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AB MMA o UFC ジャック・デラ・マダレナ ダナ・ホワイト ニコラス・ダルビー マルコム・ウェルメーカー ランディ・ブラウン

UFC on ESPN66:ポストファイトボーナス

・ファイト・オブ・ザ・ナイト:ランディ・ブラウン vs. ニコラス・ダルビー

・パフォーマンス・オブ・ザ・ナイト:ジャン・ミンヤン、マルコム・ウェルメーカー

ファイト・オブ・ザ・ナイトはメインかと思ったが、ダルビーの玉砕覚悟の攻めが報われたか。カルロス・プラテスのUFCデビュー以来のボーナス獲得は4でストップ。

ミンヤンは3試合連続1RKOで3試合連続パフォーマンス・オブ・ザ・ナイト受賞。引退する相手に勝ってのボーナスは微妙だが。試合後客席に中指を立ててエキサイトしていたアンソニー・スミスは、客席にずっと侮辱してくる特定の客がいたためとのこと。

無敗でのUFCデビュー戦で、UFC3勝2敗のサイマンを1RKOしたウェルメーカーも今後が期待できそうな選手。

メインのプラテスはUFC5戦目で初黒星となったが、テイクダウンされそうでされない驚異的な腰の重さと、5Rになってから猛攻を仕掛けるスタミナを見せ、実力未知数だった試合前よりもむしろ評価を上げた。準備期間がないにも関わらず、しっかりとプラテス対策をして、左の被弾を避け続けたガリーもさすがだった。

勝ったガリーは再来週のUFC315モントリオール大会で行われるウェルター級タイトルマッチ・ベラル・ムハメド vs. ジャック・デラ・マダレナのバックアップファイターになることがダナ・ホワイトから発表された。

mmajunkie.usatoday.com

今回急なオファーでも出場してすばらしいパフォーマンスを見せたから、というのが理由だが、ここからまた2週間でのオファーは厳しいのでは。

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45 DWCS MMA MMAPLANET o UFC UFC314 YouTube   アレクサ・グラッソ アレックス・ヴォルカノフスキー アレッサンドロ・コスタ イスラム・マカチェフ イリャ・トプリア キック ショーン・ウッドソン ジアン・シウバ ジエゴ・ロピス ジム・ミラー ジュリアン・エロサ スムダーチー セドリクス・デュマ ダナ・ホワイト ダレン・エルキンス ダン・イゲ チェイス・フーパー ドミニク・レイエス ニキータ・クリロフ ニュース ノハ・コホノール パット・サバチーニ パトリシオ・フレイレ ブライアン・オルテガ ブライス・ミッチェル マイケル・チャンドラー マックス・ホロウェイ マルコ・トゥーリオ ミハウ・オレキシェイジュク モフサル・エフロエフ ヤイール・ロドリゲス ライカ ヴィルナ・ジャンジローバ

【UFC314】展望 激闘必至。挑戦者=夢追い人ジエゴ・ロピス✕心機一転=元絶対王者ヴォルカノフスキー

【写真】壮絶な攻防が長引くのか。早々にケリがつくのか(C)Zuffa/UFC

12日(土・現地時間)、フロリダ州マイアミのカセア・センターにてUFC 314「 Volkanovski vs Lopes」 が開催される。UFCデビューとなるパトリシオ・ピットブル・フレイレをヤイール・ロドリゲスが迎え撃つ注目の一戦があり、コメインではマイケル・チャンドラーマイケル・チャンドラーとパディ・ピンブレットによる新旧人気者対決が行われるこの大会のメインは、元絶対王者アレックス・ヴォルカノフスキーとジエゴ・ロピスの間で争われるフェザー級王座決定戦だ。
Text by Isamu Horiuchi。

この試合は、前王者イリャ・トプリアのタイトル返上を経て実現するもの。昨年ヴォルカノフスキーとマックス・ホロウェイというフェザー級2大レジェンドをKOに葬り、衝撃的なまでの強さで新世代の台頭を見せつけたトプリアは、今年2月に減量苦やライト級への新たなる挑戦を理由に王座返上を発表。復帰戦でのトプリアへのリベンジを目指していたヴォルカノフスキーと、目下5連勝中の新鋭ロピスの間で正規王座決定戦が行われることとなった。

ロピスはブラジルのマナウス出身にして、現在はメキシコ在住。父や兄姉が黒帯、叔父に至ってはコラル帯(赤黒帯・7段)を保持するという柔術一家に生まれ、10代の頃から地元でMMAを経験。やがて柔術指導の仕事を紹介されて単身メキシコに渡ると、そこで同郷のアレッサンドロ・コスタ(現UFCフライ級)と出会い、ブラジリアン・ウォリアーズチームを結成した。さらにその柔術指導の腕を買われ、コスタとともにグアダラハラのロボジムMMA所属となった。


名伯楽フランシスコ・グラッソの下で打撃技術も磨き、メキシコ最大のMMA団体LUXの王座に就く等順当にキャリアを重ねてきたロピス。最初に掴んだビッグチャンスは、2021年8月のDWCS(ダナ・ホワイト・コンテンダーシリーズ)参戦だった。ここでロピスは同郷のジョアンダーソン・ブリトーと激闘を繰り広げ、腕十字やギロチン等で見せ場を作るも3Rにアイポークを受け試合は中断。テクニカル判定で惜敗し、UFCとの契約はならなかった。(ちなみにこの時契約を得たブリトーは、2022年4月から2024年5月までUFC5連勝を成し遂げている)

契約を逃したロピスだったが、やがて思わぬ形でその姿が世界に露出することとなる。2023年3月、ロボジムのチームメイトであるアレクサ・グラッソ──前述のDWCSにおいてもロピスを激推する紹介コメントを出していた──が、女子フライ級絶対王者ヴァレンチーナ・チェフチェンコのバックキックをかわしてチョークを極める大番狂わせを演じて新王座に。その直後、試合前にグラッソがこの動きを繰り返し練習していた映像が出回り話題となったが、この時にパートナーを務めていたのが、グラッソの組技コーチのロピスだったのだ。

その2カ月の5月。世界を揺るがしたシンデレラ・ストーリーの名脇役(?)としていくらか認知を得たロピスに、新たなチャンスが突然訪れる。試合前5日という直前オファーにて、16戦全勝にしてランキング10位のモフサル・エフロエフと対戦する機会を得たのだ。絶対不利の予想のなか、ロピスは初回に強烈な右フックを効かせ、さらに下からの腕十字でエフロエフの腕を伸ばしかけフィニッシュ寸前に追い込む等、圧巻の攻撃力で見る者全てを驚かせた。最終回にもキムラで腕を伸ばし、終了寸前にも三角絞めのロックを作ったロピスは、判定で惜敗するもファイト・オブ・ザ・ナイト・ボーナスをゲット。グラッソのコーチ&練習相手ではなく、将来有望な新鋭ファイターとして存在を知らしめた。

その後ロピスは、強い極めと接近戦における無類の殺傷能力を活かした超攻撃的な戦いぶりで3連続1Rフィニッシュ(ボーナス2回)を含む4連勝を挙げ、順調にランクアップ。昨年9月にはベガスの巨大球体建造物スフィアで行われたメガイベント、NOCHE UFCにてランキング3位のブライアン・オルテガと対戦した。

この大舞台で初回にカウンターの右フックからアッパーを当て、さらに強烈なパウンドで大ダメージを与えたロピスは、最終ラウンドでも接近戦で打ち勝ちダウンを奪って判定3-0で完勝、トップコンテンダーの座を獲得した。

そして今回、ついに王座決定戦への出場が決定。UFCデビューから僅か2年のスピード出世にして、UFCデビュー戦のロピスを倒し、その後も全勝を維持しているエフロエフを差し置いての抜擢となる。不公平と見る向きもあるが、常に全力でフィニッシュを狙う戦い方が、戦績以上に評価されたということだろう。

メキシコに移住を決めた際、両親や家族に「みんなにより良い暮らしをさせてあげられるようになるまで、僕は帰らないよ」と誓ったというロピス。実際その後ほとんどの時間をメキシコで過ごしているという。「お母さんに家を建ててあげることができたけど、さらに改築しより良い生活をさせてあげたいんだ」、「タイトル挑戦の話をもらったときは、最高に嬉しかった。冷静さを装ったけど頭の中では映画の一シーンみたいだった。これまで僕に起きた全て、僕が犠牲にしてきた全て、乗り越えてきた全てのことはこの瞬間のためだったんだよ」と語る。

今回の王座決定戦は、夢を追い一人異国の地メキシコで戦い続けてきた30歳の青年にとって、これまでの人生の全てを、支えてくれた家族や仲間達の想いを賭けた生涯最大の大一番となる。

対するヴォルカノフスキーは、2020年代前半に長期政権を築いた元絶対王者だ。2019年12月にマックス・ホロウェイに勝利してタイトルを奪取すると、4連続防衛に成功してPFP1位の座に輝いた。2023年2月には、一階級上にしてPFP2位のイスラム・マカチェフのライト級王座に挑戦するスーパーファイトを敢行。判定で惜敗したものの、回を重ねるごとに勢いを増し、試合終盤は組みでも競り勝ち、一方的に攻め立てる底知れぬ強さを見せつけ、PFP1位の座を保持している。

その後ヤイール・ロドリゲスに完勝して5度目の防衛に成功したヴォルカノフスキーは、2023年10月には直前オファーを受けマカチェフとの再戦に。しかしここでマカチェフの左ハイをもらい、まさかの初回KO負けを喫してしまう。さらに4ヶ月後の2024年2月には、イリャ・トプリアの強打の前に2Rマットに沈み、2試合連続のKO負け。4年以上に渡って君臨してきた王座を明け渡した。

その後ヴォルカノフスキーは、キャリア初となる長期休養を取ることに。それまでの練習&試合を中心とした生活を、家族との時間を最優先し、その周辺に練習を組み込む形に変えて日々を過ごした。このはじめての時間は最高の充電期間となったようで、「自分が誰なのか、自分が王者でいられる理由がより理解できたよ」と元絶対王者は語っている

休暇中、「自分は以前のように戦いに専心できるのか?」という疑問が頭をよぎったという元王者だが、一旦試合が決定するとスイッチを完全に戦闘モードに切り替えることに成功。今までより早めにキャンプを開始し、より長い期間禁酒し、チートデイも廃止。より万全な状態で試合への準備を進めているという。

なお、当初はトプリアへのリベンジを目指していたが、相手がロピスに変わっても試合へのモチベーションは高いままだ。「私はただ復活するだけでなく、ニュースクール(新世代)を倒せることを証明したい。その点、ジエゴはイリャ同様に若くてハングリーなニュースクール・ファイター。私の復活ストーリーとしては上々だ。この試合に勝った後、皆は以前同様にアクティブに戦い続ける王者の姿を見ることになるだろうね」と以前と変わらぬ自信をのぞかせる。

一時期はMMA全階級の世界の頂点に君臨。全てを成し遂げてなお戦いへの強い意志を見せる36歳の鉄人は、この王座決定戦にて台頭する新世代を制圧し、その健在ぶりを世界に見せつける算段だ。

そんな新旧対決となる王座決定戦の勝敗の最大の鍵の一つは、スタンドにおける両者の間の距離だろう。

ロピスの最大の武器の一つは、接近戦における凄まじい拳の回転力と破壊力だ。特に相手がパンチで前に出た瞬間、頭を下げてかわしざまに左右の拳を振り回し、さらに相手の首を捕まえてアッパーやヒザを交えて暴風雨のごとき連打を浴びせる。この見たところ滅法強引な──オールドファンならヴァンダレイ・シウバを想起するような──戦法の殺傷能力は特に初回は凄まじく、実際ロピスはこのやり方でパット・サバチーニやソディーク・ユスフを秒殺し、またブライアン・オルテガを1RKO寸前に追い込んでいる。

しかし、MMA界最高峰のテクニカル・ストライカーであるヴォルカノフスキーは、このロピスの戦い方を攻略するのに最適な打撃スタイルの持ち主だ。天性の距離感覚と170センチの身長からは規格外の182センチというリーチを持つ元王者は、スイッチを多用して無数のフェイントを繰り出しながら、常に優位なアングルを作って速さと破壊力を兼ね備えた拳を当ててゆく。

常に相手を研究し尽くし、陣営で綿密なゲームプランを組み立てて臨むヴォルカノフスキーが、初回に不用意なダブルジャブで近づいてロピスのカウンターをもらってしまったオルテガと同じようなミスを犯すとは考えにくい。巧みに距離を保ちつつ、多彩な打撃でロピスを翻弄するつもりだろう。

当然ロピスも遠い間合いの攻防ができないわけではない。遠い距離からの強烈な右カーフや、大きく踏み込んで放つ右オーバーハンドを持つ。が、ジャブの伸びやキレ、フェイントや作るアングルの精妙さではヴォルカノフスキーに遅れを取ると思われる。ロピスとしては、遠い間合いの攻防で上回るのではなく、何らかの形で強引にヴォルカノフスキーとの距離を詰めたいところだろう。

「頂点に君臨していたアレクサンダーのことは、何年も前から研究していたよ」「どの状況でも戦えるけど、今回はKOする自分の姿が想像できる」と語るロピスだけに、秘策を用意していると思われる。果たしてそれはいかなる形なのか。 

前の2試合ともに頭部への打撃でKOされているヴォルカノフスキー。いくら試合を優位に展開していても、一度でもロピスに距離を詰められ強烈な一撃をもらってしまったら、形勢は180度変わりかねない。元王者はテイクダウン防御もサブミッション防御も無類の強さを誇るが、ロピスの強烈な一撃をもらった後では、話はまったく別となる。

単身渡ったメキシコにて様々な辛苦を耐え忍び、身に付けた怒涛の攻撃力で階段を駆け上がってきた新鋭ロピスが、その勢いのまま元絶対王者を呑み込こんでしまうのか。それとも一時代を築いたレジェンド・ヴォルカノフスキーが、2連続KO負けを乗り越えて、その鋼鉄の如き心身の強さを改めて世界に証明するのか。両者の一瞬の交錯が全てを変えてしまいかねない、緊張感溢れる戦いとなるだろう。


■視聴方法(予定)
4月13日(日・日本時間)
午前7時~UFC FIGHT PASS
午前11時~PPV
午前6時 30分~U-NEXT

■UFC314対戦カード

<UFC世界フェザー級王座決定戦/5分5R>
アレックス・ヴォルカノフスキー(豪州)
ジエゴ・ロピス(ブラジル)

<ライト級/5分3R>
マイケル・チャンドラー(米国)
パディ・ピンブレット(英国)

<フェザー級/5分3R>
ブライス・ミッチェル(米国)
ジアン・シウバ(ブラジル)

<フェザー級/5分3R>
ヤイール・ロドリゲス(メキシコ)
パトリシオ・フレイレ(ブラジル)

<ライトヘビー級/5分3R>
ニキータ・クリロフ(ウクライナ)
ドミニク・レイエス(米国)

<フェザー級/5分3R>
ダン・イゲ(米国)
ショーン・ウッドソン(米国)

<女子ストロー級/5分3R>
ヴィルナ・ジャンジローバ(ブラジル)
ヤン・シャオナン(中国)

<ライト級/5分3R>
チェイス・フーパー(米国)
ジム・ミラー(米国)

<フェザー級/5分3R>
ダレン・エルキンス(米国)
ジュリアン・エロサ(米国)

<ミドル級/5分3R>
セドリクス・デュマ(米国)
ミハウ・オレキシェイジュク(ポーランド)

<フライ級/5分3R>
スムダーチー(中国)
ミッチ・ラポーゾ(米国)

<ミドル級/5分3R>
トレシャン・ゴア(米国)
マルコ・トゥーリオ(ブラジル)

<女子バンタム級/5分3R>
ノハ・コホノール(フランス)
ヘイリー・コーワン(米国)

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【LFA】エド・ソアレスの訊く、#01人材発掘大会の在り方「ご当地ファイターの手売りに依存していない」

【写真】エド・ソアレスの話は海の向こうの話ではあるが、目的を同じとして手段を考えると違った形で実現できると信じる (C) MMAPLANET

現在THE 1 TV及びTHE 1 TV公式YouTubeチャンネルで2月21日にLFA202に出場した上久保周哉を特集した動画「UFCに続く、茨の道。LFAへの挑戦──上久保周哉─」が公開されている。
text by Manabu Takashima

上久保✕マテウス・サントスは当然としてショーン・オマリーやアレックス・ポアタン、ブランドン・ロイヴァルらの試合映像も使われた同動画内で、MMAPLANETが行ったエド・ソアレスLFA代表のインタビューも使用されている。

ここではカットされた部分も含め、完全版を文字でお伝えしたい。ブラジル人両親の下、米国で生まれ育ちクラブやファッションブランドの経営者から、MMA界に転向。ブラックハウス・マネージメントの首脳として活動しながら、RFAを経てLFAというフィーダーショーからメジャーへ選手を送り出すことに情熱を燃やすMMA Loverから、LFAの今と日本にはないカジノでの興行の実態などを訊いた。

分かっていたようで、全く分かっていなかった北米MMAの底力を垣間見ることができたエド・ソアレスの数々の言葉だった。


LFAは他のプロモーションと別物だと思ってもらって構わない

──エドがマネージメント・サイドから、プロモーション・サイドに移ったのはRFA、Resurrection Fighting Allianceからだと記憶しています。RFAはレズレクションという名が示す通りUFCをリリースされたファイターの再生の場という意味合いが強かったです。

「私がRFAの社長になったのは第4回大会からだった。RFAの背景にはResurrection──再生という意味があった。年を重ねたファイターだけでなく、UFCを切られたファイターのキャリアを再生するという。素晴らしい理念だった。と同時に若いファイターの発掘というコンセプトも持っていた。RFAはAXS TVで中継されており、AXS TVは他にLFC(Legacy Fighting Championship)を中継していた。多くの人が『RFAはLFAより強い』、『LFAはRFAより良い』と言い合っていたんだ。

私は競争好きな人間だ(笑)。LFCの社長、ミック・メイナードと話したときに『多くの人がLFCの方がRFAより良い。RFAの方がLFCより強いと言っている状況は、好ましくないか?』と話した。そしてAXS TVに『RFAとLFCの対抗戦をAXS TVのベルトを賭けてやろうじゃないか。中継局内でベストのプロモーションを決めるんだ』と持ち掛けたんだ。このアイデアを皆が気に入ってくれて、実現させた。

最初の3試合はRFA✕LFCの対抗戦が組まれ、RFAが2勝1敗だった。そしてRFAのタイトル戦、LFCのタイトル戦を1試合ずつ組み、メインでは現UFC世界フライ級王者でRFA王者だったアレッシャンドリ・パントージャが、LFCフライ級王者ダマッシオ・ペイジを三角絞めで下した。素晴らしい試合だったよ。

結果RFAは3勝1敗で勝ったけど、それ以上にRFAとLFAは一緒にイベントを開いてとても良い時間を過ごせた。そして人々にRFAとLFAのどちらが良いかなどと言われることがなくなるようにパートナーとして、1つの大会を開こうとミックと話し合うようになった。才能ある選手を見出すために、他を寄せ付けない大会を開こうと。ミックも気に入ってくれて、2017年1月13日にLegacy Fighting Allianceの第1回大会を開いたんだ。

一つ確かな過去とは、Legacyっていう名前はResurrectionより良いってことだよ(笑)」

──アハハハハ。

「そしてRFAからはAllianceを頂戴して、LFAをスタートさせたんだ。ミックはハードワーカーで、LFCもまた素晴らしい大会だった。ただしRFAにもLFCにも補わないといけない点があった。二つのプロモーションが一つになることで解決され、強固な人材発掘イベントを開くことができるようになることは分かっていたよ。

ところが2016年9月、LFAの旗揚げを公表した直後にミックはUFCからマッチメイカー職の要請を受けた。こんな素晴らしい機会はないから、私はミックに『このチャンスを逃してはいけない。こっちは問題ないから』と話したよ」

──いきなりパートナーを失うわけですが。

「そうだね。ただ、この時は2つのカンパニーでLFAを行っていくという予定だったんだ。メイナード夫人がミックをサポートするという形で、LFAのプロモート業を続けていた。けれども、ミックは多忙を極めた。夫人も4人の子供の子育てと家庭を守ることで手一杯の状況だった。結果、2018年の5月にミックから会社を買い取り、彼はUFCでの業務に専念しLFAは一つの会社となった。

ミックはキャッシュを手にして、UFCに専念できる。我々も自分がやりたいことに邁進できる。両者にとって理のある結論を見出すことができたんだよ」

──LFAは他のフィーダーショーと違い、一都市や一部の地域でなく全米で大会が行われています。

「LFAは他のプロモーションと別物だと思ってもらって構わない。ただカリフォルニア州からニューヨーク州だけでなく、海外大会も行っている。UFC以外で、LFAほどのイベント開催数を誇るプロモーションは存在しない。我々は年に25度のショーを開いている。6度のブラジル大会と19大会は米国で行っている。

LFAはとてつもない成功を人材育成大会として収めているという自負はあるよ。スタッフの数は決して多くはない。だからこそ家族のような一体感を持って、全米のいたるところだけでなくブラジルも含めて行き来している。そこも他のプロモーションとの違いだ。リングアナのマイク・ケンドールは計量の日はグローブチェックの係りをして、競技運営を支えている。実況のロン・クロックはこの道のベテランで、彼に任せておけば中継は間違いない。家族揃って、プライドを持って仕事に邁進している。可能な限り、LFAが成長できるようにね」

──LFAはRFA時代よりも、人材育成によりフォーカスするようになりました。

「ファイターのキャリア再生よりも、多くの新しい人材を発掘してUFCに行く前に大舞台で戦うための段階を踏ませる方が意義深いと感じたんだ。高校の体育館で500人のファンの前で戦った3週間後にUFCから声が掛かり、マジソン・スクエア・ガーデンのような大会場で1万5000人のファンの前で試合をする。カメラに相対したことがなく、インタビューでどう受け答えをして良いかも知らないから、彼らは大きなショックを受ける。

私はマネージメント業を最初に経験しているから、新しい人材を見つけ出し、次の舞台へ向かわせるためのプロセスを理解している。そして若い選手のステップアップのサポートが成功に通じる仕事に対し、誇りを持っている。才能ある選手を発掘し、彼らの準備を整えて大きな舞台に送り出すことが楽しくてしょうがないんだ。オクタゴンの中だけでなく、メディアの対応やイベントスケジュールの過ごし方などオクタゴンの外でも上の舞台で戦う準備をLFAで経験してもらいたい。LFAではUFCより小さな規模、少ない予算ながらUFCの流れを理解できて、UFCで戦う準備ができるよう心掛けているんだよ。

実はコメンテーターにしても、同じなんだ。ギルバート・メレンデス、アラン・ショウバーン、カブ・スワンソン、マイケル・キエーサ、ラシャド・エヴァンスという多彩な人材が揃っているけど、ローラ・サンコを見てほしい。彼女はコメンテーターとして最初の一歩をLFAから踏み出している。そしてUFCから声が掛かったんだ。物凄くハッピーだったよ。ローラの成功は、我々LFA全体にとっての成功だから」

UFCも分かっている。LFAで場数を踏んで勝っている選手は、次のレベルでやっていける力があると

──ところでLFA活動開始時から、これだけUFCにファイターを送り出す自信はありましたか。

「イエス。実際のところ、最初にUFCに送り出したLFAファイターはシンシア・カルヴィーロだった。彼女はLFA第1回大会に出場し、UFCにステップアップした。UFC、当時はBellatorもあったけど、彼らはLFAが公平な試合を組んでいることを理解していた。我々は全米規模で国際大会を開いているから、ご当地ファイターの手売りに依存していない。多くの団体がチケットの売り上げを重視する結果、チケットの手売りが多いファイターの勝利をプロモーターが願うようになる。彼らはチケットが売れるホームタウン・ヒーローが必要なんだ。そういう状況だと、チケットが売れ続けるようにイージーファイトを組むようになる。

そんなことはLFAはしない。ファイターの力量を測る場だ。UFCも分かっている。LFAで場数を踏んで勝っている選手は、次のレベルでやっていける力があると。我々はイージーファイトを組まないからだ。LFAにとって必要なのは、優れたファイターが競い合って次のレベルで戦えると証明することだ」

──チケット販売力は、資金源として重要だと思います。ご当地ファイターを必要としなくても、チケットが売れるということでしょうか。あるいは他の収入源があって、イベントを運営できているということですか。

「もちろんだ。コンテンツライツ・ビジネスがビジネスの堅調さを築いている。当然スポンサー収入もあるし、チケットセールスも我々の収入源になっている」

──カジノでの興行と合体した興行の仕方というのは、日本にはないので凄く興味があります。カジノがLFAを誘致しているということですよね。

「カジノとは何種類ものディールが存在している。そのなかで主流なのは4 Wallディールと、サイトフィー・ディールだ」

──フォーウォール・ディストリビューションとは映画界にあるやり方ですよね。映画館を会場として使用し、興行会社がチケットセールス等の収入を得るという。ただ、不勉強でスミマセン。サイトフィー・ディールというのは分からないです。

「カジノとイベントの4 Wallディールは、映画界とはまた形態が違うよ。カジノは会場とそのスタッフの人件費、照明、LEDスクリーンなどの機材費を持つ。そして40部屋を3泊、提供してくれる。それ以上はLFAが支払う。スタッフとファイターのミールのある一定額までカジノが持つ。エアポートからホテルまでの移動もそうだ。

LFAはTV製作費、ファイトマネーとコーナーマンを含めた移動費を支払う。保険、アスレチックコミッションへの認可料、当然スタッフの賃金や経費は我々が持つ」

──収入としては、チケットの何パーセントかをカジノは手にするということですか。そうなるとフォーウォール・ディールとはまるで違ってきますが。

「いや、チケットの売り上げは全てLFAのモノだ。明日の大会(LFA202)は2025年になって4度目のイベントだけど、チケット売り切れも、4大会目になるんだよ(笑)。そこに加えてコンテンツライツ、スポンサーもLFAの収入になる」

──カジノにインセンティブはない? ではカジノにはどのような利があるのですか。

「LFAを週末に開くことで、2000人から3500人がカジノやホテルでお金を落とす。食事も酒もホテル内で取るのが大半だ。そしてLFAの場合はUFC Fight Passなどのメディアを通して、カジノの名前を200カ国以上に広めることになるんだ。

サイトフィー・ディールは4 Wall Dealに加え、✕万ドルから✕万ドルをLFAに支払う。そしてチケット代がカジノに入るというモノだよ」

──いやぁ、その価値をカジノ側が認めるのは相当なビジネスでないと……やはり高校の体育館やシティホールでのイベントとは違うということですね。将来的に日本でIRが認められても、MMAイベントが開かれることになるのか……自信は持てないです。対照的に、このディールを結べるということは全米のカジノが、LFAの価値を認めているということですよね。

「LFAのブランド力が上がっていることが理解できる良い例がある。ファイターにはチケットコミッションという制度があって、彼らは手売りしたチケット売り上げの20パーセントを得ることができるんだ。

私は当然のようにLFAの経営状況の全てに目を通しているが、過去3年はチケット売り上げは右肩上がりなのに対し、チケットコミッションの額は下がり続けている。つまり、ファンはLFAの試合を観戦するためにチケットを購入していることになる。誰か特定の選手の試合を見るために、選手からチケットを買うケースが少なくなっているんだ。MMAプロモーションとして、このような状態でビジネスができるようになること。それこそが私の目標だった。

次のビックスターは誰か。そういう目的でLFAの試合を見に来るファンが増えてほしかった。それによってチケット売り上げが増え、成長し続けることができるからだ。今年は最初の4大会、全てソールドアウトしている。凄く誇りに感じているよ」

LFAはUFCと競い合う未来など望んでいない。UFC以上のことができる組織などない

──そのような基盤があるから、常にUFCに選手たちを送り出せるショーを開くことができるのですね。

「今、UFCで戦う選手達の凡そ40パーセントがLFAで試合経験がある(※RFAとLFC時代を含み)。35パーセントから40パーセントのUFCファイターが、LFAから駆けあがっていった。チャンピオンにししても、4人に1人がLFA出身だ(※同様にRFAとLFCを含む)。

さっきも話したようにUFCは分かっている。LFAがどのような試合を組んでいるか。力が均衡した選手同士の力量が測られる試合だ。アンフェアなマッチアップはない。多くのLFAの試合は、UFCレベルにある。彼らがLFAで戦っているのは、UFCと契約が成っていないからに過ぎない」

──全米とブラジルで、グローバルな大会を開く。さらにLFAを発展させて、最高のフィーダーショーでなくUFCと競合するイベントにしていくという野望は?

「ないよ(笑)。LFAはUFCと競い合う未来など望んでいない。UFC以上のことができる組織などない。そこに将来有望な選手を送り出す。それが我々の役割だ。LFAは世界一の人材発掘MMAプロモーションだ。この言葉に、誰も文句はいえないだろう。

ただ、より良いモノにしていきたい。LFAを大きくしたいか? それはしたいよ。コンテンツ・ライツフィーやスポンサーシップ、チケットセールスも増やしたい。それをファイターに回したい。より多くの額をファイターに支払いたい。LFAを大きくしたいが、このビジネスモデルを変えたいとは思わない。好きなことをやっている。規模が拡大しても、自分の好きなことは変わらない。凄く楽しんでいるからね。

UFC以上のMMAプロモーションは存在しない。そのUFCのパートナーとして、世界中から最高の選手をUFCにステップアップさせるアシストをしたいんだ。

LFAのビジネスを大きくステップアップさせてくれたのはAXS TVから中継がUFC Fight Passに代わったことだ。AXS TVは良いチャンネルだった。ただ2019年9月にAXS TVは買収され、新しい事業主は契約を守ろうとしなかった。LFAの中継をAXS TVではもうできなくなると覚悟した時に、ロレンゾ・フォティータとダナ・ホワイトの2人と話し合いの場を設けた。彼らはすぐにUFC Fight PassでLFAの中継ができるようフォーをしてくれたよ。

2019年9月にAXS TVでの中継が終わると、11月にはUFC Fight Passでの配信が始まった。200カ国以上にライブ中継できるんだ。これ以上のステップアップはなかった。だから我々は2020年にコロナパンデミックが起こっても、活動停止期間は3カ月で済んだ。より多くのUFCと契約をしてないハングリーなファイターたちが、試合機会を求めてLFAで戦うようになった。あの時期にイベントを持続できたことが、LFAの価値を絶対化させることになった。凄く困難な時期に、後退するのではなくて前進することができたんだ。UFC、UFC Fight Pasとの関係が築けたのは素晴らしいことだ。彼らには物凄く感謝している。

いつも言っているんだけどね。UFC Fight Passに関しては、一つだけ悔いがある。それは、もっと早くから関係を築いておくべきだったということだよ(笑)。それだけは後悔している。UFC Fight Passでのライブ中継をもっと以前からやっていたら、LFAの成長のスピードは違っていただろう。と同時に今の関係に満足している。このまま変わりなく、成長していきたい」

LFAのやるべきことは変わらない。私は業界の大物になんてなりたいとも思っていない。ありのままでいたいだけ

──現状に大満足ということでしょうか。

「正直にいうと、LFAの在り方を考えればUFC以外にも2つ、3つのビッグショーに選手を送り出したい。UFCだけでなく、他の団体にもステップアップさせたいんだ。でも現状ではUFC以外にこのビジネスを上手くオペレートできているプロモーションは存在しない。あの素晴らしく見えたBellatorですら、活動てきなくなったぐらいだからね。

PFLは……どうなるのか。ここは注視しないといけない。PFLには成功を収めてほしい。でも彼らはまだ成功したわけではない。ビッグショーの成功を望んでいる。そうだ、LFAの才能あるファイターをRIZINにも送り出したいと思っている。そのためにもLFAのやるべきことは変わらない。私は業界の大物になんてなりたいとも思っていない。ありのままでいたいだけなんだ」

──エド、羨ましくなる生き方です。ところでLFAの将来的な展望を話していただけないでしょうか。

「LFAが活動を始めたのは2017年だ。8年間で、202大会を行ってきたことを誇りに思う。MMAの歴史のなかで、8年と少しの活動期間で202度もイベントを開いたプロモーションは存在しない。これからも、これまでと同じように努力し、今年中にヨーロッパに進出する。それが今年の目標だ。年間30大会、16~18大会は米国で。5か6大会はブラジル。ヨーロッパで5、6大会を開くことができれば。そして、2、3回はアジアで開催できるかもしれない。

計30大会、それがLFAにとってパーフェクトワールドだよ。近い将来、世界中で合計30度のイベントを行うことは可能だと思っている。ワールドワイドにLFAを展開し、世界規模で最高の人材発掘の場にしたい。可能ならもっと日本人選手、アジアの選手に出場してもらいたい。UFCと契約していないベストファイターが、LFAで戦っている。これからも、そうあり続ける。

同時に私はいつだって日本人選手がLFAで戦うことは素晴らしいと思っている。日本はMMAの歴史を創ってきた。いつの日か、LFAを日本で開催したい。それが私の目標で、パートナーのスヴェン・ビーン(LFA社長)もそうだ。スヴェンの夢は、日本でLFAを開くことなんだ」

──今日はありがとうございました。では最後に、その日本のファンにメッセージをお願いできますか。

「LFAを応援してくれる全ての日本のファンに感謝している。今大会でシューヤ・カミクボが戦う。コヨミ・マツシマもビザが取れ次第、すぐに試合を組む。日本のベストファイターにLFAで戦い続けてもらうので、母国のファイターを応援してほしい。そして、LFAを見続けてほしい。世界中から選手を発掘し、最高のショーを皆に見てもらうよう努力するので。いつも応援ありがとう」

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45 AB LFA LFA187 LFA205 MMA MMAPLANET o UFC ショーン・シェルビー ジョン・スウィーニー ダナ・ホワイト リオネル・アボイェル ヴィニシウス・ピレス 上久保周哉

Overlooked【LFA205】上久保の標的、いや一里塚=新LFAバンタム級王者はヴィニシウス・ピレスに!!

【写真】当然のようにダナ・ホワイトとショーン・シェルビーへのアピールを行った新チャンピオン(C)LFA

スケジュールの都合により速報できなかった試合をお伝えする──帳尻合わせ試合レポート。ここでは3月28日(金・現地時間)にブラジルの首都ブラジリアのASBACブラジリアで開催されたLFA205「Pires vs Abojer」からLFAバンタム級王座決定戦=ヴィニシウス・ピレス✕リオネル・アボイェルの一戦の模様をレポートしたい。
Text by Manabu Takashima

前王者ジョン・スウィーニーが、昨年7月の王座防衛戦で計量に失敗して剥奪されたベルトの新しい主が生まれる。ピレスはLFAで4勝0敗1NC、三角絞めやアッパーでKOなどインパクトも残してきた。競技柔術的なガードワークもMMAにアップグレードし、デラヒーバやXガードを使うテクニシャン=ピレスに対し、アボイェルは昨年7月のLFA187で実施されたブラジル✕ラテンアメリカの対抗戦で、唯一ラテンアメリカ側で白星を挙げたアルゼンチン人ファイターだ。南米スポーツ界にあって最大のライバル関係といっても過言でないブラジル✕アルゼンチンというマッチアップ。ブラジリアンはホームのプレッシャーに決して強くないという一面もあるなかで、ともに極めの強さが武器。フィニッシュ必至のタイトル戦だ。

<LFAバンタム級王座決定戦/5分5R>
ヴィニシウス・ピレス(ブラジル)
Def.3R2分44秒by RNC
リオネル・アボイェル(アルゼンチン)

満員の館内からブーイングも起こったアボイェルの入場。対して、ピレスは大声援で迎えられる。サウスポーのピレスの左ハイは空を切る、。左を振って前に出るピレスに対し、アボイェルがインローを蹴る。ジャブから左フックで前に出たアボイェルが組んでクリンチも、ヒザが急所に入り分けられる。互いに構えを変え、再びアボイェルがパンチから組んでいくが逆にケージに押し込まれる。ピレスは両ワキを差し、ヒザをボディ入れる。やがて小外掛けでピレスがテイクダウンを決めた。

すぐに立ち上がったアボイェルにピレスはヒザを入れ、ケージに押し込んだ状態でダブルレッグからクリンチの攻防に。小外、足払いと仕掛けるピレス。アボイェルはケージを背負って耐え、ブレイクが命じられた。ピレスは右を当てて即組みつくと、ケージ際でクリンチの攻防から小外で2度目のテイクダウンに成功する。残り20秒、ワキをすくって背中をつかせ、小手で立ち上がろうとしたアボイェルを後方から殴ったピレスが初回をリードした。

2R、パンチもなくボディロックに取ったピレスが、ケージにアボイェルを押し込む。ここもブレイクになり、再開後はパンチの交換のなかでアボイェルが左を当てる。すぐにピレスがクリンチに持ち込むと、アボイェルがダブル狙いに飛びつき三角を仕掛ける。頭を抜いてパスしたピレスに対し、アボイェルは足関節の機会を伺う。さらにハーフガードで潜ろうとしたアボイェルにダースの仕草を見せたピレスだが、レッスルアップからリバーサルを許す。

ピレスのギロチンにヴァンフルーのアボイェル。ピレスはクローズドを取るや、腰を切って腕十字へ。ヒジを抜いたアボイェルが担ぎパス、マウント狙いのタイミングで、ピレスは外掛けストレートフック。さらに自らロールして、カーフスライサーに移行する。反転したアボイェルは結果として50/50を潰して、不安定な状態でもパウンドを落として時間を迎えた。

3R、ワンツーからシングルのアボイェルが、ボディロックへ。ピレスは立ち上がり、ウィザーで投げ&バック狙いを耐える。アボイェルが正対するも、両ワキを差したピレスが体を入れ替える。両差しにアゴを押して、スペースを創ろうとするアボイェル。またもレフェリーがブレイクを命じるが、直後にピレスが組んでクリンチへ。アボイェルは内股を狙い、頭が下がる。

その刹那、ギロチンをセットしたピレスががぶってケージ中央へ。ここから後方回転&ギロチンも、アボイェルが前転で頭を抜く。同時にバックを制したピレスがワンフックでRNCをセット。ボディトライアングルで制すと、アボイェルが落ちピレスがLFAバンタム級チャンピオンに。

キャリア11勝1敗、6年間負けなしの24歳のチャンピンの目標は王座防衛でなくUFCやコンテンダーシリーズとなるだろうが、上久保周哉としては手の合う王者が誕生としたといっても過言でないだろう。


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MMA o ONE PRIDE RIZIN UFC YouTube ダナ・ホワイト 堀口恭司 朝倉海 榊原信行

【RIZIN】堀口恭司 UFCと契約した事を正式に発表!


本日、あなぶきアリーナ香川で開催されたRIZIN.50。その休憩前に榊原信行CEOに呼び込まれた堀口恭司がリングイン。「UFC決まりました。これがスタートなので、日本人初のベルトを巻きたいと思うのでぜひ応援してください」とUFCとの契約がまとまった事を正式に発表しました。

昨年の早い段階からUFC参戦を希望していた堀口。頑なに契約しなかったのは一体何だったのか。1年早く参戦していたらまた違った景色が見られたとも思いますが、この際野暮な事は言いますまい。堀口のUFC帰還を素直に喜びたいと思います。

ちょっとだけ違和感があったのは榊原CEOの発言。「本当はRIZINを主催する代表としては、このままRIZINでフライ級で防衛してほしいのが本音です。でも、日本の格闘技の将来を考えたら、にっくきUFCのベルトはRIZINの王者が獲るしかない」と語りました。

にっくきUFC?PRIDEを買収を巡ってのいざこざの事を言ってるのかも知れませんが、UFCに対してそんな憎むべき事ってあるんだろうか。UFCのダナ・ホワイトとの関係も良好みたいだし、どちらかというと数日前に苦言を呈したONEの方が「にっくき」という形容詞が付きそうですが。。。

プロパースカやケイプ、そして朝倉海などRIZINのトップ選手を引き抜かれたという見方もありますが、UFCでトップを取りたい、世界最高峰の舞台で実力を試したいという自らの意志で参戦してますからね。

UFCを仮想敵国に見立てて煽るギミックなのかもしれませんが、今やMMAアスリートの多くはUFCでトップを取りたくて頑張ってるわけで、UFCは憎むべきものではなく、尊く、敬われる存在。そこは素直に敬意を表した方がファンも素直に応援出来たんじゃないかなと。「にっくき」というワードチョイスにセンスを感じませんが、それでこそバライズムって事か。話は大きく逸れましたが、堀口恭司にご武運ありますように。
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AB o ONE UFC ダナ・ホワイト マウリシオ・ルフィ ラファエル・フィジエフ

UFC313:ポストファイトボーナス/総評

・パフォーマンス・オブ・ザ・ナイト:イグナシオ・バーモンデス、マウリシオ・ルフィ

・ファイト・オブ・ザ・ナイト:ジャスティン・ゲイジー vs. ラファエル・フィジエフ

メインのメディア&ファンの投票結果。予想以上にペレイラ支持が多い。メディアの支持はほぼ半々、ファン投票では(中立性はなだいだろうが)ペレイラ支持が多数。

メディアにはいないアンカラエフ49-46も特におかしなジャッジではないが。2~4Rまでがアンカラエフで、5Rが割れた。

ダナ・ホワイトは、判定は正しかったとしつつも、ダイレクトリマッチの可能性について「おそらく」と一言で回答。

bloodyelbow.com

しかし余力があるように見えたのはアンカラエフ。ペレイラはケージに押し込まれてからは為すすべなく見えた。正直ダイレクトリマッチが組まれたとしても、ペレイラが勝つ可能性は低く、むしろ連敗で商品価値が終わってしまう危険がある。ライトヘビーはプロハースカやヒルなど、アンカラエフと対戦経験のない元王者が多いし、ペレイラにとって相性が悪いアンカラエフと連戦させる必要はないのでは。

一方アンカラエフは4Rを圧倒しながら、5Rにはギアを落としてきた。結果的に3Rもアンカラエフが取っていたので計算通りではあったが、際どかったし、まだ余力があるなら4Rのようにケージプレスを続けるべきだった。

セミはゲイジーが緊急出場のフィジエフからダウンを奪い連勝。試合後は(勝利したトップ5ランカーなら当然だが)王座挑戦をアピール。

bloodyelbow.com

階級下のホロウェイに敗れてから11ヶ月後に、緊急出場でランキング11位のフィジエフに勝って王座挑戦への機運が高まったかは微妙なところ。とはいえ、36歳で3位のゲイジーに残り時間があまりなく、対戦経験のないマカチェフとはタイトル戦でなければ組めないことを考えると、チャンスが回ってくる可能性も高そう。来月再戦が組まれている1位ツァルキャンと2位オリベイラの勝者や、フェザー級王者を返上して階級を上げたトプリアと、ライバルも多いが。

鶴屋は元ランカーのヴァンに完敗。アメリカでの出稽古でランカークラスとのスパーを経験した上での自信の発言だったので期待していたが、残念な結果に。同じレスラーのムハンマドモカエフは、打撃で劣勢になるとダブルレッグでグラウンドに持ち込んで凌いでいったが、鶴屋の場合は一発でテイクダウンは奪えず、シングルレッグから四つ組みまでは持ち込んだものの、ヴァンにすべて差し替えされて対処されてしまった。レスリングには今後飛躍的に伸びるだけの伸びしろがあると思えないので、また上位に挑む際には、少なくとも打撃でもヴァンクラスとやりあえるくらいまでレベルアップしないと厳しい。

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【UFC313】展望 MMA陰陽物語。太陽の下、輝きまくるポアタン・ペレイラ✕哀愁のアンカラエフ

【写真】人気の差と、掛け率がまるで比例していない。どのような結末を迎えるのか (C)Zufffa/UFC

8日(土・現地時間)、ネヴァダ週ラスベガス近郊のパラダイスにあるTモバイルアリーナにて、UFC 313「Pereira vs. Ankalaev」が行われる。ジャスティン・ゲイジーとラファエル・フィジエフによるライト級強打者対決をコメインとする今大会のメインを飾るのは、王者アレックス・ポアタン・ペレイラにマゴメド・アンカラエフが挑戦するライトヘビー級タイトルマッチだ。
Text Isamu Horiuchi

ポアタン(石の如き手)ことペレイラは、2023年末にイリー・プロハースカを2RTKOに沈め、UFC参戦後僅か7戦で2階級制覇を達成した。昨年は4月にジャマール・ヒル、7月に再びプロハースカと元王者2人を早いラウンドで沈めると、10月にはカリル・ラウントリーを激戦の末4RTKOに下し、175日間で3度防衛に成功するというUFC記録を樹立した。

UFCからの要請を決して断らず、凄まじいペースで世界の強豪と戦い続けては、圧巻のKO勝利を重ねてファンを魅了し続けるポアタン。昨年度のワールドMMAアワードでも、文句なしの最優秀選手に選ばれた。現時点におけるUFC全選手、いや世界の全MMA選手中最大のスーパースターだ。

一方、ポアタンがメガスターへの階段を駆け上がったこの期間、陽の当たらない道を歩むことを余儀なくされたのが今回の挑戦者、アンカラエフだ。以下、あまり注目されてこなかったその気の毒な日々を振り返りたい。


ダナ・ホワイトの怒りを買ったアンカラエフは、日陰の道を歩むように

地元ダゲスタンでレスリングとコンバットサンボを修練したアンカラエフは、2014年のアマチュアMMAロシア選手権決勝にて、後にベラトールライトヘビー級絶対王者に君臨したワジム・ネムコフを倒して優勝。その後世界大会も3度制覇するなど、アマチュアとしてはこれ以上ない実績を持つ。そしてプロでも白星を重ね、2018年3月に8戦全勝の戦績にてUFCデビュー。この試合こそポール・クレイグに残り1秒で三角を極められ大逆転の一本負けを喫してしまったものの、その後は綺麗な打撃を主武器に堅実に戦い9連勝を記録した。

順調にキャリアを重ねてきたアンカラエフの受難は、2022年12月、当時の王者プロハースカが負傷のため返上したタイトルを賭けて、元王者ヤン・ブラホヴィッチとの王座決定戦に臨んだ日から始まってしまう。

中盤までブラホヴォッチのローに苦しめられたアンカラエフだが、そこで組技勝負に作戦を変更。4、5Rは上を取って圧倒し、最後はパウンドで一方的に攻め立てて試合を終えた。見事な逆転勝利による王座戴冠…と思われたが、判定はまさかの三者三様のドローに。通訳を通じてアンカラエフが「自分は勝ったのに、なぜベルトを貰えないのか」と訴えるなか、相手のブラホヴィッチまで「俺は勝っていない。奴にベルトをやってくれ」と言い出すほどの不可解な判定で、アンカラエフは王座を逃した。

それでも、謎判定の犠牲になったアンカラエフにはじきに再挑戦のチャンスが与えられると思われた。が、ダナ・ホワイトUFC代表は試合内容が盛り上がりに欠けたことに激怒。大会後記者会見の場で「酷い試合だった」と吐き捨て、どちらが勝ったと思うかと聞かれても「そんなの知るか。ファッ○ンな3Rが終わったあたりで私は(退屈で)意識を失いはじめたんだ」と一刀両断。その場で翌年1月、元王者グローバー・テイシェイラとジャマール・ヒルによる王座決定戦を改めて行うと宣言した。

気の毒にもアンカラエフは、「試合が退屈」という実力以外の要因でタイトル戦線から外されてしまったのだ。2023年1月にヒルが新王者となった後も、アンカラエフにはなかなか試合が組まれず。5月には「UFCよ、私に仕事をくれ」という悲痛なツイートを英語で投稿している(もっとも本人はほぼ英語を話さないので、マネジャーのアリ・アブデルアジズかその周辺が書き込んでいると思われる)。

やがて新王者のヒルの負傷返上により再び王座は空位となったが、ここでもランキング2位のアンカラエフに決定戦出場の声はかからない。11月の王座決定戦に選ばれたのは、元王者にして1位のプロハースカと、7月のライトヘビー級転向初戦にてブラホヴィッチに辛勝した3位のポアタンだった。この試合でKO勝利を収めて2階級制覇を成し遂げたポアタンは、以後メガスターへの道を爆進してゆく。

一方、下の階級から割り込んできたポアタンに(自分が巻いていたはずの)王座を横取りされてしまったアンカラエフ。10月にやっと組まれた試合は、下位ランカー(7位)のジョニー・ウォーカー戦だった。この仕打ちにもめげず、アンカラエフはウォーカーを組み伏せ、強烈なパウンドで試合を有利に進めた。だがここでグラウンド状態のウォーカーの顔面にヒザを入れるという痛恨のミスを犯してしまい、試合は中断された。もっとも大ダメージの一撃だったわけでもなく、ウォーカー本人も試合続行する気満々の様子を見せた。

が、彼と医師とのコミュニケーションに齟齬が生じたようで、試合はNCに。ミスに不運が重なる形でウォーカーと再戦せざるを得なくなったアンカラエフは、またしてもタイトル挑戦に近づくことができなかった。

再戦が行われたのは、翌2024年1月のファイトナイト大会。千人未満の観客の前だった。それでも腐らなかったアンカラエフは、2Rに凄まじい右フック一閃。会心のKO勝利を飾ると、試合後ポアタンと自分を並べた写真をツイッターに投稿し、今度こそはとタイトル挑戦をアピールした。

が、それでもアンカラエフにUFCからタイトル挑戦の声がかかることはなかった。4月のUFC 300のメインにて、ポアタンの初防衛戦の相手に選ばれたのは元王者にして米国人のヒル。ポアタンがこの試合を1RKOで完勝すると、6月に次にポアタンへの挑戦権を得たのは、打ち合い上等のファイトスタイルと侍文化に傾倒したユニークな言動で人気を集める元王者プロハースカだった。

冷遇に次ぐ冷遇を乗り越えたアンカラエフ

英語を話さず、積極的に自分をアピールしたり相手を挑発することもないアンカラエフ。見事なKO劇を見せてなお、UFCナンバーシリーズのメインイベンターとしては不適格だと判断され続けたのだ。この頃からアンカラエフ(とマネジャー)は英語ツイートを増やし「俺が一番強い」、「ペレイラなどテイクダウンするまでもなくKOしてやる」、「ペレイラよ、なぜ俺と戦わない」と、本人のキャラクターとは合致しない──であるが故に、どこか悲哀を感じさせる──挑発的なコメントを投稿するようになった

そして、さすがに次のポアタンの挑戦者はアンカラエフとなるだろう、と多くの関係者やファンも予想していた。しかしながら、アンカラエフにはまたしても悲報が届く。10月のポアタンの防衛戦の相手は、なんとランキング8位のカリル・ラウントリーが抜擢され、1位のアンカラエフには再び下位ランカー(5位)のアレキサンドル・ラキッチ戦が組まれたのだ。同情の声が集まるなか、アンカラエフ(とマネジャー)は「誰も私のことを気の毒に思う必要はないよ。私はラキッチを破壊し、誰も文句のない形で挑戦権を得るから」という健気なツイートを、ダナ・ホワイトとマッチメイカーのミック・メイナードのアカウントにメンションしつつ投稿したのだった。

そうして迎えたラキッチ戦において、アンカラエフは再び力を見せつけた。打撃の攻防で終始優位に立ち、判定3-0で完勝してみせたのだ。寡黙な実力者は、試合後のインタビューにおいて聞き手のコーミエに「今こそチャンピオンに英語で言うことがあるだろう」と促され、通訳に一語一語教えてもらう形ではにかみながら「Alex、don’t run away from me. (アレックスよ、私から逃げるな)」と挑戦を宣言した。

かくして今回、ついにアンカラエフは──不可解判定で王座を逃した後の、冷遇に次ぐ冷遇の苦難の2年を乗り越えて──ポアタンへの挑戦権を得たのだ。

ラマダン中のアンカラエフは、ポアタンの左フックの射程を外す位置取りができるのか

しかし、この期に及んでなおアンカラエフの試練は続く。決戦の3月8日は、アンカラエフが信仰するイスラムの暦におけるラマダン(断食月:2025年は2月末から開始)の最中なのだ。この期間中、ムスリムは日の出から日没まで飲食を断つ。試合に向けたトレーニング自体はラマダン前に終了したというアンカラエフは、減量中の水分だけは日中も摂るという。それでも試合まで約1週間の食事サイクルには制限が課せられるようだ。

「ラマダン中の試合出場は好ましくないし、今までは断ってきた。普段以上に神への祈りに時間を過ごす、我々にとって最も聖なる期間だ。でもこのチャンスを逃すことはできなかった。今回試合を断ったら、次いつタイトル挑戦の機会が得られることか。理想的な状況ではないけど、今回に賭けるしかない」と決意を語るアンカラエフ。

今回の決戦は現在UFCから誰よりも重宝され、最も陽の当たる道を進む稀代のスーパースター・ポアタンと、度重なる冷遇を受け日陰街道を征くことを余儀なくされた挙句、当日まで試練を背負うアンカラエフという、これ以上ないほどに対照的な二人の戦いなのだ。

そんな両者だが、試合前のオッズはポアタンが-120(100ドル賭けて勝つと120ドル獲得)と、僅かにリードするのみ。アンカラエフはポアタンがライトヘビー級で迎える最強の敵とされているのだ。実際、どちらもお互いを倒すのに十分な磨き抜かれたスキルセットを有しており、展開の予測は簡単ではない。最大の見どころは、両者の最大の武器である立ち技における主導権争いだ。オーソのポアタンに対して、サウスポーのアンカラエフという喧嘩四つ。どちらも前に出て相手に圧をかけてゆく戦いを信条とする。

特にポアタンには世界の誰もが恐れる、桁外れの威力&精度で放たれる前手の左フックがあり、それ故に何人たりとも簡単に近寄ることができない。

石の拳を警戒して中に入れない相手の前足を──相手が左右どちらに構えていようが──鋭いカーフで潰してゆくのがポアタンの常套手段だ。プロハースカのように、足を壊されかけ強引に前に出て勝負に出ると左フックの餌食となる。前回の挑戦者ラウントリーは距離を保ちつつ、爆発力を活かし飛び込んでのワンツーを果敢に放ったが、中盤からその動きを完全に見切ったポアタンは、閃光の如き硬いジャブを何度も当てて心身を削っていった。

アンカラエフはいかにして、この侵入が極めて困難なポアタンの制空圏を脅かしながら、プレッシャーをかけてゆく算段なのか。以前ブラホヴィッチのローに苦しめられたアンカラエフだが、前回のラキッチ戦では(ポアタン同様にオーソドックスから放たれる)前足を狙ったカーフを巧みにチェックする場面を何度も見せている。そして軽快なフットワークとフェイントを駆使して前に出て、ラキッチの外側に前足を踏み込んで伸びのある左ストレートを当ててペースを握っていった。

アンカラエフはポアタンに対しても、左フックの射程を外すようなこの位置取りを作れるのか。もしできるなら、我々は立ち技で翻弄されるポアタンという、これまで見たことのない光景を目にすることになるかもしれない。が、もし逆にアンカラエフがポアタンに間合いのコントロールを許したなら、ヒル戦の如く踏み込んでの左フックにより一瞬で試合が終わる可能性もある。

もう一つの着目点は、アンカラエフが、おそらく近年ポアタンが倒してきた誰よりも高いグラップリング力の持ち主であることだ。普段は打撃を主武器としテイクダウンを試みる場面は少ないアンカラエフだが、ブラホヴィッチ戦等、要所で組みで勝負する姿も見せている。そして一度上を奪うと、強力な身体の圧力を用いたコントロールで相手を逃さず、強烈なパウンドで相手を削る。

ポアタンについて「彼は普通のストライカーだよ。戦い方も分かっている。相手を誘い込んで左フックを当てるんだ」と自信を覗かせているアンカラエフ。圧力を掛けつつ相手のパンチを見切る目の良さとカウンターを放つタイミングも出色なだけに、まんまと誘い込まれたと思わせて、ポアタンが拳を振ってきたところにテイクダウンを合わせる場面も十分想定できる。ただその場合でも、進化を続けグラップリングの練習にも余念のない怪物ポアタンが、ダゲスタンレスラーの圧力をも凌ぎきる組み力を発揮するかもしれない。

現代MMA全階級全選手の頂点に君臨するポアタンと、その陰で臥薪嘗胆の想いで戦ってきた最強の挑戦者アンカラエフ。一瞬たりとも見逃せない頂上対決だ。

■視聴方法(予定)
3月9日(日・日本時間)
午前8時30分~UFC FIGHT PASS
午後12時~PPV
午前7時30分~U-NEXT

■UFC313対戦カード

<UFC世界ライトヘビー級選手権試合/5分5R>
[王者]アレックス・ポアタン・ペレイラ(ブラジル)
[挑戦者] マゴメド・アンカラエフ(ロシア)

<ライト級/5分3R>
ジャスティン・ゲイジー(米国)
ラファエル・フジエフ(アゼルバイジャン)

<ライト級/5分3R>
ジャスティン・ターナー(米国)
イグナシオ・ナシメント(チリ)

<女子ストロー級/5分3R>
アマンダ・レモス(ブラジル)
イアズミン・ルシンド(ブラジル)

<ライト級/5分3R>
キング・グリーン(米国)
マウリシオ・ルフィー(ブラジル)

<ヘビー級/5分3R>
カーティス・ブレイズ(米国)
リズワン・クニエフ(ロシア)

<フライ級/5分3R>
鶴屋怜(日本)
ジョシュア・ヴァン(ミャンマー)

<ミドル級/5分3R>
ブルーノ・フェレイラ(ブラジル)
アルメン・ペトロシアン(アルメニア)

<ウェルター級/5分3R>
アレックス・モロノ(米国)
カルロス・レアル(ブラジル)

<フェザー級/5分3R>
マイロン・サントス(ブラジル)
フランシス・マーシャル(米国)

<バンタム級/5分3R>
クリス・グティエレス(米国)
ジョン・カスタネダ(米国)

<ミドル級/5分3R>
オジー・ディアス(米国)
ジジョルデン・サントス(ブラジル)

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45 AB K-1 MMA o ONE UFC アロンゾ・メニフィールド ダナ・ホワイト リッキー・シモン

UFC on ESPN+110:ポストファイトボーナス

パフォーマンス・オブ・ザ・ナイト:リッキー・シモン、ジェアン・シウバ

ファイト・オブ・ザ・ナイト:アロンゾ・メニフィールド vs. ジュリアス・ウォーカー

ファイト・オブ・ザ・ナイトはこの試合よりフォント vs. マツモトに出してほしかった。許容範囲内とはいえ、押し気味の内容で無敗をストップされた上にボーナスもないとか、マツモト気の毒。

メインはもしアイポークで減点があったら1-0のドローになっていた試合。とはいえ、ヤドンがセフードのタックルを切り打撃で押す展開で、もしアイポークがなく続いていたとしてもヤドン有利は動かなかったように思えた。勝敗がついたとはいえ、すっきりとしない結末。

両者は試合後のインタビューでともにリマッチを要望していたが、ダナ・ホワイトは試合後の記者会見では「また見たいとは思わない。2,3ヶ月後に再戦を組むか?いいや」と再戦については否定的。

bloodyelbow.com

アイポークは偶発的ではあったが、ヤドンが指をずっと前に向けていたので、レフェリーがもっと早めに強く警告していれば防げたかもしれない。反則さえなければスリリングで面白い試合だと思ったが。

連続KO勝利で注目されていたジェアン・シウバはK-1タイトル挑戦者のバグダサリアンを1RでKOし、試合後にはブライス・ミッチェル戦をアピール。ミッチェルにとってはランク外の相手との対戦になりメリットは薄いが、Xで「シウバを謙虚にさせる」とリアクションしており、実現する可能性は高そう。

もう一人の有望株・ミドル級のマンスール・アブドゥル・マリクは大幅アンダードッグのニック・クラインのバックブローを効かされピンチに陥る場面もあったが凌いで逆転KO勝ち。逆境を乗り越えたところは良かったものの、勝って当然の相手に苦戦したのでは、すぐにランカークラスとの試合が組まれることはなさそうか。まだ8戦というキャリアを考えたら慌てる必要はないが。

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【UFC312】展望 デュプレッシー×ストリックランド=世界ミドル級選手権試合。頂点にある圧の掛け合い

【写真】圧の掛け合いは、圧の逃し合いに通じる。一体、どのような攻防が見られるのか (C)ETERNAL MMA

明日9日(日・現地時間)、豪州シドニーのクドスバンク・アリーナにて、UFC 312「 du Plessis vs Strickland 2」が行われる。王者ジャン・ウェイリ×タチアナ・スアレスの女子ストロー級タイトルマッチをコメインとする今大会のメインは、王者ドリキュス・デュプレッシーに前王者のショーン・ストリックランドが挑むミドル級タイトルマッチだ。
Text by Isamu Horiuchi

この試合は、約一年前の2024年1月、当時の新王者ストリックランドにデュプレッシーが挑んだ試合の再戦となる。その時には、両者が事前に通常のトラッシュトークの応酬を大きく逸脱した危ういやりとりを繰り広げ、試合も激闘の末に判定2-1でデュプレッシーが勝利し、南アフリカ人初のUFC王座に輝いた。

しかしながら、試合後にダナ・ホワイトUFC代表が「私は最終Rを取ったストリックランドの勝利だと思った」と発言したように、判定に関して識者たちの意見が割れる大接戦であり、再戦を望む声は当初から挙がっていた。その後、ストリックランドは6月の復帰戦でパウロ・コスタに判定こそ2-1だったものの完勝し、デュプレッシーも9月に元王者イスラエル・アデサニャを4Rチョークで仕留めて初防衛に成功。お互いが一勝を挙げた後、立場を入れ替えた両者のリマッチが実現する運びとなった。


尋常でない確執~紳士協定~技量のぶつけ合いへ

前回の試合前の両者の危険な因縁については、これまで当サイトでは紹介する機会を持てずにいる。一年以上前の話ではあるが、ここで振り返ってみたい。

端緒は2023年末、すでに対戦が決まっていた両者の記者会見に遡る。おそらく読者の多くがご存知の通り、ストリックランドは独特のダミ声で放送禁止用語を連発する…どころか、いわゆるポリティカル・コレクトネスの類も一切無視し、性差別、人種差別、LGBT蔑視と捉えられかねない言葉を次々とがなり立てる破天荒なキャラクターの持ち主だ。新王者となってもその姿勢はまったく変わらず、この日は試合後にコーチ達と祝福のキスをする習慣を持つデュプレッシーを、ゲイ関連のジョークで煽り続けた。

やがてストリックランドは楽しそうに「俺がお前をフィニッシュできないって? 心配するな! お前のコーチがいつものように控室でお前を(手や口で)フィニッシュしてくれるだろうからな!」と口撃を加速。ところが相手の心の傷の在処を察知し刺激することにおいては天下一品のデュプレッシーは、笑いながら「お前はなんでそんなに怒っているんだい? 昔父ちゃんにぶちのめされたからってか? お前の父ちゃんなんか俺とは比較にならんぞ。俺が本当の暴力ってもんをお前に見せてやるぜ!」と反撃に出た。

幼少期に父親から受けた虐待のトラウマの深刻さを常に訴えているストリックランドにとっては、完全に「一線」を踏み越えた言葉だ。ストリックランドが「ドリキュス!」と叫ぶも無視したデュプレッシーは「お前の子供時代の記憶の全てを思い出させてやるよ、試合の時にな! お前が寝ていたら父ちゃんがやって来てボコボコにされたこととかな!」と容赦なく追い討ちをかける。

ストリックランドが「殺すぞ、このpuxxy野郎が!」と声を荒らげると、デュプレッシーは甲高い声で「ヒャハハハハハハ! 怒った、怒った!」と机を叩いて嘲笑。さらに激昂したストリックランドが喚きたてるなか、もう十分と判断したダナ・ホワイトが強引に会見を終わらせた。

この危険極まりないやりとりの数日後、UFC296の会場にてストリックランドが後ろの席にいたデュプレッシーに襲いかかり、素手で殴りつけるという乱闘騒ぎが勃発。ただし、両者とも大きな怪我はないまま関係者に引き剥がされ、騒ぎはすぐに収まった(ちなみに元王者のロバート・ウィティカーはこの件について「ストリックランドの殴り方はなんかWWEっぽかったし、仕込みじゃないの?」という感想を吐露しており、どの程度本気のものだったかの判別は難しい)。

そして翌年1月のファイトウィークでは、事前にストリックランドがデュプレッシーに「もし、お前とコーチの関係について俺が言ったことが度を越していたなら、謝ろうじゃないか。でも、もしお前が再び俺の子供時代のことに触れやがったら、お前を刺し殺す。試合前にお前の人生を俺の人生もろとも滅茶苦茶にしてやる」という内容のDMを送っていたことが判明。

対してデュプレッシーも「俺はお前に何を言われようが一切動じないから、今後も俺のことを好きなように言ってくれて構わんよ。でも分かった。お前の子供時代のことについてはもう二度と触れないよ」と返信したと認めた。

最悪の事態を避け、ファイターとしての決着を望んだ両者の間で紳士協定が結ばれて実現したタイトルマッチは、互いにグローブタッチを交わすきわめてフェアな形で行われた。ストリックランドのジャブでデュプレッシーの左目が塞がりかけ、逆にストリックランドも4Rに左目の上から大流血する激闘の結果は、上述の通り判定2-1でデュプレッシーが勝利。試合後両者は健闘を称え合った。

圧の掛け合いを制するのは?

それから一年。再び対戦が決まった両者は、前回とはうってかわって危険な言動は控え、互いを強敵と認めた上で勝つことに集中した様子を見せている。再戦の勝敗の鍵は、前回の試合を経てどちらがより上手く戦い方を修正できるかとなるのが必然だ。特に両者とも、強靭な身体を武器にスタンドでプレッシャーをかけ相手を下がらせる戦いを本領とするだけに、圧の掛け合いをどちらが制するかが重要となるだろう。

その点で前戦の1Rに主導権を握ったのは右前蹴りで距離を取り、鋭い左ジャブを当ててゆく得意の戦い方を貫いたストリックランドの方だった。2023年10月にイスラエル・アデサニャをも翻弄した圧巻のペース支配力は、限りないスパーで磨き上げた自己流の防御技術に支えられている。初回デュプレッシーがパンチを打つたびに、ストリックランドはすかさず肩を上げた後傾姿勢を取り──頭を遠ざけつつ、両腕で巧みに捌いて被弾を避けていった。

デュプレッシーは後に「ショーンとイジー(アデサニャ)の試合を初めて見た時、イジーの調子が悪くてショーンにパンチを当てられないのかなと思ったよ。でもその後、自分がショーンと戦ってみてよく分かった。ショーンはディフェンスがものすごく巧みで、本当に当てるのが難しいんだ」と語っている。

デュプレッシーの非凡さは、ここですぐに対応し戦い方を変えてみせたことにある。「初回終了後、このジャブを貰い続けるわけにはいかないと思った」と語るデュプレッシーは最初の2Rはペースを抑えて3R以降からエンジンをかけてゆくという当初の予定を変更。2Rからガードをより高く上げて圧を強めた。時にジャブにガードを貫通され目を腫らしながらも、そのたびに前に出て打ち返していった。

前述のようにストリックランドは、相手のパンチに素早く後傾姿勢で反応し、巧みに腕で捌く。が、それは身体がディフェンス一辺倒になる瞬間でもある。デュプレッシーは、強烈なジャブを恐れぬ強靭な身体と精神をもってそこを突いた。スイッチも交えつつ段階的に踏み込みを深めてゆき2、3、4発と連打を放つことでストリックランドを下がらせ、その拳が顔面を掠める場面を創っていったのだ。

デュプレッシーは「イジーは手数ではなく、一発一発の打撃を高い精度で当ててゆくタイプだから、ショーンのディフェンスとはきわめて相性が悪かった。僕は手数を多く放つことで、ショーンに打撃を当てることができたんだよ」と語っている。洗練を極めたアデサニャの打撃を封じたストリックランドのディフェンスを、見た目ははるかに不恰好かつ武骨な連打でデュプレッシーは崩したのだ。

またデュプレッシーは、後傾するストリックランドのボディに拳もめり込ませ、パンチと見せかけて腰高の姿勢のストリックランドの懐に飛び込んでのテイクダウンも複数回決めている。こうしてデュプレッシーは、ストリックランドの強さを支える独特のディフェンスを逆に突破口として2~4ラウンドを取り、それが結果的に勝敗を決定付けることとなった。

戴冠を果たした現王者は、今回の再戦について「戦い方を変えなくてはならないのはショーンの方だよ。僕は前回と同じ戦い方をすればいい。ただし、より高い質で、よりクリーンに、より攻撃を精選し、忍耐強く戦うよ」と語っている。

手段を選ばぬ攻めとコンフォートゾーン

となれば再戦の見所の一つは、ストリックランドが前回とは異なるいかなる手段でデュプレッシーの圧力に対抗するかだ。もっとも本人は前戦終了直後から「負けたのは4Rにバッティングをもらって出血し、視界が塞がってしまったせいだ。それがなければ楽勝だった」と主張し続けており、戦術の改善の必要性は口にしようとしない(もっともデュプレッシーの方は、出血は自分がパンチを当てたからだと語っており、両者の主張は食い違っている)。

(C)Zuffa/UFC

その一方でストリックランドのヘッドコーチのエリック・ニックシックは「前戦を見直したところ、もっと上手くやれたのにと思える点がたくさんあったよ」と語る。

アルジャメイン・ステーリングやフランシス・ガヌーの世界制覇の功労者でもある名伯楽は、今回ストリックランドにどのような策を授けているのか。前回同様デュプレッシーが連打で前に出てきた時の対処は、いかなるモノか。

後傾気味に下がって捌くだけでなく、強烈なカウンターを放つ用意はあるのか。また前回何度も許したテイクダウンを、いかなる方法で回避するつもりなのか。さらに、前戦の最終局面でストリックランド自身が戦い方を変えて、反撃の狼煙を上げたことも覚えておきたい。残り1分あたりから両腕でガードを上げたストリックランドは、挑戦者が距離を詰めてくるたびに、後傾して守るのではなく左から右を思い切り振り回していった。

これが続けてヒットし、デュプレッシーが下がったところに飛び膝まで繰り出したストリックランドは、場内熱狂のなか最終Rを勝ち取ったのだった──2~4Rのビハインドを覆すには至らなかったが……。

(C)Zuffa/UFC

本人はこの場面について──。

「(元K-1ファイターであり、現在ストリックランドが練習するエクストリーム・クートゥアのトレーナーでもあった)レイ・セフォーとの会話を思い出したんだ。レイは俺に、試合で眼窩底を骨折した時にいかに戦ったかを話してくれた。あの最後の場面、出血で目が塞がっていた俺は『こんなとき、レイ・セフォーならどう戦うかな』って考えたんだよ。そこでガードを上げて、ただ当たることを願ってひたすらヘイメイカーを振り回したってわけだ」と語っている。

また、この試合の中継でファイトアナリストとしてコメントをしていたディン・トーマスは「デュプレッシーが手段を選ばず勝ちに行っていたのに対し、ストリックランドは試合の大部分をスパーのような安全運転モードで戦ってしまっていた。自分に快適なゾーンの外に出ることがなかなかできなかったね」と評している。

この言葉に導かれて考えるなら、デュプレッシーの世界最高の圧を最後の最後で押し返したのは、──あのK-1レジェンドに触発されて──土壇場でついに自分の殻を破って解放されたストリックランドの戦う心だったということになる。

デュプレッシーとストリックランド。両者とも、その動きは見た目には洗練されているとは言い難い。にもかかわらず、独自にして驚くほど有効な戦いの技術と、強靭きわまりない肉体を練り上げ、ともにアデサニャという華麗な身体操作を究めた王者を打ち破ってみせた。そんな技術と肉体を操るのは、極限状況下でも勝利を求めて戦う心だ。力が拮抗した者同士の試合は、最終的には心と心のぶつかり合いとなる。

危険な因縁を乗り越え、互いを最大の好敵手として認め合った両雄による今回の再戦は、前回にも増した激闘が長丁場繰り広げられる可能性が高い。世界の頂点にある身体と技術、そして心の凌ぎ合いを心ゆくまで堪能したい。

■視聴方法(予定)
2月9日(日・日本時間)
午前8時00分~UFC FIGHT PASS
午後12時~PPV
午前7時 30分~U-NEXT


■UFC312対戦カード

<UFC世界ミドル級選手権試合/5分5R>
[王者] ドリキュス・デュプレッシー(南アフリカ)
[挑戦者] ショーン・ストリックランド(米国)

<UFC世界女子ストロー級選手権試合/5分5R>
[王者] ジャン・ウェイリ(中国)
[挑戦者] タチアナ・スアレス(米国)

<ヘビー級/5分3R>
タリソン・テイシェイラ(ブラジル)
ジャスティン・タファ(豪州)

<ライトヘビー級/5分3R>
ジミー・クルート(豪州)
ホドウフォ・ベラート(ブラジル)

<ウェルター級/5分3R>
ジェイク・マシューズ(豪州)
ホドウフォ・ベラート(ブラジル)

<フェザー級/5分3R>
ジャック・ジェンキンス(豪州)
ガブリエル・サントス(ブラジル)

<ライト級/5分3R>
トム・ノーラン(豪州)
スラヴァ・ボルシェフ(ロシア)

<女子フライ級/5分3R>
ワン・ソン(中国)
ブルーナ・ブラジウ(ブラジル)

<バンタム級/5分3R>
アレクサンドル・トプリア(スペイン)
コルビー・シックネス(豪州)

<ライト級/5分3R>
コディ・スティール(米国)
ロン・チュウ(中国)

<ウェルター級/5分3R>
ケヴィン・ジュセ(フランス)
ジョナサン・ミカレフ(豪州)

<ライト級/5分3R>
クイラン・サルキルド(豪州)
アンガド・ビシュト(インド)

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【Special】ヘンリー・フーフト&鈴木崇矢対談─02─「コンテンダーシリーズがベストとは思わない」

【写真】昨年春のABEMA海外武者修行の時のヘンリーと鈴木。既に良い空気感(C)TSP

キルクリフFC総帥ヘンリー・フーフトと鈴木崇矢の対談Part.02。話題は20歳、5勝1敗の鈴木のキャリアの積み方について──。
Text Manabu Takashima

世界トップのプロMMAファイター集団を率いるヘンリーの日本のMMA界の評価と、北米におけるUFCファイターへの道。禁断ではなく、UFCを目指すのであれば目を通すことが必須といえる──ヘンリー・フーフトの選手の人生を守る育成方法が明らかとなる。

<ヘンリー・フーフト&鈴木崇矢対談Part.01はコチラから>


──佐藤選手、木下選手がいることは心強いですか。

鈴木崇矢 ハイ。ただ、いない状況が分からないので。自分の想いとしては、すべて自分でやる。どのような状況でも、個人で乗り越える人間力のようなモノを海外で身に着けたいということもあったのですが……修行ですよね。でも天さんや憂朔さんがいてくれる状況は、絶対的に練習をする上で良いのだと思います。

ヘンリー 修行か(笑)。でも、自分と同じ言葉を話す仲間が周囲にいることは本当に助かっているはずだ。どれだけのパッションを持っていても、あるいは自信が備わっていてもハートが折れるときは必ずある。そんなとき、タカシは絶対的な力になってくれる。彼はあらゆる経験をした。フロリダに来てからお父さんを亡くし、お兄さんを亡くした。どれだけお母さんのことが心配か。

それでも、彼は常にポジティブな思考で戦い続けてきた。ファイターとしてどれだけ強いのか。そんなことよりも、人としてどれだけ強くあることができるのか。その方が、人生で大切だ。タカシはフロリダに来るまで日本でキャリアを積んできた。でも、今は共に人生を歩んでいるつもりでいる。

タカシは本当にデキた人間だから。タカヤはそんな人間が間近にいる。なにかあった時、自分の言葉で話せるんだ。同じ言葉を話すからこそ、悩みもより理解できる。ジムでは米国人は当然として、ロシア人やブラジル人、色々な国の違った文化や言葉を持つファイターがいる。誰も自分と同じ言葉を話さない集団のなかに1人ぽつんといる辛さは、私は30年も昔にタイで経験してきた。アカヤはそうじゃない。日本の皆と、同じところで住んでいることは絶対的にプラスになる。

ロシア人や米国人と考え方が、絶対に違うわけだし。迷ったときに、力になってくれるのは同じ国の人間だよ。タカシは試合で負けた。でも米国で正しい道を歩んできた。試合に負けて悩むことは、このスポーツの一部だ。私にもあったし、誰もが抱える問題だ。勝っていれば、人生は楽だよ。でも、勝ち続けることなんてない。そんな時にお手本となる人間が、近くにいることは絶対的にタカヤを良い方向に導いてくれるだろう。

──この若さと5勝1敗という戦績で、米国に拠点を移す。堀内佑馬選手に続く日本のMMA界でもレア・ケースです。そういうなかでキルクリフFC所属の鈴木崇矢選手が、米国でどのようなキャリアアップをしていくのか。非常に興味深いです。そもそも、UFCへのプロセスをどのように考えてフロリダに移ったのでしょうか。

鈴木崇矢 最初はLFAで2、3試合して2025年のコンテンダーシリーズで戦うことが目標でした。ただ、フロリダに住んで練習をするようになって「ちょっと、まだ早い」と肌で感じました。気持ちはそうしたい。それが最短ルートでUFCを目指すということになるので。

でも……こっちの5勝1敗とか6勝1敗の連中って皆、レスリングが当然にできてスペシャルな何を持っている。もうUFCが近いって奴らばかりで、「俺は、まだだ」って(苦笑)。どういう風に説明をすれば良いのか上手く言葉にできないのですが、もう僕の体と頭、気持ちが出した答えなんです。

そうしたら、ヘンリーにも同じことを言われました。まずはレスリング力をつけること。LFAで試合をするのは、まだ早いと。UFCのチャンピオンを育て、これだけの選手がいるジムのヘンリーが言うなら間違いないです。この5カ月で僕はヘンリーを信じています。ヘンリーと一緒に一つ一つ試合経験を積んでいくと1年半、2年後に安定したUFCへの道が見えてくるはず。なので、今は一つ一つ試合を勝っていく。そういう考えになりました。

ヘンリー これまで何をしてきたのか。米国の練習は、タカヤが日本でやってきたこととは違う。我々はハイレベルなファイターだけが集まり、1日2度の練習を日々繰り返している。既にUFCやBellatorで戦っている選手や、そこを目指しているファイターたち、経験豊かなファイターが揃っている。

タカヤは、そこでハイレベル・ファイターか同じレベルの選手とトレーニングをしているんだ。自分より下の選手はいないという状況だ。そうやって力をつけている状態にあるからこそ、キャリアアップに関しては真剣に考える必要がある。

そうしないとマネージャーはお金を手にするために、何の責任感もなく選手を戦わせようとする。いくらでも代わりはいるという考えだ。私はマネージャーでなく、トレーナーだ。ファイター、ファイターの家族、そしてジムに責任を持っている。勝つか負けるか、勝算50パーセントではケージに選手を送り込むことはできない。勝てる見込みが、もっと高くないと。

タカヤのレコードだけを見ると、米国でも良い試合機会は巡ってくる。ただし、私からすれば日本の5勝1敗は、米国では2勝1敗だ。それだけレベルが違う。だから最初の5カ月は、ゆっくりとタカヤの状態を見てきた。2025年は身の丈にあった試合を3、4試合させたい。彼は20歳だ。7勝1敗で21歳。凄く若いということはない。でも、経験は十分に積んでいる。キルクリフでハードな練習を日々、繰り返しているのだから。まずはコネクションがあるプロモーションで、彼が成長できるファイトを戦わせていきたい。

それでも米国にイージーファイトはない。そのなかでタカヤの可能性を伸ばす、彼が力をつけることができるような試合を戦わせたい。UFCの目に止まるファイターになるよう時にはストライカーと、別の機会にはグラップラー、レスラーと戦っていき、経験を積ませたい。

タカヤも言っているが、皆がコンテンダーシリーズに出てチャンスをつかもうとするが、それがベストとは私は考えていないんだ。

──えっ!! それはなぜですか。

ヘンリー タフな相手に、フィニッシュが絶対に必要。そのうえでダナ・ホワイトに気に入られる必要がある。そして手にする契約は、何も特別なモノじゃない。毎週4人、5人とサインするなかの1人だ。それならばLFAやCage Fury FCのベルトを狙わせる。LFAもCFFCもUFC Fight Passでの中継がある。コンテンダーシリーズのように、フィニッシュが絶対という条件はない。それでいて、ショートノーティス出場の候補になれる。

何もUFCと契約することが、ゴールではないはずだ。ただし、勝てないとリリースされる。すぐに契約が切られると、何も手元には残らない。それにコンテンダーシリーズで契約というルートは、安定した戦い方を忘れさせてしまう。

──鈴木選手は日本人なので、Road to UFCという選択もできますが。

ヘンリー タカヤはそうしたかったんだ。そのつもりで、最初はフロリダにやってきたんだよな。

鈴木崇矢 ハイ、そうです。でも出場できなかったです。

ヘンリー 私は良かったと思っている。米国のUFC Fight Passで試合がオンエアーされている大会で戦う方が、良いオプションだから。そこで印象に残れば米国のファンがSNSで発信する。あっという間に、皆に名前が広まるよ。

それと米国でキャリアを積む利点は、ここには市場があるということだ。スポンサーがつく。そういう場で戦える力をつけるために、その下のローカルショーで経験を積む必要がある。そこで実績を積めば、LFAやCFFCとサインをしてタイトルを狙うロースターになれる。それから4戦目でタイトル戦の機会を得たとして、まだタカヤは22歳か23歳だ。急がせない。急いで、早々に燃えつきた人間を多く見てきたからね。

──米国でUFCを目指すファイターたちを指導している身として、UFCファイターになるために日本のベルトは役に立つという見方はできますか。

ヘンリー 日本で日本人と戦って手にしたベルトは、UFCで勝つために役に立たない。必要なのは強くなるための経験だ。何も日本だけの話ではない。米国でも同じだ。そのベルトを取っても、どうなるというベルトだらけだ。UFCで勝つために、必要なレベルで試合をしているのか否か。その方が大切になってくる。

グラップラーと戦う。ストライカーと戦う。グラップリングで勝つ。打撃で勝つ。どのような戦いをしてきたのか。ベルトはUFCで戦える力があることを証明しているわけではない。

UFCで戦える力のある選手と、戦うことが重要だ。例えば元UFCファイターだとか。日本だと、海外で戦うことも手だろう。OKTAGONやヨーロッパで戦うことは、経験値をあげるに違いない。日本の若い選手が、ロシアのACAで行くのも悪くないだろう。イージーな相手に勝ってパーフェクトレコードを持っていても、10戦8勝2敗でその2つがロシアの強豪に喫したものなら、その方がずっと良い経験になっている。そしてUFCでやっていける可能性も上がる。UFCに行く前にタフファイトを経験しているからだ。そうでなく、ただベルトを持っていても意味はない。

実際、私はキックボクシングの世界チャンピオンだった。世界のベルトを持っていた。でも一体、どれだけの人間がキックボクシングでは世界王者になり、世界のベルトを手にしている?

同じ階級に10人の世界チャンピオンがいた。私がLFAとCFFCの名前を何度も挙げているのはマーケティングからの観点と、この2つのプロモーションでベルトを手にするということは、UFCで戦っていけるだけの力があることを示すことになるからだ。他の米国でのベルト、日本のベルトは……思い出に残る、ナイスな写真を撮るために巻けば良い。UFCで勝ち上がるためには、ベルトがなくてもしっかりと経験を積むことの方が大切だ。

鈴木崇矢 舐めているわけじゃないですけど、僕も日本のベルトはいらないです。

<この項、続く>

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