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【ONE FF100】ストロー級王者ヂィンナン、アトム級でモン・ボーの組みに苦戦もバック奪取で判定勝ち

<女子アトム級(※52.2キロ)/5分3R>
シィォン・ヂィンナン(中国)
Def.3-0
モン・ボー(中国)

ボーが左ジャブを突く。ガードを固めたヂィンナンも左を伸ばし、続けてワンツーを放つ。右から左ボディに繋げるボー。右ストレートから組みつき、ロープに押し込んでいくがヂィンナンが体勢を入れ替えた。しかしボーもコーナー際で差し返してヂィンナンを押し込む。右アンダーフックから投げを打ったボーが尻もちを着かせるも、ヂィンナンが半身から立ち上がった。クラウチングスタイルから左前蹴りを見せたヂィンナンが、左ボディジャブを突き刺す。

右カーフを蹴って距離を取るヂィンナン。組んだボーが右を打ち込んでから離れる。頭を振って距離を詰めるヂィンナンは、ボーにロープを背負わせてニータップで飛び込んだ。しかしボーが切り返してボディロックで組む。コーナー際でボーが押し続けるも、倒せずに離れた。リング中央でヂィンナンの右がボーの顔面をかすめる。組んできたボーに対し、投げを試みたヂィンナンだがテイクダウンできず初回を終えた。

ボーが左を伸ばすと、ヂィンナンは頭を振りながらパンチを伸ばす。左フックから右を伸ばしたヂィンナンに組みついたボーが、コーナーへドライブした。両腕を差し上げたボーが崩してグラウンドに持ち込んだ。右側へパスしたボー、ボディロックからバックに回るも、ヂィンナンに立たれる。正対しようとしたヂィンナンを、ボーが再びグラウンドに引きずりこむ。

ヂィンナンは右足でボーの腰骨を蹴りながら左足を上げていく。しかしボーは胸を合わせて、しっかりと押さえこむ。ボーが立ち上がると、ヂィンナンもスタンドに戻った。ヂィンナンはボーの右ローに右ストレートを合わせる。ボーはヂィンナンをコーナーに詰めて右ミドルを突き刺す。組み合いではボーが勝り、ヂィンナンをロープに押し込んでいく。右に回って離れたヂィンナンを追うボー。ヂィンナンの右をかわして、自身も右ストレートを打ち返した。

最終回、ボーが右ローを当てる。ヂィンナンの前進をかわしたボーがボディロックで組み、ロープあるいはコーナーに押し込んでいく。しかしボーが崩しにいった瞬間、ヂィンナンが体重をかけて押し倒した。下になったボーが右ヒジをヂィンナンの頭頂部に連打する。立ち上がろうとするボーのバックに回ったヂィンナンは、バックマウントを奪取してパンチを打ち込みRNCへ。ここは極まらずも、バックマウントをキープしてパンチで削る。

仰向けになったボーの首に右腕を回すも、ボーが上半身を起こした。立ち上がったボーをコーナーに押し込むヂィンナン。ボーが回って離れ、リング中央に戻る。差し合いからダブルレッグ、起き上がって右アンダーフックで押し込むボーだが、潰されて顔面にヒザ蹴りを受けた。スタンドに戻り、見合う両者にレフェリーが注意を与える。再開後、互いに右スピニングバックキックを見せた。打ち合いでボーは右ヒジを放つも当たらず、試合は判定にもちこまれた。

裁定はヂィンナンのユナニマス判定勝ち。序盤はボーの組みに苦戦したヂィンナンだが、最終回にバックマウントを奪取してRNCを狙い、逆転で勝利を収めた。ヂィンナンは今後もアトム級を主戦場とするのか。となればストロー級でヂィンナン戦を希望していた三浦彩佳の動向も気になるところだ。


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【ONE171】カタールでリトゥ・フォーガットと対戦、三浦彩佳「今回はアヤカロックが出ないかも」

【写真】この時、バランスボールに乗っている三浦。コンディショニングに良いそうです(C)SHOJIRO KAMEIKE

20日(木・現地時間)にカタールはルサイルのルサイル・スポーツアリーナで開催されるONE171「Qatar」で、三浦彩佳がインドのリトゥ・フォーガットと対戦する。
Text by Shojiro Kameike

2024年1月の平田樹戦から三浦はONEアトム級で戦ってきた。当初は同ストロー級の試合にこだわりを見せていたが、現在はアトム級で3連勝中。インタビューでも意識の変化が感じられる。ランキングも同級3位につけ、ベルト挑戦も射程圏内に入ってきた。そんな三浦に訊く、ONE女子アトム級とリトゥ戦――そしてアヤカロックについて。


――昨年から、ラズワン戦の中止はありながらも、以前と比べて定期的に試合が組まれるようになってきました。今回も昨年11月から3カ月後の試合となります。

「そうですね。ありがたい話ではあるのですが、『やっぱりストロー級ではないのかぁ』とは思っています」

――三浦選手はずっと「ONEストロー級で……」と希望していますが、今のONEを見ていると、どうしても女子については「アトム級のほうが面白い」と考えてしまいます。

「アハハハ、そうなんですよ(苦笑)。先月のモン・ボーと澤田(千優)さんの試合は本当に感動しました」

――三浦選手は2023年11月、モン・ボーをアヤカロックで下しました。そのモン・ボーは体も打撃も強いという自分の持ち味を生かせるようになってきたかと思います。

「完全にスタイルチェンジしましたね。構えが変わっていて――彼女は最近、本当にどん底にいたと思うんです。澤田さんとの試合では『この一戦に全てを賭ける!!』という気持ちが伝わってきました。しっかりと対策を講じていて」

――はい。

「ジムに行って『モン・ボーと澤田さんの試合、本当に感動した』と言ったら、『そのモン・ボーに自分は勝っていると言いたいんでしょ?』みたいな勘繰りをされました(苦笑)。アハハハ、本当に感動したんですから」

――同じ大会ではザンボアンガが暫定王者となりました。

三浦のターゲットとなったスタンプとザンボアンガ。王座統一戦はいつ?(C)ONE

「アトム級の選手は、いつか自分が対戦するだろうと想定しながら試合を視ています。ザンボアンガはすごく打撃が上手くなっていましたね。昔よりは上手くなっていたけど――私はいつでもザンボアンガと対戦したいです。今の自分だったら行ける、というのが正直な感想です」

――三浦選手は昨年11月にマカレナ・アラゴンをアヤカロック=スカーフホールド&アメリカーナで下しています。最初からアヤカロックを極めようと向かっていったのですか。

「いや、そんなことはないです。前回の試合は『右フックだけはもらわないように。そこだけ気をつけていればいいから』と言われていて。そうしたら最初に右フックを食らってしまいました。アハハハ。

アヤカロックについては、結果的にあの形になったという感じですね。普段からどの体勢からでも、何があってもアヤカロックを出せるようにドリルで反復しています。アラルゴン戦は下になった時点で『これは裏アヤカロックで行けるな』と思ったら、実際に一回掛かったんですよ。でも腕が伸びたのにタップしないから、『アレッ!?』と思って」

――さらに上から仕掛けた時も、一度凌がれました。

「相手も柔らかいなぁと思いつつ、3回目のアヤカロックで極まりました。最初の裏アヤカロックでもバキバキと音は聞こえていたので、痛かったと思いますよ。試合後に聞いたところによると、『脱臼して神経も切れたかも』ということでしたし」

――アヤカロックのフィニッシュについては、以前よりも自信と精度が高まっているようにも見えます。

「形に入ったら大丈夫なのと、防がれても何とか大丈夫という肌感覚はありますね。もし防いできたら削っていくし、掛からなかった時のパターンも想定して練習していますからね」

――ストロー級からアトム級に落としたことで、フィジカル的な面は影響していますか。ストロー級の時と比べたら掛けやすくなっている、とか。

以前は「こだわりすぎ」とも思われたアヤカロックだが、いまや首を抱えると期待してしまうほどのフィニッシュ技に(C)ONE

「影響はある――だろうとは思います。というのも、通常体重から軽くなったからこそ、私自身は考えることがあって。正月明けの練習で長南(亮TRIBE代表)さんを押さえ込んでいたら、長南さんからも『あれ? 前と違うな』と言われました。階級を落としたことで、自然と体の使い方が変わってきたんだろうと思います」

――なるほど。そして迎える2025年の初戦ですが、2月大会のオファーが来た時に「3月の日本大会じゃないのか」とは思わなかったですか。

「あぁ、それは――実は最初、1月大会でオファーが来ていたんですよ」

――1月大会とはザンボアンガの暫定王座決定戦、モン・ボー×澤田戦と同じ日に?

「いえ、野杁正明選手が出た大会(ONE170)のほうですね。私はOKしたんですけど、リトゥのほうが断ったらしくて。まぁ復帰戦で私と対戦したくはないだろうな、とは思いますけど。体重が落ちないのかな、とも思ったり」

――しかし改めて2月大会で組まれたわけですね。

「私としては、ありがたいです。今はステップアップのために、いろいろ課題を持って練習に取り組むことができています。一方で相手は1月の試合を断って、1カ月後に勝てると考えられるほど変わっているとは思えないし。ただ、その試合が日本大会じゃないんだぁ、とは感じましたよ。それは正直に。でも日本大会の内容が発表されたら、キックボクシング中心のマッチメイクだったので仕方ないです」

――リトゥはレスリングが強みの選手です。とはいえ2年5カ月振りのMMAで、どこまで調子を戻しているか。

「私は『戻しているだろう』と思って戦います。あとカタールのドーハって、インドの方がたくさん住んでいるそうなので、私にとってはアウェイと考えて試合に臨みます」

――2年5カ月前の印象になりますが、リトゥの場合、レスリングは強い。しかし寝技の精度はそれほど高くない。そのようなタイプは極めやすいですか。

「たとえばスタンプとの試合とかですよね。スタンプに下から極められていて。私自身、最近ONEでグラップラーとMMAを戦ったのは平田樹ちゃんぐらいなので、何とも言えないところはあります。どうなんでしょうね? ピュアなレスラーだったら極めやすいかもしれないけど――ただ押さえ込んでくるだけなら、スタンプみたいに下から極めやすいですし。……おっと、これ以上は対策になるから秘密です(笑)」

――アハハハ。

「今回はアヤカロックが出ないかもしれないぐらい、いろんなことを練習してきました。できることも増えています。次の試合はアヤカロックで終わるのか、それとも打ち込みでやってきたことが出るのか。どうなるかはお楽しみに、ですね」

――そうは言っても最後は、いつもどおりアヤカロックで勝ち、叫んで泣いているのでしょう。

「アハハハ! 言いたいことは、たくさんあります」

――毎試合、言いたいことがあるのですか。

「ありますよ。今回は試合後のマイクが欲しいです。澤田さんにタイトル挑戦のオファーが来ていたことも含めて――勝って、5万ドルのボーナスをもらい、言いたいことを言って日本に帰ります(笑)」

――それこそが三浦彩佳ワールドですね。

「まずはしっかり勝ち切ります。アヤカロックに限らず極め切る。リトゥ選手は根性がある選手なので、3Rもみくちゃになることも想定して練習しています。

日本大会がありますけど、その前に私の試合も視ていただけると嬉しいです。木曜日の深夜、皆さん夜更かししてください!」

■ONE171 視聴方法
2月20日(木)
午後23時00分~U-NEXT

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45 MMA MMAPLANET o ONE ONE FN27 モン・ボー 澤田千優

【ONE FN27】TDが決まらない。キャリア9戦目の初黒星。モン・ボーが完璧な澤田対策を実行

<女子アトム級(※52.2キロ)/5分3R>
モン・ボー(中国)
Def.3-0
澤田千優(日本)

サウスポーの澤田の最初のテイクダウン狙いをスプロールしたモン・ボー。そのままシングルレッグでコーナーに押し込んだ澤田だが、自ら離れる。パンチを振るって距離を詰める澤田のテイクダウン狙いを2度に渡り切ったモン・ボーが右アッパーを入れる。被弾しても距離を詰め、しつこく組んだ澤田はシングルから上組みへ。離れてすぐに右を差すが、モン・ボーも押し返す。澤田のクリンチに左エルボーを見せたモン・ボーは、距離を取り直した澤田にヒザを繰り出す。モン・ボーはジャブで距離を測り、ステップインに右を合わせる。

後ろも使えているモン・ボーに対し、澤田はパンチを見せ、テイクダウンのフェイクを見せるが右を被弾する。回ってジャブ、インローを蹴ったモン・ボーはスイッチも駆使し徹底して澤田のテイクダウン狙いを切り続ける。残り20秒、ローシングルを切られた澤田はパウンドを落とされ初回を落とした。

2R、組んでテイクダウンだけでなくボディロックやバックに回りたい澤田が、シングルレッグへ。スプロールして左に回って距離を取り直したモン・ボーが右インローを蹴る。澤田は右を見せてシングルレッグ、ここで引き込んでボディロックに取る。と、ここでレフェリーがブレイク、モン・ボーもロープ掴みにイエローカードを提示する。

同体で試合はリスタートされ。澤田はしっかりポジションを指示してバタフライガードへ。モン・ボーは立ち上がる。澤田はシングルから、ついにバックに回る。モン・ボーもココも正対して対応すると、右を伸ばす。前に出るようになったモン・ボーに、シングルから引き込んだ澤田だが、パスの圧を受ける。澤田はバタフライガードでエルボーを下から打っていく。

ハーフバタフライも厳しい状態の澤田が、クローズドへ。鉄槌を落としたモン・ボーのトップが続く。モン・ボーは右のパンチを落とし、印象点も課せず。立ち上がって距離を取ったモン・ボーが、スタンド戦を要求する。直後の組でモン・ボーが大内刈りへ。澤田も内股で対応して、両者が前転するようにスクランブル。澤田がバックを伺うも離れたモン・ボーがミドルを蹴った。

最終回、シングルのフェイクからパンチを見せた澤田は、続くシングルを切られスイッチも潰されて背中をつかさせる。澤田はスクランブルに持ち込めずガードを強いられると、腰を上げたモン・ボーの勢いのある右のパンチを受ける。パスを嫌い、シングルを切られた澤田は、レッスルアップもリバーサルにも持ち込むことができず背中をつけた状態が続く。

モン・ボーはハーフでしっかりとトップをキープし、盤石の展開に。残り90秒、モン・ボーがスペースを創り前腕を振り落とす。立ち上がったモン・ボーは、澤田の立ち上がる動作をしっくりと見ている。澤田はシングルを決めることができないなか、レスリング勝負を続けるしかなく手のない状況に。残り10秒、ミドルを入れジャブを当てたモン・ボーが満点といって良い澤田対策を実行し、3-0の判定勝ちを手にした。

左目を大きく腫らしている勝者はコーチ、友人、タイガームエタイに感謝し、「私は成長している」と話した。


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45 AB MMA MMAPLANET o ONE ONE FN27 UFC YouTube アクバル・アブデュラエフ アリョーナ・ラソヒーナ アーロン・カナルテ エンフオルギル・バートルフー クラップダム・ソー・チョー・ピャッウータイ サンジャル・ザキロフ ジャン・ウェイリ ジョン・リネケル スーブラック・トー・プラン49 タン・カイ ダンテ・リオン デニス・ザンボアンガ トミー・ランガカー ブラック モン・ボー ルンピニー 三浦彩佳 和田竜光 澤田千優

【ONE FN27】身長差12センチ、澤田千優対戦──モン・ボー「もうワンパンチ・ファイターじゃない」

【写真】計量前夜、動いて汗をかいていたモン・ボー。澤田とともども計量&ハイドレーションもクリア。セレモニアル計量とファイトを残すのみ(C)MMAPLANET

明日11 日(土・現地時間)、タイはバンコクのルンピニー・スタジアムでONE Fight Night27「Tang vs Abdullaev」が開催され、モン・ボーが澤田千優と対戦する。

11年と2カ月前のMMAデビュー戦で、ともにプロMMA初陣だった現UFC世界ストロー級王者ジャン・ウェイリを倒しているモン・ボーは、女子MMA界屈指のハードパンチャーだ。しかし、打撃主体の母国でのMMAではカバーできていた弱点=組み技の完成度の低さは、ONEで戦うと彼女の強ささえもスポイルするようになった。

そして一昨年11月に三浦彩佳にアヤカロックを極められると、タイのパタヤに拠点を移したシンジャン・ファイトジムを離れてなんか、プーケットのタイガームエタイで汗を流すようになった。徹底的にレスリングと柔術の強化に取り組んだモン・ボーは、澤田との対戦を前に「弱い自分を乗り越えることができた」と、この1年を振り返る。

身長差は12センチ、長所がハッキリした対戦は澤田、そしてモン・ボーにとって──MMAファイターとしての完成度の高さが問われるタフファイトになりそうだ。


――1昨年の11月に三浦彩佳選手のアヤカロックで敗れて以来、実に14カ月ぶりの試合となりました。この間、これだけ試合間隔が空いたのは何か理由があったのでしょうか。

「そうね、長い間試合をしてこなかったわ。ONEから試合出場の要請がなかったこともあるけど、自分の方から急いで試合をしようとは思っていなかったのも事実で。私にはまだ組み技、寝技に穴があったから。

この14カ月の間にレスリングと柔術の練習をしっかりと積んできた。そして、ONEが私の相手を見つけてオファーがあった。新しいモン・ボーを見せる時がやってきたのよ」

──その1年強の間、タイで練習していたのですか。

「そうね。タイガームエタイで1年間、練習してきた。日本人選手とも練習してきたわ。リョースケ・ホンダとか。その甲斐もあって、今ではグラップリングやレスリングにも自信が持てるようになった。もちろん、打撃に関しては自分の力は把握している。弱点を克服しただけでなく、長所を伸ばすことができた。その成長を今回の試合で見せたいと思う。

私は自分の力を把握している。グラップリングも今では悪くない。何より、自信がついたことが大きい。以前は寝技の展開になることを恐れていた。でも今ではそういう……弱かった自分を越えることができた。まずは自分自身に勝てたと思っているわ」

──女子アトム級の最強のパンチャーが、より強い拳を持つことになったのですね。

「私のパンチは、一発で相手を倒すことができるわ。でも、それだけじゃダメだった。今ではコンビネーションを使えるし、レスリングも柔術もできる。ウェルラウンディット・ファイターになった。全ての局面で、進化できたわ。もうワンパンチ・ファイターじゃない」

──成長を感じるなかで、ONE女子アトム級最強のレスラーである澤田選手と相対します。

「彼女の試合は、全てチェックしたわ。とても気持ちの強い選手ね。1度でもテイクダウンを決めると、そこから攻撃を止めることがない。どれだけパンチを顔面に被弾しても、絶対に諦めない。本当に強いファイターで。それだけの覚悟を持って、私も土曜日には戦うつもりでいるわ」

──公称では身長差は12センチです。このサイズの違いをどのように捉えていますか。

「確かに彼女は背が低いわ。でも、凄く力強い。私は背が高いけど細い。どうなるか、試合が始まってみないと……」

──背の低い選手が、テイクダウンを得意としている。その点はどのように対策を?

「もちろん対策練習はしてきたわ。でも、彼女のような体格で、彼女のように強い練習相手を見つけることは簡単じゃないから(笑)。それでも、しっかりと作戦を立てて練習はしてきた。それに私の方が、リーチがある。距離をコントロールして、自分の間合いで戦いたい。

ファイトはファイト。本当に次の1秒で何が起こるか分からない。でも、ファンにKOを見せたいと思う」

■放送予定
1月11日(土・日本時間)
午前9時45分~U-NEXT

■ONE FN27対戦カード
<ONE世界フェザー級(※70.3キロ)選手権試合/5分5R>
[王者]タン・カイ(中国)
[挑戦者] アクバル・アブデュラエフ(キルギス)

<ONE世界女子アトム級(※52.2キロ)暫定王者決定戦/5分5R>
デニス・ザンボアンガ(フィリピン)
アリョーナ・ラソヒーナ(ウクライナ)

<ムエタイ・フェザー級/3分3R>
ルーク・リッシ(米国)
コディ・ジェロム(カナダ)

<ムエタイ・バンタム級/3分3R>
ランボーレック・チョーアッジャラブーン(タイ)
パルハム・ゲイラティ(イラン)

<サブミッショングラップリング・180ポンド契約/10分1R>
トミー・ランガカー(ノルウェー)
ダンテ・リオン(カナダ)

<ムエタイ・バンタム級/3分3R>
クラップダム・ソー・チョー・ピャッウータイ(タイ)
ジョン・リネケル(ブラジル)

<ストロー級(※56.7キロ)/5分3R>
和田竜光(日本)
サンジャル・ザキロフ(ウズベキスタン)

<フェザー級(※70.3キロ)/5分3R>
アーロン・カナルテ(エクアドル)
エンフオルギル・バートルフー(モンゴル)

<女子アトム級(※52.2キロ)/5分3R>
澤田千優(日本)
モン・ボー(中国)

<ムエタイ・バンタム級/3分3R>
スーブラック・トー・プラン49(タイ)
ドミトリー・コフトゥン(ロシア)

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45 ONE ONE FN27 ブログ モン・ボー 澤田千優

【ONE FN27】モン・ボー戦前、澤田千優に訊くMMAと重心「アトム級で一番MMAを体現しているのは私」

【写真】愛犬ゾーイ(オス/4歳)を従えてダブルピース(C)SHOJIRO KAMEIKE

11日(土・現地時間)、タイはバンコクのルンピニースタジアムで開催されるONE FN27で、澤田千優がモン・ボーと対戦する。
Text by Shojiro Kameike

プロデビュー以来無敗の澤田はONE参戦後も3連勝を収め、現在ONE女子アトム級ランキングで3位に。ベルト挑戦も近いポジションを得たなか、今回はモン・ボーと対戦する。同じ大会では王者スタンプの負傷による戦線離脱を踏まえ、2位デニス・ザンボアンガと4位アリョーナ・ラソヒーナによる暫定王座決定戦も組まれている。澤田がモン・ボーを下せば、3月に予定されている日本大会でベルト挑戦もあるのか――そんな澤田に、前回のノエル・グホンジョン戦で見せた変化と進化について訊いた。


試合のオファーはありました。6月のタイトルマッチで

――澤田選手のインタビューは前回の試合から7カ月振りとなります(取材は2024年内に行われた)。これだけの期間、試合がなかった理由は何かあるのでしょうか。

「もう言っていいことだとは思うんですけど――実はグホンジョン戦のあとに試合のオファーはありました。ただ、それが6月のタイトルマッチで」

――えぇっ!?

「オファーを頂いたのが大会の2週間前でした。チームで相談し、その試合間隔ではタイトルマッチの5分5Rで勝つための準備をするのは難しいと判断したんです。だから『次のオファーを待っています』とお答えして。すると試合間隔が空いてしまったのですが、私も一度オファーを断った手前、自分の都合ばかりを言うことはできなかったです。だけど私も年内にもう1試合したくて、ONEにアプローチしたところ『1月の大会でよければ』というお話をいただきました。結果的に試合間隔は空きましたけど、1月に試合が決まってよかったです」

――なるほど。もともと2024年6月のONE167で、スタンプ×ザンボアンガの女子アトム級タイトルマッチが予定されていました。しかしスタンプが半月板断裂のため負傷欠場に。結果、その1カ月前に澤田選手に敗れているグホンジョンが、ザンボアンガとのノンタイトル戦に臨んでします。澤田選手がザンボアンガとの暫定王座決定戦に出場していた可能性もあったわけですね。では5月のグホンジョン戦について、感想を聞かせてください。

「一戦一戦、ちゃんと考えていかないといけない。それはもちろんですけど、特にこの試合は落とせなかったです。だから全ラウンド、圧倒できたことは私にとって良い経験になりました。最後にストップしてくれなかったことも含めて(苦笑)」

――アハハハ。最後はバックマウント、さらにマウントからパンチを落とし続けてグホンジョンも動きが止まりましたが、レフェリーストップまでには至りませんでした。

「それも私が未熟だったためだと思っています。その悔しさをバネに、次は絶対に仕留めるぞっていう気持ちを体現していきたいですね」

――グホンジョン戦で気になった点が2つ、まず体つきが変わりました。

「体が大きくなったね、ってよく言われます。特に筋トレを増やしたわけではなく、いつもどおりなんですけど。でも追い込みも含めて、試合に向けて疲弊しすぎないよう練習メニューを考えました。それで必然的に体つきも変わってきたのかもしれないです」

――そうですね。ただ体が大きくなっただけではなく、今の動きに必要な肉体に近づいてきたのかと思います。気になった点はもう1つ。「今の動き」に繋がることかと思いますが、重心が変わりましたか。

グホンジョン戦の澤田。ローを打つ時に腰を落とすことができているため、スムーズにテイクダウンへと繋げられる(C)ONE

「重心? そうですね。打撃やミットのおかげで変わってきたのかなって思います」

――これまでより重心が低く、スタンスも広い。結果として左右に回りやすいし、レスリングの重心で打撃を出すことができ、そのままの重心でテイクダウンに行くことができる。

「はい。練習でも常々言われていることではあるんです。腰が浮いてしまうと、どうしても打撃の効果が薄れてしまいますよね。良太郎さんや松嶋こよみさんは、私のバックボーンや普段の練習も理解してくれているので、『もっとこうしたほうが良い』と修正を加えてくれていました。それが『テイクダウンに行くための打撃』と『MMAのためのレスリング』をミックスする形に繋がっていると思います。

特にグホンジョンはパンチが強くて、思いっきり打ってくるタイプです。いかに相手のパンチをもらわず、自分の良い攻撃を出してテイクダウンできるかどうかが課題でした。だから、いつもより重心を落として――『腰を落として』という表現になります。腰を落とすことで、相手によって自分の打撃やテイクダウンが見えない位置を取ることができる。さらに相手の弱いところ、外側を動けるようにしていました。近づきすぎず、でも遠くなりすぎず、ということは意識していましたね」

――おかげで相手の打撃に対するカウンターでしっかり組むことができ、テイクダウン後のコントロールも安定していたように見えます。

グホンジョンの体が起きている状態でシングルレッグに入れるのも、自身の重心の変化か(C)ONE

「確かにそうですね。レスリングではローシングルって、あんなにうまくは決まらないんですよ。相手も前傾姿勢で構えているので。だけど打撃があるMMAだからこそ、ローシングルで入ることができる。それはしっかりレスリングの練習をやってきたおかげで。MMAの練習のほかに、レスリングは日体大へ出稽古に行かせてもらっています。そこで練習したことを忘れず、試合で出せたんじゃないかと思います」

逃がさない、漬ける――やることを徹底すれば、間違いない

――レスリングのバックボーンがあるからこそ、MMAレスリングもできるということですね。

「私のバックボーンや強みはやっぱりレスリングなので、そこは伸ばしていかなきゃいけない。同時に、貯金でMMAをやってはいけないと思っています」

――日本国内の戦いでは、レスリング時代の貯金で勝ててしまう面も大きいですか。

「そうですね。国内だと……それこそ力やフィジカルが強ければ勝てちゃう時もありますからね」

――一方で澤田選手の中では、自身のレスリングをMMAに落とし込めている実感があったのでしょうか。

「自分だけでは、自信を持つことはできないです。そんな私に自信をつけてくれる練習がありました。打撃からレスリングに繋げる、練習でやったことを出せれば試合も大丈夫というところまで、繰り返し繰り返し練習して」

――重心が変わったおかげか、グラウンドコントロールも安定感が増したのではないですか。体が強いグホンジョンをコントロールし続ける。殴る、ヒジ、嫌がらせ、さらにパスガードを同時進行で繰り返していて。

グラウンドコントロールも安定感が増していた(C)ONE

「そうなんです。寝技だけの練習というわけではなく、たとえばグラウンドのコントロールは練習でも試合中でも、松嶋こよみさんから指示してもらったりとか。セコンドの声を聞きつつ、今は何をすれば良いのか――それは練習の時から日常的にやっていることで。いざ試合になっても自分は動きつつ、相手を見ながら指示された動きをスムーズに出せる。グホンジョン戦は、とにかく一度こかしたら絶対に相手を立たせない、というイメージで削り続けました」

――重心の話でいえば、剛毅會空手で学んだことは意識していますか。

「意識していなくても、私の中で必然的に空手とレスリングがリンクするところがあるんですよね。自分のバックボーンであるレスリングを生かすための打撃や距離とか。やっぱり一番重心が乗っている時に技を出した時が、一番強いということとか」

――確かに、そうですね。ランキングの話に戻すと、現在はONE女子アトム級3位です。

「ONEではFriday Fightsを入れても、まだ3戦しかしていないです。それなのにランキングに入れてもらって、さらに暫定王座戦のお話を頂けるというのは――ベルトに手が届く位置にいるんだなって再確認できました。これからどんどん自分からもアピールしていかないといけないですね」

――女子アトム級5位には三浦彩佳選手がいますが、三浦選手のことは意識しますか。

「もともと上の階級の選手で、アトム級に転向してランキングに入ってくるというのは――日本人選手にとってアトム級は、ちょうど良い階級なのかなって思いますよね」

――澤田選手はONE参戦にあたり、階級を上げて戦っています。一方で今後はONEストロー級からアトム級に落とす選手と対戦することもあるでしょう。

「みんなフレームは大きいけど、言えば同じ階級ですからね。そこは特に考えていません。次戦うモン・ボー選手も身長は160センチでも、同じ体重で試合をします。フレームは違っていても、中に詰まっているものは負けていない。今の女子アトム級のランキングを見ても、一番MMAを体現しているのは私だと思っています.

モン・ボー選手はストライカーで、強い一発を持っている。そこは気をつけないといけないですね。自分は打撃をもらっても前に出るというスタイルではあるけど、油断しちゃいけないですね。自分のMMAスタイルを生かすためには、5分3Rずっと動き続けて、相手の心を折るぐらい削っていきたいです。逃がさない、漬ける――やることを徹底すれば、間違いないかなと思っています」

――同じ大会で女子アトム級の暫定王座決定戦が組まれ、さらに3月には日本大会が予定されています。もし日本大会で、新しい暫定王者とのタイトルマッチが組まれたら……。

「……(両手でサムアップ)」

■放送予定
1月11日(土・日本時間)
午前9時45分~U-NEXT

■ONE FN27対戦カード
<ONE世界フェザー級(※70.3キロ)選手権試合/5分5R>
[王者]タン・カイ(中国)
[挑戦者] アクバル・アブデュラエフ(キルギス)

<ONE世界女子アトム級(※52.2キロ)暫定王者決定戦/5分5R>
デニス・ザンボアンガ(フィリピン)
アリョーナ・ラソヒーナ(ウクライナ)

<ムエタイ・フェザー級/3分3R>
ルーク・リッシ(米国)
コディ・ジェロム(カナダ)

<ムエタイ・バンタム級/3分3R>
ランボーレック・チョーアッジャラブーン(タイ)
パルハム・ゲイラティ(イラン)

<サブミッショングラップリング・180ポンド契約/10分1R>
トミー・ランガカー(ノルウェー)
ダンテ・リオン(カナダ)

<ムエタイ・バンタム級/3分3R>
クラップダム・ソー・チョー・ピャッウータイ(タイ)
ジョン・リネケル(ブラジル)

<ストロー級(※56.7キロ)/5分3R>
和田竜光(日本)
サンザール・ザキロフ(ウクライナ)

<フェザー級(※70.3キロ)/5分3R>
アーロン・カナルテ(エクアドル)
ティモフィ・ナシューヒン(ロシア)

<女子アトム級(※52.2キロ)/5分3R>
澤田千優(日本)
モン・ボー(中国)

<ムエタイ・バンタム級/3分3R>
スーブラック・トー・プラン49(タイ)
ドミトリー・コフトゥン(ロシア)

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【Colors03】パク・ボヒョン戦へ、失明覚悟のMMAファイター人生=渡辺彩華「なぜこの試合なんだろう?」

【写真】愛犬のエルモちゃんと。犬種は分からないのですが、マルチーズかマルプーからマルポメでしょうか(C)SHOJIRO KAMEIKE

8月3日(土)、東京都新宿区の新宿FACEで開催されるColors03で、修斗女子世界スーパーアトム級王者の渡辺彩華が、韓国のパク・ポヒョンと対戦する。
Text by Shojiro Kameike

渡辺にとっては昨年10月、RIZIN LANDMARKで万智に敗れて以来10カ月振りの復帰戦となる。万智戦で負った眼窩底骨折の治療のために戦線を離脱していた渡辺は、その間の国内女子MMAをどのように見ていたのか。その中で本野美樹に帯同し、現地で見たRoad to UFC——海外での戦いについても語った。


失明する可能性が高くなる。格闘技を続けるなら、そのリスクは分かっておいてほしいと

――万智戦後に眼窩底骨折で入院、手術したあと、いつ頃から練習を再開できたのですか。

「手術して1カ月後に有酸素運動はOKが出ました。格闘技の練習ができるようになったのは手術から3カ月後ぐらいで、スパーのOKが出たのは半年後でしたね」

――スパーを始める時、手術した箇所を打たれることに対し、恐怖はなかったでしょうか。

「怖さはなかったです。でも、まぁ失明寸前だったと言われましたからね。病院では『運が良かった。今後も格闘技を続けるかどうか、一度しっかり考えてほしい』と言われて」

――それは「格闘技を続けてはいけない」という意味ですよね。

「それもあるし、格闘技を続ける場合は術式も違うらしくて。いずれにしても自分の場合は、手術をしても普通の人より失明する可能性が高くなる。格闘技を続けるなら、そのリスクは分かっておいてほしいということでした。

このままMMAを続けていたら、別に強い相手じゃなく誰と対戦しても――それこそ練習しているだけでも失明のリスクがある。そのことは頭の片隅に置きながら練習しています。ただ、自分が失明することよりも、それで家族やチームの皆に迷惑をかけるほうが嫌だという気持ちはあって。だけど今のままじゃ終われない。ずっとその葛藤があります」

――『今のままじゃ終われない』というのは……。

「ファイターって皆、応援してくれる人がいるじゃないですか。その数が多い、少ないは関係なく。それだけ背負っているものがある。自分も愛知から東京に出てきた無名時代から支えてくれている人たちがいます。スポンサーさんや、AACCの人たちとか。そういう人たちに対して、ここで辞めるのは失礼だなと思ったんです」

――……以前と比べて話し方も考え方も大人になりましたね。

「アハハハ!!」

――以前、あれだけ暴言を吐いていたファイターとは思えません(笑)。

「落ち着いたかもしれないですね、アハハハ。この10カ月の間、ジムの先輩がいろんな試合に出ていて。それを自分がファイターとして見るのと、戦線離脱した状態で見るのとでは違うと思うんですよ。もちろん自分が戦線離脱していることに対して焦りはあります。だけど……、それこそ本野美樹さんは待って、待ち続けてRoad to UFCが決まったじゃないですか。そういうチームメイトを見ていると、自分も頑張らなきゃいけないって思うんです」

――チームメイトとしては本野選手のRTU、大島選手のInvicta FC、杉本選手の修斗世界タイトルマッチ、そしてRENA選手のRIZIN復帰などもありました。その中でご自身の意識、目標が変わって面はありますか。

(C)AYAKA WATANABE

「あぁ~。

タイに行って『世界はヤバいな』と思いました」

――7月にタイガームエタイへ行っていたそうですね。

「本野さんがRTU準決勝の前にまたタイへ行くということで、自分も気持ちを挙げるために付いていったんですよ。その時タイガームエタイにいたストロー級の女子選手が、その選手がヤバいぐらい打撃が凄くて。『日本にこれだけ打撃が凄い女子ファイターいる?』と思うぐらいでした。自分はMMAでもテイクダウンさせず、打撃で攻めるタイプじゃないですか。だけど、その選手と練習する時は私のほうがテイクダウンを狙ってばかりで」

――その選手の名前は?

(C)AYAKA WATANABE

「ファラ、ですね(※注)。

寝技できないけど、とにかく打撃が強い。同じ日にオクタゴンという大会で試合をするそうです」

※ファリダ・アブドゥエバ。ファラは愛称。キルギスのMMAファイターで、昨年11月のRIZINアゼルバイジャン大会ではアナスタシア・スヴェッキスカと対戦している(腕十字で一本負け)。現在MMA戦績4勝1敗。

「自分よりも打撃ができる選手と向かい合ったのが初めてで、衝撃を受けました。あとONEに出ているモン・ボー選手もいて、メチャクチャ打撃が強かったです。自分も『このままじゃ世界に出られない』と思いましたね」

――その経験を楽しそうに語れるのが、ファイターとしての本質なのだと思います。

「いやぁ、直後はナイーブになりましたよ。タイにいる間、本野さんに『大丈夫! 大丈夫だから』と慰めてもらっていました(苦笑)」

――アハハハ。

「もう毎週、ボディでKO寸前まで追い込まれて……。日本の女子MMAって、グラップラーが多いじゃないですか。その中で自分は打撃で勝っていた。でも本当に全部できないと世界じゃ勝てないんだなって痛感しましたね。7月上旬から3週間行っていて、先週日本に戻ってきたんですよ。そこから日本の選手と練習しても圧力は感じなくて。それを試合前に経験できたのは、本当に良かったです。なんだか安心しました(笑)」

アイツ、いつも良いところで負けていますよね

――一方、10カ月の間、日本の女子MMAは大きく動いていました。

「……万智、負けるなよ。アイツ、いつも良いところで負けていますよね。松田戦は万智が勝っていたとは思ったし、Xでもそう投稿しましたけど」

――万智選手に勝利した松田亜莉紗選手の印象はいかがですか。

「トータルバランスは良いけど、長けているものはないっていうイメージです。飛び抜けているものがない。悪くいえば、特徴がない」

――悪く言うのですね(笑)。

「アハハハ。パク・シウ選手だったら打撃、万智なら寝技っていうイメージじゃないですか。松田選手は怖さを感じないですね」

――ではパク・シウ×万智の試合については?

「凄い試合でしたね。MMAとして2人とも完成度が高いと思いました」

――ちなみに万智選手とは、直接対決の後も仲良くはなっていないのですか。

「全然! 今でも万智のことは嫌いですよ。仲良くなることはないし、一緒に練習することもないです。対戦直後にSNSで『IGLOOで待っています』とか投稿していたけど、行くわけないだろって(笑)。他のAACCの選手がよく一緒に練習しているみたいで、その選手のSNSを見て『あぁ生きているんだな』と知るぐらいです。アハハハ」

RIZIN、ROAD TO UFC、その前に万智はコテンパンにして泣かしますよ(笑)

――なるほど。修斗では藤野恵実選手がベルトを巻き、続いてパンクラス王座に挑みます。SARAMI選手もパンクラスのベルトを巻きました。

「自分もそこに絡んでいきたかったです。だから今回の対戦相手は、自分もあまり乗り気じゃなくて……」

――対戦するパク・ポヒョンも韓国Double-Gのベルトを獲得しているとはいえ、これまでのキャリアを考えれば、渡辺選手の有利は動きません。前戦では古賀愛蘭選手に敗れていますし。

「う~ん‥…、そういうことじゃないんですよ。『普通にやれば負けることはないでしょう』とか言われます。でも勝負事に絶対はない。まず自分自身がアップセットを起こし続けてベルトを獲りましたからね。ファイターって相性があるし、今回はケージではなくリングという違いもある。そんななかで次の試合は足元をすくわれず、フィニッシュします。

それとは別に、私は今までずっと強い相手と試合させてもらってきたじゃないですか。でもこの10カ月の間に、松田選手が万智に勝ってベルトを巻いた。万智とパク・シウ選手の試合も視ていて刺激になったし、藤野さんは修斗のチャンピオンになっていて。そこで『なぜ自分はこの試合なんだろう?』と思ってしまったんです。それだけ動きがあるなかで、自分だけ取り残されてしまっているというか」

――10カ月間、負傷で試合から離れていたことも大きいと思いますが……。

「それはそうなんですよ。でも今は、いつ失明するか分からないから後悔しないMMA人生を送りたい――もともと強い相手と試合がしたいとは思っていたけど、手術以降はよりその気持ちが強くなっていて。この人との試合、あるいはその試合のために練習しているなかで失明しても、納得できるような相手と試合をしたいんです。

よくレコードを綺麗にしたい選手がいるじゃないですか。私はそこに一切こだわりはなくて。『その相手、誰?』と思うような選手とばかり試合をして、レコードは綺麗だけどベルトは巻いていないとか。そんな選手にはなりたくない。限りある中で、どれだけ自分が満足するMMA人生を送ることができるか」

――……。

「まぁ綺麗なレコードを求めていたら、2戦目で藤野さんと試合していないですよ(笑)」

――確かに綺麗なレコードを求めるなら3戦目で黒部三奈選手、4戦目でSARAMI選手、そして5戦目で一階級上の万智選手とは対戦していないでしょう。

「そうそう(笑)。おかげさまで濃い、怒涛の日々を過ごさせてもらっています」

――今後はストロー級で戦っていくのでしょうか。

「そうですね。スーパーアトムは対戦相手がいないですし。今は通常体重を増やしています。万智の試合では、やっぱりストロー級との差は感じたので。修斗ならストロー級で、リベンジも賭けて藤野さんのベルトに挑みたいです。初戦の時より自信はあります」

――本野選手に帯同して、現地で目撃したRTUに挑みたいとは思いますか。

「周りから見て、『やってみたほうがいいんじゃない?』という声が挙がれば、挑戦してみたいです」

――というと?

「現時点で自分の体格や、タイで経験した打撃の圧力とかを考えたら、あの舞台で戦える自信はないです。でも、いつかはあの舞台で戦えるような――格闘技を見ている人たちに、それぐらい期待を持ってもらえる結果を残していきたいですね。

第三者から見て、期待できるかどうかがファイターとしての需要だと思っています。RIZINなら伊澤星花との対戦が期待されるかどうか。RTUは『渡辺なら優勝して、UFCでも勝てる』と期待してくれるかどうか。まぁ、その前に万智はコテンパンにして泣かしますよ(笑)」

■視聴方法(予定)
8月3日(土)
午後6時00分~ABEMA格闘チャンネル

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【Special】J-MMA2023─2024、三浦彩佳「国内にはもっと強い女子ファイターがたくさんいますから」

【写真】三浦にここまで言わせる──やはり、凄まじいマッチアップだ(C)SHOJIRO KAMEIKE

2023年が終わり、新たな1年が始まるなかMMAPLANETでは2023年に気になった選手をピックアップ──過ぎ去った1年を振り返り、始まったばかりの1年について話してもらった。
Text by Shojiro Kameike

J-MMA2023-2024、第十三弾は28日のONE日本大会で平田樹戦に臨む三浦彩佳に話を訊いた。昨年4月のモン・ボー戦で2年6カ月振りとなる勝利を挙げた三浦は、その2カ月後にONEアトム級で平田と対戦することに。「山本アーセンの元カノ&今カノ対決」という煽り、ONEストロー級で戦い続けてきた三浦がアトム級で戦う現実——複雑な気持ちを吐露した。それでも三浦は、前を向いて戦う。シャオ・ヂィンナンとの再戦を目指して。

■2023年三浦彩佳戦績

2月25日 ONE FN07
●0-3 ダニエル・ケリー(米国)※サブミッショングラップリング戦

11月3日 ONE FN16
○1R2分09秒 by スカーフホールド・アメリカーナ モン・ボー(中国)


――改めて2023年は、三浦選手にとってどのような1年でしたか。少なくとも2023年より、2024年は良い気持ちで迎えることができたのではないでしょうか。

「う~ん……」

――えっ、意外と暗いトーンですね。

「ギリギリですね。ギリギリ良い気持ちで2024年を迎えられたとは思います。MMAを1試合戦って、勝ててホッとしました」

――平田戦のオファーが届いたのは、モン・ボー戦の直後だったのですか。

「あの時はまだ『話があった』というぐらいで、私としてはシャオ・ヂィンナン戦があると思っていました。シャオ・ヂィンナン戦と平田戦っていうお話があり、正式なオファーは平田戦だったので『何でかなぁ?』と……」

――その部分で複雑な気持ちのまま新年を迎えたのですね。

「そうですね。1月末が試合なので、年末年始も落ち着いて休むことはできませんし」

――三浦選手にとっても予想外すぎたマッチメイクだったのでしょうか。

「一番意外だったのは、アトム級での試合という点です。以前から言っていたとおり、私はストロー級でシャオ・ヂィンナンと再戦するのが目標で。それが平田選手とアトム級で対戦する、というのは……ビックリしました」

――そのオファーを断るという選択肢はなかったのですか。

「……ここで断ると、いつ次の試合があるか分からないので」

――どちらかといえば平田選手との対戦よりも、アトム級でのオファーに対して合点がいかないということですか。

「私はONEストロー級の選手なのに、なぜアトム級のオファーが来るんだろうって……。自分としてはストロー級でもアトム級でも戦えます。ダニエル・ケリー戦は119ポンド契約で、期間もあったので落とすことはできました。それが1月28日にアトム級というのは――」

――前回のインタビューでもONEストロー級が自分に合っていると仰っていました。おかげで調子が出て来た、と。しかしアトム級で平田戦というのは、つまり平田選手を軸に組まれた試合ということです。

「はい。『こう来るんだぁ……』という気持ちはあります。とにかく胃が痛いですね(苦笑)」

――公式トレーラーで、三浦選手は「私がやってきたことはエンタメではない」と発言していました。山本アーセン選手の元カノ&今カノ対決という煽りも含めて、エンタメといいますか……。そこで今の三浦選手の言葉を聞いていると、この試合に対するモチベーションはどこにあるのかと気になります。

「ひとつは、すぐにONEが試合を組んでくれたことは嬉しいです。たとえ前回はモン・ボーありき、今回は平田選手ありき――であったとしても。試合は試合として、私は勝つと信じています。だからまず試合が組まれたことには感謝しています。

それとポジティブに考えるなら、『私はストロー級とアトム級、どちらでも戦えるぞ』とアピールする機会だと思うんですね。減量に関しても、アトム級というお話があった時にトレーナーさんに相談したら『絶対にアトム級の体をつくることができる。安心しろ』と言われて。その言葉を信じて、この試合は『私はいつでも何処でも戦える』とアピールできるチャンスだと考えることができるようになりました」

――ということは平田戦に向けて減量も順調なのですね。

「すごく順調に落とすことができています」

――なるほど。この試合で平田選手に勝利し、ストロー級でもアトム級でも戦えるとアピールした先に何があると思いますか。

「ストロー級でヂィンナンと再戦したいです。でも今は、とにかく与えられたことをやっていこうと考えていますね。それと平田選手は注目度が高いし、私が勝ってちゃんと……」

――ちゃんと?

「いや、ちゃんと――ではないですね。SNSで注目を集めるということが、よく分からないんですよ。TRIBEにはSNSをやっている人が少なくて(笑)」

――アハハハ。

「TRIBEには強いのに認知度が低い選手が、たくさんいると思うんです。だから私が注目度の高い平田選手に勝つことで、もっとTRIBEが認知されて、ONEという大会が日本でも注目されたら――と思っています。

私って、『没頭する力』は人より高いとトレーナーさんにも言ってもらえていて。そういうポジティブな言葉を信じて、今は試合に向けて練習しています」

――ポジティブな気持ちを持っていても、インタビュー映像で泣くのはデフォルトになっているのですか。

「アハハハ! あれって確か、カットと言われたあとに泣いているんですよ。だから『撮っているんかい!』と思って(笑)」

――三浦選手が泣くのを待っていたのかもしれません。

「そうなんでしょうねぇ(笑)」

――試合の話に戻すと……もともと階級も違いましたし、この試合のオファーが来るまで平田選手は視野に入っていなかったのですよね。

「視野には入っていなかったです。正直、平田選手にはファイターというイメージを持っていなくて。ファッションやSNSとか『今時の子』という印象でした。今回、煽り映像のインタビューでも『日本の女子MMAナンバーワンを決める』みたいなことを訊かれたんですよ。私は、全然そんなことは思っていなかったです。国内にはもっと強い女子ファイターがたくさんいますから」

――……。

「だから――何とも言えないところはあります。今回は自分自身への挑戦だと思っていて。かといって相手のことをナメているとか、そういう気持ちは一切ありません。ちゃんと集中して試合に臨む。それは今までの試合と変わらないし、これからもずっと同じです」

――対戦が決まるまで、平田選手の試合は視ていましたか。

「全部ではないけど、視ている試合もあります。でもハム・ソヒ戦は何がしたいのか分からなかったし、他の試合も――与えられている環境はすごく良いし、素質もある選手なのに『アレッ?』という感じで。いつも綺麗に戦おうとしすぎているというか。そこが皆さんも『う~ん……』と思う要因なのかもしれないですけど」

――確かに今は、デビュー当時ほどの爆発力は感じられなくなっています。

「指導者が固まっていなかったという理由もあると思うんですよ。私もいろんなところへ出稽古に行きますけど、最後は長南(亮TRIBE代表)さんが締めてくれるので。周りに厳しく言ってくれる人が多くて、ありがたい環境だなって実感しています」

――体重を落とすことはできたとしても、アトム級でもストロー級と同じ出力で戦えるかどうかという不安はありませんか。

「今もパワーは落ちていなくて、練習で男子選手を極めることがあります。だから、その点で不安はないですね。むしろ今までやってきたこと――体の使い方とか繋がってきたものもあるので。堀江(登志幸)トレーナーが、トレーニングの年間スケジュールを立ててくれているんですよ。ここまでに、これができるようになる。次は……って。階級は別として、そうやって繋がってきたものを次の試合で見せることはできるんじゃないかと思います。反対に『平田選手のほうがアトム級まで落とせるのかな?』って、よく言われますね(苦笑)」

――では対戦相手として、ファイターとしての平田選手の印象を教えてください。

「私よりも柔道の素質はあると思います。でも、どうなんですかねぇ……。勝ちにこだわる執念は、絶対に私のほうが上だと思います。私は勝てれば良い。綺麗に戦おうとは思っていないので。もし1Rでグチャグチャした展開になっても、2Rでスクランブルになったら私のほうが強いんじゃないかと考えていますね。

先ほども言いましたけど、油断はしていません。『もしかしたら、すごい武器を持っているんじゃないか』という最悪のケースまで想定して、一切の油断なく仕上げていますから」

――平田選手にとっては10カ月振りの試合になります。この10カ月の間に新しい武器を身につけている可能性はあります。

「彼女がMMAに対して本気で向き合っていた10カ月間であれば、その可能性はありますよね。本気で向き合っていたとしたら――ですよ。ただ、MMAを知っている方は分かってくれると信じています。とにかく1月の試合が無事に終わってほしい(苦笑)。いろんなことがありすぎるので、私も勝って少しゆっくりしたいです」


■視聴方法(予定)
1月28日(日・日本時間)
午後5時00分~ABEMA格闘チャンネル
午後6時30分~ABEMA PPV

■ONE165対戦カード

<ONEキックボクシング世界フライ級選手権試合/3分5R>
[王者] スーパーレック・ギアットムーガーオ(タイ)
[挑戦者]武尊(日本)

<ONEサブミッショングラップリング世界ライト級(※77.1キロ)選手権試合/12分1R>
[王者]ケイド・ルオトロ(米国)
[挑戦者] トミー・ランガカー(ノルウェー)

<ライト級(※77.1キロ)/5分3R>
青木真也(日本)
セイジ・ノースカット(米国)

<スペシャルルール187.25ポンド (※84.94キロ)契約/3分3R>
秋山成勲(日本)
ニキー・ホルツケン(オランダ)

<キック156.5ポンド(※70.99キロ)契約/3分3R>
マラット・グレゴリアン(アルメニア)
シッティチャイ・シッソンピーノン(タイ)

<フェザー級(※70.3キロ)/5分3R>
ゲイリー・トノン(米国)
マーチン・ウェン(豪州)

<女子アトム級(※52.2キロ)/5分3R>
平田樹(日本)
三浦彩佳(日本)

<フライ級(※61.2キロ)/5分3R>
ダニー・キンガド(フィリピン)
若松佑弥(日本)

<キック・ヘビー級/3分3R>
ラデ・オパシッチ(セルビア)
イラジ・アジズプール(イラン)

<ストロー級(※56.7キロ)/5分3R>
ボカン・マスンヤネ(南アフリカ)
山北渓人(日本)

<ストロー級(※56.7キロ)/5分3R>
グスタボ・バラルト(キューバ)
箕輪ひろば(日本)

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【ONE FN16】三浦彩佳。2年半振りの勝利とこれから─02─「日本人から見ても変だから、海外のほうが」

【写真】勝利後の涙までが、三浦の試合(C)ONE

11月4日(土・現地時間)、タイはバンコクのルンピニー・スタジアムで開催されたONE Fight Night16で、モン・ボーに勝利した三浦彩佳のインタビュー後編。
text by Shojiro Kameike

モン・ボー戦で手にした2年8カ月振りの勝利は、同時に三浦にとってはONEストロー級タイトル戦線へ復帰する切符でもあっただろう。ONE日本大会の開催も決まった2024年、三浦が自身の歩むべき道を語る。

<三浦彩佳インタビューPart.01はコチラから>


――ボトムから相手の首に左腕を回し、袈裟固めに持ち込みました。最後に腕をアメリカーナの形で極めるアヤカ・ロックばかりが注目されがちですが、袈裟固めの抑え込み方も……エグいですよね(苦笑)。この時点ですでに腕だけで相手の喉仏を圧迫しています。

「はい。袈裟固めの時もなるべく密着するようにしているので、あの形になっただけで苦しいと思います。おそらく一般の方ならタップしますね」

――なるほど。勝利したあとは長南さんに抱き着き、号泣しながらの三浦彩佳劇場が展開されていました。久しぶりの勝利ですし、やはり平常心は失うものですか。

「アハハハ。試合が終わった瞬間は、『やっと勝てた!』と思っていたぐらいでした。でも横を向いたら、長南さんがダッシュで私のところに来ていて――それが嬉しかったんですよね。あとで聞いたら、私はコンディションも良くて試合前日も爆睡していたのに、長南さんは試合の前日に寝られなかったらしくて。私が長南さんにMMAを教わり始めてから10年の歴史が凝縮されたよう試合でした。勝つことができて、本当に一安心しています」

――試合前は『勝ったら全て言いたい』と仰っていましたが、なぜかあの試合内容と結果で中継では三浦選手のインタビューがありませんでした。試合前に言いたかったことは、試合後に全て言えたのでしょうか。

「それなんですよ! 勝ってインタビューがないのは初めてで(苦笑)。たぶんチャトリさんは怒っていたんじゃないですか?」

――なぜチャトリ代表が怒るのですか。

「チャトリさんとしては、モン・ボー選手に勝ってほしかったんじゃないかと……」

――それは本人に聞いてみないと分かりませんが、有り得るかと。同時にチャトリ代表個人の感情で勝利者インタビューが中止にはならないでしょう。ただ今までもそうですし、今回の試合についても、自分の勝利を望まれていないという意識はありましたか。

「ONEの人たちがどう考えているかは分からないです。でも今のMMAは、世界中で中国人ファイターの勢いが凄いじゃないですか。しかもモン・ボー選手が所属しているのは中国で一番評価されているチームの一つで。中国からの応援団もすごくて、タイで試合をしているのにアウェイ感が強かったです。シンガポールで試合をした時も、中国人選手の応援がすごかったからアウェイ感があって――」

――つまり、三浦選手としては「自分はモン・ボーに対する噛ませ犬ではないか」という気持ちもあったわけですね。

「だから今回ばかりは、本当に集中できていました。いつもはニコニコしていますけど、今回はずっと相手のことを見ていて」

――先ほど三浦選手が仰ったとおり、今のMMAワールドでは中国勢の強さが目立ってきています。ONEだけでなく、昨年と今年のRoad to UFCも中国勢のためのトーナメントかと思わされるほどです。

「ONEのスタッフさんも観客の皆さんも、ずっとフレンドリーであることは変わりないです。でも会場の雰囲気は、ONEに出始めた頃はもっと日本人選手に温かかったかなって印象はありますね。でも、その場所で戦うしかない。私も慣れてきましたし、ずっとONEで試合をしてきたからファンの方も応援してくれているのかなって感じることもありますね。それは私にとって、すごく恵まれた環境ではあると思います」

――今回、モン・ボーに勝った直後はいかがでしょうか。

「皆さん、すごく温かったですね。すごい拍手をくれて、会場でも控室でも皆さんから『おめでとう』と声を掛けてもらったり」

――それは良かったです。今回の勝利で、ONEストロー級戦線で生き残ることができました。目標であるシィオン・ヂィンナン戦まで、どれだけ近づいたと思いますか。

「モン・ボー選手に勝ったことで、彼女がいたポジションをもらったと思います。だから、いつ再戦の話が来てもおかしくはないと考えていて。すぐにシィオン・ヂィンナンとの再戦でなくても、去年の4月に私が肩を脱臼して負けたダヤニ・ソウザとのリベンジマッチとか。あるいは今年7月にワンダーガール(ナット・ジャルーンサック)に勝ったリサ・キリアコウも、対戦候補として挙がってくると思うんですよね。

もちろん他の選手との試合もあるでしょうし、とにかく今のONEで試合をするには『いつ試合の話が来ても良いように準備しておく』ことも必要かもしれないですね。それにダメージもないし、追い込み練習の疲労も抜けているので、すぐに次の試合に向けた練習にも取り組むことができます」

――中国勢の応援が強いなかで、モン・ボーに勝利した。ではシィオン・ヂィンナンと中国で戦っても大丈夫ではないかというぐらい、ハートも強くなったのではないですか。

「もしONEが中国で大会を開催するなら、再戦が中国になる可能性もありますよね」

――一方で、年明けに開催が噂される日本大会には出場したいですか(取材後、2024年1月28日のONE日本大会が発表された)。

「日本大会についてはモン・ボー戦が終わったあと、いろんな人に聞かれるんですよね。でも正式には聞いていないし……。日本大会が行われるなら、もちろん出たいです。でも日本大会に限らず、どんどん試合をしていきたいです。いつお話が来ても、パッと出られるように準備もしておくので。

特にシィオン・ヂィンナンと再戦できるなら、日本大会にはこだわりません。これは長南さんに言われたんですけど――海外に行くと日本とは違う文化があって、日本人からすると変だと思うこともありますよね。でも私は日本人から見ても変だから、海外のほうが合っているんじゃないかって(笑)」

――アハハハ。海外で戦おうとしている三浦選手に対して、長南さんらしいエールの送り方ではないですか。

「今は海外でも一人でショッピングモールに行けるし、試合ができるなら何処でも良いですね。『ここで試合がしたい』なんて思いすぎていると、違う場所になったら残念な気持ちになっちゃいますし。それより『いつでも試合できますよ~』というほうが、気持ちも楽で。

むしろ生活を変えないほうが、体への負担も少ないんですよ。だから常に試合ができる状態にしておいて、その生活を変えずに『2週間後に試合? やります!』と言えるぐらいの身体と精神になってきていますね。それだけどんどん試合をしていきたいです」

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【ONE FN16】三浦彩佳が2年半振りの勝利を振り返る─01─「あの距離で入るのは2度とやらないほうが良い」

【写真】あの入り方を本人解説、これは本人にしか解説できないと思います(C)SHOJIRO KAMEIKE

4日(土・現地時間)、タイはバンコクのルンピニー・スタジアムで開催されたONE Fight Night16で、三浦彩佳がモン・ボーにアヤカ・ロックを極めた
text by Shojiro Kameike

三浦にとっては2021年月のハイアニ・バストス戦以来となる勝利――フィニッシュは同じアヤカ・ロックでも、袈裟固めで抑えるまでの展開に違いがあった。そこで三浦自身に試合の振り返りと、今回のアヤカ・ロックについて解説してもらった。


――モン・ボー戦での一本勝ち、おめでとうございます。

「ありがとうございます! 今回はすごく調整もうまく行きました。タイでの追い込みも――」

――海外で試合をする場合、現地で追い込み練習を行うのですか。

「はい。普通は、現地入りしてからは調整程度に動くか、体を休めておく人が多いと思います。でも長南さんの場合……現地入りしてからも1日1時間ぐらい、いつもの練習と変わらないぐらい動くんですよ。TRIBEの選手にとっては、それが当たり前で。それが今回は特に調子が良くて、現地の練習でも出力が凄かったんです。出力が凄すぎて、少し体が痛くなるぐらいでした。今まで試合をしてきたなかで一番、調子が良かったかもしれません」

――まず、それだけ現地で体を動かすのですね。減量のために体を動かす選手は多いと思いますが……。

「私の場合は、ONEのフライ級だと減量の心配がないですからね。今回もずっと体重はアンダーで、ご飯もしっかり食べていました。そのなかでも今回は特に調子が良かったです」

――それだけ試合直前に動いて、試合までに疲労は抜けるのですか。

「もちろん体を動かしながら、疲労は抜いて――ということを繰り返します。今回はホテルの近くにタイマッサージのお店があって、そこで毎日オイルマッサージを受けていました(笑)。あとは日本からお風呂を持っていって」

――お風呂を持って行く!?

「膨らまして、お湯を溜めることができるタイプのお風呂です。減量がなくても、もともとお風呂が好きなので(笑)。海外のホテルだとバスタブがないところも多いですし、毎回お風呂は持って行きます。サウナよりもお風呂に入ってボーッとしているほうが、疲れは取れますね」

――ということは、試合当日までストレスも少なく、コンディションも良かったわけですね。

「コンディションが良い分、ストレスもなかったです。2月の試合(ダニエル・ケリーとのグラップリングマッチ)はいつもより3キロぐらい軽い契約体重でしたし、現地に日本人スタッフの方がいなかったんですよ。そういう面で不安がありました。でも今回は日本人スタッフもいましたし、私も試合当日は朝5時に起きて一人で散歩したりとか。それぐらい不安もストレスもない状態でした」

――もうそれほどONEというイベントに溶け込んでいるのではないですか。

「いやぁ、どうなんでしょう……。今回は長南さんと一緒にいる時もありましたけど、一人でいる時のほうが多かったかもしれないです」

――長南さんがいないほうがストレスにならないわけですね(笑)。

「そんなことは言っていません! でも長南さんが出かけて私一人になる時でも、『まぁ良いか』と思えるぐらいリラックスできていたことは確かです。普通は海外に行って、一人で散歩することは、なかなか無いと思うんですよ。しかもWi-Fiが繋がっていない状態で」

――それは……できることなら避けたい状態ではあるでしょうね。

「そうですよね。しかも私は方向オンチですし(笑)」

――よく一人で出かけましたね! しかも試合前に。

「アハハハ。まぁ何とかなるかなっていう感じで」

――前日計量でモン・ボーと向かい合い、相手の体格が大きくて不安にはなりませんでしたか。

「大きかったですね! もともと大きい選手ですし、あと減量もギリギリのところを攻めているのか……。試合の時はリカバリーしていて、さらに大きく感じました。威圧感はありましたね」

――試合では開始早々、遠い距離からシングルレッグで入りました。遠い距離から飛び込むことになったのは、相手の威圧感も影響していたのでしょうか。

「いえ、単に私の入る位置が遠かっただけです(笑)。ただ、あれも練習していたパターンだったんですよ。遠い距離から入ったパターンも練習していました。とはいえ、あの距離で入るのは二度とやらないほうが良いと思いました」

――相手との体格差もありますし、トップから潰されてパンチを落とされたら……とは考えなかったですか。

「あっ、あれは作戦でした。相手にトップを取ってもらったという感じです」

――つまり、どのような形でも組んでしまえば相手の首に腕を巻き付け、どうにかできるという自信があったわけですか。

「そうなんですよ。モン・ボー選手もあの形にはならないと予想していたと思うんですね。でも私としては、モン・ボー選手はRNCが得意だからバックやサイドを取れるような状態になれば、相手のほうから組んできてくれると考えていました。案の定、彼女はサイドから抑えに来て。

反対に私はあの形が得意で、しかもモン・ボー選手の腕が空いていたから、まず裏アヤカ・ロック(サイドを取られた状態で極める)を狙おうと思って。それがダメでも、相手はそのままサイドで抑え込み続けるでしょうからクルッと回して、アヤカ・ロックを極めようと考えました」

――それだけの自信があるポジションと極め技を持っていることは、心理的な面でも大切ですね。

「同じ階級の選手が相手なら負けないという自信はあるし、『これで勝てなかったら私は終わりだな』と腹は括っています。あとモン・ボー選手も打撃でKOするパワーはあるとは思いますけど、組み力はそれほどでもなくて。だから怖さもなく安心して、アヤカ・ロックの状態まで持って行くことができました」

――なるほど。とはいえ、サイドを取られた状態から首投げのような形でトップを取るというのは、なかなか見られません。

「実は大きい相手用の投げ方もあるんですよ。でも今回は、大きい相手用の投げ方でなくてもクルッと回りました。普段は自分より大きな人たちと練習していて、その人たちを回せるように練り上げてきている技ですから」

<この項、続く>

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【ONE FN16】三浦彩佳、モン・ボーに必殺の袈裟→アヤカロックを極めて快勝→号泣!!

<女子ストロー級(※56.7キロ)/5分3R>
三浦彩佳(日本)
Def.1R2分09秒by スカーフホールド・アメリカーナ
モン・ボー(中国)

すぐにシングルを仕掛けた三浦だが、距離が遠く潰したモン・ボーがパウンドを落とす。それでも下になりながら、寝技の状態を手にした三浦は頭を抱えて亀に。このまま巻き込んだ三浦が、袈裟固めを完成させる。右で殴りモン・ボーも左腕を取りにいくと、一気にアヤカロックを極めた三浦は、タップを奪うや長南トレイナーとハグし号泣した。


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