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UFC on ESPN+83:第9試合・エリン・ブランチフィールド vs. タイラ・サントス

女子フライ級。ブランチフィールド3位、サントス4位。

今年2月にAPEX大会のメインとして組まれていたカード。サントスが欠場したため、ブランチフィールドはジェシカ・アンドラージと対戦し、2Rチョークで一本勝ちして一気に上位ランカーに。

24歳のブランチフィールドは、前回ランキング10位でいきなり1位のサントスと組まれるなど、ショーン・オマリー並の飛び級の扱いで、結果サントスは欠場したものの、代役のランキング3位アンドラージに勝利。タイトル挑戦圏内に入ったので、このままタイトル戦が組まれるかと思ったが、王者シェフチェンコがアレクサ・グラッソにまさかの逆転一本負け。ダイレクトリマッチが組まれることになったため、ブランチフィールドもタイトル挑戦の待ち行列に入ることなく、サントスとの仕切り直しの対戦を受けた。柔術黒帯のグラップラーで、UFCデビューから5戦全勝。現在、3試合連続一本勝ち中。

サントスは昨年のシンガポール大会で王者シェフチェンコのタイトルに挑戦。オッズは大幅アンダードッグだったが、組んで四つからテイクダウンを奪う展開で、首投げで投げられても、首を抜いてバックを奪い攻勢。が、ポジションをとってもそこからの攻めが足りず、ポジションを取っているだけのラウンドがジャッジによってはシェフチェンコに取られてスプリット判定負け。当時としては最も王者を苦しめたが、地味な戦いぶりが災いしてか、再チャンスは与えられず。30歳。

オッズはブランチフィールドがフェイバリット。

パンチを入れたサントス。ワンツー。ブランチフィールドが近づこうとしても殴られる。タックル。しかしクラッチできず引き剥がされた。パンチで出るサントス。かなり強打を打ち込んでいる。出ようとしたところでインローを蹴られ膝を着くブランチフィールド。タックル。止められたがそのままケージまで押し込んでパンチを入れたブランチフィールド。パンチからボディロックでクラッチすることに成功。しかし差し返すサントス。肘を入れて引き剥がした。ブランチフィールドまたタックルに行くが、サントス膝を合わせる。組んだブランチフィールド。大内テイクダウンを狙ったが、倒し際に首を抜かれてバックを取られかける。立ち上がり離れたブランチフィールド。残り1分。ブランチフィールドがパンチから四つ組みに押し込んで膝を入れるブランチフィールド。ダブルアンダーフック。しかし差し替えして入れ替えるサントス。ホーン。

1Rサントス。ブランチフィールド、テイクダウンを取れないと厳しい。

2R。ローを蹴るサントス。パンチで出るブランチフィールドだが、サントスのパンチで迎撃される。タックルに入るも切られた。サントスのカーフで体が流れるブランチフィールド。ブランチフィールドパンチでケージまで下がらせてタックル。が、潰された。すぐに起き上がりまたタックル。ダブルレッグ。倒しかけたがこらえたサントス。なおもダブルアンダーフックだが、サントスが差されている腕をオーバーフックして防いでいる。ボディロックから投げを狙うブランチフィールド。しかしサントスこらえた。逆にダブルアンダーフック。反り投げをねらったサントスだが潰してブランチフィールドが上に。下から腕十字を狙うサントスだが、密着して防ぐとハーフに。パス。亀になったサントス。足のフックは防いでいる。残り1分。サントス立ち上がった。ケージ際で正対。だがなおも押し込んでクラッチしているブランチフィールド。ダブルレッグを狙ったがサントスこらえた。ブランチフィールド離れたがすぐにまた組み付く。ホーン。

2Rブランチフィールド。1Rを見る限りは打撃で押され、テイクダウンも奪えない展開でジリ貧かと思われたが、パンチのプレッシャーでケージまで下がらせてからタックルに行くなど工夫して勝負している。

3R。すぐ出るサントス。逆にブランチフィールドがジャブ。下がったサントスにタックル。こらえたサントス。四つ組みで逆にテイクダウンを狙うが、ブランチフィールドもこらえた。カーフを蹴るサントスだが、ブランチフィールドまたタックル。倒しかけたがサントスこらえる。自ら離れたブランチフィールドだが、即タックル。ダブルレッグ。ギリギリこらえたサントス。また離れたブランチフィールド。サントスローを入れるが、パンチに行った瞬間にまたタックル。受け止めたがブランチフィールド押し込んで膝を入れる。下がったブランチフィールド。パンチのヒット&アウェイ。サントスのパンチは空振り。スタミナが切れてきたか。ブランチフィールドまたタックル。受け止めたサントス。ブランチフィールド離れてすぐタックル。倒しかけたがサントスギリギリこらえた。ブランチフィールド押し込んで肘。離れた。残り30秒。消耗しているサントスにブランチフィールドがパンチで出る。サントスが逆にタックル。首を抱えたブランチフィールド。膝。タイムアップ。

三者29-28でブランチフィールド勝利!

1Rは、打撃で押されタックルも切られて苦しい展開だったが、しつこいタックルでサントスのスタミナを削ってサントスの自滅を誘い、3Rには打撃のヒットでも上回って勝利。これで次は来月のグラッソ vs. シェフチェンコの勝者とのタイトルマッチだろう。

サントスも最後まで意地でテイクダウンを許さなかったが、3Rはポイントを取り返すだけの体力が残っていなかった。

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Grachan JJ・オルドリッチ MMA MMAPLANET o UFC UFC ESPN52   アレックス・カサレス アンソニー・スミス ギャレット・アームフィールド ショーン・オマリー ショーン・シェルビー ジャン・ウェイリ ジャン・リーポン ジュニオール・タファ ジョン・チャンソン ソン・ケナン タイラ・サントス チェ・スンウ チディ・ンジョグアニ パーカー・ポーター ビリー・ゴフ ファーニー・ガルシア マックス・ホロウェイ ヤルノ・エレンズ ワルド・コルテスアコスタ 中村倫也 木下憂朔 河名マスト 鈴木崇矢 風間敏臣 髙谷裕之

【UFC ESPN52】計量終了「1人の出現で全ては変わる」by ショーン・シェルビー。UFC計量よもやま話

【写真】かなり削っているホロウェイとジョン・チャンソン (C)MMAPLANET

25日(金・現時間)午前9時から午後11時まで、シンガポールはセントーサ島にあるリゾートワールド・コンベンションセンターで明日26日(土・同)に同地カランのシンガポール・インドアスタジアムで開催されるUFC on ESPN52「Holloway vs The Korean Zombie」の本計量が行なわれた。
Text by Manabu Takashima

出場26選手、全員が一発クリアした優良な計量会場で見られ、聞かれた――よもやま話をここでお伝えしたい。


まずUFCでは取材や、公開計量、ファイト時にオフィシャル・ウェアであるヴェノムのコスチュームの着用が義務付けられているのはご存じの方も多いだろう。これは本計量のアンダーウェアも同じで、何セットも支給されるという。

中村倫也、木下憂朔の両名は計量直前に履き替えたというが、普段から着用しそのまま計量に臨む選手もいるそうだ。

また計量直後にはUFCからリカバリー用の補給水も支給され、体重によって量が調節され、補給する時間も伝えられる――という徹底した安全管理がなされていた。仮にこの補給水を飲み、嘔吐するようなことがあれば試合出場にレッドカードが提示されることに――。

そんな計量会場に髙谷裕之の姿が見られた。髙谷は河名マスト、鈴木崇矢と共に中村のコーナーマンを務める。昨年8月にフリーランスとなり袂を分かった両者だが、3月のGrachanの会場などで顔を合わせ、挨拶から徐々に言葉を交わすようになっていったという。

そして今回のUFCにデビューに向けて、中村は勝利に向けて髙谷という存在が欠かせないことを再確認。冷静かつ、闘魂を注入できる髙谷は中村の勝利に向けて、マスターピースとなるか。

今大会は日本人選手が3名出場するが、「ようなく日本から、このスポーツを代表する選手になれる人材が現れた」と話したUFCタレントリレーションズのトップ=ショーン・シェルビーは「本当に長い時間がかかった。1人で良いんだ。1人の出現で、他の選手の認識が変わり、あとを続く選手が現れる。そう中国でも長らく中国のMMA界の型にはまったファイターばかりだったなかで、ジャン・ウェイリという違った思考の持ち主が現れたことで全てが変わったんだ。リンヤは昨日の会見では英語で受け答えをしたんだろう?  いいかい、重ねていうけど1人の出現で日本のMMA界は変わるんだよ」と言葉を続けた。

ジャン・ウェイリが現れ中国のMMA界が変わった――これは2013年から2014年にかけてUFCではTUF Chinaを開き、中国市場進出への起爆剤となるよう多くの資金投入を行った。結果、中国の格闘技市場は人材の流出を恐れ、これから育つ層に多額のファイトマネーを支払うようになり、UFCを目指す選手が途絶えたことを指している。

ばかりか、TUF Chinaで知名度が上がったジャン・リーポン、ワン・サイらも国内大会に戻ることになった。UFCでは魔の5年間と呼ばれる空白の期間を世界最大の市場で経験し、ジャン・ウェイリの活躍と王座奪取により、一気に中国人選手の思考と志向が変化した。

果たして中村倫也がジャン・ウェイリのような存在になれるのか。その保証は0パーセントで、果てしない茨の道が彼を待っている。と同時に、昨日のメディアデーで「僕が挑戦できるときまで3年、ショーン・オマリーに待ってほしい」と発言していた中村へのUFCの期待度の高さもまた、過去の日本人ファイターの例には当てはまらない。そのようにシェルビーの言葉から感じられた。

■視聴方法(予定)
8月26日(土・日本時間)
午前6時~UFC FIGHT PASS
午前5時30分~U-NEXT

■UFC ESPN52計量結果

<フェザー級/5分5R>
マックス・ホロウェイ: 146ポンド(66.22キロ)
ジョン・チャンソン: 146ポンド(66.22キロ)

<ライトヘビー級/5分3R>
アンソニー・スミス: 205.5ポンド(93.21キロ)
ライアン・スパーン: 205ポンド(92.99キロ)

<フェザー級/5分3R>
ギガ・チガゼ: 146ポンド(66.22キロ)
アレックス・カサレス: 145.5ポンド(66.0キロ)

<バンタム級/5分3R>
中村倫也: 135ポンド(61.24キロ)
ファーニー・ガルシア: 135.5ポンド(61.46キロ)

<女子フライ級/5分3R>
エリン・ブランクフィールド: 125.5ポンド(56.92キロ)
タイラ・サントス: 124.5ポンド(56.47キロ)

<ヘビー級/5分3R>
ジュニオール・タファ: 255.5ポンド(115.89キロ)
パーカー・ポーター: 256ポンド(116.11キロ)

<ヘビー級/5分3R>
ワルド・コルテスアコスタ: 264 ポンド(119.74キロ)
ウーカシュ・プジェスキ: 265 ポンド(120.2キロ)

<バンタム級/5分3R>
風間敏臣: 135ポンド(61.24キロ)
ギャレット・アームフィールド: 135.5ポンド(61.46キロ)

<ミドル級/5分3R>
チディ・ンジョグアニ: 185.5ポンド(84.14キロ)
ミハウ・オレキシェイジュク: 186ポンド(84.37キロ)

<ウェルター級/5分3R>
ソン・ケナン: 170ポンド(77.11キロ)
ロランド・ベドヤ: 170.5ポンド(77.34キロ)

<ウェルター級/5分3R>
木下憂朔: 170.5ポンド(77.34キロ)
ビリー・ゴフ: 170ポンド(77.11キロ)

<女子フライ級/5分3R>
リャン・ナ: 126ポンド(57.15キロ)
JJ・オルドリッチ: 126ポンド(57.15キロ)

<フェザー級/5分3R>
チェ・スンウ: 146ポンド(66.22キロ)
ヤルノ・エレンズ: 145ポンド(65.77キロ)

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MMA MMAPLANET o UFC UFC292 アルジャメイン・ステーリング ショーン・オマリー

【UFC292】アルジャメインのステップインに、右ストレート一閃。ショーン・オマリーが新世界王者に

<UFC世界バンタム級選手権試合/5分5R>
ショーン・オマリー(米国)
Def.2R0分51秒by TKO
アルジャメイン・ステーリング(米国)

まず右ローを見せたステーリングが、続いて軽く右ハイを繰り出す。距離をつめにいく王者に対し、ステーリングはサークリングで間合いを取る。互いに構えを変えるなか、オマリーが右前蹴りで腹を狙う。ステップインし、構えを変えるオマリーが、サークリングしながらもスイッチする。ステーリングが左ミドルを蹴ったところで、初回半分が過ぎた。

オマリーの前蹴り、チャンピオンはローを繰り出す。関節蹴りも見せたオマリーだが、フェイクと間合いの測り合いが続く。ついには盛り上がりまくっていた観客がブーイングを送るように。下がるのではなくて、角度をかえて踏込みをかわすオマリーだが、最後がステーリングが組みつきケージに押し込んだ形で初回を終えた。

2R、自らの蹴りでスリップしたオマリーに組みついたステーリングが、シングルに移行する。ウィザーを取ったオマリーが離れ、右前蹴りをくりだす。直後に、左を振るってステップインしたステーリングだが、右を合わせされ頭からキャンバスに倒れ込む。直ぐに上を向いたステーリングに立ったまま鉄槌、さらにパンチを落とすオマリー。懸命に足をきかせようとしたステーリングだが、勢いのある右パンチを落とされる。続く左の鉄槌に背中を見せたステーリングを見て、レフェリーが試合を止めた。

「正直、この試合ほどナーバスだったことはない。それでも自信は持っていた。シュガー時代の始まりに過ぎない。チート(ヴェラ)が勝ったね、でもつまらない試合だった。12月にベガスのTモバイルでチートとやることになるかな」と新チャンピオンは話した。


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MMA NEXUS o Torao UFC キック ショーン・オマリー ブラック ペドロ・ムニョス ボクシング マルロン・ヴェラ

【UFC】速報中!UFC 292: Sterling vs. O’Malley

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本日もMMAイベント花盛り。夜は後楽園ホールでFighting NEXUS、広島ではolors & TORAO 30が開催されますが午前中はUFC。マサチューセッツ州ボストンTDガーデンでUFC 292: Sterling vs. O'Malleyが開催されます。メインはアルジャメイン・スターリング×ショーン・オマリーのバンタム級タイトルマッチ。下馬評では王者スターリングが圧倒的優位と言われていますが、スター性の高いオマリーが思わぬアップセットを巻き起こすか。胸騒ぎがしないわけでもない一戦。今回もU-NEXTで観戦しつつ、電波と充電の続く限り速報します。乱筆乱文にはご容赦くださいませ。


【バンタム級】
○マルロン・ヴェラ(エクアドル)
(判定3-0)
×ペドロ・ムニョス(ブラジル)
1R、前半はムニョスが圧力をかけて積極的に手数を出す。カーフキックを何発もヒットさせ、間合いを詰めてパンチを出す。ヴェラはカーフを掴みに掛かるがムニョスは回避。スタンドの状態が続くと徐々にヴェラが反撃開始。前に出るムニョスに対して首相撲からの膝や遠距離からの前蹴り、関節蹴りをヒット。終了間際にはカウンターのフックでグラつかせてラウンドを終えた。
2R、終始スタンドの展開。ムニョスにカーフキックを中心に間合いを詰めて左右のパンチを振るう。ヴェラは長いリーチを活かして遠距離からのパンチをヒットさせて手数を稼ぐ。後半は至近距離でのボクシングの展開。ハイレベルな甲乙つけ難い接戦のままラウンド終了。
3R、ヴェラがアクセルを踏んだか手数を積極的に手数を出す。右ストレートでムニョスをグラつかせる。ムニョスはタックルでごまかして難を逃れる。しかしヴェラは左ジャブにボディも織り交ぜて有効打をヒット。だがムニョスは打たれ強い。決定的なダメージをもらわず後半は前進してパンチを打ち返して反撃。互いに決定打がないまま試合終了。判定はヴェラに軍配。いやはや地味流れもレベルの高い試合だった。


【バンタム級】
×ダモン・ブラックシア(米国)
(判定0-3)
○マリオ・バティスタ(米国)
1R、打撃の交差から組み付いたブラックシアが上手く組み付いてケージに押し込む。そこから持ち上げてテイクダウンに成功。だがバティスタは下から激しく動いてスタンドに脱出。スタンドに戻ると打撃戦を経てブラックシアが胴タックルでスタンドでバックに周る。そのままグラウンドに引きずり込むがバティスタは正対して脱出。しかしブラックシアはしつこくタックル。するとバティスタがタックルを切ってギロチン。あわやの場面だったがブラックシアは首を抜いてラウンドを終えた。
2R、一転して終始スタンドの展開。逆にバティスタが積極的に組み付いていく。しかしお互い腰が重く、差し合いで膠着する時間が増える。終盤になると逆にブラックシアがタックル。一瞬バティスタが尻餅をついたがすぐに立ち上がってスタンドの展開。お互い決め手がないままラウンド終了。
3R、前に出てパンチを振るうのはバティスタ。ケージに押し込んでパンチを出す。さらにはタックルで組み付く。い一度は脱出されたが、二度目のトライで組み付くと反り投げのようにテイクダウンに成功。バックに周ってグラウンドをコントロール。ブラックシアはスタミナが切れたか動きが鈍い。終了間際になんとか脱出。スタンドの攻防になるとブラックシアのパンチがヒット。バティスタは転倒。ブラックシアが上になろうとするが、バティスタはスルッと身体を入れ替えてバティスタ上になって試合終了。微妙は判定はバティスタに軍配。
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【UFC292】ニール・マグニー戦へ、イアン・ギャリー「必要がないから、組み技を見せてこなかっただけ」

【写真】文中にあるようにマグニーは191センチの長身だが、ギャリーも同じだけの上背を誇っていた(C)Zuffa/UFC

19日(土・現地時間)、マサチューセッツ州ボストンのTDガーデンでUFC 292「Sterling vs O’Malley」が開催される。UFC世界バンタム級選手権試合と女子ストロー級選手権試合──2つのタイトル戦を控えた第10試合で、イアン・ギャリーがニール・マグニーと戦う。
Text by Manabu Takashima

オクタゴン5勝0敗、キャリアを通して12連勝中のギャリーは、ジェフ・ニールからマグニーに相手が代わったことで、これまで見せてこなかった彼の一面をこの試合で披露する腹積もりだ。25歳、世界のトップが見えてきたギャリーは、無敗のファイターしか持ちえない純粋無垢、真っ新な前進力を持っている。


──イアン、インタビューを受けていただきありがとうございます。

「こちらこそ、ありがとう。もうすぐUFCシンガポールがあるから、忙しいんじゃないの? たくさんのアジア人ファイターが出場するし、凄く楽しみだよ」

──今週末、ニール・マグニーと対戦しますが、もともとはジェフ・ニールと戦う予定でした。構え、スタイルとまるで違う相手になったのですが、問題はなかったですか。

「ジェフ・ニールと戦うことは、とても楽しみにしていたんだ。僕がこの間に学んできたこと、全てを出す戦略を立てていたから。ジェフ・ニールははサウスポーで背が低い。そしてアグレッシブなファイターだ。対して、ニール・マグニーは背が高いオーソドックスの選手(笑)。だからジェフ・ニールと戦うために準備してきた武器を見てもらうことはできないけど、マグニーを血まみれにして破壊する。彼がこれまで経験したことがない、ファイトを初体験させてやるつもりだ」

──ジェフ・ニールと戦っていた方が、ファンが喜ぶ試合展開になったという風に思うことはありますか。

「ただ、ファンの間ではジェフ・ニールよりも、ニール・マグニーの名前の方が知れ渡っていると思うんだよね。またトップ15を破る、絶好の機会だと思っている。ジェフ・ニールにしても、ニール・マグニーにしても僕の名前が立つためには恰好の相手だよ。それにどっちと戦うのかっていうことよりも、僕がオクタゴンに入って戦えることが、最重要なんだ。どっちにしても、僕の引き立て役にしかならないんだから(笑)」

──とはいえイアン自身が言及していたように構えも違いますし、ファイトスタイルはニールがストライカーなのに対して、マグニーがやるべきことはクリンチゲームからテイクダウンし、コントロールをすること。まるでスタイルが違いますが、準備期間は十分でしたか。

「実はヴィセンチ・ルケの練習パートナーを務めるために、2カ月半ブラジルにいたんだ。この間、毎日のように柔術の練習をしてきた。マグニーがクリンチからテイクダウンを狙っても僕は倒されない。仮に倒されたとすれば、僕の柔術を皆に見てもらう丁度良い機会になる。グラップリングを皆に披露できるなら、それも楽しみだよ。UFCに来て、初めてグラップリングの腕前を見てもらうことができる。マグニーが寝技で戦ってくるなら、いくらでも受けたつよ」

──2021年6月、イアンがジャック・グラントを破ってCage Warriorsウェルター級王座と獲得した試合ではダブルレッグでテイクダウン、スクランブルでダース、クリンチでエゼキエルを仕掛けるなど、組み技でも十分に強いところを見せていました。

「イエス。僕は打撃が好きなんだ。そして、肉体を駆使したチェスのような試合を好んでいる。でも殴らたり、蹴られたり、傷つくことが嫌な相手が立ち技で勝負せずに、柔術やレスリング、グラップリングを攻めてきても別に構わない。僕にテイクダウンを仕掛けてきたとして、世界中の誰を相手にしてもバックに回ることができる。世界中の誰からも、一本勝ちできる。

そうする必要がないから、UFCでは組み技を見せてこなかっただけで。ニール・マグニーが僕を相手に組んでくるなら、グラップリングファイトに応じる。そして、チョークで落とすことを約束する」

──これまでUFCで5連勝中ですが、そろそろグラップリングのスキルを皆に披露する時がやってきたと考えていますか。

「最終的にウェルター級のトップは、グラップラーが多い。グラップリングに比重を置いたファイトをしている。僕がここでグラップリングを駆使して戦えば、多くの相手は僕と組みたがらないようになるだろう」

──グラップリングは今もブーイングの対象ですが、ジャック・グラントのようにマグニーが動いて来れば、ファンが盛り上がることができるグラップリングMMAになるかと思います。

「この試合では、最後はグランドワークを見せることになるだろう。今回のマグニー戦か、それとも次の試合になるかもしれないけど、如何に僕のグラップリングが優れているのかを皆に証明する」

──キルクリフFCのジルベウト・ドゥリーニョ、シャクハト・ラクモノフの両者が既にニール・マグニーを破っていますが、2人が戦っていることでキルクリフFCにはマグニーの情報が豊富にあり、有利になるのではないですか。

「ノー、そんなことはないよ。同じチームでも僕はドゥリーニョでも、シャクハトでもないから。それにマグニーだって、あの時のままのはずがない。ドゥリーニョはUFCの歴史上、最高のグラップラーの1人だ。シャクハトも最高のトップファイターだよ。ただし、彼らがマグニーに勝っていることは、何も僕にとってアドバンテージにはならないよ」

──イアンも他のファイターと同様に、目標はUFC世界王座であることは間違いないかと思います。

「イエス」

──ウェルター級ランカーにはドゥリーニョ、ラクモノフ、ヴィセンチというチームメイトがいます。世界を獲るためにドゥリーニョが、カマル・ウスマンに挑戦したように友人同士のファイトを求められるとどうしますか。

「ドゥリーニョは僕にとって家族のようなものだ。今週末も、僕のコーナーに就いてくれる。彼と戦うことは考えられない。ヴィセンチも友人だ。皆、僕の友達だよ。そんな風に僕も思っていた時期がある。今の僕は……もしシャクハトがチャンピオンなら、シャクハトと戦う。僕ら2人がベストでも、チャンピオンは1人だから。

ドゥリーニョが世界最高でチャンピオンだったとしても、僕はチャンピオンになりたい。そして彼に挑戦表明をするよ。『僕は世界王者になりたい。ベストになりたいんだ。ギルバート、君と同じなんだ。アイ・ラブ・ユー。どうする? やるだろう?』ってね。レガシーとヒストリーが、僕にとって一番大切なモノなんだ。世界のベストになるためなら、誰とでも戦う。いつでも、戦う。友人とタイトルを争う期間は、友人ではなくなるだけだよ」

──タイトルショットでなく、普通のワンマッチでは?

「繰り返すけど、僕は誰とでも戦う。夢に近づくためならね」

──分かりました。では、そこに近づくためにも今週末はマグニーを相手にどのような試合をしたいと考えていますか。

「僕がスーパースターであることを示す。旗が風にはためていることが、なぜあれほどまでに美しいのか。それは旗の後ろに巨大なパワーが存在しているからだ。そこれそ情熱の象徴であり、感動、楽しさの表れなんだ。僕の打撃、僕の戦い方は旗が風にはためているように美しい。過去、誰も見たことがない世界最高の打撃だ。イアン・ギャリーはウェルター級に比肩する者がいない。この世界で唯一の存在なんだと皆が思うような戦いを見せる」

■視聴方法(予定)
8月20日(日・日本時間)
午前7時30分~UFC FIGHT PASS
午前11時~PPV
午前7時00分~U-NEXT

<UFC世界バンタム級選手権試合/5分5R>
[王者]アルジャメイン・ステーリング: 135ポンド(61.24キロ)
[挑戦者]ショーン・オマリー: 135ポンド(61.24キロ)

<UFC世界女子ストロー級選手権試合/5分5R>
[王者]ジャン・ウェイリ: 115ポンド(52.16キロ)
[挑戦者]アマンダ・レモス: 114ポンド(51.7キロ)

<ウェルター級/5分3R>
ニール・マグニー: 170.5ポンド(77.34キロ)
イアン・ギャリー: 170.5ポンド(77.34キロ)

<バンタム級/5分3R>
マーロン・ヴェラ: 136ポンド(61.69キロ)
ペドロ・ムニョス: 135ポンド(61.24キロ)

<バンタム級/5分3R>
マリオ・バウティスタ: 136ポンド(61.69キロ)
デモン・ブラックシアー: 135.5ポンド(61.46キロ)

<ミドル級/5分3R>
クリス・ワイドマン: 186ポンド(84.37キロ)
ブラッド・タヴァレス: 185ポンド(83.91キロ)

<ミドル級/5分5R>
グレゴリー・ホドリゲス: 186ポンド(84.37キロ)
デニス・チュルリン: 185ポンド(83.91キロ)

<TUF31ライト級決勝/5分3R>
カート・ホロボウ: 155.5ポンド(70.53キロ)
オースティン・ホバート: 155ポンド(70.31キロ)

<TUF31バンタム級決勝/5分3R>
コディ・ギブソ: 136ポンド(61.69キロ)
ブラッド・カトーナ: 136ポンド(61.69キロ)

<ミドル級/5分3R>
ジェラルド・マーシャート: 185ポンド(83.91キロ)
アンドレ・ペトロスキー: 186ポンド(84.37キロ)

<女子フライ級/5分3R>
アンドレア・リー: 125ポンド(56.7キロ)
ナタリア・シウバ: 125ポンド(56.7キロ)

<女子フライ級/5分3R>
マリナ・モロズ: 125ポンド(56.7キロ)
カリーニ・シウバ: 125ポンド(56.7キロ)

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【UFC292】極めるか、倒すか。間合いと減量&睡眠=ステーリング✖オマリー戦展望─02─

【写真】さぁ、いよいよ3日後に両者の競演が見られる(C)MMAPLANET

19日(土・現地時間)、ボストンのTDガーデンにてUFC 292「Sterling vs O’Malley」が開催される。メインのUFC世界バンタム級選手権試合展望後編。
Text by Isamu Horiuchi

絶対的なバック奪取能力と、コントール力を誇る王者ステーリングと、卓越した打撃の当て勘を有する挑戦者オマリー。当然のように事前の挑発の試合を行うなかには、ステーリングの減量とオマリーの睡眠というエレメントにも言及は及んでいた。

<アルジャメイン・ステーリング✖ショーン・オマリー考察Part.01はコチラから>


ステーリングの卓越した打撃回避の能力、多少不格好でも組みついてしまえばケージに押し込んで強引にテイクダウンやバックを奪ってしまう無類の組み力、そして一度有利な体勢を取ったら決して相手を逃さない圧倒的なコントロール力こそが、王者優位説の強力な根拠だ。

さらに注目したいのは、試合開始直後の攻防だ。というのも以前ステーリングは、オマリー同様に長いリーチを誇るストライカーのコリー・サンドハーゲンと対戦した際に、スタートと同時に──絶妙な間合いを保ちつつも──プレッシャーをかけて下がらせ、蹴り足を掴むとあっという間にテイクダウンからバックを奪取、そのままチョークを極めて驚愕の圧勝劇をみせているのだ。

今回の試合に向けても王者は「サンドハーゲン戦と同じように極めてやるよ。前に出てプレッシャーをかけてやる。奴はフットワークを使うだろうけどこっちは逃げ道を遮断する。すると奴は苦し紛れに蹴ってくるだろうから、それを掴んで奴の体を二つ折りにしてやるさ。1ラウンド半分で極めるよ」と宣言している。

王者が予告通り試合開始と同時に圧力をかけてゆく可能性は高いと思われる。対するオマリーがそれに屈せず、逆に王者を下がらせる、あるいは出鼻の打撃を当てることはできるのか。試合開始直後から、まったく目が離せない一戦だ。

また、オマリーとしては序盤から組み伏せられてしまったとしても、極められさえしなければ次のラウンドはスタンドから再開となる。2019年のクインテッド・ウルトラにて五味隆典をギロチンチョークで仕留める等、以前からグランプリング大会にも精力的に出場して実績を出しているオマリーは、前戦から1年間、さらなるグラップリングの強化に多くの時間を割いてきたという。

何度ポジションを奪われようが極めさせず、試合を長引かせれば長引かせるだけ王者の集中力は下がり、必殺の左右のストレートが当たる可能性が上がるだろう。

またオマリーは、ステーリングがキャリア唯一のKO負けを喫した2017年のマルロン・モラエス戦についても言及し「モラエスがやったように、俺が奴を眠らせる姿をいつも頭に浮かべているよ」と語ってもいる。

スタンドでオマリーのプレッシャーを感じた王者が不用意にテイクダウンに行くようなことがあれば、モラエス戦のようにカウンターのハイキック、あるいはヒザを当てるチャンスが広がる。

昨年10月のTJディラショー戦の時のステーリングの公式計量時の様子

さらに──。

「アルジョは俺よりはるかにキツい減量をしているはずだ。だから脳から水分が抜けて一発で倒れるよ」とも語るオマリー。

王者に対してSNS上で「俺は今日すげえカロリーの高い美味い晩飯を食ったぜ。アンタはなにを食ったんだい?」、「俺は今日もたっぷり質の高い睡眠を摂ったぜ。アンタの睡眠はどうだい?」(※最近オマリーは、睡眠の専門家を雇ってその向上に努めている)とユーモラスな挑発を繰り出してもいる。

対するチャンピオンも、その投稿に対して「お前は寝ているんだな。俺は練習するんだ。違いが分かるか?」と気の利いたリプをしている。とまれ、当代最高のグラップラー✖ストライカー、クラシカルにして最先端の攻防を、心ゆくまで堪能したい。

■視聴方法(予定)
8月20日(日・日本時間)
午前7時30分~UFC FIGHT PASS
午前11時~PPV
午前7時00分~U-NEXT

■UFC292対戦カード

<UFC世界バンタム級選手権試合/5分5R>
[王者]アルジャメイン・ステーリング(米国)
[挑戦者]ショーン・オマリー(米国)

<UFC世界女子ストロー級選手権試合/5分5R>
[王者]ジャン・ウェイリ(中国)
[挑戦者]アマンダ・レモス(ブラジル)

<ウェルター級/5分3R>
ニール・マグニー(米国)
イアン・ギャリー(アイルランド)

<バンタム級/5分3R>
マーロン・ヴェラ(エクアドル)
ペドロ・ムニョス(ブラジル)

<バンタム級/5分3R>
マリオ・バウティスタ(米国)
デモン・ブラックシアー(米国)

<ミドル級/5分3R>
クリス・ワイドマン(米国)
ブラッド・タヴァレス(米国)

<ミドル級/5分5R>
グレゴリー・ホドリゲス(ブラジル)
デニス・チュルリン(ロシア)

<TUF31ライト級決勝/5分3R>
カート・ホロボウ(米国)
オースティン・ホバート(米国)

<TUF31バンタム級決勝/5分3R>
コディ・ギブソン(豪州)
ブラッド・カトーナ(カナダ)

<ミドル級/5分3R>
ジェラルド・マーシャート(米国)
アンドレ・ペトロスキー(米国)

<女子フライ級/5分3R>
アンドレア・リー(米国)
ナタリア・シウバ(ブラジル)

<女子フライ級/5分3R>
マリーナ・モロズ(ウクライナ)
カリーニ・シウバ(ブラジル)

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MMA MMAPLANET o UFC UFC292 アマンダ・レモス アルジャメイン・ステーリング ショーン・オマリー ジャン・ウェイリ ピョートル・ヤン ヘンリー・セフード ライカ

【UFC292】UFC世界バンタム級級選手権=ステーリング✖オマリー、展望。絶対の組み力の前の拳の精度

【写真】135ポンドの世界の頂点は組と打が頭抜けたウェルラウンダー対決だ(C)MMAPLANET

19日(土・現地時間)、ボストンのTDガーデンにてUFC 292「Sterling vs O’Malley」が開催される。王者ジャン・ウェイリーにアマンダ・レモスが挑戦する女子ストロー級タイトルマッチをコメインとするこの大会のメインは、王者アルジャメイン・ステーリングにショーン・オマリーが挑むバンタム級タイトルマッチだ。
Text by ISAMU HORIUCHI

世界王者ステーリングは、5月に3年ぶりに復帰した元二階級王者ヘンリー・セフードとの大一番に臨み、お互いが裏をかき合う総力戦の末に2-1で競り勝って3度目の防衛に成功している。この3度連続防衛は、とかく移り変わりの激しいUFCバンタム級の史上最多記録だ。


対するオマリーは、17年のコンテンダーシリーズ2にて衝撃的なKO勝ちを収めてUFCとの契約を得た選手。その後も──薬物検査失格による2年のブランクを挟んだものの──順調にKO勝ちを重ねてボーナスの山を積み上げスターダムに駆け上がると、昨年10月のアブダビ大会において元王者ピョートル・ヤンとの大激闘を判定2-1で制し、今回のタイトル初挑戦権を得た。

実績で圧倒的に上回るのは、当然長期政権を樹立する王者ステーリングの方だ。が、人気では派手なKOを量産し弁も立つ優男=オマリーが大きく勝る。挑戦者もそのことを十分に認識しており、

「アルジョにとって俺との試合はリスキーだよな。俺を避けてフェザー級に上げて(同級絶対王者ヴォルカノフスキーとの)チャンプ・チャンプファイトに挑むという選択肢もあったはずだ。でもスーパースターである俺との試合は、(不人気王者の)アルジョにとってはビッグマネーを稼げる試合になる。だから奴はいかに危険だと分かっていても、俺との試合から逃げることはできなかったんだろうな」と、完全に上から目線で語っている。

そんな両者の試合だが、勝敗に関しては相性的に王者有利を指摘する声が大きい。その背景には、この試合が近年のタイトル戦では珍しいほど明確な「ストライカー✖グラップラー」の構図を描いていることがある。

ステーリングはMMA界最高峰のバック取り&コントロールの名手だ。昨年4月にヤン戦では2、3ラウンドに序盤にテイクダウンからバックの奪取に成功し、そのままラウンド終了まで圧倒的有利なポジションをキープしてみせた。また5月の前戦では、五輪金メダリストのセフードに対してもケージレスリングで五分以上に渡り合い、テイクダウンやバック奪取に成功している。

対するオマリーは、前戦でストライカーのヤンにテイクダウンやバックを取られる場面が何度も見られた。

そのたびに見事なガードワークや体捌きで脱出してみせていたが、もしステーリング相手に一度でもポジションを許してしまったら、そのままチョークを極められてしまうか、あるいはラウンド終了まで一方的にコントロールされる可能性が高い。

よって、この試合の最大の見所はその前の段階──つまり、オマリーがいかに王者に組み付かせずに打撃を当てるか、逆にステーリングがいかにオマリーの打撃をもらわずに組みつくかとなるだろう。

バンタム級では突出した身長&リーチ(180センチ&183センチ)を誇るオマリー。その長い間合いとスムーズなフットワーク、精妙なフェイントや体捌きを見て伝統派空手出身ではと思う者も多いだろうが、高校を中退して初めて習った格闘技がMMAだ。相手の出鼻に抜群のタイミングで蹴りやジャブを放って距離を保ち、またスイッチを自在に使いこなし左右どちらからも鋭い打撃を繰り出すことができる。

特に「無造作に」とでも言いたくなるほど肩の力が抜けた状態から放たれ、相手の顎を瞬時に撃ち抜く左右のストレートの威力は天下一品だ。

打撃格闘技のバックグラウンドなしに、かくなる打撃技術を習得しているのだから天賦の才に恵まれているとしか言いようがない。

「詳しいことは言えないけど、アルジョの穴はたくさん見えているよ。そして顎を打ち抜いてライツ・アウトしてやるさ。俺は今までもそうやってキャリアを築いてきたんだから」と挑戦者は自信を覗かせている。

が、王者ステーリングはただのグラップラーではない。スタンドで有効打をもらわないことにおいても──これまた天下一品だ。

前述のヤン戦やセフード戦では、常に相手から視線を外さずにスイッチを繰り返しては、やはり長いリーチ(180センチ)を活かした前蹴りや、軽いが予測困難な変則のヒジや手技足技で距離を保ち、強引に詰めて来られてもテイクダウンに入ることで、5Rにわたって見事に被弾を回避してみせた。

試合前は自信満々だったセフードも、試合後には「アルジョは頭をいつも振っていて、こちらが予想していたよりもはるかにパンチを当て辛かったよ」と、「ファンクマスター」の異名に相応しい王者の変則的な立ち技スタイルの手強さを認めている。

<この項、続く>

■視聴方法(予定)
8月20日(日・日本時間)
午前7時30分~UFC FIGHT PASS
午前11時00分~PPV
午前7時00分~U-NEXT

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MMA MMAPLANET o UFC UFC288 アルジャメイン・ステーリング キック ショーン・オマリー ヘンリー・セフード ボクシング

【UFC288】五感&五体を駆使したチェスゲームは、ステーリングに軍配。セフードからスプリット判定勝ち

<UFC世界バンタム級選手権試合/5分5R>
アルジャメイン・ステーリング(米国)
Def.2-1:48-47.48-47.47-48
ヘンリー・セフード(米国)

前に出るステーリングが右ハイを蹴る。さらに左ローから左ハイを繰り出し、セフードは見る展開に。左右に動き、右を伸ばしたセフードに対し、構えを変えて前に出るステーリングがヒザ蹴りへ。蹴り足を掴み、ボディロックに移行したセフードが簡単にテイクダウンを奪う。バタフライガードのステーリングは、セフードの腰を浮かしてレッスルアップへ。シングルを許さずにセフードががぶると、3/4ネルソン&エルボー。立ち上がって離れ両者、パンチの応酬からステーリングの蹴り足を掴んだセフードの右は空振りに。

ここから組み合いとなり、セフードがケージに押し込む。体を入れかえ、ダブル狙いのステーリングを切ってがぶったセフードだが、スイッチ狙いからステーリングが左腕を差してケージに押し込む。前方に下してバックに回ったステーリングが、ヒザを腿やワキ腹に入れ、小外刈りでテイクダウンで倒してバックを取る。ヒザ&ヒジを打ったステーリングが初回をリードした。

2R、まず右カーフを蹴ったセフードに対し、前に出るステーリングがカーフを返す。セフードの右は届かず、逆にステーリングが左を入れる。一瞬のクリンチアッパーもステーリングが間合いを外し、セフードの右ハイが頭部をかすめる。ステーリングは前蹴り、シングルを切って離れる。左フックを見せたセフードだが、ステーリングが蹴りを多用し詰めることはできない。それでもステーリングのダブルレッグも遠く、動じることなく立ち続けるセフードの圧が上回って来る。

ステーリングの右をかわし、バックを伺ったセフードは、ここに固執せず真正面に立つとカーフからパンチを狙う。ボディを殴ったステーリングは下がり、回る場面が増えてきた。セフードは逆にジャブを貰っても前に出て、スピニングバックエルボーをかわす。右オーバーハンドをダック気味にかわしたステーリング、そこにセフードが右ハイを狙う。ニータップからパンチにつなぐセフードに対し、ステーリングが右ロー。セフードがローを返し右を当てると、シングルをかわしてスクランブルからがぶって時間に。

3R、左ミドル、ローと蹴りを使うステーリングに対し、セフードが右ミドルを蹴り、右を当てて跳びヒザへ。ステーリングのテイクダウン狙いをがぶったセフードは、リリースして立ちの間合いに戻る。すぐにシングルを仕掛けても、切られたステーリングがヒザをボディに被弾する。それでも組んでボディロックに入ったステーリングは、ここの逆にケージに押し込まれてしまう。

ケージ際でポジションを2度、3度と入れ替えステーリングが小外で姿勢を乱させ、起き上ってきたセフードのボディにヒザを突き刺す。しっかりと左腕を差しいれ、ここからダブルレッグ、さらにボディロックに転じたステーリングだが、回ったセフードが離れる。セフードは組んでくるステーリングに右を当て、シングルレッグはスプロール。ステーリングもバックに回らせないが、ここもセフードががぶってリリース、胸をマットにつけているステーリングが立ち上がるをまっている。ステーリングはパンチから組んでヒザ蹴り、ここでセフードがボディロック&大内刈りでテイクダウンを決め、ガードの中からパンチを繰り出してラウンド終了を迎えた。

4R、右カーフを3発蹴ったステーリング。さらに右カーフを見せると、セフードも右ローを返す。足を使い左右に回るステーリングが左ミドル、セフードは左ボディフックを振るう。シングルのフェイクに続き、右を狙ったステーリングが左ヒジを見せる。セフードは右を振るって前に出て、組み狙いにヒザを突き刺す。

トリッキーなステーリングに対して、セフードは王道の圧を掛けて組むというファイトでケージに押し込む。押し返され離れたセフードだが、圧を掛けてテイクダウン狙いを切る。懸命に動いて仕掛けるステーリングは、組んでヒザをボディに入れる。離れては左ジャブのステーリングが、やや動きが落ちてきたように見えるセフードに右を当てる。

セフードはここで組むと、押し返してきたところでスナップダウン、さらにシングルにクレイドルで対抗する。ここでステーリングが起き上り、ダブルレッグからリバーサル。右足を両足で挟み、勢いのあるパンチを見舞ってラウンドを取った。

最終回、セフードが圧を掛けステーリングが右ハイを蹴る。左右に動くステーリングが左ミドル、セフードの左は届かない。正面に立ったステーリングに対し、セフードが右ミドルを蹴り、右をかわす。パンチからテイクダウン狙いという動きのステーリングだが、右の蹴りで上体を伸ばされる。と、ステーリングがスピニングバックキックも当たりは浅い。さらにテイクダウン狙いから右を当て、直後に左をヒットさせる。

セフードも左も返し、シングルレッグから右を打ちこむ。ステーリングの動きの多さに、惑わされそうになりながら前に出て圧を掛けることで、流されなかったセフードはダブルレッグをスプロール、ウィザーで止めて離れる。ここでヒザ蹴りを決めたセフードは、クリンチでケージに押し込まれてヒザを受けるが、離れて圧をかけなすとシングルレッグからレッグリフト、そのまま押し込んでテイクダウンを奪う。

スクランブルでバックに回ったセフードは、ステーリングがスピニングバックエルボーを放ったタイミングで正対すると、ダーティボクシングでパンチを入れた時間を迎えた。

1Rと4Rはステーリング、2R、3R、5Rはセフードか。この接戦ではジャッジがどう判断するかは、もう主観でしかない。結果、スプリット判定でステーリングが王座防衛に成功した。

次期挑戦者としてショーン・オマリーがオクタゴンインし、ステーリングと罵り合いを始める。それでも会場のファンは、裁定結果に不満を持っているようで──その空気を両者のフェイスオフでも払拭することはできず、セフードがマイクを握ると大きな声援が送られた。


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MMA MMAPLANET o TJ・ディラショー UFC UFC288 YouTube   アルジャメイン・ステーリング ショーン・オマリー ジョゼ・アルド ジョン・ジョーンズ チャンネル ドミニク・クルーズ ピョートル・ヤン ヘンリー・セフード マルロン・モラエス

【UFC288】UFC世界バンタム級選手権試合=ステーリング✖セフード展望─01─、プロローグ&前哨舌戦

【写真】トリプルCからクアドラプルCを狙うことを公言したセフードと現王者のアルジャメイン。話術も優れた両者(C)Zuffa/UFC & MMAPLANET

6日(土・現地時間)、ニュージャージー州ニューアークにあるプルデンシャル・センターにてUFC 288「Sterling vs Cejudo」が開催される。
Text by Isamu Horiuchi

クロン・グレイシーが約3年半ぶりに復帰し、シャルル・ジョーデインと戦うなど興味深いカードが揃った今大会だが、最注目はやはりメインイベントのUFCバンタム級タイトルマッチ、王者アルジャメイン・ステーリング✖ヘンリー・セフードだ。


今回3度目の防衛戦を迎えるステーリングだが、もともとこの王座は3年前、当時圧倒的な強さを誇っていたセフードが引退発表と共に返上したものだ。

2008年北京五輪フリースタイルレスリング55キロ級金メダリストのセフードがMMAの頂点に立ったのは、2018年8月のこと。一度は完敗を喫したフライ級絶対王者デミトリウス・ジョンソンに再挑戦し、判定2-1で接戦を制して世界を驚かせたのだ。

続く翌年1月には、あえて階級を落として挑んできたバンタム級王者TJ・ディラショーと王者同士の決戦へ。このスーパーファイトも1R0分32秒KOで制したセフードは、軽量級最強の座を不動のものとした。

その後、禁止薬物EPOの使用が発覚したディラショーがバンタム級王座を返上すると、7月にセフードはマルロン・モラエスとのバンタム王座決定戦に臨む。2Rに打撃で圧をかけ主導権を奪うと、3Rにヒザでダメージを与えるや上を取って強烈な鉄槌を連打してTKO勝利。この勝利を受けてセフードは、「俺はただのチャンプ・チャンプ(二冠王)ではない。我こそはTriple C(トリプルチャンプ=五輪金+UFC二階級制覇)。歴史上最も偉大な格闘家だ!」と勝ち誇った。

続く2020年5月、セフードは元王者ドミニク・クルーズとバンタム級王座の初防衛戦に。序盤から打撃戦で主導権を握り、2Rにカウンターの右ヒザをヒット。さらに追撃を加えてTKOに下した。そして直後の勝利者インタビューにてセフードは、もう全て達成し尽くしたと引退を宣言。世界を獲ったレスラーが打撃でMMAの頂点に君臨するという、恐るべき戦いの才の底を見せぬままベルトを返上し、オクタゴンを去ったのだった。

空位となったバンタム級王座は、7月の決定戦でジョゼ・アルドを下したピョートル・ヤンが獲得。2021年3月にこのヤンに挑んだのがステーリングだが、体重調整の失敗が原因で中盤から失速してしまう。しかし4R、片ヒザをマットに付けたステーリングの顔面にヤンが膝を当ててしまい、ステーリングが試合続行不可能となりヤンは反則失格に。新王者となったステーリングは敗色濃厚の展開で最後は打ちのめされるという──なんとも嬉しくない戴冠となってしまった。

昨年4月にステーリングはヤンと再戦。2、3Rに見事なテイクダウンからバックを奪って完全にコントロールすると、4、5Rはヤンの猛追をかわしきって判定2-1で勝利──王者に相応しい実力を証明しての初防衛だった。

続く10月には、元王者TJ・ディラショーと2度目の防衛戦を戦う。ステーリングは1Rに肩を脱臼して片腕で戦う挑戦者をテイクダウンして一方的に攻め込むと、2Rにマウントパンチを連打して圧勝した。

そんな世界の頂点に君臨する王者ステーリングに、セフードが復帰第一戦でいきなりタイトル挑戦する形となった。

実は両者の対戦の機運は、セフードが昨年4月に復帰を宣言し、USADA(米国アンチドーピング機構)の検査選手リストに再加入した直後から作られていた。この時期にヤンとの2戦目を制してバンタム級王者の座を不動のものとしたステーリングは、ダニエル・コーミエーのYoutubeチャンネルの企画でアリゾナ州にあるセフードの自宅を訪問。コーミエを司会役にして机に向き合った両者は、来るべき対戦について語り合ったのだった。

「引退後、ジョン・ジョーンズやデイヴィドソン・フィゲレード等をコーチすることを通してMMAの見方が断然変わったよ。以前よりはるかに深い理解を得て賢くなった。そして今でも戦う力があると分かっているから戻ってきたんだ」と話すセフードは、現王者を目の前にしてコーミエに「この男が王者となるなんて思っていなかったよ。あまりにも多くの欠点があるからね。俺と戦うことになればそこが露呈するさ。こいつとの試合は俺にはイージーマネーだな!」と言い放つ。

さらにステーリングに向かって「お前は力は持っているよ。特に長い手足は最大の長所だ。でもお前はまだ自分の能力の全てを理解してはいない。そこを理解して、単なるファイターではくコンペティターとして上達すれば、もっと危険な選手になるだろうがね。まあ怒らず聞けって、俺様が褒めてやっているんだから」と言い放つと、さらに「お前は俺をKOする力を持ってはいる。その長い手足を使ってな。特にヒザだ。それがお前が俺を倒す一番の可能性だろうが、俺は賢いからそんなことさせるわけはない。俺はコンペティターとして誰よりも優れているんだ」と上から目線&余裕の表情で現役王者を論評した。

当然ステーリングも言われっぱなしでは終わらない。「俺はいつもそうやって負けると言われてきたけど、試合でそういう奴らを黙らせてきた。それこそ俺の生きがいだ。ファイトじゃなくコンピートする必要があるというのは同意だが、その点でもあんたを上回るさ」と反論をスタートさせると、「俺はレスリングでもあんたと渡り合える。ダブルアンダーフックを取ればあんたの体を浮かせることができるし、たとえあんたが得意のインサイドトリップ(大内刈り)で俺をテイクダウンしたとしても、すぐに三角絞めに捕らえてやるよ。俺はまだ自分の戦い方の半分も見せていない」と言葉を続けた。

こうしてSNS時代ならではの手法を用いて、現王者と元王者は将来の対戦の布石を打ったのだった。そしてステーリングが昨年10月にディラショーを倒して王座防衛に成功した後、両者の試合は正式に決定した。

そして──試合を約1カ月後に控えた3月末、再びコーミエの司会のもと、両者はESPNが企画するZOOM会議で論戦を交わすこととなる。

予定の時間にやや遅れて入室したセフードは、ステーリングが遅刻に不快感を表していると聞き「まあ本物のキングは自分のやりたいように行動するってことだ!  アルジョよ、キングの前にひざまづく準備はできているか? ダニエル、こいつはいつも俺から逃げているんだ。今回も直前で逃げ出すかもしれないから、UFCはこいつのボーイフレンドのマラブ(・デカリシビリ。ステーリングの同門にしてバンタム級トップランカー)を代役に用意しておいた方がいいだろうな!」と傲慢キャラクターを全開に。

さらに「俺が復帰する理由は、フェザー級のベルトを取るためだよ。その前にバンタム級王者であるこいつを倒し、その後ショーン・オマリーも倒してから、(アレックス)ヴォルカノフスキーと戦う。こいつらは俺にとっては単なる踏み台に過ぎないな! お前は(ヤン初戦で)アカデミー賞並の演技でタイトルを獲得しただけだ。次の試合はジャッジの間違いだ。その次のTJなど、俺が32秒で倒した男だ。奴がEPO(禁止薬物)を使ってきたにもかかわらずだ。そんな野郎が片腕だけで戦っていたのに、お前は倒すのに2Rもかかったんだ」と、ステーリングが苦闘の末に掴み取った栄光の軌跡まで侮辱し続ける。

さらに「アルジョよ、次の試合でお前は死ぬのだぁ! WHOO!」とリック・フレアーの物真似まで繰り出して挑発してみせた。

当然王者ステーリングも黙ってはおらず、「そもそもあんたがどうして引退したかを思い知らせてやるよ。おい、今この場で “I quit (私はもう辞めました)”と言ってみろよ。そのニヤついた顔をぶん殴るのが待ち切れないぜ」と言い返したのだった。

もっとも話題は単なる煽り合いだけでは終わらず、両者は具体的な試合展開についても言及している。

<この項、続く>

■視聴方法(予定)
5月7日(日)
午前7時00分~UFC Fight Pass
午前11時00分~PPV
午前6時30分~U-NEXT

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【UFN223】これが最高峰。ソン・ヤードン、シモンのTD&スクランブルの流れを拳で止め、削った上でTKO

<バンタム級/5分5R>
ソン・ヤードン(中国)
Def.5R1分10秒by TKO
リッキー・シモン(米国)

フレームが一回り大きく見えるソンが、中央を取る。その周りを回るシモンと、互いに慎重な立ち上がりに。シモンが右カーフを蹴るが、ここからも様子見になる。シモンのシングルは遠く、切ったソンが右カーフ、そしてヒザを繰り出す。シモンは左ミドルから右を伸ばして、スイッチした刹那──ソンの右ミドルが腹を抉る。ソンは右カーフを続け、シモンが右オーバーハンドもブロックする。続くソンの右に組みついたシモン。ソンはヒザを入れて押し込み返すが、シモンが離れて右を繰り出す。

右ヒザを狙ったソン、右を当てダブルレッグを切って右ローを蹴り、ヒザを見せて右ストレートとリズム乗った攻撃を繰り出す。最後に右ハイから後ろ回し蹴りの連係を放ったソンが初回をリードした。

2R、右を打つぞ、打つぞと見せるソンが、シモンを挑発する。シモンは左ジャブを入れ、ソンは左エルボーを見せ、そのまま距離をつめてフックとエルボーの連打を繰り出す。ヒザをついたシモンが、組みついてテイクダウンもすぐにスクランブルからスタンドに。ソンはワンツーで前に出て、右オーバーハンドを振るって左を入れる。右オーバーハンドに続く、左ボディフックを入れたソンは再び左ボディショット、一旦距離を取って右前蹴りから右ボディストレート、上体を大きく振るシモンに左フックを決める。

力強い攻撃を見せるソンに対し、回る動きから下がる動きに変わったシモンはジャブや左フックを繰り出す。構わず距離を詰めて左ボディを決めるソンだが、ついにシモンがダブルレッグ&小外でテイクダウンを決める。鉄槌を落とすシモンだったが、下から手を振るうソンの腕を殴っている形か。残り時間が殆どないなかでスクランブルからソンが立ち上がり、ラウンド終了を迎えた。

3R、右カーフをチェックしたシモンだが、ダブルレッグ。跳ね上がるようにスクランブルで立ち上がったソンはワンツーを伸ばす。と、ソンの左ボディフックが急所に入り試合が中断する。再開後、左ジャブから左右のローを入れたソンは、左ジャブからのテイクダウン狙いを切り、シモンのショートのコンビもしっかりと見て距離を取る。左ハイからスピニングバックキックの連係を繰り出したソンは、シモンのジャブを額で受けて左ボディフックへ。

さらにカーフを2発蹴ったソンが一転、顔面狙いで左を決める。シモンも右ボディストレートを繰り出すが、拳の重さがソンとは違う。ソンは左フック、ジャブ、前蹴りから右ストレートというコンビで前に出る。これだけ前に出ても、圧で圧倒しシモンにテイクダウンの仕掛けすら許さないソンが左ハイからスピニングバックハンド、これをしっかりと見たシモンは、頭から突っ込んでくるソンの動きに対し「何度やるんだ」とレフェリーに抗議した。

4R、ワンツーのシモン。ソンは右カーフを蹴り、ローをチェックする。頭を振って前に出るシモンは、跳びヒザと攻撃手段を変える。これをかわしてパンチの圧を高めるソンは、シモンの懸命&執拗なテイクダウン狙いしっかりと切り、左を振って前に出る。左&右、さらに左ボディショットを放ったソンがカーフ2連発から、ジャブを伸ばして左フックへ。質量、回転で上回り続けるソンが右カーフ、そして右フックを振るう。ボクシング的に頭を振ってパンチをかわしつつ、テイクダウンは徹底して入らせないソンが右を当て、続く左を空振りする。

一瞬間ができたが、シモンは攻めることができない。ソンの打撃に反応させられ、テイクダウンが決まらないシモンは構え変え、左でステップインも逆に左を被弾して後方に尻もちをつく。突進したソンだが、直後に5分となり時間に救われた。

最終回、回って左ジャブのシモンが右ストレートへ。左で迎え打とうとしたソンは、右オーバーハンドをヒットさせる。動きが止まったシモン、ソンは右カーフ決めワンツーで出てきたシモンに左を入れてダウンを奪う。パウンド、鉄槌にスクランブルに持ちこもうとしたシモンだったが、バックからパンチを打たれて前方に崩れ──レフェリーが試合を止めた。

「凄く、最高にハッピー。シモンは本当にタフなファイターだけど、今日は僕の夜だった。次はトップ5と戦いたい。僕はグッドレスラーなんだ。フックはベストタイミングだった」と笑顔で話したソン・ヤードンはショーン・オマリーをコールアウトした。打撃が有り、組みがあり、勝者も敗者も一つの動きに固執することなく、次の展開に移行する。その中で勝者のソンはテイクダウンをされても、自分の流れを譲らず流れを譲らず、逆にシモンの動きをパンチで遮断してのTKO勝ち。ソン・ヤードンとリッキー・シモンの戦いは、朝倉未来✖牛久絢太郎、斎藤裕✖平本蓮で最高に盛り上がる国内MMAシーンの将来が、ここに行き着いてほしいと思わずにはいられない戦いたいだった。


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