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Bu et Sports de combat サンチン ブログ 剛毅會 岩﨑達也 武術空手

【Bu et Sports de combat】武術で勝つ。型の分解、サンチン編─03─「引くという動きが一番難しい動作」

【写真】この拳を引いた構えのなかに、サンチンを知る要素が非常に多く含まれている (C)MMAPLANET

武術でMMAを勝つ。空手でMMAに勝利する──型を重視する剛毅會の武術空手だが、岩﨑達也宗師は「型と使って戦うということではない」と断言する。型稽古とは自身の状態を知り、相手との関係を知るために欠かせない。

サンチン、ナイファンチ、セイサン、パッサイ、クーサンクーの型稽古を行う剛毅會では、まずサンチンから指導する。そんな剛毅會の稽古には站椿が採り入れられている。5種類の型稽古にあって、唯一サンチンのみが意味を吸いて吐くという意味での呼吸を学ぶことができる。

全ての根幹となる武術の呼吸を学ぶことができる──サンチンの解析、第3回──両腕受けから、最も難しいといえる拳を引く動きを追求したい。

<サンチン解析第2回はコチラから>


✖両腕受けで、ワキの下に拳ひとつ入るぐらいのスペースがないと、手の位置が低くなり、相手の攻撃が入りやすくなる

✖拳が前に出過ぎると、さらに入りやすくなる。顔面だけでなく、禁的攻撃を受ける

(01) 正しい構えだと、非常に遠く感じ攻撃は届かなくなる。禁的蹴りも入りづらくなり、何より安心して構えることができる

(02) 両腕受けから左で突く。突くためには拳を引く動作が必要だが、この引くという動きがサンチンで一番難しい動作になる

(03) 拳を引くヒジをしぼって、力をいれないように引く。力をいれないでも、締まるようになる

(04) 引いた拳の位置は、肋骨の一番下に鉄槌が軽く食い込むように持ってくる

この引いた時に、ヒジがやや内側を向いている。これによって、筋肉が背骨側に締まり、縦と横に筋肉を締めることになる。この筋肉の収縮をヒジを出すことで開放する。骨を動かしていると、筋肉がついてくる動きによって、ガマクがかかった突きとなる

【重要】肩を下げて、ヒジを締める。サンチンでは、どの状態でも重要な点

✖ヒジを引いた時の注意点は肩が上がらない、ワキをあけない、締まらないからといって無理やり締めるようにしない。ヒジが内側を向いていなく真後ろに引かない──という4点だ

✖ヒジを内側に入れようとして、腰を捻ると筋肉の横への収縮が弱くなり力は入らない。腰の横回転で打つと、もともとパンチ力の強い人間のパンチは強く、そうでない人間のパンチは弱い。誰もが強く打てる原理・原則の下、威力のある突きが打てる武術空手の突きとは違う

<この項、続く>

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Bu et Sports de combat Interview アブドゥルラクマン・ドゥダエフ ダニエル・オリヴェイラ ブログ 岩﨑達也

【Bu et Sports de combat】武術的な観点で見るMMA。オリヴェイラ✖ドゥダエフ「横蹴りバランス」

【写真】肉弾相打つといった消耗戦を制したオリヴェイラ、彼の勝利はドゥダエフの正面と横蹴り、2つのバランスの違いにあった(C)ACA

MMAと武術は同列ではない。ただし、武術の4大要素である『観えている』状態、『先を取れている』状態、『間を制している』状態、『入れた状態』はMMAで往々にして見られる。

武術の原理原則、再現性がそれを可能にするが、武術の修練を積む選手が試合に出て武術を意識して勝てるものではないというのが、武術空手・剛毅會の岩﨑達也宗師の考えだ。距離とタイミングを一対とする武術。対してMMAは距離とタイミングを別モノとして捉えるスポーツだ。ここでは質量といった武術の観点でMMAマッチを岩﨑氏とともに見てみたい。

武術的観点に立って見た──ACA112におけるダニエル・オリヴェイラ✖アブドゥルラクマン・ドゥダエフとは?!


──今回は日本や北米なく、ロシアからブラジル人とロシア人ファイターの対戦です。

「まず、この試合は最近のUFCの5分✖5R戦で見られる燃費合戦とは違い面白かったですね。ドゥダエフって、チェチェン人ですよね。チェチェン……カフカスという地域は、僕らにはまだ幻想を抱かせる響きを持っています。ドゥダエフなんて、ソ連崩壊時の極真のチェチェン支部長の名前ですからね(笑)」

──アハハハハ。

「まぁ、こういう選手は強いですよ。ただしドゥダエフはパンチが打ちたくてしょうがない構えなのに、良いのは蹴りという一風変わった選手でした。横蹴りバランスと私は呼んでいるのですが、サイドキックを出せるような構えで。最初はガードが高くて、小さな構えだったのでフック系の選手かと思いましたが……。

そういうフック系の選手かと思っている間は、オリヴェイラの間でした。あまり良いパンチを打っていないから。オリヴェイラは圧力とか余り感じていなかったと思います。それが、いきなり後ろ蹴りをスコンと入れて。その途端に間がドゥダエフになりました。そうすると、オリヴェイラが急にガクンとなって。

その時に気付いたのですが、ボクシングの構えだとあんな風にスムーズに蹴りを出すことはできないんです。前蹴りにしても、回し蹴りにしても。特に彼が器用に使っていた後ろ蹴りなんかは。後ろ回し蹴りも使うし、直線的な後ろ蹴りをよく使っていました。これは横蹴りバランスだと。横蹴りバランスは、骨盤の動きがスムーズになって上手く蹴ることができるんです。フルコンタクト空手とか散打が盛んだからなのか、ロシアにはこういう選手は多いですね」

──確かに北米系の選手では、そういう傾倒の選手は極端なサイドキックを使う選手ぐらいで、あまり見ないです。

「それは逆に横蹴りバランスだと、MMAでも見られる勢いのあるフックとか打てないからでしょうね。横蹴りバランスは……ジョン・ジョーンズぐらいですかね、米国では。TJ・ディラショーなんかは正面バランスでパンチから蹴り、蹴りからパンチをしています。そういう上下の攻撃をどちらも見せることができる選手は、米国ではまだとても少ないです。どうしてもMMAは蹴りが得意、パンチが得意という風に分かれる傾向にありますから」

──そしてドゥダエフは蹴りの選手だったと。

「そうですね。ドゥダエフはパンチから蹴り、蹴りからパンチという風に連係されておらず、完全に蹴りとパンチがバラバラです。そして後ろ蹴りや回転系の蹴りを出すときは横蹴りバランスになっています。

横蹴りバランスは先を取るのに適しています。よって横蹴りバランスの時は自分の間だったのに、彼はパンチを打ちたがっていた。パンチの時は正面バランスになり、そのまま左のハイキックを出した時に、右ストレートを合わされてダウンを喫しました。横蹴りバランスで回転系の蹴りを出している時はドゥダエフの質量が高いですが、正面を向くとオリヴェイラになっていました。結果、ここぞという時にドゥダエフが正面バランスになるので、逆にオリヴェイラが要所を抑えるような試合という風になっていきましたね」

──オリヴェイラの攻撃は、遠くからオーバーハンドを放り込むようなことが多くなかったでしょうか。

「後ろ蹴りを被弾してから、間合が遠くなりました。それからもオリヴェイラのスピニングバックブローの直後に、ドゥダエフが後ろ回し蹴りを狙うなどフルコンタクト空手のような間合で戦う場面もありましたが、徐々にドゥダエフが下がるようになっていったんです。

ダウンもあってバックを取られ、RNCを狙われた。スクランブルの攻防が入ると、オリヴェイラの方が上でした。それもシングルレッグで倒されたときは、ドゥダエフは正面バランスなっていて、オリヴェイラの間だったんです。ドゥダエフは横蹴りバランスから二段蹴りを使うなど入りは良かったのですが、すぐに正面バランスを取ってしまう。そこで勝つなら組みだっていう勢いで、オリヴェイラが飛び込んでいました」

──それでいて、オリヴェイラの腹へのヒザ蹴りで勝負は決しました。

「最後のヒザは完全に顔面だと思ったところで、腹に入りましたね。ただし、チェチェン人なら腹で倒れちゃダメですよ(笑)。お前、そこは耐えろよと。まぁ、あの構えは腹が弱いです。少し前傾、お腹を引いてガードを固める。猫背になっていて、距離は遠く感じるのですが、あの構えは間が完全に蹴りになってしまいます。

それとドゥダエフは正面になった時の技がなかったように見えました。正面になるとテイクダウン、右ストレート、そして最後のヒザ蹴りと、攻撃を受けていました。横蹴りバランスの時と比較して先が取れなくなっている。正面バランスでは武器がなかったからだと思います。

しかしACAは面白いですね。と同時に米国で練習しているロシア人と比べて、ロシアがベースのロシア人選手は強いからこそ、試合の組み立てがない。もう自分の強さを100パーセント信頼している。こういうところでブラジルや米国人選手に遅れを取っているかと感じました──MMAとしては。ただ、元々の強さはロシア人です」

──ACAはUFCに次ぐレベルにあるといっても過言でないです。軽量級のチャンピオン達がUFCに進出し、ピョートル・ヤン、ザビット・マゴメドシャリポフ、アスカル・アスカロフと完全にトップですし。

「日本人選手には、ACAは出るなって言いたいですね(苦笑)。青木選手も以前、ロシアは掘るなと言っていましたけど、本当にそういうプロモーションです。危ない。でも、ここに挑もうとした日本人選手は覚悟決まっていますね。

それと横蹴りバランスなんですが、MMAで相当に使えるはずです。やれることが、かなりあるんです。私たちは70年代、80年代の極真空手だったから正面バランスだったけど、フランシスコ・フィリョやブラジル人は横蹴りバランスでした。

そしてK-1にいってからも、横蹴りバランスからの突きでアンディ・フグをKOしたのですが、キックボクシングを習うようになって正面バランスになると、フィリョのパンチの威力は落ちしてしまって。本当に面白いモノです。股関節の固い人っていうのは蹴りがなかなか難しいのですが、骨盤の使い方で足は上がります。だから回し蹴りだと難しくても、横蹴りバランスにすると色々なことができるようになるんです。で、横蹴りバランスというのはナイファンチなんです」

──そこは非常に興味深いです。是非また、教えてください。

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Interview ONE ONE Reign of Dynasties II ONE112 ブログ 岩﨑達也 澤田龍人

【ONE112 II】半年間、グラップリング無し──澤田龍人に旧師からエール「顔を八つ裂きにされようが」

【写真】レスラー、そしてMMAファイターの澤田。会話の端々で聞かれる言葉は『押忍』だ(C)MMAPLANET

16日(金・現地時間)に配信されるONE112「Reign of Dynasties II」でミャオ・リータオと対戦する澤田龍人。

その澤田がコロナ禍の影響で3月の終わりから組み技の対人練習をしないで、今回の試合に臨むことをインタビューで明かした。

このような前代未聞の状態で戦う澤田に、かつての師である剛毅會の岩﨑達也氏からエールを送ってもらった。そこには連綿を受け継がれる──「千日を以って初心とし、万日を以って極とす」の精神が宿る言葉が澤田に届くか。


──かつての教え子、澤田龍人選手が半年間グラップリングの対人練習ができなくて、試合に挑むことになりました。こういう状況で元師匠として、澤田選手にどのようなアドバイスを送ることができますか。

「まぁ、MMA選手が組み技の練習ができなくて試合をするってなると、本来は私なら出場させません。でも、龍人はもうEvolve MMAの所属選手で給料をもらって練習し、試合をしている。そういう環境を彼は手に入れたんです。だから、言われればやるしかない。

そして、そのやるしかないという状況が彼にとってチャンスだと思います。龍人に欠けていたのは『絶対に負けない』っていう意識でした。気持ちじゃないです。意識です。ずっとMMAをやってきたんだから、組み技で勝負するんだ。半年間やってなくても、組んだら絶対に離さないんだ。そういう気持ちではなく、Evolve MMAの一員として意識としてそういう風になれるのか。なるしかないんだから、もうそういう意識で戦うだけです。

相手の中国人選手より、テイクダウンは強いだろう。なら5分3R、ずっとテイクダウンして抑える。立たれても倒して抑える。テイクダウンの評価が低いといっても、倒して抑えて、殴らせない。とにかくガムシャラに組みついて。もちろん、その前に打撃を見せる必要がありますけど、ガキの頃からやっているレスリングで死んでも負けねぇって、そうやって戦えば良いんです。顔を八つ裂きにされようが、組みつく。それでも組みに行って負ければしょうがないです。それが勝負です。

でも、それもせずに平気に負けるなよって。食らいつく。修斗でできなかったことを、今、この試合でやる。Evolveの一員として、AACC時代になかったところを見せる。お前、そのためにシンガポールに行ったんだろ。やるしかないという意識でやるしかない」

──分かりました。記事を通して、澤田選手に元師匠からのエールを送らせていただきます。

「死んでも負けるな。それだけです。能力はあるんです。この状況が龍人を強くさせることを願っています。小賢しいクソの役にも立たない技術でなく、やるしかないという意識で戦ってくれということです」

■視聴方法(予定)
10月16日(金・日本時間)
午後9時30分~ ABEMA格闘チャンネル
午後9時30分~ONE App
毎週木曜、26時05分~テレビ東京「格闘王誕生! ONE Championship」

■ONE Reign of Dynasties II対戦カード

<キックボクシング・バンタム級/3分3R>
秋元皓貴(日本)
ジャン・チェンロン(中国)

<ムエタイ・フェザー級/3分3R>
サゲッダーオ・ペットパヤータイ(タイ)
ジャン・チュンユ(中国)

<フェザー級(※70.3キロ)/5分3R>
ケアヌ・スッバ(マレーシア)
タン・カイ(中国)

<ムエタイ・フライ級/3分3R>
アズワン・チェウィル(マレーシア)
ワン・ウェンフェン(中国)

<ストロー級(※61.2キロ)/5分3R>
澤田龍人(日本)
ミャオ・リータオ(中国)

<ムエタイ・バンタム級/3分3R>
モハメド・ビン・マムード(マレーシア)
ハン・ズーハオ(中国)

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Bu et Sports de combat Interview ズベア・トホゴフ ハキーム・ダラドゥ ブログ 岩﨑達也

【Bu et Sports de combat】武術的な観点で見るMMA。ダラドゥ✖トホゴフ「何をもって有効打と?」

【写真】読者の皆さんにとって、質量という捉え方がまだ困難であっても迫力という言葉に置き換えても両者のパンチの違いは見て取れるはずだ、(C)Zuffa/UFC

MMAと武術は同列ではない。ただし、武術の4大要素である『観えている』状態、『先を取れている』状態、『間を制している』状態、『入れた状態』はMMAで往々にして見られる。

武術の原理原則、再現性がそれを可能にするが、武術の修練を積む選手が試合に出て武術を意識して勝てるものではないというのが、武術空手・剛毅會の岩﨑達也宗師の考えだ。距離とタイミングを一対とする武術。対してMMAは距離とタイミングを別モノとして捉えるスポーツだ。ここでは質量といった武術の観点でMMAマッチを岩﨑氏とともに見てみたい。

武術的観点に立って見た──UFC253におけるハキーム・ダラドゥ✖ズベア・トホゴフとは?!


──ハキーム・ダラドゥ✖ズベア・トホゴフ、非常に興味深い攻防が見られ私はトホゴフの29-28で判定勝ちかと思いました。しかし結果はダラドゥが30-27、29-28、28-29でスプリット判定負けとなりました。武術的にみて質量、間がどうであったのか。岩﨑さんの見立てをお伺いしたいと思います。

「判定に関しては、私もロシア人の勝ちだと思いましたよ。そうとしか思えなかったです。初回と2Rと取った上での3Rの安全策。私は質量が高い選手が好みなので、そういう選手が有利に見えてしまうというのはあるかと思います。対して、MMAというのは質量の高い選手がポイントで負けることがあります。それもMMAだと分かります。そうなるとトホゴフは創りがまずかったのか……と。でも、今回ばかりは初回と2Rでそういう見方は成り立たないのかと思うんです。

確かにトホゴフは体重オーバーです。だからといって、ポイントがマイナスされるということはUFCではないですよね。イエロースタートのようなことは。そうなればどうすれば初回、2Rと落とすことがあるのか。2Rはテイクダウンをして、バックにも回っていた。つまりはポイントメイクもしているのに」

──その通りだと、自分も思いました。例え2Rを落として28-29で負けたのも、そういうこともあるのか……と捉えることもできます。しかし、30-27でダラドゥというのは、意味不明かと。

「おかしいですよね。ダラドゥのカーフキックが良かったとか、ジャブが良かった……トホゴフはバテたという意見もあるようですが、ダラドゥのジャブにしてもトホゴフが打ってくるところに合わせていたり、前に出てくるのを止めているなら有効ですよ。でも、相手のパンチに弱腰になり、それこそ腰が引けたような構えでチョコチョコ出しても、トホゴフも痛くないし、怖くないからそのままにしておきますよ。

有効打ということを考えると、では何をもって有効打とするのですか。それを審判が見ても、分からないからアマチュアボクシングは当たったら全部取るという風になりました。その判断なら分かりますよ、今回の採点も。

でもUFCはダメージ重視で、インパクト、試合のコントロールですよね。ならばダラドゥの勝ちはない。確かにトホゴフが安全策を取ったのは失敗だったでしょう。でも、3Rだってテイクダウンを切られているけど、テイクダウンを仕掛けている。それぐらいのスタミナは残っていますよ。そうやって勝てると踏んでいたんだろうし」

──同じことになってしまいますが、スタミナが切れて足を使ったとしましょう。それでもダラドゥが取ったのは3Rだけかと。

「ダラドゥも声を挙げて、距離を詰める動きはしなかったです。テイクダウンは切ったけど、あんな風にエキサイトしたのは自分が勝っていると思っていなかったからでしょう。どうしようもなくなって、『お前、出てこいっ!!』って怒鳴って。そうじゃないと逆転の芽がないから。ダラドゥはどこが良かったのか。そういう風に見てみると、どの攻撃を挙げることができますか」

──左ボディは良かったかと。

「そうですね。あのタイミングで、あの間合でよく打てていました。でも、あの攻撃だけですね。この試合からダラドゥの見るべきところは。才能は素晴らしいです。終盤のテイクダウンの切り方も、2Rにジャンプしてスイッチしてから左の前蹴りも。ああいう攻撃をされると厄介ですよ。何をしてくるのか、分からない怖さがあります。ただし、何をするわけでもなかった。

ダラドゥは質量の低い選手ではないです。でも、自分の力を生かしきれていない。相手を見て、対策に専念するかのように戦っていました。そういう練習をしてきたのであれば、彼の強さが試合で出てくる練習になっていないと感じましたね」

──つまりは質量という部分でもトホゴフでしたか。

「ハイ。本来は体のバネなどを考えても、ダラドゥの質量が上回っていてもおかしくないです。それだけの素材です。それでもトホゴフの質量が上だったのは、彼は呼吸で打っているからです。筋肉の引っ張りで打っていない。ただし、単発になっていました。呼吸で打ってはいるのですが、そこで一度止まってしまっていました。

対してダラドゥは腰を落として、蹴りから入ろうとします。トホゴフのパンチを良く見て。ただし、その動きで彼の質量は下がっていました。自分の長所を殺し、対策で戦っていたんです。ダラドゥが多少殴られようが、自分の庭に持ち込んでぶっ殺すぐらいの勢いだったら、彼の質量は下がることはないはずです。自分の攻撃で優位に持っていくという作戦だと、そうなっていたかと。ダラドゥが持っている人間としてのパワーは凄いモノだと思います」

──最初のパンチの被弾で、ビビったということはないですか。

「いや、それはビビっていますよ。だから、あのパンチへの対応策でしかない。つまり受け身の戦いだったんです。2Rのトホゴフがノーモーションで打ち下ろした右ストレート、ゾッとしましたよ」

──カーフやローという攻撃も、パンチの距離にしたくないのかと。

「う~ん、でもカーフでもなかったですしね。トホゴフは随分と避けているし、効いていなかった。及び腰でチョンチョンと蹴りやジャブを出してはいましたが」

──先日、人間は手足があるから、手と手足の戦いになると手足が絶対的に有利ということでしたが、この試合では蹴りのあるダラドゥの方が質量が下だったわけでしょうか。

「それはあの時も言ったように、蹴りを使う必要はなくても知っていると問題ないということです。トホゴフのパンチはボクシングではないです。蹴っていないけど、足も生きている。そういうパンチなんです。接近戦で体当たりみたいな攻防になっても、押し返していた。あれはボクシングだけの選手は、MMAでは見せることができない動きなんです。蹴っていないけど、足は生きていました。そうなると使っていたのはパンチだけでも、トホゴフの方が質量は上になります。

5ポンド・オーバーで、ああやって動ける。最後まで体重を落としてないだろうってことで、トホゴフの人間性は疑いますけどね(苦笑)。でも、どっちも強いです。そして可能性としてはダラドゥです。あんな二段蹴りができるなら、普通に蹴れば素晴らしく威力のある蹴りが出せるはずです」

──愛弟子の松嶋こよみ選手は、彼らとやり合えますか。

「本人のやる気次第です。『やってやるよ、この野郎』となればやれます。『噛みついてでも勝つ』と思えばいけます。そういう想いがあれば、こよみの技量だといけます」

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Bu et Sports de combat Interview ゼリム・イマダエフ ブログ ミシェウ・ペレイラ 岩﨑達也

【Bu et Sports de combat】武術的な観点で見るMMA。ペレイラ✖イマダエフ「理屈でなく乗り」

【写真】パンチが当たるのも、余計な動きをしているから?!(C)Zuffa/UFC

MMAと武術は同列ではない。ただし、武術の4大要素である『観えている』状態、『先を取れている』状態、『間を制している』状態、『入れた状態』はMMAで往々にして見られる。

武術の原理原則、再現性がそれを可能にするが、武術の修練を積む選手が試合に出て武術を意識して勝てるものではないというのが、武術空手・剛毅會の岩﨑達也宗師の考えだ。距離とタイミングを一対とする武術。対してMMAは距離とタイミングを別モノとして捉えるスポーツだ。ここでは質量といった武術の観点でMMAマッチを岩﨑氏とともに見てみたい。

武術的観点に立って見た──UFN176におけるミシェウ・ペレイラ✖ゼリム・イマダエフとは?!


──無駄に動いたり、ドタバタすると質量は落ちるということですが、ミシェウ・ペレイラほど無駄な動きをする選手はいません。その辺りで、彼の質量というのはどういうものなのかと。

「確かに無駄な動きは多いです(笑)。それはね、多いに結構なことです」

──そうなのですか? バック宙をしたり、ダブルレッグで肩を抱えてケージを蹴ってスラム、コークスクリューをしてパスを狙ってバテてしまうこともあります。

「アハハハ。今回の試合も胴回し回転蹴りをして、背中から落ちていましたね。全く、する必要がない動きを。基本、最初の質量はイマダエフの方が上でした。パンチで入る人の特徴として、イチ・ニ、イニ・チのリズムで戦っていて。でも、結果的にイマダエフはボクシングだけでした。

ボクシングからムエタイ、キックで成功することって余り例がないのですが、ムエタイからボクシングでは成功例があるじゃないですか。人間は手足を使うようにできているのだからだと思います。試合で蹴りを使う必要はないですが、蹴りを使えないと蹴りを持っている相手を殴ることはできないです。

マクレガーも関節蹴りや、ミドルを使い、そこからパンチで倒すようにしています。質量もそうですが、両手しか使えない人が両手・両足を使える人と戦うと、間違いない距離は両手・両足が使える人の距離になります。その典型的な試合でした。イマダエフもボクシングしかできなくて、UFCまで来るなんてことはないと思います。でもテイクダウンにも行かないし、ボクシングだけで戦っていました。それではUFCでは勝てないです、厳しかったですね」

──質量でいうと最初はイマダエフだったのが、どの辺りでペレイラの方が強くなっていったのでしょうか。

「開始直後2分ぐらいは大人しかったです。1Rの後半に蹴りの間合いから右が入ったり、後ろ蹴りを入れるようになりました。キックボクシングではないフルコン系の蹴りを生かしていましたね。MMAのように組みが入ってくると、キックボクシングやムエタイのように蹴って・蹴り返すというリズムの攻防には余りならないですよね。対して、ペレイラはカポエイラの蹴りを使っていましたしね」

──ただし、無くても良い動きもします。

「アハハハハ。それは本人に聞いてくださいよ。ただし、私の経験でいえば『こういう蹴りを身につけたから、試合で使うぞ』なんていう気持ちでいると、上手くいかなかったことが多かったです。だからペレイラのようなノリでやっている時の方が決めるような。

その実、色々とペレイラがバタバタやっているのも余裕があるからできているわけですし。余裕がなければ、ああいうことはできないです。無駄な動きはしていますが、2Rでも差し際にヒザを入れて、しっかりとコントロールもできている。際の打撃も理想的なことをしていました。

蹴りが入り始めると、もう初回の中盤から間は全てペレイラです。イマダエフは何もできなかったので。ペレイラからすると、もう好き勝手にやっていました。胴回し回転蹴りで背中から落ちても、イマダエフが何もしないで待っていましたしね。フルコン空手ですら、あの展開で残心を決めると技有りになるというのに。あのチャンスに動かなかった。

ペレイラはブレずに好きにやっていたから……跳んだり、回ったりした結果、上手くいった感はあります。何度も言いますが、イマダエフがボクシングだけやっている限り、胴回し回転蹴りやカポエイラのような蹴りを使っている相手に対しては動けなくなり、そんな状況だとパンチも被弾してしまいます。彼のボクシングは相殺されてしまったのです、間を失うことで」

──岩﨑さんの教え子が、「先生、僕は楽しい試合がしたいんです」といってバック宙や前転を試合中にしていると、どうしますか。

「放っておきます(笑)。それで良い時もあるからです。一番いけないことは、習ったことをやろうとすることです。習ったことが自分の指揮系統のなかに入って、考えることなく使っているなら構いません。そうでないのに使おうと意識することで、居着きます。先生に習ったから使おうと思うなら、使わない方が良いです。

車を運転するときに、バックミラーやドアミラーを確認する。それは自分の指揮系統にあって、安全に車を運転するためにです。それがね、横に教官が乗っていて見ないと怒られるからミラーを確認しているようじゃ、運転なんてできないということですよ」

──なるほどっ!!

「ペレイラは誰の指示も受けず、自分でアレをやっていたんです。今、私もセコンドに就く時は『何かをやらせる』という意識はないです。何が起こっているのかを見るためにいる。相手の腹が効いているのに、気付いていないなら『腹を攻めろ』と指示を出します。指示というのは、後付けで良いと考えています」

──宙返りも?

「ハイ。ペレイラのバック宙はありなんです。ケージの中に入った時、選手は練習のときのように思った通りに動けないですよ。そして試合中に我が身に起きる、あの緊張は練習では経験できないです。だからこそ、試合になった時に大切なのは理屈ではなくて、心の持ちようなのです。ノリとかヴァイブスです。ペレイラはそういうヴァイブスなんです。

あんなことをしているから、脳で考えて動いているじゃない。だからヒザもパンチも入る。脳で考えて動く、それでは遅いんです。打つ、蹴るという意識の先に動かす。松嶋こよみがインドネシアでキム・ジェウォンに勝った時は右を打って、左で倒そうとしていました。そうしたら、無意識の右が当たった。そういうことなんだと思いますよ、ペライラのヒザも。

ペレイラは何に依って戦っていたのか。ノリなんです。それが一番怖いんです。ノリすぎると、グラウンドの相手にヒザを入れて反則負けになってしまいますが(※ディエゴ・サンチェス戦)。あのタイプの選手は上手く行った時と、失敗した時の差は激しいと思います。ただし、あんなことは5分✖3Rですら持たないのに、5分✖5Rでは絶対にできないです。仮に世界戦まで辿り着き、カマル・ウスマンを相手に宙返りをするなら、もう国民栄誉賞です(笑)」

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Bu et Sports de combat サンチン ブログ 剛毅會 岩﨑達也 武術空手

【Bu et Sports de combat】武術で勝つ。型の分解、サンチン編─02─「力を入れるのではなくて──」

【写真】サンチンの動きで、MMAに勝てたとしてもタマタマです。ただし、サンチンを習得してMMAの戦い生かせることは、確実にある (C)MMAPLANET

武術でMMAを勝つ。空手でMMAに勝利する──型を重視する剛毅會の武術空手だが、岩﨑達也宗師は「型と使って戦うということではない」と断言する。型稽古とは自身の状態を知り、相手との関係を知るために欠かせない。

サンチン、ナイファンチ、セイサン、パッサイ、クーサンクーの型稽古を行う剛毅會では、まずサンチンから指導する。そんな剛毅會の稽古には站椿が採り入れられている。5種類の型稽古にあって、唯一サンチンのみが意味を吸いて吐くという意味での呼吸を学ぶことができる。

全ての根幹となる武術の呼吸を学ぶことができる──サンチンの解析、第2回を行いたい。

<サンチン解析第1回はコチラから>


足の幅は肩幅より少し広く取り、爪先をやや内側に向け、同じ方向にヒザを向け両腕を胸の前で交差させて両腕受けの姿勢に。この構えを取ることで後ろや前、横から押されても崩れない強い姿勢となる。

ヒザを曲げるのではなく、同じ方向に向けることでヒザに力がある状態となる。前足のカカトと、後ろ足の爪先が同一線上となるよう気を付ける。『この時、前足のカカトと後ろ足の爪先が延長線上で交わる地点を三角形の頂点となるように意識する。この三角形の頂点を意識することが、続く動作で非常に大切になる』。

✖爪先が内側に向き過ぎると、押されることで崩れてしまう弱い姿勢に。

拳は起式の際の下げた肩の高さに。ワキは拳が一つ入るぐらいのスペースを創る。『両腕を胸の前で交差させる時に腕を絞ることで、体の中心のある強い姿勢がとれ、目も見えるようになる。サンチンの形によって内側のエネルギーの大きな違いが生じるので、腕を絞る時も力を入れて無理に絞ることは厳禁』。

【最重要ポイント】サンチンの型で最も大切なことが力を入れないこと。力を入れて取られた姿勢は、両腕受け拳が内から外に向いて動いた場合に外に行く力は強いが、逆の方向には弱くなる。力を入れるのではなくて、型から力が出てこなければならない。そうなると逆の方向へも中心ができることで強い構えとなる

✖ワキが空き過ぎる。ワキが拳一つ以上空くと、ここでも体の中心を失い、横からの力に弱い構えとなる

✖ワキが閉まり過ぎると──後ろからの力には強いが、前方からの力に弱くなる

<この項、続く>

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Bu et Sports de combat サンチン ブログ 剛毅會 岩﨑達也 武術空手

【Bu et Sports de combat】武術で勝つ。型の分解、サンチン編──01──「強い状態を作って始める」

【写真】サンチンを続けることで、MMAでの戦いに変化が生じたという松嶋こよみ (C)MMAPLANET

武術でMMAを勝つ。空手でMMAに勝利する──型を重視する剛毅會の武術空手だが、岩﨑達也宗師は「型と使って戦うということではない」と断言する。型稽古とは自身の状態を知り、相手との関係を知るために欠かせない。

サンチン、ナイファンチ、セイサン、パッサイ、クーサンクーの型稽古を行う剛毅會では、まずサンチンから指導する。そんな剛毅會の稽古には站椿が採り入れられている。5種類の型稽古にあって、唯一サンチンのみが意味を吸いて吐くという意味での呼吸を学ぶことができる。

全ての根幹となる武術の呼吸を学ぶことができる──剛毅會のサンチンの解析を行いたい、


まず気を付けの姿勢で、手を体側の横にして指をしっかりと下に向けるところから始める。

左の掌の上に右手を重ね、掌が上を向いた状態から、

指先が下になる姿勢──中国武術的には起式と呼ばれる、最初の姿勢を取る。『この形を取るだけは体の中心を無くし姿勢として弱く、押されるなどすると乱れてしまう。腕を絞って下げることが重要となる。肩が下がり、合わせた手が前方に行き過ぎないようにし、しっかりと指を下に向ける』

「始め」の号令で結び立ちからカカトを広げて=爪先を内側にし、内八の字立ちに。正拳を握り、拳甲を前方に、拳頭は下に向ける。『ここで大切なことは、爪先を内側に向けるときに、1・2というテンポでなく、「1」のみ。つまり一挙動で行うこと。一挙動でないと、隙ができる。下げた腕は体側よりもやや後ろに。この状態から始めないと、その後のサンチンの型、動きは意味がなくなる。強い状態を作って始めることが絶対』

✖手が体側より前に出ない。手が前方に出ると前方に対して隙ができてしまう

続いて右足を内側にしっかりと円を描くように進ませる。小さい円だと進めた足が元の位置に戻ってしまう。

右前サンチンとし同時に両腕を胸の前で交差させて開き、両腕受けの姿勢を取る。『足の幅は肩幅より少し広く取り、爪先をやや内側に向け、同じ方向にヒザを向ける。ヒザを曲げるのではなく、同じ方向に向けることでヒザに力がある状態となる。前足のカカトと、後ろ足の爪先が同一線上となるよう気を付ける。この時、前足のカカトと後ろ足の爪先が延長線上で交わる地点を三角形の頂点となるように意識する。この三角形の頂点を意識することが、続く動作で非常に大切になる』

〇中を通り、大きく円を描いて足を進める

✖頂点を意識せず、内側をしっかりと円を描かないで前に進むと、体の中心を失い姿勢は弱くなる

<この項、続く>

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Bu et Sports de combat Interview アレハンドロ・フローレス ハファエル・アウベス ブログ 岩﨑達也

【Bu et Sports de combat】武術的な観点で見るMMA。アウベス✖フローレス「上、下、外、中」

【写真】ギロチンで敗れたフローレスだが、多角度な打撃は見るべきものがあったという。次戦に注目だ(C)Zuffa/UFC

MMAと武術は同列ではない。ただし、武術の4大要素である『観えている』状態、『先を取れている』状態、『間を制している』状態、『入れた状態』はMMAで往々にして見られる。

武術の原理原則、再現性がそれを可能にするが、武術の修練を積む選手が試合に出て武術を意識して勝てるものではないというのが、武術空手・剛毅會の岩﨑達也宗師の考えだ。距離とタイミングを一対とする武術。対してMMAは距離とタイミングを別モノとして捉えるスポーツだ。ここでは質量といった武術の観点でMMAマッチを岩﨑氏とともに見てみたい。

武術的観点に立って見た──DWTNCS S04 Ep04におけるハファエル・アウベス✖アレハンドロ・フローレスとは?!


打撃だけの競技だと当たり前に発展してくることが、組み技のあるMMAでは発展させることは難しい

──続いてフィジカル・モンスターのハファエル・アウベスとメキシカン・ストライカーのアレハンドロ・フローレスの試合についてお願いします。

「まず開始早々の展開で、アウベスという選手の殺気は凄まじいモノがありました。対してフローレスはひょろっとして、何となく間抜けに見えて。何だコイツ、チャップリンみたいだなって」

──いや、それはただ髭がそういう風に見えるだけじゃないですか(笑)。

「アハハハ。それぐらいアウベスの質量が凄かったんです。アウベスはロンダートンとか試合前からやって、試合でも跳びながら左ミドルを蹴っていましたね。

レは効いたと思いますが、試合の流れでいうと開始してからアッという間に、フローレスが質量をどっこいに持っていくんです。

アウベスは奇抜なことをやりますが、まぁ前に出られない。どっちが良いかというと、断然にフローレスが良かったです」

──なるほど、そういう見方もできるのですね。

「えっ? なぜですか、そう見えなかったですか。そこは武術的な見方はなくても」

──私にはフローレスは圧力に押されて、妙にバタついていたように見えました。

「いや、彼はドッタンバッタン動いて、多角度で攻撃しているんですよ。よく、見てくださいよ!!!!!! 本当にああいう動きを選手にして欲しいと思いました。イチ・ニでなく、イチで上、下、外、中とコンビネーションを見せています。対して、全くアウベスは手が出ていないですから」

──ハイ、アウベスは完全に待ちの状態で一発振りまわして勢いを見せつける。そこにフローレスも圧されて、有効な手立てはなかったように思っていました。

「アウベスは一発だけで、コンビネーションはまるで使えていなかったです。単発で何も繋がらない。あの戦いを見て、待ってないでテイクダウンにいくなりしろよっていう見方にはならないのでしょうか。だって全然、入っていかないんですよ」

──そこもMMAなので、フローレスは逆に組んで疲れさせるような動きが必要だったと思っています。そういうことができる選手が、UFCファイターだと。

「スタミナがないのは──前回、話したマイク・ブリーデンも同じで、連打を使わない。それは連打する稽古をしていないからじゃないですかね。稽古をすれば、それだけスタミナはつくはずです。

対してフローレスは最初こそ何がしたいんだって思って見ていたのですが、よく見ると距離を取りながら、アウトボクシングでパンチも蹴りも良い選手でした」

──有効打はありましたか。

「当たる、当たらないというのは、当たる時は当たります。でも、当たらないからって攻撃を使わなくなるというのは試合ではありえないですよね。コンビネーションを駆使して戦っていれば、どれか当たる。そういう考えで試合に挑む方が良いです」

──なるほど一撃必殺でも、百発百中でなくても。

「あのリーチがあって、下がりながら色々とできる選手は入る必要がないですからね。ただし、ダナ・ホワイトという興行主の前でどういう試合をするのかは個人の選択なのでしょうね。他の団体でもベルトを獲るために勝負に徹しているのを見ますが、コンテンダーシリーズになると──磁場が違ってきてしまうという風にも見えます。

それにフローレスだって隙はあります。でも、アウベスはそこを衝かない。ただ、単発でパンチを振るい、蹴っていくだけで。打ってきたモノに対し、どういう風に処理するのか。例えばローにカウンターを合わせるとか。パンチにテンカオを合わせるとか。そういう動きができる人のことを打撃ができる人だと私は捉えています。

攻撃だけできても、打撃ができるわけではないです。打ち終わりや蹴り終わりに、攻撃を入れる。フローレスは良く動いていましたが、蹴り終わりなどには隙がありました。蹴って止まる、でもアウベスはそこでも前にいかない。

いやアウベスの開始直後の重心の低さと、あの攻撃力は人を殺めかねない勢いがありましたよ。それがどんどん浮いてきて、自分がもっているバネに頼った攻撃だけになっていました。俺はこんなことができるというお披露目会のようで、倒すビジョンは見えなかったです。でも、それがコンテンダーシリーズという場なのかもしれないですね」

──対して敗れたフローレスは武術的な見方だと、質量が上で間も彼のモノだったということでしょうか。

「質量も間もフローレスでした。アウベスは居着いていて。止まっていて何もしない。居着かされているから、質量は当然のようにフローレスが上でアウベスが下です。フローレスのコンビネーションは、MMAという距離のなかでの連打です。中段で外を蹴っておいて、中はストレートを打つ。多角度で来ています。

打撃戦はレベルが上がると、ああいう多角度の攻撃が必要になってきます。左フックから右ローという対角線コンビネーション、右のローから左の前蹴りを入れると外から中、中段の前蹴りから上段の前蹴りは、中から上という具合で。

この打撃だけの競技だと当たり前に発展してくることが、組み技のあるMMAでは発展させることは難しいです。それをフローレスはMMAのなかでやっていた。ギロチンで負けてしまいましたが、フローレスは次も見たい選手ですね」

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Bu et Sports de combat アンソニー・ロメロ ブログ マイク・ブリーデン 岩﨑達也

【Bu et Sports de combat】武術的な観点で見るMMA。ロメロ✖ブリーデン「質量が上回っていても」

【写真】なぜ質量が高く、破壊力のある攻撃を持つブリーデンは敗れてしまったのか(C)Zuffa/UFC

MMAと武術は同列ではない。ただし、武術の4大要素である『観えている』状態、『先を取れている』状態、『間を制している』状態、『入れた状態』はMMAで往々にして見られる。

武術の原理原則、再現性がそれを可能にするが、武術の修練を積む選手が試合に出て武術を意識して勝てるものではないというのが、武術空手・剛毅會の岩﨑達也宗師の考えだ。距離とタイミングを一対とする武術。対してMMAは距離とタイミングを別モノとして捉えるスポーツだ。ここでは質量といった武術の観点でMMAマッチを岩﨑氏とともに見てみたい。

武術的観点に立って見た──DWTNCS S04 Ep04におけるアンソニー・ロメロ✖マイク・ブリーデンとは?!


強力な武器を持っていても使えていない

──アンソニー・ロメロ✖マイク・ブリーデンのコンテンダーシリーズの一戦ですが、どのような印象を持たれましたか。

「いやぁ、2人も良い選手じゃないですか!! そして質量が高いのは基本的には負けたブリーデンでした」

──そうなのですか?

「ハイ、そこに関しては完全にブリーデンです──足を蹴られて負けてしまいましたが。そしてアグレッシブなのがロメロでした。切れでロメロという感じで、足を効かせて。ブリーデンは質量が高くて、間も自分のモノになるのに、ヒットアンドアウェイで台無しにしてしまっています。パンチも重いのにあの戦い方をするということは、自信がないのですかね。それと、右足前の左のパンチと左ミドルが良かったです。ただし、そこもずっと使わない」

──サウスポーでの左の攻撃が良かったということですね。最初はオーソで、カーフを効かされて変えた構えの方が威力があった。でも、またオーソに戻した。

「その通りです。時折り、サウスポーに構えた時の左のパンチも蹴りも凄く重いです。2Rにブリーデンがテイクダウンされ、立ち上がり際にロメロがハイキックを狙ったシーンがあったじゃないですか」

──ハイ、MMAとして間断のない素晴らしい攻撃に思いました。

「ただ、あの後の展開でブリーデンがチョイと出したヒザ蹴り、その場で本当にチョコンと出したヒザなのですが、アレが効くということは質量が高いということなんです。ただし、そこを生かしきれていない。

しかし、コンテンダーシリーズの試合は最近のUFCの大物選手の試合より、良い試合が多いですね。このUFCと契約していない選手たちは、本当に良い戦いをしている。しかも、この試合で勝ったロメロはUFCと契約できなかったのだから……もう、驚きですよ。

だから、どこに理想を持っていくかですね。3Rにブリーデンは必死になってパンチを振るっていった。なぜ、それを1Rと2Rにしなかったのか。スタミナに自信がなかったのですかね。それぐらいしか、考えられないですね──あれだけの攻撃力があるのに。体もボチャっとしていて。

対してロメロは精悍で、好戦的でしたね。横蹴りができるような、そういう蹴りは使っていないですけど、使える構えで。オーソ同士の時のは、このロメロの左足を斜にした構えだと中心がズレるのでブリーデンは見えていなかったかと思います」

──ロメロの構えのせいで?

「ハイ。見えなかった。サウスポーに構えると見えるけど、それを続けない。対して、ブリーデンが見えてない状況でロメロは際の蹴り、離れ際とかの攻撃が凄く良かったです。繰り返しますが、これでUFCと契約できないとは……。もう、何をか言わんや。そこは私が言えることはないのですが……。

ただし日本で、ダナ・ホワイトが目の前で試合を見ていて『今日、良いところを見せた選手は契約するぞ』なんていう状況があったら、日本の選手だってやりますよ。それはやります。ただし、そういう戦い方を外国人とすると日本人が勝つのは難しいでしょうが」

──話をロメロ✖ブリーデンに戻しますと、それだけ質量が高く、重いパンチを持っているブリーデンですが、カーフを効かされてしまいました。

「あのカーフで効かされていましたが、ロメロは続けなかったですよね。蹴った本人も痛めていないでしょうか。自分も相当に痛めるような蹴りになっていたように思いました。それとブリーデンは、結局のところ単発なんですよね。ずっとリズムも1・2、1・2で……よっこいしょ、よっこいしょって感じで。あれだと当たらないですね。だから、先ほどもいったように、どこを理想を置いて戦っているのかということなんです。

質量が高くても、その概念がないですし、ヒットアンドアウェイで下がってしまうから、間もロメロになってしまいます。ロメロは間が自分にくると、常に攻撃ができていました。それは多少殴られようが攻撃するという勝気なところであり、そういう選手と戦うと質量が高くても攻められることが多くなり、見た目も悪くなります」

──質量が高くても、蹴られてしまう。自分の攻撃で間を創ることはできないのですか。

「質量の上下というのは、立ち会うと必ず生じます。そこを起点にモノゴトを考えることは今のMMA界や格闘技界にはないです。だから、判定も質量の上下と勝敗が一致するものではないです。何より質量が上回っていても勝つ方向に戦略を練らないと、強力な武器を持っていても使えていないことになります。コンテンダーシリーズまで来て、武器がなかったり、能力のいない人はいないでしょうが、ちゃんと武器を使えないのは勿体ないです。ブリーデンもそういうことになるのですが、それはブリーデンには相当な伸びしろが残されているということになります」

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Bu et Sports de combat Interview ブログ 岩﨑達也 王向斎 郭雲深

【Bu et Sports de combat】なぜ武術空手に型の稽古は必要なのか─09─站椿05「站椿と型、逆も真理」

【写真】站椿をすることが目的ではなく、站椿をすることになって型を理解です。その考えにいたったのが、型の稽古を始めてから。逆もまた真理 (C)MMAPLANET

型、中国武術の套路をルーツとされるなか沖縄で手の修得に用いられた。それが空手の型だ。ここで取り上げているサンチンもそのルーツは中国武術にあるといわれている。

型を重視する剛毅會の武術空手だが、岩﨑達也宗師は「型と使って戦うということではない」と断言する。自身の状態を知り、相手との関係を知るために欠かせない型稽古を剛毅會ではサンチンから指導する。そんな剛毅會の稽古には站椿が採り入れられている。

なぜ、型稽古が必要なのか。そして型稽古に站椿を採り入れているのか。日本に站椿が持ち込まれるルーツとなった意拳の王向斎は型を廃したが、その逆も真理──剛毅會で站椿を採り入れることで、何が変わるのか──站椿編、最終回をお届けしたい。

<【Bu et Sports de combat】なぜ武術空手に型の稽古は必要なのか─08─站椿04「腕が動く時、空気がある」はコチラから>


王向斎は站椿と型……套路をやってきたわけです

──排気量の大きな外国人選手とMMAを戦う場合、日本人選手は空力を考えた方が良いということになりますか。

「ここが面白いところで殴る、蹴るとなると殺傷能力によって空間や時間は変化します。空間の伸び縮みが質量によって変化するんです。質量が上か下かによって、同じ1メートルでも距離は変わってきます。

接触してから、そして打撃の受け返しは欧米人とやりやろうとしても無理です。排気量とトルク勝負になると勝てない。だけど接触しなければ、相手を居着かせてしまえば活路は見いだせるんです。ここは站椿とは関係ない話ですけどね(笑)」

──いえいえ、全て繋がっていますから。

「そうですね。站椿とはそういった目に見えないモノを理解しようとする心を養い、理解できる稽古です」

──つまり武術空手を収めるために型の稽古と並行して、站椿もした方が良いということでしょうか。

「それは勿論そうです。ただし、目的は何なのか。目的という部分が凄く難しい稽古です。私自身、站椿をやってから型をやっています。ただし、そこで重力や引力を意識して──想念というかイメージしてはいけないんです。例えばボールがあって、それを抱いているというイメージで……とか言うじゃないですか。それを脳ミソでやると、脳ってやつは捏造を始めるんです。

そうではなく、そういう感じがある。ボールを抱いたという感じで収まるモノで。そこがしっかりと収まるのは実は型をやっているからなんです。型をやるまでは中心点というモノが分からなかったんです。独学だから。それが型を始めてから、站椿をやると──站椿をする答……站椿をする目的が見つかったんです」

──う~ん、また難しくなってきました。意拳の王向斎は型を不要として站椿だけをしていたわけですよね。

「そこが私の偏屈なところで、王向斎の逆を行ったんです。今、言われたように王向斎は型を否定して站椿に行きました。私は站椿から先にやっているので、型がなかったんです。つまりは王向斎が型は要らないという風になったのも、型をやっていたからです。

型は身に付けると、残っているんです。内蔵さえしてしまえばサンチンの構えで組手をする必要は一切ありません。インストールさえしてしまえば、戦いでその形(かたち)になる必要はむしろないんです」

──武術を生かすことであって武術をかたどる必要は戦いにおいてないということですね。

「その通りです。だから形意拳の型を究めた人の站椿と、站椿から始めた人の站椿は違うモノです。ただし、それは私のなかでの站椿の捉え方です。剛毅會で站椿を稽古するのは、站椿を稽古することが目的ではありません。意拳を稽古することが、目的ではないんです。型を理解するために站椿の稽古をします」

──站椿をすることで、生徒さんたちの型の理解が進んでいるという感覚はありますか。

「型の稽古をすることは、ただ動作をすることではありません。回数を重ねれば型……順番なんて覚えるモノなんです。動作でなく、一つは自分の内面を変えることですよね。内面が変わることで空気や重力との関係が変わってきます。空気中にスッと入っていける、それは自身の質量が上がったことになります」

──1日に3回サンチンをやらないといけないという義務感でやっても、内面は変わらないということですね。

「良い例えです(笑)。私が武術空手を習っていた先生は『道着を着ていない自分に、着ている自分が追いつくには10年掛る』と言われていました。つまり道着を着ていないで普通にやっていることが、道着を着るとできなくなるということなんです」

──岩﨑さんも実際でそうでしたか。

「最近、ようやく薄れてきました。やはり道着を着ると、構えてしまうってことなんですよね。私も毎日のように稽古を繰り返していますが、稽古をする感覚でなくなってきました。朝起きて、トイレに行って、顔を洗って、歯を磨く。それと同じで、稽古をしないと生活が始まらない。やらない理由がない。そういうモノですよね。義務感でもなんでないですから」

──結論として、なのですが……站椿をすることで、型も相乗効果で身に付くとは断言できるモノですか。

「少なくとも私が要求する……、う~ん、そうですね……型稽古をする目的が存在しています。それは空手という名の下で、サンチン一つするにしても各々の先生で目的が違います。なので他の先生方の考えは分からないのですが、私が要求する空手の稽古にあって站椿をすることが効果的であることは断言できます。

ただし、站椿が目的ではありません。目的はあくまでも空手、型です。それを理解するための站椿の稽古は非常に有効です」

──その結果、站椿を軸に考えると意拳とは逆で目的が果たせる。非常に興味深いです。

「逆も真なり──ですよね、それこそ(笑)。そこが本当に我ながら面白いことだと思います。ただですね、私と似たような経緯で站椿を行っていた方が、念願叶って王向斎直径の意拳を中国で学べたそうなんです。するとまず学んだのが、形意拳の型だったというんです」

──おぉ!!

「やっぱり型は必要じゃんって(笑)。達人が経験論に基づいて出した結論、それが誰にも当てはまるのかということは全てにおきかえて考える必要はありますよね」

──あぁ、本当にその通りですね。文字を書き記すにしても5W1Hを書き続けている人だから、5W1Hを書き記さない文章が書ける。5W1Hを書いてこなかった人がそれをやっても、ただの駄文なのと同じです。

「王向斎の師匠は郭雲深という形意拳の達人です。そこで站椿と型……套路をやってきたわけです」

──いやぁ武術、格闘技は歴史の積み重ねでMMAが今、目の前に存在するというのが本当に楽しいです。

「だから……ナイハンチ、クーサンクー、パッサイに関しても私自身のなかに確証はあります。けれども言葉にしたり、文字にするには論拠が必要になります。木刀を振ってもらうと理解してもらえることを、言葉で示すには──やはり首里手の歴史をたどり、あるいは現地に赴いてその欠片を探し求める必要があると私は思うんです。

サンチンにしても那覇手の東恩納寛量先生は息吹を用いていなかったのが、宮城長順先生が白鶴拳のなかの鳴鶴拳から採り入れた。そういう論拠があります、カァーって鶴が鳴くような音だなと。そういう説明をするために文献を調べたり、現地を訪れる必要があると思うんです。グレイシー柔術だったら『私の父から習った』とか『祖父の教えは』と、そこが血の繋がりでできてしまうのですが。でも空手は、そうはいかないですからねぇ。この連載が題目がナイハンチになった時に、私はどうすれば良いのか……(苦笑)。そういう想いはあります」

──なるほどぉ(笑)。まだサンチンの解明に入ったばかりですので、並行して探求をお願いします。

「いやぁ、でも一度稽古をすることで、色々な気付きがあります。サンチンの型一つをとっても、完成なんてありえないんです。それこそが呼吸を根源とした力の深さなんです。内面の見えないエネルギーによって、外面に変化が表れます。おかしな話ですが、指先が強くなったりするんです。巻き藁を突くのとは違う形でも、そういう外面の変化は起こります」