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『UFC 298』メラブ・ドヴァリシュヴィリに負けたら引退を公言していたヘンリー・セフードが早くも引退撤回「このままでは終われないと思った」

勝つまでやめない!勝利の方程式 (中公文庫)


ヘンリー・セフード「メラブ・ドヴァリシュヴィリに負けたら2度目の引退をする」「この試合はオール・オア・ナッシングだ」(2024年02月16日)

 こちらの続報。『UFC 298: Volkanovski vs. Topuria』でメラブ・ドヴァリシュヴィリに判定負けしたヘンリー・セフードですが、




 自身の公式YouTubeで以下のコメント。

「このままでは終われない。どうしても無理だ。確かに俺は負けた。だが、あんな負け方は納得できない。負けたこと自体は気にしていない。多分、自分のやったこと、つまり疲れたから相手をノックアウトしようとしなかったとか、そういうことが本当に気になってる。今日は、引退発表の準備をしていたんだ。数日前、俺は文字通り引退についてのビデオを作り、家族、友人、みんなへの感謝のメッセージを言っていた」

「しかし、そこからダニエル・コーミエやクイントン・"ランペイジ"・ジャクソンといったリスペクトするレジェンドたちと話をした。そこで、お前は世界ナンバー1の男(アルジャメイン・スターリング)にスプリットデシジョンで負けて、ほぼ世界最強の男(メラブ・ドヴァリシュヴィリ)と戦った。これがショーン・オマリーやマルロン・ヴェラと戦う機会があれば、イージーファイトになるだろうと言われた」

「メラブ・ドヴァリシュヴィリは必ずしもノックアウトのパワーや精度があるわけではないが、彼の敷居の高さ、ペースを上げ続ける能力、自分の力を出し切らないペースを保つ能力にやられた。だが、このままでは終われない」

「復帰しないのがベストだった。なぜならトップのまま引退したからだ。そもそもなぜ引退したのか? 俺は全てを成し遂げたし、モチベーションがなかった。残りの人生、ファイターとしてトップに立ちたい。ハビブ・ヌルマゴメドフと同じようにできたら最高だ。これだけは言っておくが、実際に挑戦したことのない選手には常に『もしも』がつきまとうということだ。俺の立場で言えることは、ショーは続くということだ」

「デイナ・ホワイトの言う通り、俺は3年間を棒に振った。全盛期の3年間? ああ、彼に言わせておくよ。今となっては、土曜日に感じたこと、すでに起きたこと、そして心理的に『くそっ、こいつらの言ってたことは正しいのか? 他に方法はないのか?』と思ってしまう。もし全てを変えることができたら、俺は多分復帰しなかっただろう。だが戻って来てしまった。だからこそ、このままで終わるわけにはいかない」

「だから俺は今日ここで前言を撤回し、ファンのみんな、家族、友人、俺を嫌っている人たちに、このままでは終われないと言っている。そしてみんな、控えめに言っても、トリプルCはまだ終わっていない」
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ヘンリー・セフード「メラブ・ドヴァリシュヴィリに負けたら2度目の引退をする」「この試合はオール・オア・ナッシングだ」

令和の虎 人生はAll or Nothing




 『UFC 298: Volkanovski vs. Topuria』でメラブ・ドヴァリシュヴィリと対戦するヘンリー・セフードが以下のコメント。

「この試合はオール・オア・ナッシングだ。チームのみんなと話し合った時に『ゴールドか、破滅かだ』と言った。全てを勝ち取るか、全く勝ち取れずに出て行くかだ。そこで辞める」

「俺はこのスポーツに真剣に取り組んでいるから、そのタイムラインとプレッシャーを自分に課している。みんなから『お前は以前も引退したじゃないか』って言わそうだが、あの時はやるべきことは全てやった気がしたし、これ以上何を証明すればいいんだ? と思った。今は、ちょっとした怒りがモチベーションになっている」

「(負けたら)100%引退する。大きなプレッシャーだよ。戦わなきゃいけないからな。こういう条件を自分に課さなきゃいけない。ただ戦うためだけに戦い続けるつもりはない。俺は闘争心が強すぎるんだ。世界一になりたい。ベルトが欲しいし、もうひとつのベルト(フェザー級)も本当に欲しい。そこが俺のいる場所だ。それが手に入らないなら、何もいらない。一度引退したのは、お金の問題だけではなかった。モチベーションの問題も合った。デイナ・ホワイトには、2つのベルトを防衛した後にファイトマネーを少しでもアップしてもらいたかったが、それが現実だ。彼のことは尊敬している」

「僕とメラブの試合は135ポンドで最高の試合だ。こっちが真のタイトルマッチだ。ショーン・オマリーは(ランキング)6位の相手を選び、コリー・サンドハーゲンに50-45で負けた男を選ぶだろう。そんなんでどうしてタイトルに挑戦できるんだ? ナンセンスだが、理由は分かる。この世界は演劇やエンターテインメント的な部分があるし、ショーンはそれを作り出すことができたチャンピオンになればそういう影響力を持つことができる。俺の中では、この試合の方が世界最強を決める試合だ」

「俺の目標は、言ったら多くのの誹謗中傷を受けそうだが、今でも145ポンドだ。俺はすでに135ポンドを征服し、防衛している。前回の試合はスプリットデシジョンで負けたけど、上の階級に行くという目標は揺らいでいない。メラブに勝って、ショーン・オマリー vs. マルロン・ヴェラの勝者に勝って、145ポンドのベルトは誰が持っていても欲しい。俺がコンバット・スポーツで積み重ねてきた栄誉と功績を考えれば、否定することはできないと思う」

「それを手にすることができないのであれば、俺はそれを望んでいなかったということだ。なぜ復帰戻したかというと、もう一度やれると思ったからだ。だが今は自分次第だ。戻って、全てを手に入れるか、全く欲しくなくなるかだ。世界で一番になるか、そうでないかだけだ」
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【WNO22】世界の頂=神童ミカ・ガルバォンに挑戦、岩本健汰─01─「じゃあ、どうするんだって(笑)」

【写真】B-Teamで練習中の岩本。世界に挑む、日本の格闘家(C)MMAPLANET

9日(金・現地時間)、カリフォルニア州コスタメサで開催されるWNO22「Rodriguez vs Hugo」に岩本健汰が出場し、ミカ・ガルバォンの持つWNOウェルター級王者に挑戦する。この一戦はある意味、タケルがスーパーレックと戦う、あるいは日本人がショーン・オマリーと戦うのに等しい──ただ単に世界と戦うということでなく、世界の頂点と戦う一戦となる。
Text by Manabu Takashima

神童ミカ・ガルバォンは2003年10月生まれの20歳。父マルキの指導の下、柔術とルタリーブリで黒帯を巻く。キッズ時代から輝かしい成績を残し、2019年のムンジアルではジュベニウで階級別と無差別を制覇し、アダルトへ。時代はコロナ禍を迎え柔術トーナメントが動きを止めるなか、ミカは配信大会で頭角をグングンと表し、一気に黒帯のトップ選手として認知されるようになった。

2022年のムンジアル制覇はドラッグテストで黒となり抹消され、その年のADCCでは77キロ級決勝でケイド・ルオトロにヒールフックで敗れるも、今や時代の寵児となったルオトロ兄弟よりも前評判は高かった。その後、BJJスターでイザッキ・バイエンセとフィリップ・アンドリューに敗れてはいるが、目下のところ24連勝中だ。

WNOは2021年の第9回大会から出場し、アンドリュー・タケット、オリヴィエ・タザに勝利すると、チャンピオンシップトーナメントでウィリアム・タケット、ジェイコブ・カウチを破り、決勝でタイ・ルオトロに敗れた。その後もダンテ・リオン、アラン・サンチェスに勝利し、昨年10月に王座決定トーナメントでジェイ・ロドリゲス、PJ・バーチを下し、ウェルター級のベルトを巻いた。

さらに12月にコディ・スチールをRNCで倒して王座初防衛に成功、今回は岩本と2度目の防衛戦を戦うことに。そのうえで1月の最終週にはヨーロピアンにミドル級出場したミカは、3試合連続で一本勝ちし決勝でアンディ・ムラサキと相対した。結果スイープを許し、パスのプレッシャーを受けるなか、左足でムラサキの左足を制し、右足で肩と頭をロックしつつ腕十字を極めるという神童の名にふさわしいフィニッシュで優勝を果たしている。

岩本にとって間違いなく過去最強の相手。ミカが持つベルトに挑む岩本──テキサス州オースチンのB-Teamで最後の仕上げを行うところでリモート取材を試みた。


──当初の予定ではニッキー・ライアンが挑戦するという話だったのですが、いつの間にか岩本選手が挑戦者になっていました。いつ頃、この試合が決まったのでしょうか。

「12月末ぐらいだったと思います。年末ですね、『どうか?』っていう連絡が来たのが。1度OKを出したのですが、それが無しになって。正月をゆっくりと過ごしていたら、またオファーがきてやることになったんです」

──それはニッキー・ライアンの出場がなくなったから、オファーがあったということですか。

「ハイ。最初の時はそうでした。ただ1度なくなった理由は分からないです(笑)。交渉の段階でなくなって、『やっぱりどうか?』という連絡があってからお金の話など、契約交渉の段階に入りました」

──とはいえADCCアジア&オセアニア予選で優勝した直後には、ADCC世界大会のトーナメント枠を良くするためにPJ・バーチなどと戦って結果を残すと言っていました。そしてミカへの挑戦、余りに言動が不一致です(笑)。

「アハハハハハ。最初はADCC世界大会でいきなりケイド・ルオトロやミカ・ガルバォンと当たらないためにもうちょい下の人を倒したいというプランでした。なので、まさかその本人が出てくるとは思わなかったです」

──ADCC世界大会に向けて、プランが変わる試合のオファーに躊躇はなかったですか。

「最初は『ミカか……』という感じはありました。2月の9日だと、準備期間も少ないですし。1月の15、16日に香港でセミナーがあり、その間はあまり練習ができない。ミカが相手なら、もうチョイ準備したいという気持ちがあったのですが、迷った末にやることにしました」

──目の前にミカというオファーがあれば、無視することはできない?

「う~ん、僕から求めていたわけじゃないですけど、舞い降りてきたチャンスを逃すことはできなかったです。頑張ってきたらチャンスは巡ってくる──そう思って、受けることにしたんです。僕的には勝ちたい。でもミカって一番強いから、他の選手と比べると勝つのは難しい。でも『良い試合をしたな』っていうことで終わってしまうのが、一番嫌なんです」

──ONE165でのケイド・ルオトロへの挑戦も断った。でもミカとは戦いたいというのは?

「それは契約の縛りの話があったからです。ONEは縛りがあって、縛りがなければやっていました」

──しかし、どうすればミカ・ガルバォンに勝てる見込みがあるのか。それは正直なところ思うところではあります。

「確かにWNOのルールはサブミッションの仕掛けを重視しています。以前、ミカとダンテが試合をしたときにダンテが何回もテイクダウンを奪ったのに、最終的にミカが一度腕十字の態勢に入ったことで勝てたんですよね。サブミッションが凄く重視されるので、ミカをWNOのルールで倒すというのは──勝ち筋を見つけるは難しいところがあります。

かといって何も見えない相手ではないです。僕が勝てる部分があるので、そこを利用して勝ち筋を見出すしかないです」

──勝てる部分というのは、どこになると考えていますか。

「立ち技とかだったら、行けるかなと」

──とはいえサブオンリーなので、ミカは立ちで敵わないとみると引き込んでくるのではないでしょうか。

「引き込んでくる可能性はありますね。印象を悪くしないために」

──テイクダウンされるより、引き込みの方が自分の形で組手を創れるような気もしますし。そうなると、引き込んでも攻撃になる。

「ハイ。そこはADCCとは違いますよね。ADCCルールの方が今の僕には合っていることは合っています。でも……う~ん、そうっすね。まぁ、う~ん。ミカをパスできないですもんね。ヘヘヘヘヘヘヘ」

──いや、笑いごとではないかと。

「じゃあ、どうするんだっていう話になるんですけど(笑)」

──ハイ……。

「だから、まあ……そのう……だから、まぁ……なるべく遠い距離で立っても良い感じでやるのか。それだとネガティブになっちゃいますよね」

──逆に岩本選手が引き込むということは?

「それはチョットきついです。プランにはないです。冗談ではあるかもしれないですけど。ミカはパスが強いですからね(笑)。ウィリアム・タケットを結構パスしていたので。ハハハハ」

──笑っている場合ですか!!

<この項、続く>


■視聴方法(予定)
2月10日(土・日本時間)
午前11時00分~Flo Grappling

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AB JAM MMA o ONE UFC UFC Fight Night   アーノルド・アレン イリー・プロハースカ カルヴィン・ケイター ショーン・オマリー

前バンタム級王者のアルジャメイン・スターリングがフェザー級転向、4.13『UFC 300』でカルヴィン・ケイターと対戦

AERA STYLE MAGAZINE (アエラスタイルマガジン) Vol.55【表紙:町田啓太】


4.13『UFC 300』でイリー・プロハースカ vs. アレクサンダー・ラキッチ、ボー・ニッカル vs. コディ・ブランデージ(2023年12月22日)

 こちらの続報。


 UFCが4月13日にネバダ州ラスベガスのT-モバイル・アリーナで開催する『UFC 300』でカルヴィン・ケイター vs. アルジャメイン・スターリングのフェザー級マッチを行うことを発表。

 ケイターは2022年10月の『UFC Fight Night 213: Kattar vs. Allen』でアーノルド・アレンに2R TKO負けして以来1年6ヶ月ぶりの試合で2連敗中。この試合で右膝を負傷し復帰が遅れていました。現在UFCフェザー級ランキング7位。

 スターリングは8月の『UFC 292: Sterling vs. O'Malley』でショーン・オマリーに2R TKO負けしバンタム級王座から陥落して以来の試合。現在UFCバンタム級ランキング1位。今回がフェザー級転向初戦。続きを読む・・・
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AB MMA o ONE UFC   ショーン・オマリー ペドロ・ムニョス マルロン・ヴェラ

3.9『UFC 299』でショーン・オマリー vs. マルロン・ヴェラのバンタム級タイトルマッチ/前回(3年7ヶ月前)はヴェラ勝利

リベンジ・マッチ [Blu-ray]


 デイナ・ホワイトが3月の『UFC 299』でショーン・オマリー vs. マルロン・ヴェラのバンタム級タイトルマッチを行うことを発表。日付も会場も未定ですが、日付は3月9日になると言われています。

 オマリーは8月の『UFC 292: Sterling vs. O'Malley』でアルジャメイン・スターリングの王座に挑戦し2R TKO勝ちし新チャンピオンになって以来の試合で1つの無効試合を挟んで5連勝中。今回が初防衛戦。

 ヴェラは同じく8月の『UFC 292: Sterling vs. O'Malley』でペドロ・ムニョスに判定勝ちして以来の試合。現在UFCバンタム級ランキング6位。

 両者は2020年8月の『UFC 252: Miocic vs. Cormier 3』で対戦して以来3年7ヶ月ぶりの再戦で、この時はヴェラが1R TKO勝ち。今のところオマリー唯一の黒星です。続きを読む・・・
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Gladiator MMA MMAPLANET MMAとフィジカル o Special UFC YouTube   ショーン・オマリー ボクシング ライカ 海外 鈴木陽一

【Special】新連載『MMAで世界を目指す』:鈴木陽一ALIVE代表「MMAに必要なフィジカルとは?」─02─

【写真】ALIVE所属のグラップラー竹本はGladiatorバンタム級王座を奪還。グラップラーにはグラップラーに必要なフィジカルがある(C)MMAPLANET

UFCをはじめ世界各国でMMAが普及、拡大していくなか重要視されるのがフィジカルだ。MMAPLANETでは毎月、総合格闘技ALIVEを運営する鈴木社長=鈴木陽一代表が各ジャンルの専門家とともに、MMAとフィジカルについて考えていく連載企画をスタート。第1回の後編では、MMAジムの課題と今後について語り合う。
Text by Shojiro Kameike

<MMAに必要なフィジカルとは? Part.01はコチラから>


――日本の格闘技界では、トレーナーは技術を教えるものであり、筋力は選手任せという時代もあったかと思います。あるいは独自にフィジカルトレーナーをつけると、ジムのトレーナーが嫌がることもありました。

鈴木 そういう時代もありましたね。MMAでいえば、大きくグラップラーかストライカーかに分かれます。同じ階級であっても、ファイトスタイルで身体特性が違います。

納土 そうですね。

鈴木 そこで選手とトレーナーが二人三脚でやっていく必要があります。選手任せにすることなく、「君はこの階級のなかで背が低くても力が強いほうだから、こういう身体づくりをしよう」とか。もちろん多くのジムで、トレーナーと選手の間でそういった話し合いは行われていると思います。でもその話し合いの内容が、フィジカルトレーナーや栄養士の人たちにも伝わっているのかどうか。ここでコーディネーターと各専門家による分業制のバランスが重要になってきます。選手自身にコーディネートまで任せると、自分の主観が入ってしまいますから。

最近の選手でいうと、UFC世界バンタム級王者のショーン・オマリーですよね。バンタム級で180センチというのは、本来は身体が細くなりすぎるかもしれない。でも彼は自分の身体特性を生かすために、バックステップからの右ストレートを身につけています。

納土 医療でも最初は同じ治療を行っていたとしても、その経過に合わせてオーダーメイドの治療に移っていきます。それと同じですよね。選手によって状況は違いますから。

鈴木 納土君は総合病院に勤務しながら高校の部活、愛知県アーチェリー協会のトレーナーも務めています。そうした現場では、全てオーダーメイドですよね。

納土 監督や選手によって、それぞれゴールが異なりますから。まずチーム単位では、監督が何をどう求めているかによって方法も変わってきます。競技レベルが高いチーム――高校ですとインターハイ優勝を目指している学校では、各スタッフが分業しつつ、個々の選手について報告してもらい、私のほうですることを決めます。一方で、それほど求めていないチームの場合は? 体育的な要素の一環で「スポーツを楽しんでくれたら良い」というところでは、全体を見ることのほうが多い。ゴールが違えば、それだけ違ってくるんですね。

MMA以外のスポーツでもコーチを務める鈴木社長。当然、スポーツごとに求められるフィジカルも違う

鈴木 これも大きなテーマの一つですが、身体的要素の中でも筋力と全身持久力、筋持久力とあります。マラソンの場合は全身持久力、心配機能が必要になりますよね。ひとくちに「スタミナ」といっても、スポーツによって違います。さらに同じMMAの中でも、5分5Rをアウトボクシングで戦う背の高い選手と、5分5Rだけれども2Rまでに試合を決めたいファイタータイプでは、必要なトレーニングも変わってきます。そのため、同じジムの選手でも完全に同じトレーニングをすれば良いかといえば、そういうことではない。海外のUFCファイターは、同じジム所属でもフィジカルトレーナーは別々で、スパーリングの時だけジムに揃うというケースもありますね。あれも理にかなっているわけです。

――ここ数年で日本のMMAジムの在り方も変化してきています。以前は日本の道場といえば、「師匠と弟子」という関係性が強かった。師匠の技術を弟子が受け継ぐという関係性は、素晴らしい文化の一つではあります。一方で「フィジカルの面で師匠と全く違う弟子が、師匠の技術を受け継ぐことができるのか?」という疑問はありました。

鈴木 確かに。そもそもジム運営として「格闘技を使ったフィットネスジム」、「格闘技のアマチュア選手を育てるジム」、そして「プロ育成に特化したジム」――それぞれ本来は違うものであるべきなのかな、と考えることもあります。最近では、国内外で活躍した選手たちが現役を引退して自分のジムを立ち上げています。そうした若い人たちは、どんどん調べて自分にとって良い方法を探っている。ただ、どんどんジムが立ち上がると、どうしても1ジムあたりの会員数は減ってきますよね。そこで海外のMMAジムのように、どうやって売上を立てて専門家を雇用していくのかという問題は、どうしても出て来ますね。

――フィジカルのお話でいうと、選手生活のスタート時点で、目指すファイトスタイルにフィジカルトレーニングの内容を合わせたほうが良いのか。それともフィジカルトレーニングの結果にスタイルを合わせていくべきなのか。短期的ではなく長期的に見た場合、どちらが望ましいのでしょうか。

鈴木 ウチは25年間でプロ選手を25人ほど輩出してきたなかで、柔術寄り、打撃寄りと様々なタイプの選手がいました。それは身体特性に合わせてファイトスタイルを考えていました。本人の身体特性と似たタイプの試合映像を見せて、「この選手のように戦うと勝率が上がる」と説明するんです。次に必ず言うのは「せっかく痛い想いをしながら練習して、試合をするのだから『なりたい選手』になろう」と。その2つの方向で考えてもらいます。

結局、「あなたが目指すゴールは何ですか?」ということなんですね。もしパウンドでフィニッシュしたいなら、そのゴールに向けたトレーニングをしなければいけない。でも、身体特性としてパウンドでフィニッシュすることに向いているかどうか――常にその2方向で、並行して考えていかないと難しいです。

――どれだけ選手にとって目指したいゴールがあっても、身体特性に合っていなければ練習でも試合でも怪我が多くなると思います。過去にはそうして怪我をしたり、負傷で現役を引退せざるをえなくなった選手も見てきました。

鈴木 何か怪我があった場合は、納土君に相談します。時にはすぐジムに来てもらったりしています。ジムの近くには提携している医療機関もあって、各検査に対しても専門家に相談できるような体制になっています。

納土 いま若い指導者のチーム、ジムは科学的な検査、検証をもとに選手のスタイルを考えていくところが多いですよね。

前回に続き、改めて掲載--学校で学ぶ「体力」の要素

鈴木 これから日本のMMAファイターの「体力」も、専門家に診てもらいながら、各専門コーチが指導していくこと。そのために必要なのは、最初にお見せしたように要素を細かく分類していくことが必要です。今までで「フィジカル」と言ったら、行動体力の機能にばかりがフォーカスされていたと思います。しかし今後は他の要素も含めた「体力」を考えていかないといけない。

納土 すでに北米にはデータがあるわけですからね。MMAにおける怪我の予防についても、米国とカナダには文献があります。昔からデータを取っている。一方で日本は言葉の定義もバラバラですし、こうした企画を通じて用語を定義し直すのも良いですし、怪我の予防なども浸透していけば嬉しいですよね。

鈴木 そういうことなんです。きっとここで私がお話していることにも、各ジャンルの専門家から見て「それは違うんじゃないか」と思うことがあるかもしれない。「鈴木さんはこう言うけど、自分は米国でこう教わってきた」とか――公の場で、そういうディスカッションをしていかないと、発展は難しいと思います。

この企画では1年間=12回、テーマにそって私がお話していきます。次は私がお話したことに対して意見のある人と、どんどん議論していきたい。その議論をMMAPLANETという公の場で行い、記事として残れば他のコーチや選手にとっても役立つものになると思います。次回は「MMAと体組成」、「体組成とフィジカル」についてご説明していきますので、よろしくお願いいたします。

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【Grachan65】J-MMA Rookies CUPフライ級決勝=鈴木崇矢「格闘技をして、生き物として強くなりたい」

【写真】J-MMA Rookies CUPは、鈴木のような立ち位置にいる選手にとっては本当に良い機会になったことだろう(C)MMAPLANET

15日(日)、東京都江東区のTFTホール100で開催されるGRACHAN65「15th Anniv」のJ-MMA Rookies CUPフライ級決勝戦で鈴木崇矢が金井一将と対戦する。
Text by Takumi Nakamura

格闘DREAMERS出身、POUNDSTORMでプロデビューし、J-MMA Rookies CUPを順調に勝ち進んできた鈴木。3月のトーナメント一回戦を終えて、MMAへの向き合い方が変わり、気持ちを新たにMMAに取り組んできたことという。UFCという明確な目標に向けて、MMAファイターとして進化を続ける鈴木に話を訊いた。


――GRACHAN65でJ-MMA Rookies CUPフライ級 決勝戦を控える鈴木崇矢選手です。試合が目前に迫っていますが、今の心境ですか(※取材は11日に行われた)。

「いつも通りの試合前だなって感じで、今はもう落ち着いています。いつも緊張よりも楽しみな気持ちの方が大きいので『やばい。試合だ…』ではなくて『よし! やってやるぞ!』って気持ちです」

――5月の準決勝ではしゅんすけ選手のシングルレッグを潰してバック→マウントをとってからのパウンドアウトでした。あの試合の良かった点、悪かった点はどこですか。

「今まで以上にMMAとしての練習をがっつりやったうえでの試合で、何が来ても大丈夫と思えるぐらいチームと一緒に作り込むことができた試合だったので、それがああいう結果になったと思います。良かった点・悪かった点というより、MMAの練習をして試合に臨めたという部分で、一つの道が開けた・見えた試合ではありました」

――それまではそこまでMMAらしい練習をしていなかったということですか。

「僕は殴って勝つことが好きなので、そのための練習ばかりになっていたんですよ。でも3月の一回戦(小田魁斗に判定勝ち)が終わったあとに自分の戦い方を見つめなおして、ちゃんとMMAとして勝つためには何が必要なのかを髙谷(裕之)さんと岡見(勇信)さんに指導してもらって、それがちょっとずつ形になる中で臨んだ試合でした」

――ずばり「試合になったらぶっ飛ばせばいい」くらいの感覚だったのですか。

「はい。とにかくタックル切って殴る、みたいな。でもMMAをやる人間としてMMAをちゃんと理解して学ばないといけないと思いました。練習そのものはむちゃくちゃキツくて、僕は落ち込みやすい性格なんです。自分がイメージしている動きと実際の自分の動きにギャップがあると、それが段々と積み重なって、本当に落ち込んでました(苦笑)。でもそこで踏ん張って練習を続けたからこそ見えてきたものがあります」

――具体的にはドリル練習などを増やしたのですか。

「それまではスパーリングばっかりやって、それで練習した気になっていたんです。5月の試合前は自分が嫌な態勢から始めるシチュエーションスパーやドリルを延々とやって、完全に心が削れていましたね(苦笑)。今思えばそんな簡単にできるものじゃないんですけど、この時期に細かいけど自分の土台になる練習をやってもらいました」

――鈴木選手は空手出身で、MMAに必要なレスリング・グラップリングの練習を一から学ぶことは苦手分野でしたか。

「テイクダウン狙いを切ることには自信があるんですけど、MMAで勝つためにはそれだけではいけなくて。MMAはやればやるほど味が出るというか、いぶし銀の競技だと思うんですよ。そういう技術や歴史を髙谷さんや岡見さんから教わると『先輩たち、やばい!』みたいに思って。MMAに対する深みっていうんですかね。やっぱり3月の試合で『ちゃんとMMAをやらないと強くならない』って身体が感じたんです。

感覚、瞬発力、反応、僕の場合は若さ。今はそれに任せてバババババッ!と動けちゃうんですけど、それには限界がある。例えば今のUFCチャンピオンはほとんど30代で、一番若いショーン・オマリーでも28歳なんですよ。これって絶対何か理由があるよなって思った時に、僕はMMAをやりこんだ時間と量だと思ったんです。だったらやるしかねえじゃん──みたいな。MMAはやることが多いというのは頭では分かっていたけど、自分の身体で気づけたことはこの半年くらいの大きな収穫だったと思います」

――そういった意味ではプロ3戦目でJ-MMA Rookies CUPのような各団体を交えたトーナメントに出場することが決まったことは大きなステップアップですね。

「僕がプロで出た試合はPOUND STORMとEXFIGHTなので、ある意味、身内の大会だったと思うんです。だからJ-MMA Rookies CUPで初めて外の大会や試合に触れたのでデビュー戦のような気持ちでした。しかも各団体の選手たちと交わる貴重な機会だったし、本当にありがたいです」

――しかも出場選手のキャリアがほぼ同じという部分も刺激になると思います。

「オファーをもらった時からモチベーションは高いですね。修斗の新人王とかパンクラスのネオブラッドトーナメントとかDEEPのフューチャーキングトーナメントとか、若くてキャリアが浅い選手のためのトーナメントって各団体にあると思うんですけど、そういう戦いを団体関係なくできるっていうのがすごくワクワクするんですよ。何て表現したらいいか分からないけど…ワクワクしました(笑)!」

――決勝で対戦する金井一将選手にはどんな印象を持っていますか。

「シンプルにガンガン前に出てくるグラップラーですよね。僕が勝つパターンと苦戦するパターンがはっきりイメージできる相手かなと思います」

――MMAファイターとしての成長を感じる中、どんな試合をして勝ちたいと思いますか。

「今の僕はめちゃくちゃ強いんで、一方的に相手を殴って、気づいたら相手が倒れているんだろうなって感じです」

――レスリング・グラップリングの技術が上がったことで打撃の面でプラスになったこともありますか。

「ルーツである空手とMMAの打撃を上手くミックスできているので、今まで以上にスピードも威力もタイミングも精度も上がっていると思います。今の自分が試合をしたらどうなるんだろう?という自分への楽しみもありますね」

――トーナメント優勝も含めて、今後に向けてどのような目標を持って戦っていきたいと思いますか。

「ちゃんと優勝することが大前提として、UFCに出るためにはどうしたらいいかを考えたときに、今だったらRoad to UFCがアジア人にとってUFCへの明確な道だと思うんですよ。チャンスがあればいつでも出ていきたいし、国内でベルトを獲ることもRoad to UFCへの近道になると思うので、ベルトも狙っていきたいです」

――今日初めて鈴木選手を取材しましたが、明確な目標を立てて、そこから逆算して自分がやるべきことを考えられる選手だと感じました。UFC王者の年齢を自分と照らし合わせて考える選手は少ないと思います。

「ありがとうございます(笑)。僕は格闘技をやっていて生き物として強くなりたいという気持ちがあって、その基準で一番強いのはUFCチャンピオンだと思うんですよ。だから(MMAを)始める前からUFCチャンピオンなろうと思っていたし、UFCチャンピオンになるという目標・意思は本当に固いです」

――それでは最後にファンのみなさんに向けてメッセージをお願いします。

「いつも応援ありがとうございます。しっかり勝って優勝してくるので楽しみにしていてください!」

■視聴方法(予定)
10月15日(日)
午後2時00分~ GRACHAN放送局

■ Grahan65対戦カード

<バンタム級/5分2R>
手塚基伸(日本)
TSUNE(日本)

<ライト級/5分2R>
ルクク・ダリ(コンゴ)
岸本篤史(日本)

<ライト級/5分2R>
小谷直之(日本)
林RICE陽太(日本)

<ウェルター級トーナメント1回戦/5分2R+Ex1R>
渡辺良知(日本)
青木忠秀(日本)

<ウェルター級トーナメント1回戦/5分2R+Ex1R>
桜井隆多(日本)
上田拳翔(日本)

<J-MMA Rookies CUPフライ級決勝戦/5分3R>
金井一将(日本)
鈴木崇矢(日本)

<J-MMA Rookies CUPフェザー級決勝戦/5分3R>
黒井海成(日本)
人見礼王(日本)

<バンタム級/5分2R>
伊藤空也(日本)
高須将大(日本)

<フェザー級/5分2R>
大搗汰晟(日本)
中村京一郎(日本)

<ウェルター級/5分2R>
能登崇(日本)
芳賀ビラル海(日本)

<バンタム級/5分2R>
今村豊(日本)
YO-HEI(日本)

<ストロー級/5分2R>
朝日向大貴(日本)
牧ケ谷篤(日本)

<フェザー級/5分2R>
松田征也(日本)
ディオゴ・ロボ・トクナガ(ブラジル)

<バンタム級/5分2R>
萩原一貴(日本)
佐々木歩夢(日本)

<フライ級/5分2R>
宮内拓海(日本)
天野哲宏(日本)

<引退エキシビジョンマッチ/5分1R>
阪本洋平(日本)
山本琢也(日本)

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【UAEW45】藤田大和&吉野光が、UFCファイトウィークのアブダビでRoad to UFCよりも厳しい相手と対戦

【写真】吉野と藤田が、とんでもない猛者とアブダビで戦う (C)UAEW

17日(火・現地時間)にUAEはアブダビのアルジャジーラ・クラブで開催されるUAE Warriors45に日本から藤田大和、吉野光の2選手が出場することが同プロモーションの公式SNSで明らかとなっている。
Text by Manabu Takashima

藤田は8月のフィルカドベク・ヤクボフをギロチンで倒して以来2カ月弱のUAEW再出場で、吉野は3月に──コンテンダーシリーズ第8週でUFCとサインを果たした──ヴィニシウス・ジ・オリヴェイラにTKO負けを喫して以来の再起戦となる。

当初の予定ではUFC294の前日=20日開催だった同大会だが、17日に前倒しとなり、会場も二転ほどした結果──同国のプロサッカー・チーム=アルジャジーラ・クラブの本拠地で実施されることとなった。

9日(月・同)に出されたプレスリリースで上位5カードが正式発表され、その文末には「その他のカードは今週中に決定する」と記されながら、実は同じ日に全対戦カードのCGが公とされており、そこにはしっかりと藤田と吉野の顔と名前が確認できる。

いかにも中東らしく、また「中東ではよくあることだ」と関係者が公言してしまうドタバタ感のあるイベントだが、Abu Dhabi Showdown Week2023と呼ばれるファイトウィーク大会らしく、16カ国からファイターが集まるなど注目すべき試合が多い。


そもそもUFCの前日開催ではセレモニアル計量と時間がバッティングし、ダナ・ホワイト&カビブ・ヌルマゴメドフのルッキンフォー・ファイトとして機能しないことから、スケジュールが前倒しになったとも伝わってくる今大会。かなりの可能性で両者が視察する展覧試合になり、出場選手にとっては千載一遇の機会ともいえる。

そんなUAEW45のメインはUAEWライト級王座決定戦=アムル・マゴメドフ✖ジェコンギル・ジュマエフの一戦だ。マゴメドフはヌルマゴ軍団の24歳の新鋭で、これまでの戦績は6勝0敗──3試合でRNCより一本勝ちがある。

対してウズベキスタンのジュマエフはキャリア10勝3敗のストライカーで、クラシカルなグラップラー✖ストライカー対決となる。とはいえジュマエフはUAEWでディラン・サルバドールにヴァンフルーチョークで敗れた1試合しか経験しておらず、マゴメドフ・アップの試合という見方は十分になされる。

(C)Zuffa/UFC

勝負論でいえばコメインのバンタム級戦=チムール・ヴァリエフとパウリアン・パイヴァの顔合わせがより興味深い。

WSOFで5勝1敗、PLFで3勝0敗、UFCでは2勝1敗のヴァリエフは、TUFシーズン31でブラッド・カトーナに敗れオクタゴン復帰がならなかった。が、ハオーニ・バルセロスに勝利しWSOF時代には今週末のUFC Fight Nightに出場するクリス・グティエレスと1勝1敗と、正真正銘オクタゴンで戦うだけの力を持った実力者だ。

(C)Zuffa/UFC

対するパイヴァはUFCで3勝4敗。

カイ・カラフランス、ホジェリオ・ボントリン、そしてショーン・オマリーらに敗れているが、カイラー・フィリップスから勝ち星を挙げており、ヴァリエフに劣らない力の持ち主といえる。

さらにはUAEWフェザー級及びUAEWアラビア・フェザー級チャンピオンのアリ・アルカイシが、世田谷育ちのUFCベテラン=マーク・ストリーグルに勝利しているイタリアのヴァルテル・コリアンドロとノンタイトル戦で戦う。UFC級、UFCを目指す選手が砂漠に集まる大会で藤田大和は11勝1敗1分のカザフスタン人ファイター=サンスハル・アディロフ、吉野光はヌルマゴ・チーム所属のダゲスタンファイターで7勝0敗のリネット・ハバロフと戦うこと決まった。

DEEP ✖Black Combatの対抗戦で日本を震撼させたユ・スヨンがバンタム級のベルトを巻くカザフのNAIZAとヌルマゴ所有のEagle FCという両プロモーションのフライ級とバンタム級で計6勝0敗のアディロフは、スイッチヒッターでジャブが伸びるボクシングと、テイクダウン防御に優れたレスリング力を持つ。

さらには倒されないように戦うなかで、アナコンダチョークやがぶってバック奪取という堅守&カウンターアタックも強い。バックを取ってからの安定度も抜群のアディロフと藤田の一戦はフライ級タイトルが掛かっていても一切おかしくない対戦といえる。

他方、吉野と戦うハバロフは所持していたGorilla Fightingバンタム級王座がEagle FCに移管され、現時点で4度防衛中の現役王者だ。ハバロフもまたスイッチヒッターだが、打撃は前蹴りを見せて組むためのオーバーハンドが定番で、最大の強味は左右どちらの手が前にあっても、問題がなく相手を倒し続けるテイクダウン能力の高さだ。

倒せばコントロールする力も抜群で、抑え込みも非常に強い。それ故にボディロックに来た際の吉野の担ぎ系の柔道技や内股、倒された時のブリッジでリバーサルという展開が見られるのか。

もちろん、その2つの局面が強いことはハバロフ陣営は百も承知だろう。それでの通じるのが本当の意味での必殺技。吉野にとっては日本で決めまくった技術が、ダゲスタンのトッププロスペクトに通じるのか、真価が問われる一戦となる。

同様に藤田にとっての今回の試合も彼が日本で見せることがなかった近距離での打撃の攻防が、中央アジアの猛者を相手に有効なのか──ここも注目すべきポイントだ。

いずれにせよ、藤田と吉野は国内のどのプロモーション、アジア系の大会、さらにRoad to UFCよりも手強い相手と両者は砂漠で戦うことになる──これが彼らのMMA道、痺れるチャレンジだ。

■視聴方法(予定)
10月17日(火・日本時間)
午後11時時~UFC FIGHT PASS

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【Gladiator023】伝統派空手からMMAへ、プロ初陣。南友之輔「振り抜いて良いのは──楽しいです(笑)」

【写真】2000年9月10日生まれ、23歳になったばかり(※取材時は22歳だった) (C)MMAPLANET

29日(土)、大阪府豊中市の176boxで開催されるGLADIATOR023の第1試合で、南友之輔が小松祐貴とプロ初陣を戦う。
Text by Manabu Takashima

中学~高校~大学とそれぞれのナショナルチームメンバーだった南は、パリ五輪に空手が正式種目でなくなったのを受け、MMAに転向を決めた。そして大阪を離れ、BRAVEジムでMMAファイター人生を歩み始めた。

実質MMA歴半年、類まれな打撃のセンスを生かし──UFCを目指すルーキー、グラジエイターをデビュー戦の舞台に選んだのか理由とは。1人のプロMMAファイター誕生直前に話を訊いた。


──南選手は伝統派空手出身で、大学を卒業してMMAに転向したと伺っています。

「ハイ、幼稚園の頃に空手を始めて大学の時までやっていました。3月に卒業して、こっちに来た形ですね」

──空手を始めたきっかけというのは?

「幼稚園の友達のお兄ちゃんがやっていて。その友達が始めたので、空手のことは何もわかっていなかったですけど『僕もやってみよう』という感じで始めました」

──流派は?

「剛柔流でした」

──剛柔流は組みがあり、下段蹴りもある流派です。

「あぁ、昔の流れで稽古では下段蹴りをやったり、金的を狙うこともありました。あと道着を掴んで投げることは中学生ぐらいまで、試合でも認められていました。道着を掴んで崩して、打撃ということもあったので大きい人が有利やとは思っていました。

ただ僕は剛柔流の空手を習っていたのですが、試合はずっと全空連、WKFのルールのトーナメントに出ていて。最後まで剛柔流の試合には出たことなかったです」

──部活動があるのが伝統派空手ですが、大学までは空手で進学をしたという形でしょうか。

「ハイ。中学から浪速中学に通っていました。浪速中学、浪速高校は空手では一番の中学と高校で。そこから大学は近畿大学に進学しました」

──南選手の空手での戦績というのは?

「日本代表には中学2年生の時になって、辞めるまでは中学、高校、大学と世代毎の日本代表ではいました」

──凄いではないですか!!

「でも、個人戦はほとんど日本一になっていなくて(苦笑)。中学の時、僕らは団体戦で全中四連覇をして、そのまま確か九連覇までしています。個人戦は中学の時にカデットの世界大会で3位になり、高校になってからは全国選抜で60キロ以下級で優勝しました。ジュニアの世界も3位、大学は3年と4年の時にスネをケガして個人戦はほとんど出ることができなかったです。コロナもあったんで。でも団体戦で日本一を目指して、4年の時に2位で終わったという形ですね」

──立派過ぎるほどの戦績ですし。そのまま空手を続けて行こうという気持ちはなかったのですか。

「東京五輪が終わり、パリ五輪から空手が種目から外れてしまったので、正直に言って目指すところがなくなりました。これ以上、空手を続けても……と思って。空手自体はめっっちゃ好きです。ただ、競技としてプレーする空手を楽しめなくなっていました」

──というのは?

「効くか、効いていないか。それが当てっているか、当たってないということになるのがMMAで。空手は審判次第、誤審も多いし。ポイントを取られても、『効いてないもんは、効いてないやろう』という風になってきたので、これはプレイヤーとして空手はできないと思うようになりました。同時にまだ仕事に就きたいという気持ちもなかったし、なら空手を生かせること。そして、より目立てることができんかなって思ってMMAをやろうと決めました」

──MMAには元々興味があったのですか。

「MMAだけでなくボクシング、キックもそうやし格闘技全般が好きで。それも空手に生かせるかなって思いながら見ていて、個人的には真似しながら練習もしていました。空手は空手だけっていう人が多いのですが、僕は何か生かしたいと思って格闘技を見ていました」

──生かせることはありましたか。

「助かったというわけではないですけど、大学3年の時にスネを折って。一番大きなインカレの団体戦のメンバーだったので、治ってはいないのに出ないといけない状況でした。でもステップも踏めなくて、ベタ足を踏んでいる状態で。あの時にカネロ・アルバレスの試合を視て、プレッシャーをかける戦いを取り入れました。あの時点ではそれが一番、生きましたね」

──では逆にMMAを戦ううえで、空手が生かせているのはどのような点ですか。

「やっぱりステップですね。僕のステップというか……空手って触られるとダメなルールなので。とにかく触られないための動きが、テイクダウンを狙われた際の動きに生きています。空手は駆け引きが多いので、その駆け引きが一番生きていますね」

J-MMA界の梁山泊と化しつつあるBRAVEジム

──なるほど。

では、なぜ大阪でなく関東にやってきてBRAVEジムでMMAファイター人生を送るようになったのですか。

「一番は大阪にいたら多分、実家に住んで。ちょっとアルバイトしながらMMAを習うっていう感じで、覚悟が決まらないというか。趣味っていうと言い過ぎですけど、ちょっと中途半端な形になっちゃうかなっていうのがあって。関東に出てきたら覚悟を持って、ゼロからできると思いました。どうせやるなら、レスラーの数が多くて、宮田(和幸)先生にもレスリングを教わることができるBRAVEジムがやると自分で決めて、空手繋がりで野村(駿介)先輩に連絡させてもらいました」

──レスリングが大切というのは、自分のMMAをある程度組み立ててBRAVEを選んだ形ですか。

「そうですね。レスリングができないと、何もできないと思っていました。UFC、RIZIN、DEEPとか何でも見ていて、コナー・マクレガーが最高に格好良かったです。でも、マクレガーもヌルマゴに負けました。それだけレスリングが大事なんやって思って」

──本当によくMMAを見ていたのですね。

「格闘技ですよね。K-1はバダ・ハリや魔裟斗選手の頃から視ていました」

──では、MMAファイターとしてゴールはどこを目指していますか。

「どうせやるなら、世界。空手でも世界を目指してやっていたので……でも世界一になれなかったです。だからMMAをやるなら、まずはUFCを目指します。目指すところから入って──ですね」

──その気持ちを持ってMMAを始めて、すんなり馴染めたのか。それとも戸惑いはありましたか。

「実は堀口恭司選手に対して、空手やったら絶対に自分の方が上やと思っていました。だから空手を生かしたMMAでもって。でも、今となっては空手を生かして、MMAに必要なことを融合させている凄さが分かりました。追いつくには何年も掛かりますね」

──とはいえ4月9日、アマMMA初戦でKO勝ちをしていますね。

「あの試合は練習を始めて1カ月ぐらいだったのですが、取りあえず出てみました」

──それで、あのKO勝ちですか。

「正直、あのタイミングで入って来てくれたら誰でも倒せる自信はあるんで。空手とはそこを振り抜くか、振り抜かないか。引くか、引かないかという違いだけなので。そこをアジャストできたなって」

──ノンコンタクトの技術、素晴らしくMMAに生かせると思います。ただし、試合に出てあの決めの声を挙げていると、それは競技内の技術になってしまうように感じていて。声勝負やんって思ってしまうのです。

「アハハハハハ。距離をとって、叫んでぇ。あそこから連打になるとかだったら、もっとMMAに生かすことができる技が空手の試合でも見ることができるようになるかとは思います。逆をいえば、空手の人もそれをMMAから学ぶことができると思うんですよね。MMAを戦ってみてシンプルに当てたら反則というなかで、振り抜いて良いのは──快感までいっていないけど楽しいです(笑)」

──そして、いよいよプロデビュー戦をグラジエイターで戦います。なぜ、グラジエイターでのデビュー戦なのでしょうか。

「大阪出身だったので、宮田先生が話をしてくれたようで。大阪で戦うことができるなら、応援してくれる人も多いですし、見に来てくださる人も多いと思うので『やります』って答えました。

それと今、グラジエイターには海外から選手が出場しているじゃないですか。Road to UFCに出たニャムジャルガル選手とかもグラジエイターが呼んでいて。海外に行きたいと思っている僕としては、チャンスが転がっている団体だと思っています」

──メインは同じバンタム級で、モンゴル人のテムーレン・アルギルマーがチャンピオンで防衛戦を行います。

「そうですね。実際、どこで戦うのか迷った時もありましたけど、外国人選手と戦えるチャンスがあるならグラジでタイトルマッチまで行って、海外へ行く。そういう風になりたいです」

──頼もしいです。そのためにも、どのようなMMAファイターになりたいと考えていますか。

「打撃主体で行くと思いますけど、組みもサブミッションもできる。それこそ堀口選手のようなファイターになりたいです。ただ組みの方はまだまだで。すぐに極められたりするんで。徹底して、組みはやらないといけないです。寝なかったら良い──というわけではなくて、絶対に寝かされる展開を創られてしまうので。そこはしっかりとやりたいです」

──そのための第一歩、小松祐貴選手との試合。どのような戦いをしたいと考えていますか。

「まだ組みを主体にはできないので。徹底的に打撃で。打撃で漬けるというか、ショーン・オマリーのようなきれいなカウンターを出したいと思います」

■視聴方法(予定)
9月30日(土)
午後12時30分~ THE 1 TV YouTubeチャンネル

■ Gladiator023対戦カード

<フライ級/5分2R>
宮川日向(日本)
坪内一将(日本)

<フライ級/5分2R>
陸虎(日本)
古賀珠楠(日本)

<ストロー級/5分2R>
澤田政輝(日本)
三輪勇気(日本)

<フェザー級/5分2R>
水野翔(日本)
野口蒼太(日本)

<ライト級/5分2R>
秋岡翔(日本)
磯嶋祥蔵(日本)

<Gladiatorバンタム級選手権試合/5分3R>
[王者]テムーレン・アルギルマー(モンゴル)
[挑戦者]竹本啓哉(日本)

<Gladiatorフェザー級王座決定T決勝/5分3R>
パン・ジェヒョク(韓国)
ダギースレン・チャグナードルジ(モンゴル)

<Progressフォークスタイルグラップリング・ウェルター級暫定王座決定T決勝/5分3R>
森戸新士(日本)
世羅智茂(日本)

<フェザー級/5分3R>
河名マスト(日本)
ユン・ダウォン(韓国)

<フェザー級/5分3R>
チハヤフル・ズッキーニョス(日本)
ハンセン玲雄(日本)

<ミドル級/5分3R>
藤井章太(日本)
イ・イサク(韓国)

<ライト級/5分3R>
八木敬志(日本)
エフェヴィガ雄志(日本)

<Progressフォークスタイルグラップリング60キロ契約/5分2R>
NavE(日本)
前田吉朗(日本)

<バンタム級/5分3R>
藤原克也(日本)
川北晏生(日本)

<フライ級/5分2R>
和田教良(日本)
梅川毒一郎(日本)

<フェザー級/5分2R>
桑本征希(日本)
高木亮(日本)

<ウェルター級/5分2R>
森井翼(日本)
阿部光太(日本)

<バンタム級/5分2R>
エダ塾長こうすけ(日本)
宮口龍鳳(日本)

<バンタム級/5分2R>
吉田開威(日本)
空(日本)

<バンタム級/5分2R>
南友之輔(日本)
小松祐貴(日本)

<アマ・フライ級/3分2R>
向井琉綺弥(日本)
伊藤琥大郎(日本)

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【Special】UFC ESPN52とRoad to UFCを見て。「UFCで勝つために、国内タイトルって必要なのか?」

【写真】相手の攻撃を見て、殴る。殴られても、次の一手がある。後者でイー・チャアが、キム・サンウォンを上回った。組みをこなして、打で攻める。この両者のように戦う日本人セミファイナリストはいなかった (C)MMAPLANET

26&27日の両日にシンガポールでUFC ESPN52、Road to UFC2023の準決勝大会が行われた。両大会を取材したシンガポール滞在6日間でMMAPLANETが試合レポートとして速報を掲載させてもらったイベントは、Road to UFCを形式に則り2大会と計算すると9イベントだった。
Text by Manabu Takashima

Dana White’s Contender Series、Professional Fight League、ONE Friday Fights(立ち技のみの掲載)、Road FC、UFC ESPN、WKG&M-1 Global、UAE Warriors、そしてRoad to UFC2023Ep05&Ep06。このなかでMMAに限ってカウントすると週末のアジアと中東で開催された6大会に13選手(マックス・ザ・ボディを含む)がJ-MMA界から挑み、結果は5勝8敗だった。

結論からいうと、このままでは日本は中国に引き離され続ける。そしてUFCでトップになること、世界最強を目指すという前提でMMAを戦うのであれば、国内のタイトルよりも、どのような戦いを経験するのか。その方が、より重要になってくる。そう強く思った次第だ。


MMAには色々な向き合い方がある。UFCでトップになることだけが全てでない。日頃の練習の成果をプロ興行のなかで披露し、生活のアクセントにすることもMMAに取り組む正当な理由になる。

ここではUFCで活躍する日本人選手を増やしたいという一点に集中して、我々がどうあるべきか──想ったことを書き記したい。UFCをMMA界の軸にするのであれば、頭に入れないといけない現実がある。それは──日本はアジア3位ということだ。中国にはジャン・ウェイリというUFC世界チャンピオンが存在している。男子に限れば、中国と韓国がアジアの二強で日本は両国に遅れを取っている。

UFCはいわば、ふるい落としの場だ。ビッグネーム以外、救いの論理は存在しない。正しくはビッグネームであるなら、それは救済処置でなく、互いの利益を生むWIN WINの関係となり、共存共栄のマッチメイクが実施される。

そうでないファイターは、今や世界中のプロモーションのチャンピオンがコンテンダーシリーズでふるいに掛けられる。「フィニッシュに行け」という公然の指針が存在するコンテンダーシリーズは、あたかも「身を守ることにプライオリティを置いているファイターは必要ない」といわんばかりのファイトが続く。

いみじくも日曜日のRoad to UFCライト級準決勝で原口伸が勝利者インタビューで口にした「勝つことに集中した。面白い試合は、UFCと契約してから」という考えは、コンテンダーシリーズには存在しない。打撃戦、スクランブル戦、その二つが融合し、火花が散るようなバチバチのファイトが必要とされる。

あんなファイトをしているとダメージは蓄積するし、防御能力も最高峰のオクタゴンで、安定して勝利を手にすることは難しいだろう。毎年20人、30人と契約者を生み出しているコンテンダーシリーズだが、7年目を迎えた今年まで、同シリーズからチャンピオンに辿り着いたのはタイトル戦線混迷のライトヘビー級でジャマール・ヒル、群雄割拠のバンタム級のショーン・オマリーの2人だけだ。

弱肉強食の食物連鎖の頂点を争う前に、その多くがカットの対象になる。にも拘わらず、コンテンダーシリーズでは防御力でなく、攻撃力が試される。つまりは豊富な人材が集まってくることで、ふるい落としの理論が成り立っているわけだ。

一方で日本は少子化が進み、競技人口の増加がさほど望めない。加えて国内プロモーションの数が多い。一時期韓国で見られたようなクロスプロモーションも存在しない。結果、ふるい落としの理論と真逆の救いの理論がJ-MMA界には存在している。

老舗3プロモーションもフィーダーショー化され、選手は王座奪取を機に海外かRIZINに戦場を移していく。チャンピオンに勝利して、次のチャンピオンが生まれるケースは少なくなり、暫定王座の昇格が圧倒的に増えてきた。

層が薄くなったタイトル戦線は、コンペティティブさという面において、質の低下はどのプロモーションも否めない。ベルトを巻くために、本当に激しい潰し合いが繰り広げられ、質と量の低下を防いでいるのはDEEPフライ級戦線以外にピンとこないのが現状だ。

底上げのタイトル戦線は、チャンピオンの質も下げている。ただし、興行というビジネスの上で競技が確立しているMMAにあって、この現実は受け入れるしかない。同時にRoad to UFCに行くための肩書を得るのも必要だが、勝ち抜かないとUFCで戦うというスタートラインにつけない。そのためにはベルトだけでなく、如何に国内で経験を積むのかが重要になってくるのではないだろうか。

鶴屋怜や原口伸、上久保周哉がテイクダウンを切られ、危ない打撃を被弾する可能性のある戦いを国内で経験していれば、Road to UFCでの戦い方も違っていた可能性もある。

神田コウヤは既に多くを経験してきたファイターだ。今回の敗北については、リー・カイウェンが暴力的な空気こそ醸し出していたが、前に出てこなかった。ある意味、最初のテイクダウンがズバリと決まり過ぎたことで、前に出る雰囲気だけで前に出て来なくさせた。ただし神田も前に出てこないリー・カイウェンに対し、足を使って誘う展開が多くなりすぎた。何かをされたわけでないが、判定負けは致し方ない。

自分から仕掛ける。テイクダウン防御が絶対のMMAだが、やはり組み技出身で打撃を身につけている選手と、打撃の経験が十分な選手では瞬時にして、危険なパンチとそうでないパンチの見分けがつくと点において違いがある。天性のストライカーは見て、反応することができる。MMAの完成度の高さはそれぞれだが、鈴木千裕、平本蓮、萩原京平らはその手のストライカーで、組みを消化することでそのセンスが生きてくる。

現状、日本では組みを消化して持ち味を発揮できる打撃系の選手より、組み技勝負のファイターの方が多い。ただし、UFCになると打撃戦を制さないで組み勝つケースは減少している。ほとんど不可能といえるほど、技術力は上がった。その一歩手前にあるRoad to UFCで勝ち残っている中国勢、韓国勢は打ち合える強さがある。Road to UFCとの契約に跳びつくのでなく、UFCとの契約を勝ち取るだけの力を何とか国内で養成できないものか。

そんななか昨年のRoad to UFCを制し、UFCデビューを先週末に果たした中村倫也は、国内でベルトは巻いていない。その代わりといっては何だが、キャリア3戦目で修斗ブラジル王者のアレアンドロ・カエタノと対戦している。あの3R、15分の戦いはRoad to UFCの3試合よりも、ファーニー・ガルシア戦に役立っているはずだ。

現状、日本のMMAビジネスではRIZIN以外のプロモーションが、はカエタノのような選手を投入することは難しい。それでも──DEEPが元UFCファイターのブラジル人を来日させようとしたように。パンクラスがキルギス人、南アフリカ人選手を呼び、グラジエイターがモンゴルやフィリピンを発掘しているように、日本人選手強化のための企業努力をするプロモーションも見られる。その姿勢は本当に有難い。

一番の理想はRIZINで活躍することが必要な選手ではなく、RIZINが必要とする選手が、UFCのみならずRoad to UFCで契約できた場合、リリースする一文を契約書に加えてもらえること。まぁ、あれだけ投資を行っているプロモーションに対し、余りにも都合が良い話だ。それは理解している。

では、それ以外のプロモーションに関して、チャンピオンがRoad to UFCで戦う前に国内で競り合いを求めた場合。プロモーションの垣根を越えたファイトを、実現させる協力関係を築くことも夢物語なのか。契約違反でなく、人間関係だけに非常に困難であっても、ひっくり返すことはできるだろう当然、チャンピオンの敗北はリスキーだ。ただし、RIZINでは見られる。デメリットだけでなく、そこにメリットがあるからだ。リスクと利益を各団体が共有する。それがJ-MMAの共生方法になり得ないものか。

例えば、だ。原口伸が雑賀ヤン坊達也と、鶴屋怜が福田龍彌と、上久保周哉が安藤達也とRoad to UFCに参戦する前に対戦していれば──。海外勢でなくとも、このような経験ができていれば韓国、中国勢と相対したときに「初めて」というケースが減っていたと考えるのは暴論だろうか。

あるいは韓国のRoad FC、Double GFC、Angel’s FC、復活が噂されるTOP FC、フィリピンのURCC、グアムのBrawl、モンゴルのMGL-1FCなどでチャンピオンを目指す。

少なくとも選手サイド、指導者サイドは今後、強くなるために現状と違う選手強化のチャンネルを持つことが欠かせない。そうでなければ凄まじい選手層を誇り、そこから選抜された面々が上海のPIで最高の体調管理がなされたうえで、上質のトレーニングを積む中国勢とタメを張るなんて、どだい無理な話になってくる。

救いの理論のJ-MMAにあって、UFCで結果を残すだけの実力を身につけるには、上手くやるのではなく──自らをふるいに掛けて、生き残るしかない。その意気込みこそ、「加油(ヂャーヨ~)」や「テ~ハミング」という掛け声に負けない、『ニッポン!!』、『 ニッポン!!』という大合唱を起こす熱を生み、比較にならない物量を誇る大国を打ち破る──超ハイテク高性能竹槍を創る第一歩となる。

加えて我々メディアも、団体間のレベルの優劣や順序という問題は避けてきた現実に向かい合う必要があるだろ。ケージの中を見て、どのタイトルも横一戦というのはおかしい。もちろん階級によって違いはあるが、各プロモーションの階級別毎だろうが、技術力を基準とした優劣は誌面や記事数に影響させることが、MMAを強くするための我々専門メディアの役割でないのか。同様にメディアに経済力がないが故の、東京偏向という問題に目を瞑ってはならない。金原正徳が減量問題において「選手だけでなく、団体もリスクを」という話をしてくれたが、格闘技界の出来事を伝えるという点において、メディアも同じことがいええるはずだ。我々も格闘技界の一員として、リスクを背負うべきだ。もしくは偏向取材とならないだけの努力と工夫をしなければならない。

なんてことをシンガポール最終日、日本に帰国してから考えていました。




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