勝2敗の元K-1ファイターのJ-MMA界における存在感は、頭抜けたモノがある。その存在感を弥益は9月30日の会見で「インフルエンサー」と称した。

SNSは「アンチを生むことで、話題になる」とその効用を語り、榊原信行CEOとのやり取り漫才と言う平本。自らを見せる術を知るルーキーは、その一方でファイター仲間からの期待度がMMAキャリアの少なさとリング上のパフォーマンスと不具合なほど高い。それは周囲が平本蓮の戦いへの探求心の強さを知っているからだ。


その平本が8月より、武術空手=剛毅會・岩﨑達也と稽古を行っている。練習仲間の長谷川賢を介して、平本は4月に松嶋こよみの剛毅會の稽古を見学、そして体験した。そこで岩﨑の指導する立ち位置、間合い、実際に向き合った者だけが感知できる「怖さ」を体感し、指導を受けたいと思うようになったという。

7月に試合があったことで、中途半端になりたくないという考えから定期的に指導を受けるようになったのは8月、まだ2カ月の稽古期間でも、平本は「確実に違うモノが見せられる」と言い切る。

週に一度、渋谷・道玄坂のFIGHTCLUB428で行われる練習に対して、岩﨑自身は「指導でなく、一緒に稽古し私も得られるものが非常に多い」と捉えている。

「でも、実際に練習をMMA選手が見ても『何をやっているんだ?』って分かってもらえないことが多いだろうし、バカにされることもあると思います。実際『そんな時間があったら、違う練習をしたら』とも言われました」と平本。

FIGHTCLUBで行われる稽古は、実に地味だ。組手になるとさすが、特に実弟の丈を相手にした時は打撃の勢いはさすがとしか言いようがなく、目を見張るものがある。とはいえ、それはキックボクシングを忘れないために必要なことであって、武術空手を採り入れるための地ならしのようなモノだ。

数センチの誤差、特に重視されるのは自ら攻撃したあとの姿勢と位置取り。MMAだからといって平本が組み技を駆使する必要はない。もちろんレスリングも柔術も練習は必要だ。ただし、試合で出さなくても構わない。

組み技の練習の成果は必要に応じて出てくるものであって、組み技ありきで試合に臨むと、平本の最大の強味である打撃が生かせず、相手の間になっている。

そんな思考の修正から両者の稽古は始まり、今は姿勢と距離に取り組んでいる。平本は「実はボクシンググローブからMMAグローブに変わった時から、素手を意識するようになっていました。だから空手に興味を持って。岩﨑先生の話を聞いて、全てが理解できているわけでもないし、型をやっても分からないことばかりです。でも、長い間『打撃はできるでしょ。自分でやって』という感じで、教えてもらえることがなかった。そんな僕が、ダメだしをしてもらえる感覚は本当に久しぶりです」と地味な動作を繰り返す。

対して岩﨑は「武術、空手に興味を持ってもらっても依存しちゃいけない。あくまでも平本蓮の打撃をMMAで使えるための修正であり、空手といっても空手なんてやる必要はない。平本蓮として戦えば良いんです」と、武術空手の位置づけが明確にできている。

次戦に向け、平本はMMAファイターとして、弥益がどれだけ格上かも理解してなお「今回はこれまで違って、煽って自分の気持ちを上げて戦うという精神でなく、ひたすら練習の成果が出せるか楽しみなんです」と言う。対して岩﨑は「畏れる者が勝つ試合になる。そういう意味で弥益選手は手強いです」と言い切った。

「内側」、「目に見えないもの」、「間」、「先」という言葉が普通に出てくる平本蓮。彼が武術空手の理をいかに学び、MMA──自らの打撃に生かそうとしているのか──。

※その詳細は10月28日発売のFight&Life#93に掲載される平本蓮×岩﨑達也対談で確認を。

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DEEP MMA MMAPLANET o RIZIN RIZIN LANDMARK04 キック 剛毅會 岩﨑達也 平本蓮 弥益ドミネーター聡志 松嶋こよみ 武術空手 牛久絢太郎

【RIZIN LANDMARK04】ランドマークが初ケージ大会。武の理を学ぶ平本蓮が、弥益ドミネーター戦へ

【写真】基本稽古から平本が何を得ているのか、非常に気になるところだ(C)MMAPLANET

昨日25日(日)、RIZIN FFより11月6日(日)に名古屋市中区のドルフィンズアリーナで「RIZIN LANDMARK 4 in NAGOYA」の開催と、同大会で弥益ドミネーター聡志✖平本蓮のフェザー級マッチが組まれることが発表された。

今大会はRIZIN LANDMARKとして初のケージ使用大会となる。今年3月のLANDMARK出場時にも平本はケージでのファイトを要望していたが、ついに国内いやキャリア初の金網での実戦を戦うことになった。


対戦相手の弥益、すっかりRIZINに欠かせない存在となったファイターにとっても、今回の試合は2年2カ月ぶりのケージMMAとなる。

キャリア4戦目、戦績1勝2敗の平本は以前から弥益戦を熱望していたが、元DEEPフェザー級王者は現DEEP&RIZIN二冠王者である牛久絢太郎に敗れてベルトを失ったとはいえ、勝つチャンスも十分にあった実力者。平本にとっては過去最強の相手になることは間違いない。

シャッフル打撃&確かなケージグラップリングの強さを持つ弥益に対し、平本がどれだけ熱望した金網でMMAファイターとして完成度が上がったことを証明できるのか。と同時にMMAだからMMAを戦うという思考でなく、持ち味の打撃を最大限に生かすスタイルに移行した平本は現在、剛毅會空手の岩﨑達也氏に武術空手の指導を受けている。

今年の4月に一度、平本は松嶋こよみとT-GRIPの剛毅會プロ練で手合わせをしたのをきっかけに、GENに岩﨑達也氏を招き、その格闘論に興味を持った。

岩﨑氏によると「平本君は素直。そして考えて、武術の理をMMAに生かそうとしています。と同時に素直過ぎて、空手により過ぎることもあるので、週によってキック寄りの日、空手寄りの日というふうに稽古をしている」とのこと。

実際に移動稽古を立ち合いに生かすために活用し、基本稽古も行う姿がFight Club渋谷で確認されている。果たして、あの平本のMMAの完成に武術の理がどう生かさせるのか──という楽しみもあるが、それを確認するには厳しすぎる弥益とのマッチアップといえる。

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Bu et Sports de combat ONE160 タン・カイ タン・リー ブログ 剛毅會 岩﨑達也 武術空手

【Bu et Sports de combat】武術的な観点で見るMMA。タン・カイ✖タン・リー「恋愛と同じ」

【写真】飛び込んで、打たれる。なぜ、タン・リーはタン・カイを相手にそのような動きを繰り返すことになったのか…… (C)ONE

MMAと武術は同列ではない。ただし、武術の4大要素である『観えている』状態、『先を取れている』状態、『間を制している』状態、『入れた状態』はMMAで往々にして見られる。

武術の原理原則、再現性がそれを可能にするが、武術の修練を積む選手が試合に出て武術を意識して勝てるものではないというのが、武術空手・剛毅會の岩﨑達也宗師の考えだ。距離とタイミングを一対とする武術。対してMMAは距離とタイミングを別モノとして捉えるスポーツだ。ここでは質量といった武術の観点でMMAマッチを岩﨑師範とともに見てみたい。

武術的観点に立って見たタン・カイ✖タン・リー戦とは?!


──教え子の松嶋こよみ選手が離脱したONEフェザー級戦線、その世界戦ですが非常に興味深い顔合わせでした。

「ハイ。それだけにタン・リーにガッカリでした。どうしてしまったのか。対して、タン・カイは良い意味で狡猾でした。ホント感心させられました」

──まずタン・リーがオーソに構えて、左足をカーフで壊されました。なぜ、最初からサウスポーでいかなかったのか。

「確かに左の蹴りが良い選手ですが……。あの試合だけ見ると、その良さやそもそもどのような選手だったのかを忘れてしまうほど、崩れていました。それだけ動きが冴えなかったです」

──左ミドルで踏み込んでからスイッチして追いつき、あるいは右フックなど注目していた攻撃が見らなかったです。

「追わされました。タン・カイが追わせて戦っていた。恋愛と同じでね、追うより追わせた方の勝ちです(笑)。試合は追った方が不利。それだけ追うのは難しいんですよ。タン・カイはそれをやらせました。

そしてタン・リーは自分を見失った。ダニエル・ウィリアムスとツオロンチャアシーとの試合のツオロンチャアシーと同じで、どういう理由を持ってその攻撃に出ていたのか。そういう動きに終始してしまいましたね。

あのテイクダウン狙いやバック狙いなど、懸命だったのは伝わってきましたが、理もなくタン・リーは動いていたように見えました」

──タン・カイは相手を見て、右でも左でも倒せる。それにしても入ってきたタン・リーに当てる攻撃は見事でした。

「上手いです。もともとカウンターは上手いですが、今回はそこにサークリングが加わっていました。タン・リーを中心にして円を描くという動きをタン・カイが続けていました。一つ言えるのは、攻防としてタン・リーが打つ。タン・カイが返す。ここで終わっていたということです。

そうなると返した方が有利になる一方です。タン・リーが打って、打たれて、また打っていく。そこまで続けると、タン・カイも攻撃を止めることができずに、次の局面というものが生まれていたはずです。

ただし、この試合はソレが最後までなかったです。タン・カイはマネージメントがデキていましたね。武術的にMMAを捉えると、その部分は私も弱いところなので参考になりました」

──それはどういう部分で、ですか。

「試合だから、勝てば良いという部分で参考にしたいのですが、それはあくまでも試合に勝つという前提があってのことで、全面的に良いわけではないことを前提にして──。3Rからもうタン・カイは手を抜き始めましたね。無理にいかない。無理しない。それは現実問題として、そういうことも試合中は必要なのかと思います。

同時にマネージメントができた。だから良かったという結果論になります。ではマネージメントができない状況に陥ったら、どうなったのかと」

──ならなかったので結果論として、良しということですね。

「そういうことです。つまりタン・カイはタン・リーに対して、余裕があったということですね。タン・リーはもっと制空権が深く、相手が入ってきたところに攻撃を入れるというイメージがありましたけど、全くなかったです」

──ハイ。だからこそタン・リーが、来ないタン・カイを相手にしてどのように詰めるかという楽しみがあったのですが……。タン・カイは来ないばかりか回り、タン・リーは自らの戦いがまるでできなくなった。あそこでタン・リーも行かないという選択は、あり得ますか。

「試合ですから、全く行かないということはできないでしょう。ただし、タン・リーが出ないとなるとタン・カイが行かないといけなくなる。つまりは先の取り合いなんです。先が取れないで入っていくと、食らいます。

タン・リーは今回、先が取れていなかった。ブランドン・モレノ×カイ・カラフランス戦でモレノは先を取れていました。あの両手の動きで先が取れているので、自分から攻めることができます。対してタン・リーは、先が取れる動きがなかった。本当に少しのことで、ここは変わります。少し右足を引くとか、それだけでタン・カイを反応させる。そういう動きが見られなかったです。

同時にカーフを効かされたことは大きいです。

その影響が出たのか、タン・リーの動きをするというよりも、タン・カイにやられない動きに終始していました。本来は相手のことなどお構いなしに自分勝手に蹴って、殴る選手なのに。だからタン・リーの試合では、ミドルを蹴っているのにヒザが顔面に入るKO勝ちなどが生まれました」

──タン・リーは居着いていたということでしょうか。

「そうですね。居着いていると言って良いかもしれないです。居着くというのは色々な意味がありますが、その一つに受けに回っているということがあります。受けて何かをすることを居着いているとも言いますからね。相手の動きを第一に考えて、自分軸で動かない。良い時は自分の動き、自分軸で戦っています。

それが良くいわれる見えない部分での主導権の奪い合いで、今回はタン・カイが主導権を握ったということです。見える部分でジャブが当たった、蹴りが当たったというのは結果論でしかなくて。武術的に質量などを踏まえて考察していくと、エネルギー的に主導権をどちらが握っているかということになります。

ただし主導権を握っているのに、パッと離してしまう選手もいます。試合は結果論を得るために戦うので、主導権を握っていることが分からなくなることが選手には往々にしてあるんです。そこを指導の現場で指摘することが、指導者としての役割だと心得ています。

つまりタン・カイは行かない部分を含めて、自分のペースを守り切った。そこは考えさせられる部分でした。あと、やはりONEの裁定基準という部分は大きいかと思います。2度ダウンを奪ってもラウンドマストの5回戦だと、あと1つはラウンドを取らないといけない。でも、ONEなら2度ニアフィニッシュがあれば、もう何もさせなければ勝てます。フィニッシュを狙わせる裁定基準の裏をいった──タン・カイのマネージメント能力でした」

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Bu et Sports de combat MMA MMAPLANET o UFC デメトリウス・ジョンソン ドミニク・クルーズ ナイファンチ ナイファンチン マルロン・ヴェラ ユライア・フェイバー 剛毅會 岩﨑達也 松嶋こよみ 武術空手

【Bu et Sports de combat】武術的な観点で見るMMA。ヴェラ✖ドミニク「いけないオンパレード」

【写真】ドミニクはドミニクであろうとし、ヴェラに敗れた (C)Zuffa/UFC

MMAと武術は同列ではない。ただし、武術の4大要素である『観えている』状態、『先を取れている』状態、『間を制している』状態、『入れた状態』はMMAで往々にして見られる。

武術の原理原則、再現性がそれを可能にするが、武術の修練を積む選手が試合に出て武術を意識して勝てるものではないというのが、武術空手・剛毅會の岩﨑達也宗師の考えだ。距離とタイミングを一対とする武術。対してMMAは距離とタイミングを別モノとして捉えるスポーツだ。ここでは質量といった武術の観点でMMAマッチを岩﨑師範とともに見てみたい。

武術的観点に立って見たマルロン・ヴェラ✖ドミニク・クルーズ戦とは?!


──マルロン・ヴェラ×ドミニク・クルーズ。一つの時代が終わった。そんな印象のドミニクのKO負けでした。

「その一時代を築いたドミニク・クルーズのことをリスペクトされているようですが、私はこの試合だけに限って話をさせていただくと……戦いとしてやってはいけないことばかりのオンパレードでした。

これは止めましょうというオンパレードです。動くために動いている。その動きが、1Rの2分過ぎでピタッと止まってしまっていました。バテてしまったのですかね」

──あの時間帯で背中が光るほど汗が出る。過去になかったかと思います。

「とにかくあれだけ体が浮いてしまうと、自分の攻撃は全てが軽くなりますし、相手の攻撃を被弾すると効いてしまいます。対してヴェラがどっしり構えていつでも倒せるぞという戦いをしていれば、早々にパンチで倒せていたと思います。でも、そうでもなくのんびり構えていましたね。もっと早く倒せたはずですが、エンジンの掛かりが遅かった。

ただ、この試合はドミニク・クルーズがマルロン・ヴェラにKO負けしたというよりも、ドミニク・クルーズが自爆した。そういう試合だったと思います」

──もうドミニクが、ドミニクではなかった。だから岩﨑さんの指摘は正しいのでしょう。それでも、ドミニクをぶった切られると良い気分はしないです。正直。

「それは、松嶋こよみ師範代も言っていましたよ。『この試合だけでなく、ドミニクのWEC時代やUFCでのデメトリウス・ジョンソン戦、ユライア・フェイバー戦を見て評価してください』って。そんなもん、いくら昔が凄かろうが今、負けていたらどうしようもない。基本に戻る必要があるんだって言っても、師範代は納得しないんですよ(苦笑)」

──それはそうですよ。ドミニクが基本通りの動きをして、ファイター人生の余生を永らえるなんて見たくもないです。もうドミニクではなかったかもしれないけど、ドミニクはドミニクであろうとして散ったんです。昔、凄かった。そう言われる選手が、どれだけMMAに存在しているでしょうか。

「アハハハハハ。いやぁ、それだけ愛されるって凄い選手なんでしょうね。あなたもそうだし師範代もそう。相当にリスペクトされているドミニクですけど、私はガーブラントにやられた時ぐらいからしか見ていないので。逆にどう凄かったのでしょうか」

──この試合でいえばドミニクっぽくはありました。ただし、前の動きも後ろへの動きももうドミニクではなくなっていた。前に関しては、あそこで止まるならそりゃパンチを合わされるよなと思います。

「つまりは、あそこでは止まっていなかったということですね。もっと遠かったということですか」

──遠いというよりも、近づいても遠くなる。前に出るなら相手の横を通り抜けて、攻撃を受ける位置にはいないぐらいで。当てた時も、その場にはいない。そして相手を翻弄してテイクダウンを奪っていた。それと下がる動きが、まさに変幻自在でした。

「そこまでだったのですね。下がれるのは凄いことです……MMAを戦ううえで。そして自分の攻撃を当てることができていたのは。ただし、この試合では下がった時のステップが、足がバッテンになるんですよね。アレは絶対にやってはいけないです」

──足がクロスするということですね。

「縦のバッテンと横のバッテンがあって、縦のバッテンがあると歩幅が狭くなってしまって。あれではすぐに相手の距離になってしまいます。バランシングといって、歩幅は一定で横に動くことが必要で。でも、クロスしてしまっていますからね。そこでパンチを貰うと、非常に効きます。最後は横のバッテンなんですよ。あのステップになると、相手が見えなくなります。だから、そのためにナイファンチンの型稽古があります。

足がクロスした時にも、相手を見られるようになるためには。そういう部分もナイファンチンにはあるんです。でも話を伺う限り、以前はあのステップでも攻撃を貰わなかったのでしょうね」

──ハイ。以前は、その足がクロスするステップでも相手の攻撃を受けなかったです。まさに唯一無二の存在でした。

「そこまでできていたことが、できなくなる。それはなぜ、デキていたのかが分かっていないとデキなくなりますよね」

──……。誰もできない動きをしていた。だから、靭帯を負傷したのかもしれないです。

「そういうことだと思いますよ。人間として、やるべきではない動きで負荷が掛かっていたのでしょう。ただですね、指導者として見るとドミニク・クルーズは人ができないことができたファイターということだけで、もう放っておいて構わない選手です。それだけ才能がある選手ですから。

でも才能がない人は真似をしてはいけないです。だから基本があって、そこが大切になってくる。基本を身に着けたうえで、応用をやる。ドミニク・クルーズのような才能がある人間は、ほぼ存在していないんですよ。

昔、私が指導していた人間でドミニクの真似をして、全くダメになった人がいたんです。蹴りが凄く強くて、その蹴りを伸ばそうと練習をしてきたのにドミニクに感化されて。全くバラバラになりました。

ドミニクを真似るなら、そういう分かりやすい部分ではなくて──相手の動きが見えているところや……きっとそれって、相手の動きを予見して当たらない方向に動いていたんだと思います。その動きをするためには、徹底的な反復練習が必要だったはずです。そういう部分を真似て欲しい。そういうことなんです」

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Bu et Sports de combat MMA MMAPLANET o UFC カイ・カラフランス カマル・ウスマン キック ブランドン・モレノ ボクシング 佐藤天 剛毅會 岩﨑達也 武術空手

【Bu et Sports de combat】武術的な観点で見るMMA。モレノ✖カラフランス「夫婦手で全体に連動」

【写真】左三角蹴りからパウンドアウトの試合に見えた、武術的な要素とは (C)Zuffa/UFC

MMAと武術は同列ではない。ただし、武術の4大要素である『観えている』状態、『先を取れている』状態、『間を制している』状態、『入れた状態』はMMAで往々にして見られる。

武術の原理原則、再現性がそれを可能にするが、武術の修練を積む選手が試合に出て武術を意識して勝てるものではないというのが、武術空手・剛毅會の岩﨑達也宗師の考えだ。距離とタイミングを一対とする武術。対してMMAは距離とタイミングを別モノとして捉えるスポーツだ。ここでは質量といった武術の観点でMMAマッチを岩﨑師範とともに見てみたい。

武術的観点に立って見たブランドン・モレノ✖カイ・カラフランス戦とは?!


──ブランドン・モレノ×カイ・カラフランスのUFC世界暫定フライ級王座決定戦に、武術的な要素が明白にあったということですか。

「ハイ。MMAはMMAグローブで戦い、蹴りがあります。それを前提に打撃に関しては組み立て方が存在しています。加えてMMAは自由な発想で戦えます。打撃だけの試合と比較すると構えが頻繁に変わり、距離も一定でなく遠くに立っても良い。その割にはグローブをつけてボクシングの練習に精を出す選手が多いです。

ボクシングの技術、蹴りはキックボクシングと分けて稽古をする選手が多いと感じます。今回、そういう点でモレノが素晴らしかったです。捌きというやつですね。モレノの構えは打撃にも受け返しができるうえで、シングルレッグに入るなどレスリングにも対応できます」

──この試合のモレノは掌を広げて、腕を良く動かすという余りこれまでになかった構えをしていました。

「そこです。MMAの打撃はボクシングでも、キックボクシングでなくても良い。そして、ここで注目すべきは手の位置と動きです。私が40年間空手の修行を行ってきて、何度かだけ目にした現象があります。それは調子が良いと両手がよく動くことというです。ただし、良く動かしていた人間がまたできるかというと、そうではないです。

『もう一度見せて欲しい』と稽古の時に頼んでも、全く手が止まってまるで違う動きをします。だから、異様に調子が良いときに無意識でそうなっているのか……。正直にいえば、それが絶対だと結論づけることはできないです。ただし、両手が動いている時は体が良く動く。体が反応できると思います。この両手の動きのことを空手では夫婦手といいますが、夫婦手を使って両手を動かすことが捌きという動作になります。

捌きとは相手の蹴りを受け流すことをイメージされると思いますが……決してそうではなく、本来の裁きとは相手の攻撃を掻い潜って攻撃すること。その時点で先を取れています。例えば……そうですね、カーテンなど垂れ幕のようなモノがあって、それを掻い潜って……捌いて前に出ると、先が取れています。捌きというと、相手の動きを捌く防御のように捉えがちですが、あの手の動きは既に攻撃態勢に入っています」

──モレノの動きが、捌きになっていたと……。これは浪漫ですね。

「なぜ、彼があの動きをするようになっているのか。本当に分からないです。どういう風にあそこに行き着いたのか。ただし、カイ・カラフランスとの違いは明白でした。カラフランスのパンチは、ボクシングです。蹴りがある競技でボクシングに特化した動きで対応すると、危険極まりないということがこのところ連続して見られています。

ボクシングの避け方は、蹴りがあると危なくなる。蹴りがあることで、頭を振るという動作はとてもリスキーになります。頭を振った方向から蹴りが飛んでくると、大変なダメージを受けますからね」

──左の突きから左ハイでKO負けしたカマル・ウスマン。右ストレート直後の右ハイで倒された佐藤天選手が、結果論としてそういうKO負けになりました。蹴りのある競技の練習をしていてなお。

「ハイ。対してモレノの構えと動きはボクシングではなく、かといってレスリングでもないのにレスリングに対応できています。両手、両足が四つ足動物のように、自然に機能していている」

──それは中段突きと中段の外受けの移動稽古で、後ろに下がるときに多く腕を動かすと、しっかりと下がることができる。それと同じ現象ということでしょうか。

「ハイ。手から動くという理屈、原理として同じです。両手を動かすことで結果的に全身が連動した動きとなります。自分の体も両手が動いていると機能しますし、相手からすると腕の動きで一つ幕が張られて見えない状態になります。ボクシングは幕がなく、顔があって拳を出す競技です。結果、幕がある分モレノは有利な距離を創ることができていました。

手を自由に動かした軌道のなかで、パンチが出ているのでボクシング的に言えば下手くそかもしれないですが、MMAグローブで戦う競技としては全く問題なく、パンチのヒット数も多かったです。フィニッシュの左ミドルも、三角蹴りでしたね。中足を効かせた。それでダウンを奪ってからのパウンドアウトでした。

本来はMMAとして、こうあるべきなのかもしれないですが、現実問題としてMMAはボクシング、キックボクシング、レスリングと足し算の発想で28年間進化してきました。モレノは足し算では生まれない動きをしたかと思います。

最後の三角蹴り……左ミドルを中足で蹴ったので、三日月ではなく三角蹴りでした。あの左の三角蹴りも左の突きから入っていましたね。左の突きで後ろ足を送って、左の蹴りを出している。これは対角線ではなくて、空手のコンビネーションです。面白いモノで、この状態だと頭を振っても構わないんです。手を振って頭を振るというのは。

頭だけ振って、上体が動くと体と頭が繋がっていなくて危険です。ただ手から動いて、体が機能して上体が動く。その結果として頭が動いていると、体と頭が繋がっているので攻撃を食らっても、耐えることができます。何よりもこの動きはヘッドスリップ的な防御にもなりますし、攻撃手段としての右か左が分からないフェイクにもなっています。非常に興味深い動きでした」

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Bu et Sports de combat MMA MMAPLANET o ONE UFC   ダニエル・ウィリアムス ツオロンチャアシー ボクシング 剛毅會 岩﨑達也 武術空手

【Bu et Sports de combat】武術的な観点で見るMMA。ダニエル・ウィリアムス✖ツオロンチャアシー

【写真】劣勢のツオロンチャアシがボクシングの距離で戦い続け、質量の高いウィリアムスが勝利するのは必然だった (C)ONE

MMAと武術は同列ではない。ただし、武術の4大要素である『観えている』状態、『先を取れている』状態、『間を制している』状態、『入れた状態』はMMAで往々にして見られる。

武術の原理原則、再現性がそれを可能にするが、武術の修練を積む選手が試合に出て武術を意識して勝てるものではないというのが、武術空手・剛毅會の岩﨑達也宗師の考えだ。距離とタイミングを一対とする武術。対してMMAは距離とタイミングを別モノとして捉えるスポーツだ。ここでは質量といった武術の観点でMMAマッチを岩﨑師範とともに見てみたい。

武術的観点に立って見たダニエル・ウィリアムス✖ツオロンチャアシー戦とは?!


──ダニエル・ウィリアムス✖ツオロンチャアシー、ロッタンとムエタイで勝負ができるウィリアムスのMMAの打撃とはいかなるモノなのか。そこが知りたいです。

「間合いが完全にボクシングでした。組む気はゼロ。そうなるとボクシングになる。MMAなのに他のことを考えていないのか、疑問に思いました。テイクダウンもないし、そうなるとひたすらボクシングになる」

――それで勝っているウィリアムスは、あれで良かったかと思います。でも、負けているツオロンチャアシーはなぜ他のことをしないのか、と。

「できないからじゃないですかね。なぜ、〇〇しないのか。この〇〇がMMAで許された技なのに『向いていないので』、『できないんです』、『僕、やらないんです』ということ多くないですか。対戦相手が決まって1カ月後、2カ月後というなかで、そこをできるようになるのは無理な話ですが、MMAを戦うのだから、なぜ常にそこを試合で使えるようにならないのか。

『僕、寝技ができないんです』っておかしな話でしょう。MMAは寝技があるのに、なら寝技になったら負けるのかって。でも、それを意外と不思議に思わないで、『あぁ、そうなんだ』で終わらせてしまっている選手、かなりいるように感じます。

この試合における打撃に関していえば、両者は似ているタイプです。似ているなら質量が高い方が勝ちます。

最後の右は先の先でした。ウィリアムスは先の先が取れているから、ツオロンチャアシーは完全に反応できないでやられてしまいました。カウンターを取る間もなかった」

――つまりツオロンチャアシーに出す間を与えなかったと。

「そうです。出そうとして打たれるのは、大概は後の先です。どうしようかと思案しているときに食らうのは、先の先です。つまりツオロンチャアシーは居着いていたんです。ただし、そこも先ほど言ったようにタイプが同じで、質量が上の方が勝った。それだけの話です。

だからこそツオロンチャアシーもMMAファイターなら、できないことをやるべきだということで。それはどの選手にも当てはまります。MMAなんだから。打撃で勝てないなら、組んでいきなさいよということなんです。

ボクシングを戦っているわけじゃない。そのボクシングだって、ファイター同士で相手の方が強かった場合に、アウトボックスが必要になる。だからアウトボックスの練習をやらないとダメで。

だからといってツオロンチャアシーは、打撃の真っ向勝負で相手に勝つというだけの意思もなかったです。できないことをできるようにする。これほど真っ当なことはないです。できないことをできるようになりましょう。そうでないと勝てないよ。この言葉があまり聞かれないのは不思議です。

勝てない部分があって、そこで勝負するしかないなら、勝てない。勝ちようがないです。なら負けないでいよう。負けないようにしていると、巻き返すチャンスが回ってくるかもしれない。それなのに勝てない試合を勝つとところから戦術を練っても勝てないですよ。つまり負けます。勝てないんだから。

それを口にできる環境の有無ですね。負けた、また頑張ろう。そうじゃないだろ、またなんてないかもしれないんだよ。だから、それを言える人間関係を指導者と選手が築けていないと難しいかと思います」

――それをすると人は離れる。そういうことにもなります。

「でも、事実は本人のために伝えないと。それが本人のためで。どれだけ厳しくても。で、それを言われて、その指導者から離れる。まぁ離れるのは良いけど、同じことをどこに行っても繰り返すことになるでしょう。そうやって何も改善されないまま、試合を続けているということです。

ツオロンチャアシーはウィリアムスと戦うのに、どこまでシビアに考えているのか。そのシビアさはなかったです。試合のオファーが来たから戦う。そうやって試合に出ている選手、多くないですか? やるのと勝つのは違います。どれだけ真剣に勝とうとして、試合を受けているのか。オファーがあるから戦います――じゃ勝てない。

UFCの凄いところは、負けられないっていう選手ばかりなところです。それは相手に勝ちたいというよりもUFCに残りたい。UFCで戦い続けたいという情念です。その感情をむき出しにして戦っています。そこですね、この試合のツオロンチャアシーと同じ選手が日本も多いと思います。技を見れば分かります。技というモノは、日々の努力が出ますからね」

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Bu et Sports de combat MMA MMAPLANET o UFC キック ジェイミー・マラーキー ブログ マイケル・ジョンソン 剛毅會 岩﨑達也 武術空手

【Bu et Sports de combat】武術的な観点で見るMMA。マラーキー✖ジョンソン「呼吸に合った戦い」

【写真】マラーキーは前に出て、ハイを蹴っていったが…… (C)Zuffa/UFC

MMAと武術は同列ではない。ただし、武術の4大要素である『観えている』状態、『先を取れている』状態、『間を制している』状態、『入れた状態』はMMAで往々にして見られる。

武術の原理原則、再現性がそれを可能にするが、武術の修練を積む選手が試合に出て武術を意識して勝てるものではないというのが、武術空手・剛毅會の岩﨑達也宗師の考えだ。距離とタイミングを一対とする武術。対してMMAは距離とタイミングを別モノとして捉えるスポーツだ。ここでは質量といった武術の観点でMMAマッチを岩﨑師範とともに見てみたい。

武術的観点に立って見たジェイミー・マラーキー✖マイケル・ジョンソン戦とは?!


──ジェイミー・マラーキー✖マイケル・ジョンソンの1戦、サウスポーで相手の中心を取るのに長けたジョンソンに対し、ヘッドスリップやウェービングを多用していました。

「まずサウスポーのマイケル・ジョンソンが左に回っている点に注目したいです。この回り方をすると、逆だと怒られることが多いですよね。サウスポーの選手が、オーソの選手を相手にすると右に回って……左を当てるために外を取る。

その方が当たりやすいからもしれないです。ただし、相手の構えを念頭に置いている時点で、武術的には相手の間になってしまいます。相手を軸にした戦い方ですね。そして、どの状況でも右回りが得策なのかなどは考えが及ばず、そういう思考になることがあるのではないかと思います。

外を取る……結果、何を取っているのかということです。その場所を取ることが大切なのか。右ストレートをかわして、左を当てたい。そのために右に避けても、それは相手の右ストレートの間です。だから右に回るのか、左に回るのかではなくて相手のエネルギーが高い状態では、どちらに動いても危ないです。

私が素手、相手が石ころを掴んでいたら──右に回ろうが、左に回ろうが危ない。だから攻撃されないために動くというのであれば、右でも左でもなく、相手の質量が下がる状態にしなければいけないということです。それは相手が石ロコを持つなら、こっちはそれ以上の石ころを持つ状態にするのです」

──それが武術だと。そして、武術と関係ないであろうジョンソンは左に回っていたということですね。

「ワンツーからスリーまで、ダメだと言われる方に回って当てています。相手が来るのに、その場で養成した力をぶつけていますね。その攻撃でダウンも取りました。一方で、マラーキーの方がリーチがあるのに、近づけないと攻撃できていなかったです」

──それでもジョンソンが打撃戦で圧されてしまったのは?

「ジョンソンは防御がボクシング対応でした。あの構えではパンチを防げても、蹴りが入ります。ハイキックを食らって危ない場面があっても、ハイキック対応の防御でなくパンチに反応し続けていました。あの戦い方では少し以前、ボクシングとレスリングが合体したMMAの時代なら勝ち続けることができたかもしれない。

ただし、MMAは今では蹴りが増えています。そこに対応しないまま戦っていました。逆にマラーキーは蹴りが良かった。蹴りの選手で、首相撲も使っていました」

──……。しかし、その蹴りの選手であるマラーキーが……。ウェービングやヘッドスリップというボクシングの動きを見せていました。

「近づくためにです。マラーキーはあと数センチ後ろから蹴っていると、KOできていたかもしれないのに。ハイキックの距離が近すぎました。それでもボクシング対応のジョンソンには、その蹴りがほぼほぼ入っていたということになります。つまりマラーキーは彼の本来のリーチとパワーが生きた戦い方ではなかったです。自分の体格と言いますか、呼吸にあった戦い方を身につけないと、リーチだとか体を生かした戦いができなくなります。

良く似たケースが、世界中にあると思います。先日、とある日本を代表する柔術家のガールフレンドさんと会って話す機会がありました。オランダ人女性で、やはり骨格は日本の女子選手と違います。その体格はいわばダッチキックボクシングができる体なんです。ただし、ちょっと打ってもらうとそうじゃない。それはあくまでも日本人のキックボクシングになっていました。

オランダ人と日本人では呼吸が違います。その呼吸に合わせた打撃が存在しています。だから彼女には彼女の呼吸にあった打撃を稽古してほしいです」

──今MMAは接近戦が増えて、接近戦を制した選手が勝つという空気感もあります。

「あれだけ近くで打撃戦が増えると、テイクダウンを狙うという選択肢から除外されつつあるようにも感じました。まあ前に出て、自分のパンチや蹴りが効果的なら出るべきです。ただし大切なことは前に出ることではなくて、どこにいれば効果的な攻撃を出すことができるのかを知ることかと思います。

もう四半世紀以上も昔の話ですが、ソ連では地下でフルコンタクト空手の稽古が行われていました。西側はヨーロッパの技術が伝えられ、東側は日本の練習が伝承されていました。結果、ロシアになってからも東側の選手の方が戦いやすかったです。それはロシア、スラブ系の人たちに日本人の呼吸の空手を指導した結果だと思います。東の方は英国の影響が大きい空手をしていました。つまり欧州の呼吸だったんです。

最後はパワーでやられるということはありましたが、欧州で名前を挙げた選手が日本での稽古が増えると、組みし易くなるということが往々にしてありました。やはり民族、人種として体の特徴、感性と言うモノが存在しており。武器を使わない格闘技、武術はその特徴、感性……つまり呼吸を大切にした方が良いというのが私の考えです。

マラーキーはあれだけ足が上がるのに、なぜウェービングやヘッドスリップを使って距離を詰めて、窮屈な態勢で蹴りを使っていたのか。それは、そういう練習をしてきたからなので。

いずれにせよ、初回はジョンソン、2Rはマラーキー、最後はマラーキーだったという試合でしたが、の両者揃って最後の5分は自分が勝っているというような心境で戦っていたように見えました。ホントは、ここを取らないと負けるという状況であったのに。

つまりは普段の練習ですよね。そりゃあUFCで戦う選手だから、普段から凄くハードな練習をしているでしょう。だからこそ、相手も皆同じだけやっているんだという自覚を持ち、そこで勝つためには何が必要かを見つめる必要は全選手が持っていると思います」

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【Bu et Sports de combat】武術的な観点で見るMMA。クリバオ✖チェ・スンウ「距離の種類」

【写真】打って出るクリバオと出て→打つチェ・スンウの違いとは (C)MMAPLANET

MMAと武術は同列ではない。ただし、武術の4大要素である『観えている』状態、『先を取れている』状態、『間を制している』状態、『入れた状態』はMMAで往々にして見られる。

武術の原理原則、再現性がそれを可能にするが、武術の修練を積む選手が試合に出て武術を意識して勝てるものではないというのが、武術空手・剛毅會の岩﨑達也宗師の考えだ。距離とタイミングを一対とする武術。対してMMAは距離とタイミングを別モノとして捉えるスポーツだ。ここでは質量といった武術の観点でMMAマッチを岩﨑師範とともに見てみたい。

武術的観点に立って見たジョシュア・クリバオ✖チェ・スンウ戦とは?!


──今回はジョシュア・クリバオ✖チェ・スンウの試合をお願いします。

「いやクリバオ、凄く良い選手ですね。もともと、どういう格闘技をやっていた選手なのですか」

──私もほとんど知らない選手でした。UFCから送られてくる資料だと柔術からMMAを始めたということで、それ以前に打撃のベースがあったのかは不明です。

「伝統派空手的な打撃なのですが、MMAをやるうえで身に着けた結果がああいう打撃になったのか……。この試合は出て打つのと、打って出るのとの違いが明白でした。

リーチが長いのはチェ・スンウですが、彼は出て打っているのでクリバオにしては見やすかったと思います。なのでブロックをしたり、カウンターを当てることがデキていました。逆にクリバオのパンチは、チェ・スンウは見えづらかったと思います」

──クリバオの打撃は力むことなく、パワーや瞬発力に頼ることがない打撃に映りました。チェ・スンウは動きを目で追っていても、感知できないパンチがありました。ただ、両選手ともドタバタした打撃ではなかったです。

「ドタバタはしていないです。チェ・スンウは送り足でパンチが強い。ただし、動きが一つです。にじり寄って振りまわす。彼は距離が遠く感じていたんだと思います。クリバオは下がったり、外したりと距離を取る手段が断然多かったからでしょうね。外すだけでなく、チェ・スンウの出鼻にサッと前に出たりだとか。

最も注目すべきは遠間からスッと距離を詰めて打つパンチです。アレは見事でした。足を踏み込んだりしていないんです。何気なくポンとおいているだけのパンチでした。チェ・スンウにしてみれば、相当に厄介だったはずです」

──踏み込まずに置くパンチ。つまり打って出る攻撃だったわけですね。

「構えもスイッチして変えていますし、今のMMAを追求していくとああいう形になったのでしょうかね」

──キックボクシングの韓国・国内王者だったチェ・スンウがMMAにアレンジしていった打撃とは明らかに違いました。

「う~ん、なぜ、ああいう風にできるようになったのか興味深いです。接近戦でもフックの打ち合いに応じていますし。このフックの性格も両者は違っていました。チェ・スンウは前に出ないと打てていないです。あれだけ踏み込むと、自分の動きを止めるためにブレーキを同時に掛けないといけなくなるので」

──パワフルに見えたのはチェ・スンウでしたが、自分で勢いを落としてしまっていると。その一方で、クリバオはとても柔らかい動きなのに効かせていました。

「そうなんです。ステップバックをして左のフックを合わしていましたからね。その場で打つフック、下がりながら打つパンチ、急に飛び込んで打つパンチと3種類の打ち方をしていました。それを左の逆突きでもやるし、ワンツーでもやっています。蹴り終わりに出したり。上下の攻撃が繋がっています。これはキックボクシングでもフルコンタクト空手でも同じですが、MMAでは上下が途切れるよりも繋がっていた方が良いです。

米国のMMAの打撃はどうしてもボクシング寄りです。でもレスリングが強いので、パンチと蹴りのトランジットの部分でラグがあっても問題視していないみたいです。でも、良い時のTJ・ディラショーはラグがなかったです」

──MMAという部分で捕らえると、初回と2Rはほぼ組みがなかったです。そして3Rにはチェ・スンウがテイクダウンをしてバックグラブまで行きました。あのポジションと、勢いのあるように映る打撃でジャッジ1人はチェ・スンウの勝ちにしました。

「最初から組みを混ぜる選手に、あの打撃を出すことができるのか。チェ・スンウはずっとクリバオの距離でパンチや蹴りを出してきたので、問題になる攻撃がなかった。そこに組みを交えると、どうなるのか。そこは見てみたかったです」

──ところでクリバオもチェ・スンウも教え子の松嶋こよみ選手と同じフェザー級です。クリバオやチェ・スンウはUFCの契約配下選手、松嶋選手はそこにいくためのトーナメントに参戦中ですが、能力的にどれだけ差があると見ていますか。

「松嶋が凄く良いとは言えないですが、正直、クリバオやチェ・スンウがそこまで完成度が高いとは思っていないです。MMAはやるべきことが多すぎて、一つことを究めることがあまりできない傾向にあります。だからこそ、技術的なことばかり目をやって『やれる』、『やれない』という感情を持ってもしょうがないんです。

UFCが常に凄いのは、あの生き残り合戦のなかで生き残った選手の試合ばかりを視ているからなんです。あそこで生き残れる人間は、生き残っているだけ強くなっている。それは何も技術力が絶対だからではないです。技術はある者同士が戦っている。そこで勝ち残り続けることができるのは、技術だけの問題ではないです。生き残りを賭けた戦いを勝ち抜いてきた生命力の強さです」

──そうなると練習で修得できるモノではなくなってしまいます。

「ハイ。練習で身につくものじゃないです。だから松嶋のホン・ジュンヨンとの試合で一番の収穫は、あの根性のある相手に気持ちで負けなかったことです。彼は技術的なことを反省したり、倒せなかったことを悔やみがちですが──そんなものは練習通りに行くわけがない。

倒せないで落ち込んでいたら、ずっと落ち込み続ける必要があります。でも、最終的には殴って、テイクダウンをして勝てた。あの気持ちの強い相手が最後には勝負を諦めたんです。技術的な部分ではなく、あの気持ちを彼はこの間に経験してきたことで備えることができていた。それは決して練習では身につくことではありません。でも技術も気持ちも練習していないと、何も出ないです。

百やってきたことの幾つかだけですよ、試合に出るのは。でも、その100をやらないと幾つかはない。百をやるから、一が生きます」

──改めて、松嶋選手と彼の間に差は?

「クリバオとチェ・スンウと松嶋に差はないです。アイツが勝つつもりで練習をするのか。今回のような気持ちで戦うということができれば、クリバオの攻撃を凌ぐことだってあります。相手のやる気を叩き潰せば良いんです」

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【Bu et Sports de combat】武術的な観点で見るMMA。澤田千優✖久遠「重心→固定と安定の違い」

【写真】これからはこの態勢でパウンドを落とせるような機会は減ってくるかもしれないが、力強さは日本の女子MMAでは既にトップ級か。ちなみに撮影条件はシャッタースピード1/400秒。この速さだとスタンドはともかく、パウンドでは男子選手も拳がブレないで静止画のように写る選手は少なくない(C)MMAPLANET

MMAと武術は同列ではない。ただし、武術の4大要素である『観えている』状態、『先を取れている』状態、『間を制している』状態、『入れた状態』はMMAで往々にして見られる。

武術の原理原則、再現性がそれを可能にするが、武術の修練を積む選手が試合に出て武術を意識して勝てるものではないというのが、武術空手・剛毅會の岩﨑達也宗師の考えだ。距離とタイミングを一対とする武術。対してMMAは距離とタイミングを別モノとして捉えるスポーツだ。ここでは質量といった武術の観点でMMAマッチを岩﨑師範とともに見てみたい。

武術的観点に立って見た澤田千優✖久遠とは?!


──内弟子といえる澤田千優選手が久遠選手をRNCで破りました。

「見た目があんな感じで、場内からも『可愛い』なんて声が挙がっていましたね(笑)。実際、普通にしている分には強いレスラーにはちっとも見えないです。でもMMAの選手で、自ら弟子入りを私に志願してきたのは彼女が初めてです。

もちろんアニキ(リュウリュウ)の影響もあるかと思います。最初は打撃という一つの方法論で私の教えを受けたいということでした。彼女が私に求めているのは空手、打撃の技術ということですが、澤田千優には戦ううえで思想があります。私も打撃の技術を指導しつつ、そこを一番伝えたいわけで。何しろ打撃は全く経験がなかったわけですから。それでも手・足に質量はついてきています。それは彼女が1年以上に渡り型、移動と基本稽古を行ってきたからです。

ただし、そのついてきた質量をケージのなかで実用化しようとしても、そんなに簡単にいくものではない。打撃に関しては、その段階です。打撃に関してはその段階なのに、試合に出ないといけない。そこに本人もジレンマがあります。MMAファイターとして、試合の場に立ってしまって良いのかというレベルなのですが、アマチュアの試合にすぐに出て勝ってしまった。プロに昇格してオファーがあり、試合に出て勝ってしまうわけです。レスリング力で、MMAに勝ててしまう」

──思想がある利点はどこにあるのですか。

「思想がないと、技術は生きません。Aという技術があっても、戦いへの思想の違いでまるで別モノになります。その思想の部分で、澤田千優は私の指導を求めたのだと思っています。空手とは技術ではないので。だから彼女は私の指導を受けても、試合ではレスリングをすれば良いんです。今はMMAをやる必要はないです。レスリング力が抜けているので。ただし、あの外見とは合致しないのですが、性格的には本当にしっかりとしていて正々堂々としています。それは見事なほどです。筋を大切にします。腹が座って、筋を大切にするので社会人としてもの凄くバランスが取れています。

こういうとアレですが、試合で強い子っていうのはどうかしちゃっている子も多いわけです(笑)。どうかしているから強いとも言えますが、反対に彼女は真面目過ぎて、弾けられないところがありました。でもMMAファイターとして、澤田千優の形とは……空手の型とは違って、そういう形は何なのかと去年の中村未来戦の前から話していて。あの頃からロータス世田谷の八隅(孝平)さんのところで練習をさせてもらうようになっています。その形が今回、ようやく試合で出てきたように感じました」

──レスリングは当然として、スタンドの打撃と比較してパウンドは勢いがありました。

「まだ立っている状態では、重心が創れないのでしょうね。しかも相手は久遠選手ですから、そこで上回れるわけがないですからね」

──振りかぶらないで、滑らせるように入れたパウンドが得に良かったです。

「ヒジで打つ突きになっていた。あれは基本稽古をやってきたからですね。拳(ケン)に質量が備わってきています。空手はある程度の威力まで、稽古で培うことは可能です。決して、パンチ力は持って生まれたモノだけでは決まらないです。あの子は愚直に基本稽古をやっていますから。型と移動稽古をしている。あのパウンドの威力をスタンドで出せるようにしていきたいですね」

──型や移動をしっかりとすれば、重心が浮かない。そのような感じはするような気がします。前はともかく、後ろに移動する時もブレない。

「それは、そのための稽古だからです。空手が一番苦手なのは、実は移動なんです。移動した力で打つのではなく、剛毅會が武術空手として追及しているのは近い距離で、自分で養成した威力を当てることです。空手は護身術なので、遠くにいる相手をぶん殴るようにはできていません。大半は自分の腕が伸びた距離まで、そこで如何に迎撃するかという技であり、相手にしっかりとダメージを与えるモノです。

蹴りも自分のカカトに力が入った状態より、遠い距離を攻撃することはなかったです。自分の足の長さ以上の蹴りなど本当はなかった。結果、MMAを戦うと追いかけることが苦手になります。型にも距離の詰め方のノウハウがない。そこがMMAに武術を生かすうえで、最も苦心した点です。澤田千優は基本をやっているので、定位置の質量はついてきています。

この重心にしてもですね、重心を重心として、腰を低くして創ると……それはもう重心ではないんです。姿勢が乱れない、駒が回るように流動体としての重心がある。だから固定でなくて、安定なんです。腰を落として創る重心は、建物のように固定されている重心になってしまいます。動くなかで生じる重心というのは、基本稽古で養えることです。

後ろ向きだが、2Rの構え。この後、左に合わせて一発でテイクダウンを決めた

またMMAの重心移動と、レスリングの重心移動は全く違います。澤田千優は中村戦も今回の試合も、2Rになると重心が変わります。

1Rはテイクダウンにいこうが、パンチを出そうが軽いです。だから右を被弾しました。2Rになると固定した重心でなく、体が機能した重心になっています。そうなると顔つきも変って(笑)。こうなると今回はテイクダウンを選択しましたが、突きを出してもなかなか良かったはずです」

──平たい言葉ですが、澤田千優選手は今後に期待の存在になります。

「想定している戦いをどこにしているのか。彼女が目標としているところへいくために、もう底辺の大会から海外をドサ回りさせても良いのですが……アトム級だと試合がないというのも問題ですね。

レスリングをあれだけやってきたので、精神的に成熟しています。あとは自分が目指すところへどれだけ邁進できるか。MMAに価値に持って、稽古に臨んでいるのでこのまま真っ直ぐ進んで欲しいですね」

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【Bu et Sports de combat】武術で勝つ。型の分解、ナイファンチン編(09) 「一挙動の手刀『外』」

【写真】イチ・ニという動きではなく、イチの動きでこの形を創る (C)MMAPLANET

武術でMMAを勝つ。空手でMMAに勝利する──型を重視する剛毅會の武術空手だが、岩﨑達也宗師は「型を使って戦うということではない」と断言する。型稽古とは自身の状態を知り、相手との関係を知るために欠かせない。

サンチン、ナイファンチン、セイサン、パッサイ、クーサンクーの型稽古を行う剛毅會では、まずサンチンから指導する。そんな剛毅會の稽古には站椿が採り入れられている。

全ての根幹となる武術の呼吸を学ぶことができる──サンチンで創られた、空手の体をいかに使うのか。その第一歩となるナイファンチンの解析を行いたい。目線と体の向き、足の小指が正しくなることでナイファンチン立ちが成り立つ。今回は「一挙動の手刀『外』」を分解していく。

<ナイファンチン第8回はコチラから>


一挙動の手刀打ち、『外』
ダメな例

相手の突きに対し


肩を回して相手の外側に入る。このように回転の動きで入ると


一度動きが止まり、そこから手刀を打つというイチ・ニの動きになる。これでは一挙動にならない。結果、居着いた攻撃となり右の突きを避けることはできても


2発目の左の突きを被弾してしまい


手刀を出すことさえままならない

一挙動の手刀打ち、『外』
良い例

相手の突きに対し


外側から入って手刀を打つと


間を制し、腕をまっすぐ伸びて曲がった状態にならないので相手の攻撃は届かない


「正しい一挙動の手刀打ちは、相手の攻撃に対して直角にイチで入ることが最も肝要である」(岩﨑達也)

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