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【Bu et Sports de combat】武術で勝つ。型の分解、ナイファンチン編(08) 「一挙動の手刀。手の創り」

【写真】手刀のチョップの違いについて言及していきます (C)MMAPLANET

武術でMMAを勝つ。空手でMMAに勝利する──型を重視する剛毅會の武術空手だが、岩﨑達也宗師は「型を使って戦うということではない」と断言する。型稽古とは自身の状態を知り、相手との関係を知るために欠かせない。

サンチン、ナイファンチン、セイサン、パッサイ、クーサンクーの型稽古を行う剛毅會では、まずサンチンから指導する。そんな剛毅會の稽古には站椿が採り入れられている。

全ての根幹となる武術の呼吸を学ぶことができる──サンチンで創られた、空手の体をいかに使うのか。その第一歩となるナイファンチンの解析を行いたい。目線と体の向き、足の小指が正しくなることでナイファンチン立ちが成り立つ。前回まではナイファンチンの型の動きに基づく「二挙動の手刀受け→ヒジ当て」を分解したが、引いて手刀という動きから「一挙動の手刀」を分解していく。

<ナイファンチン第7回はコチラから>


手刀を当てる際の手の創り方

✖ 手刀の返しの技術で重要なのは、親指


親指を締めた=掌側に入れた手刀では、手の甲が丸まってしまい威力がない


〇 少し親指を開いた形を創ると


掌も開き甲も丸まらなく、威力がある手刀となる。と同時に親指の指先まで意識をして、この指が動くようではいけない


「指先まで質量がないとケガをしてしまいます。結局、指先の質量とは全体の質量を指します。指先に質量がない場合は、全体に質量がないんです」(岩﨑)

✖ 指先に質量がない状態で、手刀で受けにいっても相手と押し合いになり


拮抗した勝負に陥り、相手の攻撃を防ぐことはできない


〇 対して形を創っている手刀受けだと


相手は入ることができなくなり突きが出せなくなり


力も入らず崩すことができる。正しい形で手刀受けをすると相手の攻撃を受けても痛くない

「空手は力で力を出すものではなく、型で力を出します。手の握りもそうで。実は拳で親指を握ると、拳はあまり痛くなくなります。よって何かを叩いて拳を固くしても、突きの威力が増すわけではない。部位鍛錬などしても、力が出るわけではいというのが私の考えです。空手は形で威力がでるようになります。空手で大切なのは威力の出る形を創ることなのです。

巻き藁を突くのではなく、当てるものだと私は理解しています。打つでもなく、当てる──です。そうすると置くだけで、そこにエネルギーがあるのか確認ができます。巻き藁は空手用語として「突き」が広まりましたが、拳を当てることを指します。当て力なんです。正拳にしろ、手刀にしろ巻き藁と叩いて部位を固くして威力を増すのではなく、正しい形で形作ったモノが一番威力があります。

巻き藁は突き……当て力の確認作業として非常に優れた稽古です。殴って拳を鍛えるという風に伝わったのは、なぜなのか。型にしても基本稽古、巻き藁にしても失伝してしまったものだらけなのだと思います。

もともと空手は琉球、首里の官僚の武術です。彼らには長時間掛けて鍛えたりする時間はなかったです。だから頭を使って、如何に短時間で強くなれるかを考えた。手刀の親指の開き方一つをとっても人類の英知があります。

ただし、なぜこの形なのか説明する術はありません。手刀の場合は親指を掌にいれると他の指も弱くなりますが、外に出すと、他の指も張って強くなります。この形だと質量が高い形となります。そうとしか説明をまだ私はできないんです。そして、この親指の角度だと質量が高く、強い突きを打つ設計図になるということになんです」(岩﨑達也)

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【Shooto2022#03】久遠と対戦──澤田千優「レスリングと空手が結びついて動きやすくなっています」

【写真】 取材後、「レスリングで勝ちなさい。ただし澤田千優のレスリングにはパンチと蹴りがある」と岩﨑氏がいえば、AACCの阿部裕幸代表が「それが古代のパンクラチオン」と言葉を続けた(C)SHOJIRO KAMEIKE

22日(日)、東京都文京区の後楽園ホールで開催されるShooto2022#03で、澤田千優が久遠と対戦する。

キッズから高校、大学とレスリングで活躍し、兄・龍人の後を追ってMMAに転じた澤田千優。プロ3戦目を前に、MMAファイターとして打撃の成長のために取り組む剛毅會空手の稽古後に、初インタビューを試みた。


――千優選手がアマ修斗で勝った時に、お兄さんの龍人選手が「大学も出ているのだし、MMAなどせずに普通に働いてほしい」と言っていました。千優選手はなぜMMAをしようと思ったのですか。

「大学を卒業してからMMAをしたくなったわけではなくて、中学の時からなんです。AACCでずっと身近に藤井(恵)さんや(浜崎)朱加さん、勿論りゅうりゅうがいたから……というのはあります」

──りゅうりゅうというのは、龍人選手のことですね。

「ハイ。上にもお兄ちゃんがいて……真ん中のおにいちゃんのことはりゅうりゅうって呼んでいます」

──……なるほど。そして龍人選手の影響もあり中学の時から、MMAはしたかったと。

「ハイ。高校に進学せずにMMAをやりたいと両親に伝えたら『バカなことを言わないで。勉強ができないんだから、レスリングで高校に行きなさい』と説得されました。それにMMAでトップにいくには、レスリングでしっかりと頑張られないと中途半端になっちゃうから、レスリングで行けるところまで行こうと思ってレスリングの方に進みました。

でも節目になるとMMAがやりたくなって。『MMAをしたいから大学には進みません』と言った時も家族会議をして、やっぱり『レスリングで行けるところも行くべき』という風に説得されました。そこまでやり切ったら、私もMMAでレスリングを生かしきれるんじゃないかなって思いました」

──結果、レスラー人生で全日本2位、全日本学生2位、社会人優勝、アジアジュニア2位など輝かしい結果を残しています。

「でも大学を卒業してからは就職して……。今も働いているところなんですけど、『やっぱりMMAをやりたいんだよね』って一番上のお兄ちゃんに相談したら『今からでも遅くないじゃない?』って言われて。もちろん、りゅうりゅうは反対しているので、そのことも伝えても『アイツのことなんて放っておけ。自分の人生だし、関係ないよ。他に誰が反対している?』と言ってもらえたので頑張ろうって思いました」

──大学までレスリングを続けているとMMAに転じても運動神経と体力、それとレスリングの技術だけでそこそこ行けることはなかったですか。

「それこそレスリングを軸に戦うと、アマ修斗で勝てました。でも、もっと強い人達と練習しているので、そんなに甘くないことは自分でも理解しています。りゅうりゅうがやられていたり、他のレスリング上がりの人も練習でやられているのを見ているので。レスリングだけじゃ勝てないから、岩﨑先生に打撃を習うようになりました(苦笑)。

レスリングはこのままキープで良いので、MMAができるようになりたいです。打撃は全く知識がないですし、見様見真似でやると何も理解できない。だから、ちゃんと教えてくれる人が私には必要だと思って……。でも一から学ぶ……腑に落ちるというか、納得できる伝え方をしてもらえないと全然身にならなくて」

──ボクシングやキックボクシングを習うことが主流だと思いますが、そこで剛毅會の空手を習おうと思ったのは? サンチンをやっていると白い目で見られることもあるかと思います。

「先生が時々、教えてくれてことが腑に落ちて。先生に教われば間違いないかなと思いました。空手を学ぶことは全く抵抗なかったです。一番近くにいる先生でしたし」

──効果の程を何も疑うことなく?

「ハイ」

──なるほど、それは身に付きやすいですね。他の打撃の経験がある方が、岩﨑空手は素直には入ってこないかと思うところもあるので。

「先生はレスリングも好きなので、レスリングの動きでアドバイスをしてくれたり、そこはとても入ってきやすいです」

──腑に落ちて、身についているという実感はありますか。

「拳(ケン)の強さとか、体重の乗せ方という部分で感じられます。レスリングと空手は似ていないんですけど、結びついて動きやすくなっています」

──去年の11月の中村未来戦での左の突きを見た時に、あれっ……剛毅會空手だと思いました。

「あの時はもう指導を受けていました(笑)。あれは観客席から『止まれ』、『手だけ伸ばせ』って先生の声が聞こえて。『動くな』と。その声に従っただけなんですけど、あとから『基本稽古をやっていないと出ない動きだから』と説明してもらいました。

その後に下がって打つというのを教わったのですが、あの時は止まって打つことを稽古していました。その止まって打つのから、距離を取って少し下がって打てるようになってきまいた。きっと他の打撃を知らないので、体に入りやすかったと思います。

それにやっていると、レスリングと空手が近くなってきたような気がします。距離感は違うのですが、私はボクシングとかキックのように打撃を打とうとすると、重心が上がってフワフワしてしまうんです。『フワフワ』するなって先生に指摘されます。その時はテイクダウンもダメで、蹴りもダメなんです。

でもレスリングでテイクダウンに入れる構えだと、空手の突きがスッと出て。足もパッと強いのが出せて……『あっ、こういうことだ』と身に入ってきました」

──対戦相手の久遠選手、あの優秀なストライカーを相手にMMAで戦ううえで自信の方は?

「今、教えてもらっていることを出せたら間違いはない。間違ったことを教えてもらっているのではないので、間違ったことはしない。そういう自信はあります。もちろん、勝つんですけど。間違っていない自信はあるので、そこを如何に試合で出せるか。

MMAの経験値が違うので、何をしてくるのか分からない怖さはありますが、試合の経験数は自分もレスリングをずっとしてきたので……。MMAは2試合しかやっていないので、それでも緊張してしまうと思うけど、教えてもらったことがちゃんと出せれば間違いはないという自信はあります」

──ところで下らない質問ですが、龍人選手をライバル視していますか。

「舐められたくないというのはあります。誰も言わないけど、りゅうりゅうが一番格好良いと思っていて大好きだし。だから舐められたくないし、負けたくない。格好良いところを見せたいです。りゅうりゅうに恥ずかしくない戦績を残したいと思っています。

まだ認めてもらえていないというのを感じているので、もっと頑張らないといけないと思います」

──では最後に、次の試合でどのようなMMAを見せたいと思っているか意気込みの方をお願いします。

「まだ3戦目で、MMAというには不十分ですけど、やっていることをしっかりと出して──少しでも前の試合より成長したなと思えるように頑張ります」

■視聴方法(予定)
5月22日(日)
午後5時50分~ Twit Casting LIVE
             
■Shooto2022#03

<修斗環太平洋バンタム級選手権試合/5分3R>
[王者] 小野島恒太:61.2キロ
[挑戦者] 石井逸人:61.2キロ

<ストロー級/5分3R>
新井丈:52.2キロ
黒澤亮平:52.2キロ

<バンタム級/5分3R>
藤井伸樹:60.9キロ
齋藤翼:61.25キロ→61.2キロ

<インフィニティリーグ2022女子アトム級/5分2R>
久遠:47.6キロ
澤田千優:47.4キロ

<ストロー級/5分2R>
木内“SKINNYZOMBIE”崇雅:52.2キロ
阿部マサトシ:52.2キロ

<バンタム級/5分2R>
榎本明:61.1キロ
ガッツ天斗:61.0キロ

<フライ級/5分2R>
大竹陽:56.7キロ
須藤晃大:56.7キロ

<バンタム級/5分2R>
伊集龍皇:61.2キロ
川北晏生:61.2キロ

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【Bu et Sports de combat】武術で勝つ。型の分解、ナイファンチン編(07)「中心を捕らえるヒジ当て」

【写真】自らの間を手刀で創り、円移動でない中心を捕らえてヒジを当てる (C)MMAPLANET

武術でMMAを勝つ。空手でMMAに勝利する──型を重視する剛毅會の武術空手だが、岩﨑達也宗師は「型を使って戦うということではない」と断言する。型稽古とは自身の状態を知り、相手との関係を知るために欠かせない。

サンチン、ナイファンチン、セイサン、パッサイ、クーサンクーの型稽古を行う剛毅會では、まずサンチンから指導する。そんな剛毅會の稽古には站椿が採り入れられている。

全ての根幹となる武術の呼吸を学ぶことができる──サンチンで創られた、空手の体をいかに使うのか。その第一歩となるナイファンチンの解析を行いたい。目線と体の向き、足の小指が正しくなることでナイファンチン立ちが成り立つ。前回はナイファンチンの型の動きに基づく「二挙動の手刀受け→ヒジ当て」、今回は中心で捕らえるヒジ当てを分解した。

<ナイファンチン第6回はコチラから>


突いてきた相手に対し、下がりながら


手刀を出し


連動した動きで自身の間を創る。「この間が相手にとって嫌な状態を創っていると、それを中心と呼びます」(岩﨑)


中心を捕らえずに右足の移動を起点にして


円を描くようにヒジを打つと

ヒジを当てに行こうとする意識から、ヒジを振りまわしてしまっているので当たるポイント自体がずれ、相手にとって嫌なヒジの位置で捕らえることができていない。結果、ヒジを受けても効かされることはない。「これではヒジ当てでなく、ヒジを振っているヒジ打ちになっています」(岩﨑)


このヒジの打ち方だと相手にとっては嫌な状態でなく、左の突き


右の突き


頭突き


あるいは逆にヒジ当てが打てる


【重要なポイント】

大切なことは手刀から中心で入り


中心で捕らえること。「ヒジ当ては自分の中心で、相手の中心を捕らえていないといけないです」(岩﨑)


この入り方をすると、相手は嫌な状態であり突きはおろか、頭突きも出すことできない


加えて、ヒジ当ての威力により相手はダメージを受ける

この二挙動の手刀受けからのヒジ当てが基本となり、応用ともいえる一挙動のヒジ当てが存在する──。

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【Bu et Sports de combat】武術で勝つ。型の分解、ナイファンチン編(06)「手刀、刀の理合いと組手」

【写真】刀でナイファンチンの型の手刀の理を知り、ナイファンチンの型で起こる状態を知る。決して、MMAで手刀を使うというわけではない (C)MMAPLANET

武術でMMAを勝つ。空手でMMAに勝利する──型を重視する剛毅會の武術空手だが、岩﨑達也宗師は「型を使って戦うということではない」と断言する。型稽古とは自身の状態を知り、相手との関係を知るために欠かせない。

サンチン、ナイファンチン、セイサン、パッサイ、クーサンクーの型稽古を行う剛毅會では、まずサンチンから指導する。そんな剛毅會の稽古には站椿が採り入れられている。

全ての根幹となる武術の呼吸を学ぶことができる──サンチンで創られた、空手の体をいかに使うのか。その第一歩となるナイファンチンの解析を行いたい。目線と体の向き、足の小指が正しくなることでナイファンチン立ちが成り立つ。前回はナイファンチンの型の動きに基づく「二挙動の手刀受け→ヒジ当て」の手刀受けを分解した。

「二挙動の手刀受け→ヒジ当て」の手刀受け、刀の理合いに通して──さらに理解を深めたい。

<ナイファンチン第5回はコチラから>


斬られないためには


下がるときに刀を抜く


(03) 結果、入る状態になっており自分の間で斬ることができる。「ただしタイミングで抜刀すると斬られることがあります。あくまでも先をとれている、間を制しているなどの条件が絶対になります」(岩﨑)


(04) この時の胸、爪先、頭の向きがナイファンチンの型の手刀受けと同じ状態にある

「車の運転の例えを続けますと、刀を抜く前からエンジンが掛かっています。あとは抜くだけという状態にあると、相手は既に刀を振り上げづらい状況になっています」(岩﨑)。この刀の理合い=理(ことわり)を手刀受けに応用すると

相手の突きに対し


下がり始めた時には手刀も出ており


そのまま下がりながら、手刀を伸ばし


下がった時には、間を制している状態になる。結果、相手は前に出ることができなくなり、左ハイや左の追い突きも相手は出せなくなる

組手へ応用

半身の構えでは


左ハイが伸びてくる


同様に右クロスが見えづらい傾向がある


胸は正面でなくても──顔の位置をナイファンチンの型に合わせると


互いの位置は同じでも、左ハイを届かなくなり


右クロスも当たらないという状態が起こる


この状態を知るために、ナイファンチンの型の手刀がスケールとなる

「現代空手の移動稽古で、前に出た足が地面に着いてから『突く』という動きが多いですが、武術空手では足が着くと同時に『突く』。それが私の先生の教えです。つまり、突き自体が踏み込む連動の結果として存在している。突き自体の状態が問われるのではなく、大切なのはその前、そしてその後です。全ては連動ですね。車のタイヤが回って前進するのは前輪と後輪、4つのタイヤが連動しているからです。足を着けてから、突くのでは一度ブレーキがかかるようなもので武術では、そういう動きは好ましくないです」(岩﨑)

この連動ができて、「二挙動の手刀受け→ヒジ当て」のヒジ当てへと移行するが、中心を取ることができて正しいヒジ当てが可能になるという大前提が存在する。

「踏み込むことで、重心が踏み込んだ足に移動したり、反動で逆に動くということは中心がとれなくなり、間を制することはできないです。大切なことは中心で入るということ。そうすることで相手の動きを制します。間を取り、中心を取ることができないと、相手も攻撃を出せる状態になっています」(岩﨑)

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【Bu et Sports de combat】武術で勝つ。型の分解、ナイファンチン編(05)「手刀、刀の理合い」

【写真】笑わば、笑え。刀も理を知るためのツールだ(C)MMAPLANET

武術でMMAを勝つ。空手でMMAに勝利する──型を重視する剛毅會の武術空手だが、岩﨑達也宗師は「型と使って戦うということではない」と断言する。型稽古とは自身の状態を知り、相手との関係を知るために欠かせない。

サンチン、ナイファンチン、セイサン、パッサイ、クーサンクーの型稽古を行う剛毅會では、まずサンチンから指導する。そんな剛毅會の稽古には站椿が採り入れられている。

全ての根幹となる武術の呼吸を学ぶことができる──サンチンで創られた、空手の体をいかに使うのか。その第一歩となるナイファンチンの解析を行いたい。目線と体の向き、足の小指が正しくなることでナイファンチン立ちが成り立つ。前回はナイファンチンの型の動きに基づく「二挙動の手刀受け→ヒジ当て」の手刀受けを分解した。

このナイファンチンの型の動きに基づく手刀受け→ヒジ当は、二挙動の手刀受け、一挙動の手刀(内と外)、一挙動のヒジ当てという3つのプロセスがあるが、「シンプルな動きのなかに、重要なことを詰まっています」(岩﨑)ということで、今回は「二挙動の手刀受け→ヒジ当て」の手刀受けを改めて深掘りしたい。

<ナイファンチン第4回はコチラから>


相手の突きに対し


下がってからの


手刀では


左ハイや


左の追い突きを受ける

相手が打って来ることに対し、そのタイミングで下がってからの手刀だと相手の間になっているので、攻撃を受けてしまう。「相手の追撃を許してしまいます」(岩﨑)

ナイファンチンは首里手の代表的な型であり、首里手の始祖・拳聖=松村宗棍が薩摩で示現流の免許皆伝を得たことで、刀の理合いに通じることがある。ここでは刀の理解を通じて「二挙動の手刀受け→ヒジ当て」の手刀受けの理解を深めたい

右足前の攻撃に対し


下がってから


抜刀しても既に斬られている。「本来は攻撃されて、この状態で刀を抜くことはできないです。車の運転に例えると、下がる時にギアを入れて動くこと。下がってからギアを入れても、もう遅いということです」(岩﨑)


「間を制しておらずタイミングで動くと、下がって→抜くという動きになるが、さがるときには抜く状態になれば斬られることはない。刀がない、手刀受けでも同じことが言えるということです」(岩﨑)

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【Bu et Sports de combat】武術で勝つ。型の分解、ナイファンチン編(05)「手刀受け→ヒジ当て」

【写真】ナイファンチンは、型をそのまま使えそうな錯覚を覚えそうになるほど、実戦的向きの型だ(C)MMAPLANET

武術でMMAを勝つ。空手でMMAに勝利する──型を重視する剛毅會の武術空手だが、岩﨑達也宗師は「型と使って戦うということではない」と断言する。型稽古とは自身の状態を知り、相手との関係を知るために欠かせない。

サンチン、ナイファンチン、セイサン、パッサイ、クーサンクーの型稽古を行う剛毅會では、まずサンチンから指導する。そんな剛毅會の稽古には站椿が採り入れられている。

全ての根幹となる武術の呼吸を学ぶことができる──サンチンで創られた、空手の体をいかに使うのか。その第一歩となるナイファンチンの解析を行いたい。目線と体の向き、足の小指が正しくなることでナイファンチン立ちが成り立つ。前回、回転の動きによるヒジ打ち二挙動に対し、一挙動のヒジ当て紹介した。第5界は一挙動のヒジ打ちを習得する前段階で、ナイファンチの型の動きに基づく、二挙動の手刀受け→ヒジ当て──の手刀受けを分解したい。

<ナイファンチン第4回はコチラから>


「一挙動のヒジ当ては言わば応用になり、二挙動の手動受けヒジ当てが基本となります」(岩﨑)

相手の突きに対し


イチ=手刀を


伸ばして


受け


二=ヒジを


打つ


手刀受けの際、目、胸、足の指がナイファンチンの型と同じ向きになるように

反対側から見て、正しい姿勢を知る

ヒジと肩を引きすぎて、胸が正面でなく右を向き中心がズレると


左ミドルや左ハイを受ける


正しい姿勢だと、相手の蹴りは上がらない


胸が相手の方が向いて、中心がずれると


左のパンチ、続く右を被弾する


正しい姿勢だと、パンチは届かない

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【Bu et Sports de combat】武術で勝つ。型の分解、ナイファンチン編(04)「ヒジ打ちでなく、ヒジ当て」

【写真】ヒジ当てはグラウンドでのヒジ打ちに応用できれば、相当に危険になる (C)MMAPLANET

武術でMMAを勝つ。空手でMMAに勝利する──型を重視する剛毅會の武術空手だが、岩﨑達也宗師は「型と使って戦うということではない」と断言する。型稽古とは自身の状態を知り、相手との関係を知るために欠かせない。

サンチン、ナイファンチン、セイサン、パッサイ、クーサンクーの型稽古を行う剛毅會では、まずサンチンから指導する。そんな剛毅會の稽古には站椿が採り入れられている。

全ての根幹となる武術の呼吸を学ぶことができる──サンチンで創られた、空手の体をいかに使うのか。その第一歩となるナイファンチンの解析を行いたい。目線と体の向き、足の小指が正しくなることでナイファンチン立ちが成り立つわけだが、第4回は正しい向きとそうでない向きを分解したい。

<ナイファンチン第3回はコチラから>


相手の突きに対し、視線が右を向かず、胸と足の小指が正面を向いていないと


避けているつもりでも突きを受けてしまう。「相手が刃物を持っていると、これで終わりです」(岩﨑)


目線が相手、胸が前、足の小指が前、つまり中心が正面だと相手の突きを受けない。「中心が入り、目が入っているということになります」(岩﨑)。ここからナイファンチンの型にあるように手刀からヒジ当てを打てる


※ナイファンチンの型から知るヒジ打ちとヒジ当ての違いは前回を参照のほど

相手の突きに対し、体の回転で当てるヒジ打ちだと


イチ・ニの挙動になり


突きを受けてヒジは届かない。「外面の回した動きでは、相手の拳が当たることで、引っ掛かりができて入ることができなくなります」(岩﨑)


対してナイファンチンのヒジ当てはイチの挙動になり


相手の攻撃を受けずに、ヒジを当てることができる。「円運動でなく内面で直接入るのが、武術空手のヒジ当てです」(岩﨑)

「稽古を積んでいけば、内面の動きが可能になり、足の小指が外を向いても外側に引っ張られることがなく入ることができます。そのように内面で動けるようになるために型の稽古が必要になります。つまり内面で動けるようになると、年を取って若い頃のように体の自由がきかなくなっても、入れるということになります」(岩﨑達也)

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【Bu et Sports de combat】武術で勝つ。型の分解、ナイファンチン編(03)「目線、胸、足の小指の向き」

【写真】横への隙をなくすナイファンチンの型で創ることができるヒジ当てとは? (C)MMAPLANET

武術でMMAを勝つ。空手でMMAに勝利する──型を重視する剛毅會の武術空手だが、岩﨑達也宗師は「型と使って戦うということではない」と断言する。型稽古とは自身の状態を知り、相手との関係を知るために欠かせない。

サンチン、ナイファンチン、セイサン、パッサイ、クーサンクーの型稽古を行う剛毅會では、まずサンチンから指導する。そんな剛毅會の稽古には站椿が採り入れられている。

全ての根幹となる武術の呼吸を学ぶことができる──サンチンで創られた、空手の体をいかに使うのか。その第一歩となるナイファンチンの解析を行いたい。第3回となる今回は、目線、胸、足の小指の向きからナイファンチンの型の解析を行いたい。


ナイファンチン立ちの基本と最重要点は目線と体の向き、そして足の小指の向きになる。この3つの向きが正しくなることでナイファンチン立ちが成り立つといっても過言でない。最初の姿勢は目線、胸、正面を向いている

小指も正面を向く。「小指が正面を向くと、親指はやや内側を向きます。股関節からヒザ、つま先とつながり強い構えとなります」(岩﨑)

本来、人が正面を向いた立った時は足の小指は若干外側を向く。「よって往々にして見られるのは、指を内側を向けることでヒザも内側を向いてしまうという構えです。それでは強い構えにはならないです。サンチン立ちは、指が内側を向いてもヒザは正面を向いており、強い構えです」(岩﨑)。対してナイファンチン立ちは常に足の小指を正面に向けて、強い構えを創る

一の動作。顔は右を向き、視線は右。胸と足の小指の向きは正面のまま。「ウルトラマンのカラータイマーがあるイメージし、カラータイマーを正面に向けてください」(岩﨑)

×正しくない姿勢で顕著なのは、目線に引っ張られて胸が右側を向いてしまうこと

二の動作。左足を右足の前方から、一歩踏み出す

この時、小指は正面を向くようにする。同様に胸も前、目線は右という姿勢は変わらない

三の動作。続いて右足を一歩横へ、同時に右手で手刀打ちを行う。目線は右、胸は正面、足の小指も正面なのは変わりない

×三の動作で顕著な間違った姿勢は、左肩を引いて胸が左を向いて中心がずれてしまう。「一生懸命に腕を引くことで、上体を引っ張ってしまうことで胸のカラータイマーが左を向いてしまいます」(岩﨑)

×同様に伸ばした右手に体が引っ張られ、体が右を向くのも起こりやすい間違い

四の動作。伸ばした右手に

左ヒジを当てる

視線と胸は右を向き、足の小指は正面

×ヒジを当てるときに、指が右側に向くことで

ナイファンチン立ちではなくなる。「内面が出来上がっていないと、足を引っ張って指先が右を向いてしまいます。つま先が右を向く、つまりヒジ打ちになります。ナイファンチンではヒジ打ちではなく、ヒジ当てです。ヒジ打ちとは明確に違います」(岩﨑)

【ヒジ打ちとヒジ当ての違い】
標的に対して、ヒジを動かせるのがヒジ打ち。できているヒジを標的に置くのがヒジ当て。「ヒジを使った攻撃を見ていると、ヒジの状態を考慮せずに振るケースが多いです。振ると移動で力を養成しようとするので、ヒジの状態を創るという状態にはなかなか辿りつかないです。武術空手のヒジ当ては、ヒジの状態が固く創ることでより威力があるという考えです。ヒジの状態が出来ていて、振ることが一番です。ただし、できたヒジを振ることでエネルギーを失うことも多く簡単ではない。ワンインチパンチがエネルギーを失わないのに対し、距離のあるパンチは失ってしまうのと同じです。そこで剛毅會のMMAではこのヒジ当てをケージ・レスリングでのダーティーボクシングに取り入れる試みをしています」(岩﨑)

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【Bu et Sports de combat】武術で勝つ。型の分解、ナイファンチン編(02)「横への隙を無くすため」

【写真】横からやってくる相手へ対応ではなく、横への隙を無くすのがナイファンチン (C)MMAPLANET

武術でMMAを勝つ。空手でMMAに勝利する──型を重視する剛毅會の武術空手だが、岩﨑達也宗師は「型と使って戦うということではない」と断言する。型稽古とは自身の状態を知り、相手との関係を知るために欠かせない。

サンチン、ナイファンチン、セイサン、パッサイ、クーサンクーの型稽古を行う剛毅會では、まずサンチンから指導する。そんな剛毅會の稽古には站椿が採り入れられている。

全ての根幹となる武術の呼吸を学ぶことができる──サンチンで創られた、空手の体をいかに使うのか。その第一歩となるナイファンチの解析を行いたい。第2回となる今回は、ナイファンチンという「手っ取り早く喧嘩に強くなる」型を知る前に、改めて武術と格闘技、格闘技と喧嘩の違いについて話──後編をお届けしたい。

<ナイファンチン第1回はコチラから>


──格闘であっても、闘争でないと。

「空手の道場では組手をする際に『どうすれば良いですか?』という問いがあった時は、『喧嘩のつもりでやりゃぁ良いんだよ』という答えでした。ところが時代とともに、この言葉は通じなくなってきました」

──喧嘩をしていない子供たちが増えたということでしょうか。

「ハイ。喧嘩もそうですが、怒りという感情がない。怒っちゃいけないように教育されているんです。そういう教育になっています。人に迷惑を掛けちゃいけない。いやいや、子供は迷惑を掛けて良いんです。そのために大人がいます。子供の迷惑を受け止めないで、迷惑を掛けるなという教育をするから、何が迷惑なのか、自分の感情を出すことができなくなっています。

だから大人になって迷惑を掛ける人間だらけになったんです。子供の喧嘩なんて、本気でも素人なんです。そういう時に怒ることができなくて、その感情を抑えてより弱い者にぶつける。そういう世の中です。路上の無差別殺人、狙いは女性、子供、ご老人ばかりです。人を殺して、自分も死にたいとか言って、ヤクザに切りかかる輩はいません。

教育現場や格闘技の道場で『死ね』という言葉が聞かれなくなった。それは『死ね』と言われて、『嫌だ。死ぬもんか』という怒りで現状を跳ね返していたのが、そういう言葉を聞かされても怒れなくて、落ち込んでしまう。それって間に一つ抜けちゃっているんじゃないかのと」

──あまり声を大にして言えないですけど、ふた昔も以前に格闘王を名乗る人と口論になったことがありました。あの時に『殺すぞ』と言われたのですが、その言葉を吐く限りは『お前も殺される覚悟ができているんだろうな!!』と口論以上に発展しそうになって(笑)。

「アハハハハ。ただし、そういうことなんです。相手に飛びかかられたことで、自分が何を口にしたのか理解したことでしょう。『殺す』という言葉が、その御仁にとっては武装ということなのでしょうが、あなただけでなく相手も武装していますよ──ということは、闘争をするうえでは忘れてはいけないです。

そういうことが完全に抜け落ちているんです。言われた方が、『お前も殺されるぞ』という感情を持たないから。そこがないと、命の脅かし合いの攻防とはならない。本気の命の脅かし合いのなかで使うモノが武術です。自分の精神に一片のごまかしがあってもならないんです」

──とはいえ、武術を鍛錬するうえでも殺し合いはできないです。

「仰る通りです。やっちゃいけないことです。ローマ帝国の頃から『汝平和を欲さば、戦への備えをせよ』という格言があります。一太刀で相手を倒す稽古をしていると、人を殺める必要性はなくなります。武術、武道の存在意義はそこにあります。だから型稽古が存在しています。

幕末に防具剣道をやっている人たちが実戦ではそれほど役に立たなかった。真剣で巻き藁を切り、型稽古をしている人の方が斬ることができた。どれだけ人を斬る状態を創っているのか。MMAは命のやり取りが念頭にあるモノではないです。だからこそ、どれだけ本気で勝つための練習をしているのかが問われるのだと感じるようになりました」

──ではMMAを戦うわけでも、空手のコンペティションに出るわけでもない人間が型稽古をすることは人を殺める業を稽古していることになるのですか。

「そうです。自分の命、家族に危害を加える人間がいるという前提で稽古をしているので。そんな人間がいないと思うなら、稽古をする必要はありません。世の中、信じているモノに裏切られることいくらでもあります」

──ハイ。

「だからといって『裏切られた』とか言っても、筋違いです。そういうことがあるという前提、それに耐えうる精神的、肉体的な強さをつけておく必要はMMAを戦う、格闘技の試合に出るという意志がなくても、身につけておいて何ら損はないと私は思っています。そして型稽古で言いますと、ナイファンチンからそういう武の核心に入っていきます。殺さないために殺し合いを学ぶ──その領域にナイファンチンから入っていくことになります」

──ナイファンチンは横移動です。そこから何を学ぶことが前提となっているのでしょうか。

「横に移動することで横から来る人間への対応方法思われがちですが、横から来る人間と戦うのではなくて、自身の横への隙を無くすためだと考えてください。正面を向いていて横に隙ができやすいのが人間です。

言うと……どこを向いていようが、360度を気にしないといけない。その360度はクーサンクーで学びます。パッサイは斜めです。いずれも隙ができやすいところの隙をなくす、それが型稽古なんです。

隙がなくなると、正面への反応、動きが見違えるほど速くなります。後方に隙ができるのが人間です。続いて横です。正面は一番、意識できる。だからこそ、後ろと横に隙ができてしまう。その隙をなくすことが、私が行っている型稽古の目的です」

<続く>

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【Bu et Sports de combat】武術で勝つ。型の分解、ナイファンチ編─01─「武術と格闘技、喧嘩と格闘技」

【写真】サンチンに次にファイファンチを学ぶ、その故とは (C)MMAPLANET

武術でMMAを勝つ。空手でMMAに勝利する──型を重視する剛毅會の武術空手だが、岩﨑達也宗師は「型と使って戦うということではない」と断言する。型稽古とは自身の状態を知り、相手との関係を知るために欠かせない。

サンチン、ナイファンチ、セイサン、パッサイ、クーサンクーの型稽古を行う剛毅會では、まずサンチンから指導する。そんな剛毅會の稽古には站椿が採り入れられている。

全ての根幹となる武術の呼吸を学ぶことができる──サンチンで創られた、空手の体をいかに使うのか。その第一歩となるナイファンチの解析を行いたい。第1回となる今回は、ナイファンチという「手っ取り早く喧嘩に強くなる」型を知る前に、改めて武術と格闘技、格闘技と喧嘩の違いについて話を訊いた。


──サンチン、ナイファンチ、セイサン、パッサイ、クーサンクーの型稽古を行う剛毅會ですが、長らく続いたサンチンの連載をひとまず終え、今回からナイファンチの解析に移らさせて頂きます。その前にサンチンは他の型とは性格が違うモノ、その部分を改めて説明して頂けないでしょうか。

「サンチンは空手に必要な精神と肉体を養う、あるいは育むための型です。他の型の稽古をしても、サンチンのレベルが他の全ての型のレベルになるファンダメンタルです。突きが良くない、それはサンチンのレベルが低いことが要因になることもあります。

サンチンを省いて、武術空手の指導はできないです。稽古をする目的がそれぞれなために、全ての教え子にサンチンの型稽古を指導してきたわけではないです。ただしMMAの試合に武術空手を生かしたいのであれば、サンチンの要素を多分に含んだ稽古はやっているので、サンチン自体の稽古をするする必要はないようにしてきました。ミットをやろうが、スパーリングをしようが、それはサンチンをしていることになります。サンチンの考え方でパンチの練習をさせている感じです。そして、サンチンをすることで自ずと突きは強くなります」

──ここでもサンチンのことになってしまいますが、なぜサンチンをすることで突きの威力が増すのですか。

「体が空手の体になるからです。空手の体になることが目的です。では、サンチンで創った体をどのように使うのか。次の段階として、使用方法を学ぶことになります」

──それがナイファンチということですか。

「格闘技と武術は違います。なので武術という部分の空手を身につけるには、格闘技の練習をしていても身につかないです。エネルギーの運用方法を学ばなければなりません。左側が資金の源泉と、右側が資金の使途と示す資金運用表というものがあります。あれと同じで左がサンチンで、右が他の型という風に考えると分かりやすいです。その右側──エネルギーの使途の第一歩がナイファンチになります」

──なぜ、ナイファンチが第一歩になるのでしょうか。

「そこに関しては私が決めた順番ではなく、慣わしに則した形です。流派や先生によってはパッサイから始めるところ、セイサンから始めるところもあるでしょう。

ナイファンチに限らず、ナイファンチ以外の型でも体の使用方法を学ぶことに変わりないです。サンチンとセイサンは分類上では那覇手なので、この2つを同時に学ぶことはないと言われているようですが、そういう慣わしが伝わるようになったのも琉球王国が廃藩置県で沖縄県となった頃からのようで。それ以前はどうも那覇手も首里手も、泊手もなく、それぞれの先生がサンチンを教え、ナイファンチを教えるという風で同時に学ぶということがなかっただけで、個人が別の型を学ぶことはあったようです。

剛毅會がサンチン、ナイファンチ、セイサン、パッサイ、クーサンクーの型稽古を行うのは私の先師が決めたようですが、よくできた順番だと思っています。どこからやっても構わないはずですが、私の感覚的に手っ取り早く喧嘩に強くなるにはナイファンチだと思います」

──喧嘩に強くなるには、ですか。格闘技と武術は別ですが、武術に喧嘩は含まれると。

「格闘技と武術が別であるように、喧嘩と格闘技は別物です。全く違います。実は最近はMMAで勝つために喧嘩のトレーニングを取り入れています」

──喧嘩のトレーニング? 喧嘩はルールなき実戦ではないですか。そこを練習に採り入れるというのは?

「まさに今、喧嘩にルールはないと言われましたよね。つまり、そういうことなんです。喧嘩と格闘技の違い。喧嘩と格闘技は時間、速度が違います。格闘技は強くなればなるほど、スポーツ化していきます。スタミナの配分やジャッジの判定基準を考えるようになり、喧嘩における暴力性と相反する要素が必要となってきます。

喧嘩って本気なんです……本気というか、躊躇ない。躊躇していると、やられます。ヨーイドンがないわけですから。その根底には怒りや恐怖が存在しています。ただし格闘技は本能の発動がないのに戦闘をしないといけない。練習を見ていてもそうですが、人間の
精神は、憎くもない相手を簡単に殴るようにはできていないです。

それが海外の選手なんかは金が掛かって、より良い人生を手にするためには迷うことなく惨たらしいことがちゃんとできます。国内にもいるかもしれないですが、少なくとも私が関わってきた選手たちは、そういうことが不慣れな人間です。松嶋こよみは、まだ全然殴れるほうです。特に若いころは躊躇がなかった。そんな彼でもデビュー当初はボコボコに殴れていても、キャリアを重ねるとそうでないようになってきます。

もちろん、MMAに勝つためにはスタミナ配分も、ゲームプランを実行することも大切です。だから、殺傷能力だけでは勝てない相手と戦うようになると、自ずとボコボコと殴ることがなくなってきます。あるいはより凄い相手に殴られて、イップスのように以前のように殴ることが出来なくなるケースもあります。

よって練習の時にも、石ころを持ってぶん殴ることをイメージさせます。でも、石ころを持ってぶん殴るって殺意のある行為です。剣術や空手が格闘技と違うのは一太刀、一突きが本気でなければ意味がないということなんです。本来、剣術や空手は本気で殺めに来る人間に対して、自分がやられないための手立てなので本気でないと意味がないんです。本気でないなら、出さずに一目散に逃げた方が良い」

──う~ん、なるほどです。MMAには相手を眼前にして様子見というファイトが存在します。

「ということです、ね。これはもうナイファンチの話ではなくて空手や型の基本稽古全般の話になってきますが、一つのジャブ、ストレートもどこに当たるのかしっかりと考えて練習できているのか。動作のための動作になっていないのか。そういうことを考える必要があると思います。シャドー、ミット、スパーリング、何のためにやっているのか。そこは常に問い掛けるべきで。

格闘技はウォーミングアップから始まり、徐々に体を動かします。マススパー、ライトスパー、そしてガチスパーと上げていく。対して、試合はウォーミングアップからガチンコへ行く。そのガチンコが一瞬の交錯で勝負がつくというものじゃない。そうじゃないですか?  しっかりとマネージメントしないと勝てない。結果、闘争と格闘技が乖離してしまう一面が見られます」

<この項、続く>

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